宮城谷昌光のレビュー一覧
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本巻でひときわ輝きを放っていた登場人物は、孫子こと孫武だろう。
後宮の貴妃を兵にみたてて訓練するという、あまりにも有名なエピソードは読んでいて心が躍った。
無名の彼がその兵法により世に出ていくさまは痛快だ。
「人の幸と不幸は、人とのめぐりあいで変わる。」『右[示右]の帰郷』より。
「人はおなじ感情をもちつづけることは、そうとうにむずかしい。」『子胥の外交』より。
「目のまえに倒れている者を救うことは、たしかに人助けにはちがいないが、視界の外にいる者たちを救うのが為政者のつとめである。無形の形がみえるか、無声の声がきこえるか、それが人の上に立つ者の良否となる。」『子胥の外交』より。
「自大の叫 -
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呉で政変発生、物語は大きく動く。これにより、この国に逃れた伍子胥は悲願の成就にまた一歩近づく…… 読んでいてそのような印象を持った。
清廉とも言って良い宮城谷昌光らしい筆致のため、生臭いエピソードでも、陰鬱さを感じて途中で投げださずに順調に読み進むことができた。
「━━運よく勝った。というようないいかたは、孫武にはありえない。勝敗にはかならず原因と理由がある。」『斉の国』より。
「家を大きくするには、家族だけでの経営では、限界がある。」『斉の国』より。
「旅とは、教訓そのものです。」『斉の国』より。
「知らないということは、気楽なことであると同時に、きわめて恐ろしいことである。」『暗殺の矢』 -
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乱暴な言い方だが、“時代小説”とはその時代を舞台にしたフィクション、“歴史小説”は史実(史書の記述)に沿って描かれていくもので、宮城谷昌光はそのオーソリティーのひとりだと認識している。
第二巻と同様にこの第三巻も活劇が登場する“時代小説”という印象を受け、その点が少々違和感を覚えたものの、読んでいて面白かった!
「小事を視て大事を知らなければ、とりかえしがつかない事態に遭遇するということである。」『密告者』より。
「人は根拠のないことを信じないくせに、風聞に接して右往左往することがある」『脱出路』より。
「臆病がすぎると、妄想がさらに妄想を産む」『脱出路』より。
「毎日が有意義であることは、 -
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これまで宮城谷作品は人物を通して「徳」というもののあり方がたびたび描かれてきた。
それでは「死屍に鞭打つ」など激越な生涯を送った伍子胥は、いったいどのように描かれるのか、以前から興味があった。
本作はその伍子胥が主人公であり、私にとって待望の作品といえる。
宮城谷作品らしい快男子といえる子胥だったが、まだまだ本巻はこの長編作品の序章という印象である。
「むろん人はことあるごとに、なぜそうなったかをつきとめなければ生きてゆけわけではなく、むしろ原因も理由もあえて無視するか、あるいは推測によって理解したふりをするか、いずれにせよ、人生の大小の起伏の起因を執念深くさぐっていては、まえにすすめない。 -
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本作は王粲に始まり12名の人物を取りあげた短編集である。中でも『正史』の著者である陳寿にスポットを当てたのは興味深い。
また韓遂の生涯には心打たれるものがあった。
ただ、これらの作品は全て宮城谷昌光自身の手によるものなのかは疑わしい。その理由は宮城谷作品の“肝”の一つといえる漢字の使い方が、作品により異なるからだ。しかし、それが本作の評価を下げることにはならなだろう。
どの作品も面白かった。
「人は、出発はおなじでも、おなじ道を歩きつづけることはむずかしい」『許靖』より。
「人は無名のころに他人から受けた恩と仇を死ぬまで忘れない。恩を忘れず、仇を忘れることができたら、その人は聖人に近い。曹操 -
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文春文庫で「三国志」全12巻の刊行を終えたことを機に出版された、三国志や中国史に関する論考と対談を一冊にまとめたもの。
収録内容は、目次を要約すると
・「歴史小説」観を聞くロングインタビュー
・三国志とそれを正史で語ることに関する自作解説
・歴史小説を語る対談
水上勉
井上ひさし
宮部みゆき
吉川晃司
江夏豊
五木寛之
・中国古代史に関するエッセイと対談
白川静
平岩外四
藤原正彦
秋山駿
マイケル・レドモンド
・項羽と劉邦を語るエッセイ
となっています。
ファンブック、それも宮城谷昌光版の三国志を読んだファン向けであることは一目瞭然です。
そ -
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中国歴史モノ、畏れながらも何も知らない自分ですが、先輩のオススメがあったのでこわごわ手を伸ばしてみました。
とりあえず、「楽毅」ってIMEの変換で出てくるくらいの有名人だったのか…というレベル。中山国の首都、霊寿も石家庄と言われると何となくわかるような。
全4巻の第1巻、序盤はスロースタートの印象でしたが(色々と国やら背景やらを説明されるものの、ストーリーと連動しないからまぁ頭に入ってこない…)、本巻の半分くらいからはテンポ良く話が進んでいきます。
人の駆け引きであったり、兵法であったりが出てくるあたりは今後の面白さを感じさせます。文中に出てくる「孫氏の兵法」と「墨子の兵法」の違いは、戦略と -
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ネタバレ五巻までは五子胥編、六巻からは范蠡編だ。
五子胥編では、楚出身の子胥が父、兄を誅殺され、呉に逃れて、楚に復讐するはなしだが、そんな中でも、孫武と出逢い、これを呉にまねき、闘いに勝っていく様がこ気味良い。復讐は、既に死んでいた楚の王を墓から出して屍に鞭打ってけりをつける。五子胥は、呉王 闔臚に信頼されていたので、楚出身といえども、呉を使って、復讐ができたのである。
范蠡編は、呉越の戦いだが、越王 允常は破棄旺盛で、呉を侵したが、ケガを負い亡くなってしまう。越王 勾践に代わり、こちらは非常に民衆からも慕われていたが、闔臚の後の呉王 夫差となったとき、戦いで負けたため、夫差に囚われ、僕のような生活を -
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徳川家に仕える大久保一族を書いた小説。山岡壮八の徳川家康と比べると、作者の違いによって異なる家康像が見えてくるのも面白い。綿密な研究で歴史をより忠実に描こうとしている作者なため、歴史について学べるところが大きい。物語としての面白さは少し半減するのだが。
一向一揆について、山岡壮八著では家康の母であるお大が、家康に無益な戦をやめるように諭し、慈悲を持って一向一揆収めたように描くが、この作品では家康を母を高めるためにそんなフィクションを作らない。リアルな一向一揆と、その特に感動的ではない収束を描く。
長篠の戦いも、鉄砲の魅力が事を決したように描かないのが、新鮮だった。