【感想・ネタバレ】三国志読本のレビュー

あらすじ

歴史はふりかえってみるものではない。すすんでいって、みるものである。「特別随想 ふりかえること」より

『三国志』をはじめ長年、中国歴史小説を書き続ける著者が、みずからの歴史観、世界観、小説観をあますところなく開陳した。
自作解説や作家、経済人、学者など多彩なメンバーとの対談などを収録。

<目次>
【ロングインタビュー】私の「歴史小説」

【自作解説】三国志の世界
・『三国志』の沃野に挑む--大歴史絵巻の豊穣なる世界
・曹操と劉備、三国志の世界--正史からみえてくる英雄たちの素顔
・『三国志』の可能性--歴史は多面体だからこそおもしろい
・『三国志』歴史に何を学ぶのか--構想十年、執筆十二年の大長編を終えて

【対談】歴史小説を語る
・水上勉--歴史と小説が出会うところ
・井上ひさし--歴史小説の沃野 時代小説の滋味
・宮部みゆき--「言葉」の生まれる場所
・吉川晃司--我々が中国史に辿り着くまで
・江夏豊--司馬遼太郎真剣勝負
・五木寛之--乱世を生きるということ

【講義&対談】中国古代史の魅力
・中国古代史入門--どこから学べばいいのか
・白川静--日本人が忘れたもうひとつの教養
・平岩外四--逆風の中の指導者論
・藤原正彦--英語より『論語』を
・秋山駿--春秋時代から戦国時代へ
・マイケル・レドモンド--碁盤上に宇宙が見える
・項羽と劉邦、激動の時代--ふたりを動かした英雄たちと歴史的必然

・『三国志』をより深く楽しむための本
・宮城谷昌光 中国歴史作品の年代一覧
・特別随想 ふりかえること
・宮城谷昌光 出版年譜

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

2024.10.13
本論とは関係ない対談に宮部みゆき先生とのそれがある。その中で「作家になりたい」という人には絶対反対するという一節がある。この2人が口を揃えるのだから重い。

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2024年10月13日

Posted by ブクログ

文春文庫で「三国志」全12巻の刊行を終えたことを機に出版された、三国志や中国史に関する論考と対談を一冊にまとめたもの。

収録内容は、目次を要約すると
・「歴史小説」観を聞くロングインタビュー
・三国志とそれを正史で語ることに関する自作解説
・歴史小説を語る対談
  水上勉
  井上ひさし
  宮部みゆき
  吉川晃司
  江夏豊
  五木寛之
・中国古代史に関するエッセイと対談
  白川静
  平岩外四
  藤原正彦
  秋山駿
  マイケル・レドモンド
・項羽と劉邦を語るエッセイ
となっています。

ファンブック、それも宮城谷昌光版の三国志を読んだファン向けであることは一目瞭然です。

それがわかっていながらも宮城谷昌光の本を読んだことがない自分が手を出したのは、もちろん宮部みゆきとの対談が目当てです。
でも、三国志は吉川英治版と横山光輝版とコーエーのシミュレーションでたっぷり楽しみましたし、宮城谷昌光は本屋さんの棚では大体宮部みゆきのそばにあるし(関係ないw)、いずれその著作の「正史に基づいているのが売り」の三国志も読んでみたいと思っています。

そんなこともあって、お目当ての宮部みゆきとの対談以外の部分も楽しめるんじゃないか、と思い読み始めたわけです。

三国志がテーマになっているところは、インタビューにせよ解説にせよ対談にせよ、楽しく読むことができました。
これは、自分が三国志の登場人物のうち好きな者を書き出すと夏侯惇、典韋、許褚…と、どうやら曹操陣営の武将に肩入れしているのが理由の一つでしょう。
「三国志演義」が元になっている他の三国志では、劉備と関羽張飛が主役で、曹操は敵役ポジションですが、宮城谷昌光はまず曹操の祖父曹騰から語り始め、その後も曹操と劉備の扱いが公平です。
そんなところに親しみを感じ、読み進むにつれ「黄巾の乱」の黄色の意味などの豆知識を挟みつつも後漢末期から晋成立までの間を俯瞰する眼差しで書かれた宮城谷版三国志は、いつかは読みたい本リストのかなり上のほうにリストアップされることになりました。

ただ、それ以外の古代中国を語っている部分は馴染みがなくて(よく知られていると思われる項羽と劉邦ですら、知っているのは名前だけです)やっぱり予習不足を痛感しました。せめて話題になっている人がどういう風に言われている人なのかくらいは知らないと(例えば『信長って「うつけ」って言われているけど実は』って話は前提になっている通説を知らないと楽しめませんよね)読んでいても字面を追っているだけで内容が頭に入ってきません。

肝心の対談について。
楽しみだった宮部みゆきとの対談はちょっとおとなしめでした。それでも仕事場や仕事の進め方についての話が聞けて興味深く読むことができました。ワープロと会話する宮部みゆき、今は何を使っているんでしょうか。

ただ、特に作家や評論家などの出版関係者以外の人との対談は、対談として成立していないような気がします。
江夏豊とか吉川晃司とかと対談をしていて、こちらも読むのが楽しみだったのですが、彼らはその道では超一流の人だけど、宮城谷昌光との関係は作家と一ファンです。作家とその一ファンの対談なのですから、どうしても作品をベタ褒めする内容になってしまっていて、そんな対談を自分のようにファン未遂の人が読むとどうしても引いてしまうことになります。

ということで、やっぱり宮城谷版「三国志」を先に読んでおくことが大事でした。余裕があるなら、三国志と直木賞受賞作の夏姫春秋 くらいを先に読んでからこちらを読んだほうがよかったと思います。

いずれこれらを読んだときに再読します。

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2020年04月03日

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