岩井志麻子のレビュー一覧
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ネタバレカバーイラストは濱口真央。
■綾辻行人 「再生」 (『亀裂』、『眼球綺譚』)
中高生の頃に既読。再読。
思った以上に・・・・の「・・」で笑ってしまった。
■鈴木光司 「夢の島クルーズ」 (『仄暗い水の底から』)
中高生の頃に既読。再読。
当時はすごい大人の話だと思っていたが、マルチ勧誘というしょぼさとヨットという対比が、実に大人っぽい。
またヨット好きの作者らしい描写(専門用語)もきりっとしている。
■井上雅彦 「よけいなものが」 (『怪奇幻想短編集 異形博覧会』)★
面白いアイデア。
よく会話文が連続するときに陥りがちな混乱を逆手にとって。巧み。
■福澤徹三 「五月の陥穽」 (『怪談歳時記 12か月の悪夢』)★
こ……、これは実に嫌な小説!
というのも子供の頃、こういう夢をよく見た。
天井裏の筒状の通路に入ったはいいがつっかえてしまうとか。
あるいは今も時々見ているかもしれない。
いやないやな描写だ。
純・物理的ホラー描写に、笑うしかない。
とってつけたような怨みも笑ってしまった。
■今邑彩 「鳥の巣」 (『惨劇で祝う五つの記念日 かなわぬ想い』)
正統なホラーで、巧い。
映画「・・・・・・・・」あたりを思い出すが、その公開より早い。
■岩井志麻子 「依って件の如し」 (『ぼっけえ、きょうてえ』)
最近既読。
■小池真理子 「ゾフィーの手袋」 (『異形のものたち』)
解説に森鷗外「舞姫」を彷彿とさせるとあり、なるほど。
単著としては「恋」を読んだのみで、あとは「アイロンのある風景 日本文学100年の名作」「平成怪奇小説傑作集1」や「家が呼ぶー物件ホラー傑作選」で知るだけの作家だが、かなり怪奇小説を手掛けているな。
皆川博子の推薦もあるし、この作家には手を伸ばしてみたいかも。
■澤村伊智 「学校は死の匂い」 (『などらきの首』)
最近既読。
◇解説 朝宮運河 -
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たまに訪れるホラー読みたい病が発病したので前から気になっていたこちらを拝読。
結果、あまり怖くありませんでしたが、昔祖母から御伽噺を聞いていた時のようなノスタルジックな感覚にはなれたので違った楽しみ方をしました。
私の親戚が岡山だった事もあり、よく遊びに行っていたのでこのお話の舞台も親近感が湧きました。思い起こせば従妹の家もかなり田舎だったので、確かにこんな不思議な事が起こりそうな空気感ではありました。
短編集なのでまたそれぞれに感想を書いてみたいと思います。全体的に日清戦争前後辺りのお話のようなのでそれを踏まえてお付き合い頂ければ幸いです。
【ぼっけえ、きょうてえ】
最初なんだこのタイトル?!と首を捻りましたが岡山弁で「とても、怖い」と言う意味らしく、遊郭に春を買いに来た客に遊女が自身の怖い身の上話をする、と言うお話。
当時はよくある話の食いぶちを減らす為と金を稼がせる為に売られて来た彼女ですが、それにしても生い立ちが壮絶すぎて怖い通り越して悲しくなりました。
岡山弁で語られるので信憑性も増してきて、思わず親戚に忌み地じゃないのか、そこ大丈夫?!と電話しそうになりました。(迷惑)
水子が出てくると怖いと言うより悲しさが溢れますね。自分がこの客だとしたら最後の遊女の言葉になんて返すかなあ…「だが、断る!!」しかないなあ…
【密告函】
個人的に一番好きなお話でした。
献身的な妻を裏切って怪しい祈祷師の女と不貞を働く男の話なので、これを好きだと公言すると私の人格まで疑われそうですがホラーとしては一番楽しめました。
伝染病が蔓延して多くの死者を出している岡山県某市。
まだ医療も発達していない時代なので当然物凄い勢いで蔓延していきます。例に洩れず差別も横行するので、市役所に感染した人を無記名で投函する密告函が設置されます。これを主人公の不貞男、弘三が調査する役目を担うのです。
嫌でした、この仕事。伝染病以前のお話の蠅がたかっている強烈な家に彼が出向いた時は食べていたポテチをそっと皿に戻しました(読書中のおやつが一番おいしいです)
その流れで怪しい祈祷師の美女と出会ってしまうのですが、この祈祷師の力なの弘三は怪奇現象に悩まされます。
これがもし祈祷に使われる怪しい煙のせいだとしたらまた違った方向で怖いのですが、本当に怖いのはダークホース、弘三の妻のトミ。
どんどん弘三に対しての地味な嫌がらせがエスカレートしていって遂に…
ラストシーン、良かったなあ。映画でこの終わり方ならそれはもう震えて映画館を後に出来ます。
【あまぞわい】
今度は不貞の女が登場します。皆どんだけ浮気すんねんというツッコミも入れたくなりますが、こちらはちゃんとした訳ありです。
元遊女(作中では酌婦)のユミが漁村の漁師の錦蔵に身受けされて漁村に嫁いで来るのですが、漁師の妻も中々ハードな職業なので当然ユミは馴染めず村八分になってしまいます。
そのユミを見て錦蔵がユミに暴力を奮うようになってしまうのです。DV>不貞だよね、とユミが思ったかどうかは定かではありませんが、これまた漁村では浮いている村一番の金持ち、網元の息子の恵二郎と良い仲になってしまうのに時間はかかりませんでした。
結局バレて最後にはこの世のものではない『あまぞわい』に恐ろしい目に合わされてしまうのですが、このあまぞわいは錦蔵が聞いていた伝承とユミが聞いていた伝承が微妙に異なります。要は海で亡くなった海女さんのお化けです。
全然怖くなさそうな書き方をしましたが、実際はもっとおどろおどろしい情念がこもったスタンド攻撃をして来ますので非常にやっかいです。
これも怖いと言うよりは悲しかったなあ。皆思うように幸せになれたら良いのに…
【依って件の如し】
タイトルかっこよすぎだろ!と思って読み始めたらこれまた悲しい話でした。
『くだん』とは中国発祥の妖怪で、この本の中では頭が牛で体が人間のまあ化け物のような形で描かれていますが、これまた貧困にあえぐ兄妹が必死に生きている所からお話が始まります。
妹のシズの母は亡くなっていますが、美人でしたが狐憑きのような奇妙な行動を繰り返した為に、村で公然と行われていた夜這いの対象にもなりませんでした。(津山三十人殺しでもこの件が問題になっていましたが、凄い風習ですね)
そのせいでシズと兄の利吉も村八分になってしまい、利吉が必死にシズの食い扶持を稼いでいます。
シズは少し知恵遅れな所があるのですが、覚えている母の面影は何故か真っ黒な牛の頭をした女の姿なのです。これらがとんでもないラストへの伏線です。
このお話は途中までは不気味な空気を纏った悲しいお話だったのですが、最後「嘘だろ?!」と小さく叫ぶ位の強烈なお話でした。
兄ちゃん…そりゃあないぜ!!!
ジョジョ風味満載でお送りしましたが、総括としては切なくておどろおどろしい御伽噺、と言った感じでした。
間違ってもお子様には聞かせられませんが。
そして岡山の恐怖は続きます。
狙った訳ではないのに、この後名探偵のはらわたを拝読し私は再びこの恐怖の地へ足を踏み入れる事となるのです。(東京に続いて失礼すぎる)
to be continued -
購入済み
そっか、怖い話だと…
怖い話だとこういう表現も出てきますよね、そりゃ。
1話目の途中で断念しました…。
この手の表現は苦手なのですが、別の作品の怖い話を見た時にも出てきたので和ホラーと言えばのような所はあるのでしょう。 -
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ネタバレ以下、チラシの裏。
岩井志麻子を数作、集中的に読んだのは2017年。
その後は深追いすることなく、豹柄タイツでハッスルする姿やワイドショーで発言が炎上したりする様を、ネット記事で見知っていたが、実は心の奥底で、結構尊敬していた。
その根拠を思い出すと、2014年大晦日から2015年元日にかけて放送された「ツキたい人グランプリ〜ゆく年つく年〜」に行き着く。
岩井氏の動く姿を見たのはその一度きりだが、まずべろべろに酔って除夜の鐘を撞くときに「50歳になって生理が上がったから中出しし放題だぞー!!」と叫んでいた。oh……
この番組自体は、フジテレビで、坂上忍がとにかくその年に流行った人物を呼ぶだけの、賑やかで鬱陶しい番組だった。
泥酔して眼の座ったヤカラの大沢樹生が、誰彼構わず殴りかかったり蹴りを入れたりする無法状態の中、確か佐村河内守騒動で引っ張り出された新垣隆が、氷風呂に突き落とされた挙句コメントを求められて、モゴモゴしているのに業を煮やした大沢樹生が蹴りを入れようとするのを、周囲のお笑い芸人が真顔で静止しようとする中、岩井氏は新垣氏を庇うように背後から抱きかかえて落ち着かせようとしていた……この映像が、今も忘れられない。
文庫書下ろしとかKADOKAWAに一極集中とか事情はあるかもしれないが、好きです。
本書も面白かった。
■穴掘酒 ……よくある話だが、手紙の文体と、穴掘酒という風習が重なって、凄み。柳田國男の「葬送習俗事典:死穢の民俗学手帳」にも項目あり。
■でえれえ、やっちもねえ ……表題作だが、うーん怖いというよりライトなシニカル小噺という感じか。しかし令和のコロナ禍の夜で読む意味はある。ちなみに作中ではモブキャラに近いが、孤児院を創設した人物のはモデルは石井十次と思われる。
■大彗星愈々接近 ……★少女、老婆、に平凡な男が翻弄される、このへん山岸凉子の絵で再生された。藤子・F・不二雄「ドラえもん」で忘れがたい「ハリーのしっぽ」のハレー彗星1910年、しかも「内田さん」まで出てきた上、ガルシア=マルケス「百年の孤独」も連想できる、大変に美味しい短編。平凡な男と描写されたが、実は歴史上の人物、浮田幸吉だったというのも、極上の味。どなかたwikipediaに加筆してくれれば。
ハリーのしっぽ
■カユ・アピアピ ……★上京志望、作家志望という点で、作者の投影かと思っていたら、なんとシンガポール(新嘉坡)でカユ・アピアピ(炎の木)って、あー金子光晴と妻の森三千代だ! と驚いた。作中の古賀根安和って、「こがね蟲」を書いた作家の本名は金子安和だから、間違いない。森三千代は愛媛県宇和島出身なのでモデルに過ぎないだろうが、かなりあのふたりの核心に迫らんとする力作だと思う。また話は変わるが、矢野絢子の歌の一節に「ホンソホンソ」とあったのに聞き流していたが、こういう意味の方言なのね。瀬戸内海近辺かしらん。 -
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ネタバレある男のせいで獄中に放り込まれてしまった女。しかし、女は男を恨むことなく、慕い続け牢の中で男に向けた書をしたため続けていた。やがて、恩赦のおかげで出所できた女は、同じように男に向けて手紙を書き続ける。男を想う一途な心を込めながら……。
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前回絶賛した、「ぼっけえ、きょうてえ」の正式な後継作とされる「でえれえ、やっちもねえ」をさっそく読んでみた。第一話目は腐った花の香りをかぐようなくらくらした気持ちになりながら読んだ。
ただ、前作は全編がなんとも言い難い妖艶な雰囲気を常に湛えていたのと比べて、こちらはなんとなく生々しい。
前回は幽霊の様なものが登場人物の前に現れて、惑わし、狂わせ、翻弄していたものだが、今回はその様子は鳴りを潜めていた。
うっそりとした、静かで不気味で怖い。いつの間にか寄り添っている、恐ろしいものに鳥肌が立つ、という雰囲気はいくらか希釈されており、前回のままの様子が好きであるという方にはちょっと物足りないかも。
前回の毒性ありありの作品は現代だと何か問題でもあるのだろうか?いやまさか。
出てくる女性たちも不幸であるのだが、前作よりは幾分か恵まれており、良い生活を送ったりしていた。
全てが最初から破綻しているという雰囲気の話が一つしかなかったのは残念かも。
第一話目と同じ流れで、男に執着する情念、怖いがしかし美しい。という流れだったらなぁと失礼ながら思わずにはいられなかった。
特に毛色が違ったのは「大彗星愈々接近」という話。煽情的なほとんどなく、今までにない話だった。怖いというよりは、ユーモラスで面白い。
これはこれで乙なのだけれど、作品の雰囲気に中てられる気満々だったので、些か驚いた。
同作者の既読作品は「楽園」であったので、こういう煽情的かつ猟奇的な話を書く人なのだと思っていたので本当に面食らった。
ただ、第一話目は本当に素晴らしかった。ほかの作品も面白いのだけれど、これだけが飛びぬけて面白い。
異様ではあるが、静かだった女の情念がぱっと一瞬燃え上がり、相手の男も一緒に燃やさんとする。
憎悪にも似た愛情がぼうぼうと燃えていて、ぞっとした。
岩井志麻子さんのこの手の話が大好きになってしまったので、これからもこういう話を続々読みたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ岩井志麻子の明治から昭和初期を舞台にした貧困と土俗の信仰、迷信、伝説が入り交じった郷愁的で恐ろしい作品群、つまり「岡山モノ」の起源にして頂点「ぼっけぇ、きょうてぇ」の正統な続編ということで期待した一冊。
結果からすると「ぼっけぇ、きょうてぇ」の続編と名乗るには少々足りないながらも「穴堀酒」のようなトリッキーな作品や「大彗星…」のようにファンタジックな作品もあり岩井志麻子の作品の中でもふわっとした入門編といった感じである。
しかしながらやはり物足りない。もっと濃厚な岡山の闇を描いてきた作者の作品にしてはとにかく薄く広いのである。
とにかく物足りない一冊。