岩井志麻子のレビュー一覧
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憑き物のはなしばかり集めたアンソロジー。
それぞれ味わい深いのだけれども、いちばんきになったのが冨士玉目『わたしはわたし』。これは祖父のアルバムを見たら自分の写真があって、しかも現在のあり得ない写真で、後ろに知らない女が写っていて徐々に侵食されているようなはなしだった。写真の中に怪異だが何かが潜んでいて精神に入りこまれたのか、自分の思っていた自分の顔が自分じゃなくなってきているはなしでめちゃくちゃ面白いと思った。
とにかくこの短さで全体を把握できる文章力とかどの作家さんも素晴らしいと思う。現実にあることを創作じゃなく語るって面白すぎて震えるくらい好きだ。怪談好きになって良かったなぁと改めて思っている。
他にも読み応えあったのであげると『餓鬼湯』『犬として生きる』『獅子舞』『長靴』『フジミくん』『集落の掟』『蛇憑き』『嫌煙家』『剃刀憑き』『穴二つ』『憑依型アクター』『緑のショコラおじさん』『実録憑依譚』。『長靴』もとても面白かったですよ。 -
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現代ホラー小説傑作集。これまた全部再読なのだけれど、傑作揃いというほかのないセレクションです。
かるかやシリーズの「芙蓉忌」、実はシリーズ他の作品に較べると印象が薄かったのですが。再読してみると、なかなかに怖いしひっそりとした切なさも感じる名作でした。なによりこのアンソロジーがこの一編で幕を開け、そしてラストが「七つのカップ」で優しく終わるという構成も素敵なのですよね(ラスト一歩手前が「あまぞわい」でとことんどんよりしたあとだというのもまた)。
小林泰三さんの「お祖父ちゃんの絵」をセレクトするというのもまたなんとも。これ、最初に読んでいるうちは「お祖母ちゃんの絵」の間違いじゃないの? って思うんですよね。それがタイトルの意味を知った時、なんという酷い意味なんだ、と。小林泰三作品にしてはまだましだと思ったのが、良い意味で裏切られた作品でした。 -
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明治末の岡山で、片目を斬られて霊媒師になったタミエの元に様々な人たちが不思議な相談事をしにくる。なんとも言えず艶めかしく、不気味で哀しく、どこか懐かしいお話の数々。やはり岩井志麻子面白い。少女小説出身というだけあって、謎なくらい読みやすく、ちょっと内に籠って夢想に耽るような独特な味わいもある。これはホラー小説というよりは、抒情奇譚という趣だった。
舶来品をありがたがる明治期のあれこれもレトロで良かった。ドリップしたコーヒーを一升瓶に詰めて「珈琲液」として売り始めたって本当か。少し多すぎやしないか。日持ちするくらいだからものすごい濃いだろうにブラックで飲んで、苦い苦いと言いながらハイカラの味として有り難がってるのが非常にそれっぽくてホッコリした。
それにしても、関西地方のシャーマンを取材したアンヌ・ブッシィ『神と人のはざに生きる:近代都市の女性巫者』や、笙野頼子作品(三重県出身のシャーマンめいた小説家)にも通じる伝統文化の香りがするのは、岡山という地域がなせる技なのだろうか。どこがどうと具体的には言い難いのだが。もちろん文体やテーマの話ではない。