岩井志麻子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ「津山三十三人殺傷事件」——昭和13年、岡山の寒村で惨劇は実際に起こった。子供の頃は村で一番の秀才と言われた筈の男が、長じてからは挫折してしまった。進学も出来ず、徴兵検査にも落ちた自分を馬鹿にした村人達への私怨をはらすため、老若男女の区別なく村人三十三人を一晩で惨殺したのだ。この実際に起きた事件を題材としているのが本書「夜啼きの森」である。
そもそも題材としているものが非常に衝撃的なものなのだ。ただ普通に描くだけでも充分興味深い話となる筈のものである。これを、ストレートに事件をとらえるのではなく事件の側面を描くことにより、ただ猟奇的な事件の物語とはならず、さらに深い人間の心理の物語となってい -
Posted by ブクログ
ネタバレ「美しい」とは幸福ばかりを招くものではない。
人は美しさに魅せられるが近づくことで破滅する。
凡庸な人間は宝石、金、貌、知恵、承認、求めれば求めるほどに足りなくて、身を焦がして翻弄されるのかもしれない。
しかし、「美しいもの」の視点は台風の目のような凪があるのではないか。
本作はそれを痛々しいほどに文章であらわにしている。
美女と醜女が交互に生まれる家系、その一人称視点の文章の切り替えは何度も読み返したくなるほど巧みだった。
自然と時代だけが自分だけを置き去りにしていくような風景描写の文はいつも誰にでも平等で、とても美しく退廃的で好きだった。 -
Posted by ブクログ
先輩からいただきもの!
人から本もらうの大好きだー
岡山地方の方言で「とても、怖い」という意味の「ぼっけえ、きょうてえ」。表題作のほか3篇。
どの作品も、心霊現象や妖怪の話ではなく、人間に潜む狂気さや残忍さを描いているが、そういう意味では限りなくリアリズム的な小説であって、とっつきやすく感じた。共通して、舞台はおそらく明治時代、大正時代の岡山。
岩井志麻子氏は今作で初めまして。お話としてよくできてるなと思ったのは最後の「依って件の如し」、個人的に一番好きだったのは「あまぞわい」。
巻末の京極夏彦の解説もまたいい。
基本的にどれもさくっと読めるので怖いというより文学として光る箇所が目につく -