あらすじ
妾として囲われていたタミエは、ある日主人に日本刀で切り付けられ左目と美しい容貌を失った。
代償に彼女が手にしたのは、この世ならざる魑魅魍魎と死霊の影を捉える霊能力であった。
「霊感女性現る」と評判を呼び、霊媒師として生計を立て始めるタミエ。
やがて彼女の許へは、おぞましい事情を抱えた奇妙な依頼者たちが集まってくるようになり――。
明治の岡山を舞台に、隻眼の女霊媒師の怪異との邂逅を描いた幻妖怪奇小説。
解説・池澤春菜
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
岩井志麻子さんのTVでのぶっ飛んだイメージとは全く違う、じっとりと汗が臭うような、余韻のあるお話たち。
主人公タミエの霊力がめちゃくちゃ強いわけではなく、弱さを孕んでいる設定も物語を面白くしている要素だと思う。
頼みの美貌を失い、食うに困って始めた霊媒師の仕事が結果的に彼女を自立させていく展開も好感がもてる。
結構前に執筆された本だけどシリーズ化してほしいなー!
Posted by ブクログ
明治末の岡山で、片目を斬られて霊媒師になったタミエの元に様々な人たちが不思議な相談事をしにくる。なんとも言えず艶めかしく、不気味で哀しく、どこか懐かしいお話の数々。やはり岩井志麻子面白い。少女小説出身というだけあって、謎なくらい読みやすく、ちょっと内に籠って夢想に耽るような独特な味わいもある。これはホラー小説というよりは、抒情奇譚という趣だった。
舶来品をありがたがる明治期のあれこれもレトロで良かった。ドリップしたコーヒーを一升瓶に詰めて「珈琲液」として売り始めたって本当か。少し多すぎやしないか。日持ちするくらいだからものすごい濃いだろうにブラックで飲んで、苦い苦いと言いながらハイカラの味として有り難がってるのが非常にそれっぽくてホッコリした。
それにしても、関西地方のシャーマンを取材したアンヌ・ブッシィ『神と人のはざに生きる:近代都市の女性巫者』や、笙野頼子作品(三重県出身のシャーマンめいた小説家)にも通じる伝統文化の香りがするのは、岡山という地域がなせる技なのだろうか。どこがどうと具体的には言い難いのだが。もちろん文体やテーマの話ではない。
Posted by ブクログ
ジワジワ〜っと背筋が寒くなる読後感が味わえます。写真屋のお話が好きかな。ろくでもないお客さんばかりで、見た目の描写から人物像を想像して楽しいです。