【感想・ネタバレ】ぼっけえ、きょうてえのレビュー

あらすじ

「教えたら旦那さんほんまに寝られんよになる。……この先ずっとな」時は明治、岡山の遊郭で醜い女郎が寝つかれぬ客にぽつり、ぽつりと語り始めた身の上話。残酷で孤独な彼女の人生には、ある秘密が隠されていた……。岡山地方の方言で「とても、怖い」という意の表題作ほか三篇。文学界に新境地を切り拓き、日本ホラー小説大賞、山本周五郎賞を受賞した怪奇文学の新古典。

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Posted by ブクログ

岩井志麻子さんのトークが面白過ぎて作品も読んでみようと思って手に取った一冊。

昨今怪談ブームだそうだが、人々が怪談に求めるのはまさにこういう体験なんだ、と読後ふいに思った。
怖いものには禁忌や穢れがつきまとう。もっとストレートに言えばエロは怖さに必然の要素と言っても過言ではないかもしれない。それはきっと穢れでありながら命に直結することだからなのだろう。

理性では絶対に避けたいと思いつつ覗いてみたい、というアンビバレントな欲望は誰しもが持っているものだと思う。
そうした欲望を喚起する魅力がある作品だと思った。

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2025年07月07日

Posted by ブクログ

『ぼっけえ、きょうてえ』
表題作は岡山県の方言で「とても、怖い」という意味。そのタイトル通り、この作品は「ぼっけえ、きょうてえ」のである。
表題作の他に3篇収録されており、そのどれも明治時代の岡山の田舎の女性の物語。田舎の閉鎖的な因習の残る集落で、人間の醜さと怪異を鮮明に描いている。京極夏彦先生の解説にもある通り、「ぼっけえ、きょうてえ」という言葉は、登場人物の言葉はではなく、読者の、そして作者の言葉である。読後に戦慄を禁じえない傑作恐怖小説。

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2023年01月15日

Posted by ブクログ

全体に白黒‼︎真夏のシーンでさえ始終白黒の本(笑)
しかしうすら怖い内容でグイグイ読み進めます。
面白かった。

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2022年12月14日

購入済み

しばらく引きずる作品

岩井志麻子さんのファンとして
この本は読まないといけないと思いながも
書店で冒頭を読んだ際に
時代背景が昭和初期、岡山弁、怖い内容と言う
ハードルがあり、避けていました。
しかし、ページを進めるごとに
すっかり文体に慣れ、岩井志麻子さんの世界観に
入り込みました。
やはり岩井志麻子さんだからこその
女性描写はルサンチマンに溢れています。

読み終わっても、内容を思い出してしまい
ぼっけえ、きょうてえ作品です。

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2021年01月28日

Posted by ブクログ

表題作は読んだことがあった。え?いつどこで?
でも、他の作品は読んだ事がなかったので、途中で放り出したのかな?記憶がない。きょうてえなぁ。

どの話にも性が絡んでくる。そして暗い。

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2025年09月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

明治の岡山の田舎が舞台の4話。どの話も怪異と人怖の合わせ技という感じですが、怪異は後ろめたさから来る妄想のような印象も受けてどちらかというと人怖よりに感じました。
怖さ的にはそれ程でもないですが、排他的な田舎、貧しさ、村八分、因習、村社会のしがらみ、禁忌、と陰鬱とした雰囲気や匂いまで伝わってきそうな表現で物語に入り込み、じんわりとした嫌な空気とどこか悲しさが後を引きます。
物語を岡山弁で読むのも新鮮でした。
密告函の避病院の悪い噂が広まり、正しい知識のある弘三まで行動を起こせず被害が広がるのがやるせ無い。

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2025年08月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

4篇の短編集

どうしょうもない貧しさや排他的な村や環境。自分ではどうすることもできない立場や環境をただ生きる、沼のようなあきらめ感。
そんな中で、あぁ〜結局、人が一番恐ろしいと思ってしまう。

「ぼっけえきょうてえ」での、女郎の寝物語を聞いた客。
「密告函」での、コレラ感染者を確認する役人。
「あまぞわい」での、漁村に嫁いだ女。
「依って件の如し」での妹。

私は、それぞれのその後を思うと、、、

ぼっけえきょうてえ

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2025年08月11日

Posted by ブクログ

怖い、というよりグロくやるせない気持ちになった。それぞれの話での男と女のドロドロとしたもつれあいの果てにはハッピーエンドなんてものはなくて、ただひたすら薄暗い地獄、という感じ。生き地獄ってこういうことを言うのかなって思った。幽霊よりも人間が怖い。

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2025年08月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

オーディブル。
読み手のお姉さんがエロっぽくて猫撫で声なのでどうしようかと思ったが慣れるとそれはそれで癖になってきた。低くてドスの効いたお姉さんが読んだらまた印象は変わるかもしれない。
岡山弁がよい。

ホラーと身構えて聞き始めたものの、
そういう要素はあるが、大部分は人間の醜悪。
好奇心だけで見てはならんような目の背けたくなるような世界を、遊女自身の身の上が、悲哀もなく淡々と客に語られる。つらいときにはつらいことを思い出すことで心を保っているといった類のセリフが印象的だった。冒頭の方は、赤子の生々しい死が語られるので臨月の妊婦の身で聞くにはやや刺激が強かった。
語られれば語られるほど女郎のエピソードに救いはなく、それ以上の地獄はないだろうとおもわれるのに、より深い地獄が、次から次へと淡々と掘り起こされていく。
地獄の果てに、ちょこっとだけホラー要素がある。

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2025年11月18日

Posted by ブクログ

ぼっけえきょうてえ、とてもこわい。
様々な怖い話が岡山弁を軸にして収録されていて、1話ずつ噛み締めながら読んだ。
叫びたくなるような恐怖ではなく、脳髄がぞっとするような恐怖。

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2025年07月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

岡山の方言で客に語りかける女郎の身の上話は、その悲惨さを忘れさせるほどのリズムの良さで、このまま聞いていたいなと思わされた。
『密告函』で見せられた女の怖さは、誰しもが持っている一面のような気がして、最も共感できる。厳密に言うとトミは悪くないし怖くもない。当然のことをしたまでだ。
『あまぞわい』が好みだった。時代が昔であれば男の一存で何もかもが決まっていくものだったと思うので、不安定に生きているユミの苦しみが切なかった。運命付けられたような人生に悲哀を感じて印象深い。
『依って件の如し』は別のアンソロジーで読んだことがある。すべてが繋がったときの衝撃は忘れられない。
4篇すべて濃厚な空気が流れていて楽しめた。

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2025年06月15日

Posted by ブクログ

 明治時代の岡山が舞台の怪奇文学が四編収録された短編集で、終始陰鬱な雰囲気と閉鎖された村に住む人間の生々しい悪意とおぞましい真相が岡山弁の語り口と相まって独特な怖さを醸し出していた。確かにこれは「ぼっけえ、きょうてえ(とても、怖い)。」

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2025年02月15日

Posted by ブクログ

じっとりとした気持ち悪さを感じる恐怖の短編集。岡山出身なのでさらに共感。ちなみに「きょうてえ」使ってる人は見たことねぇ。

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2025年01月02日

Posted by ブクログ

子供の頃うちにこの本があって、読んでみたかったけど母親曰く「岡山弁が読みづらい」とのことだったので敬遠していた作品。最初は少し読みづらいなぁと感じたものの、すぐに没入できたし土地の匂いを感じることができてよかった。

どの作品も暗く生臭く、気持ち悪い。

最後の「依って件の如し」がいちばんすき。
供の頃見た光景をふと思い出すシズ。誰も知らなかったシズ自身の生い立ちが明らかになった時、思わず「うわぁ...」と言っちゃった。冷酷で残酷な結末だ。

岩井志麻子の作品は初めて読んだけど、文章が好みなので他作品も読んでみたい。

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2024年07月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人生で初めて読んだホラー小説。明治時代あたりの話が好きだったため、読むことができて嬉しかった。
調べると映画化もされているらしかったが、思いのほかきょうてえ話だったから、視聴を躊躇っている。
読み進めていけばいくほど斜め上の展開が待っている。

色恋に妬み恨みが付随した話が主だった。
登場人物は周りから聞いた怖い話に恐怖し、事件に遭遇又は事件を起こし、化けて出た幽霊などを目撃するが、結局怖いのは人間であった。
明治時代の岡山あたりの背景もあり、今では考えられない生々しい世界があった。

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2024年05月21日

Posted by ブクログ

これ、なんといっても題名がいいですね。岡山県人でないとまず分からないけど、色々想像力をかきたてられます。

純然たるホラーというより、土俗的で人間の業を描いた短編が四つ。どれも雰囲気は似ており、貧しく因習に縛られながらも必死に生きる女性が描かれている。読んでいてなんとも切なくなるが、日本人のイヤラシしさもよく描かれていると思う。

こういう作品を読んでいると、岡山が津山三十三人殺しが起きた地であるのも、横溝正史が傑作を産んだ地の舞台が岡山が多いのもうなづける。

一度瀬戸内の岡山でなく、北部の岡山をゆっくりおとづれてみたい。

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2025年06月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

岡山地方の方言が出てくるので少しわかりにくいが、四つのホラー短編共に楽しく読めた。読んでいて夢に出てくるかと思うくらい怖い苦笑。

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2023年12月09日

Posted by ブクログ

ホラー的な怖さもあるが、昔の童話を読んでいるような不思議な怖さもあり面白かった。明治時代の岡山を舞台にしており、どれも女性が惨めで貧しくて切なかった。

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2023年07月23日

Posted by ブクログ

「ぼっけえ、きょうてえ」とは
岡山県の方言で「とても、怖い」という意味である…………(´-ω-)ウム

怖いと言うより、悍ましい感じの話で終始
胸糞さ全開でした!!Σ(゚д゚;)

幽霊だの祟りだの怪異だのと言うよりかは終始、ヒトコワがメインでした!!

おすすめホラー小説として度々、目にしてきた
本作『ぼっけぇ、きょうてぇ』
実はわたくし、岩井志麻子作品は初読です!!
どんな人なんだろ〜と思い、ググると…
「見た事ある!!」そう!岩井志麻子先生を
僕は某番組で見た事があったのだ!!
その時はホラー作家とは気付かず…
「なんだ?このヒョウ柄全身タイツのおばちゃんは?まじウケる笑笑」としか思っていなかった。
しかし…本作の著者である事に気付いた時は
ある意味で1番!ぼっけえ〜、びっくりした!www

話が脱線しましたね笑笑
戻します!!
物語の構成は……短編集的な感じでいいのかな?
繋がっているようで繋がっていない
一応舞台は共通して岡山県で、
必ずと言っていいほど、亭主関白が突き抜けた
とりあえず殴っとけば大丈夫みたいなクソ男が登場してくる。
あと色々共通点はあるのだが、話は別々なので
短編集だと思う。

では少しあらすじを交えて物語を紹介していきます。

1、ぼっけぇ、きょうてぇ
本作のメインみたいな物語でいいのかな?
遊郭で働く女郎視点で話が進みます
客の男が自分が寝るまでお話を聞かせてくれと言い、女郎は遊郭での話、そして自分の幼少期の話を始めるのでした………

この女郎めちゃすごい顔してます‍www
あと幼少期が凄まじいです…
1番印象に残ったのが父親の無理矢理すぎる言い訳があまりにもアホすぎるので笑ってしまった。

2、密告函
岡山県内でコレラが流行し、とある村ではコレラ陽性、疑いの者を知っているのならば密告函に
投稿せよ!ただし匿名でも構わない。
こうしてどう考えても一悶着ありありな対策を実施した役場、担当に選ばれたのは弘三くん
すると同じ名前を幾つも発見
それはエセ祈祷師の娘お咲、彼女は金さえ払えば
誰にでもオカイチョウ〜する女であった。
調べない訳もいかず、弘三くんはお咲を調査する事になるのだが………

最近までコロナ禍だったから、、みたいな感覚
しかしコレラより人の欲望からの妬み恨みの方が
怖かった……

3、あまぞわい
岡山県内のとある漁村に干潮時だけに顔を出す
岩礁、その穴を「そわい」と言い
良い死に方をしなかった人間が居ると言う言い伝えがありました。
ひょんな事からその村に嫁いだユミ
しかし村人の嫁たちに村八分にされ
挙句に旦那からは暴力の日々、、
そんなユミに救いの手がしかしそれが悪夢の始まりとは知らずに、、、、

怪異と思いきや!!
昼ドラの様な愛と欲望のドラマみたいwww

3、依って件の如し
利吉とシズ2人は母を、亡くし
村人からも村八分にあい
超極貧生活を、おくっていました。
そんな蔑まされた生活を変える為に
兄は日清戦争に志願兵なり出兵するのでした
兄の出兵中は妹シズは隣近所の由次一家に引き取られる事にそこからなんとも悍ましい事になるとは、、、、、

まさかの最後は、、、ふんっ!∑(๑ºдº๑)!!ってなったwww
やりすぎや!!www

篇読み終わって思ったのは
確かに物語は面白い!
個人的には良かった作品は
「ぼっけえ、きょうてぇ」
「密告函」
「依って件の如し」
が良かったです!(≧∀≦)
しかし人間の醜い部分をこれでもかと
悍ましく書かれていたので終始胸クソループ状態
しかし!実際にあったであろうなんかを、織り込んでいたりと少し勉強にはなった!

恐怖とかを、求めるには適さないが
閉鎖的村が、好きな人は好きかも!
是非!機会があれば読んでみてほしい。
人間とはこうも醜いきょうてぇ〜生き物である事を知る為に、、、、( ≖͈́ ·̫̮ ≖͈̀ )ニヤリ

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2023年06月14日

Posted by ブクログ

怖く…はないが…、悍ましい。

色々な意味で勉強になりました……(´•ω•̥`)



●ぼっけえ、きょうてえ

「ぼっけえ、きょうてえ」は、岡山地方の方言で「とても、怖い」という意味らしい。

全然知らずに読んだので、造語かと思っておりました。
『ぼぎわんが来る。』のぼぎわんみたいな。

遊郭の女郎が客に身の上話をするのですが、その内容がぼっけえ、きょうてえんです…:(´◦ω◦`):

怖いというより、不気味…。

客が寝付くまでの静かな空気の中、方言で語られるので、余計不気味…。

女郎は津山出身。

岡山、津山と聞くと『八つ墓村』の元になった津山事件(津山30人殺し)が思い出される。

この事件はずっと後の話だが、何だか複雑な気持ちで、不気味さが増す。


短編集なので、ぼっけえ、きょうてえ話が他に3話収録されている。


●密告函

明治34年、コレラ病が蔓延。
罹患した事を隠そうとする人々。
そんな中、岡山市役所に『密告函』が設置される。
密告された人の家を回り、コレラに罹っているかどうか確認する弘三。
密告された者の中に「お咲」という名前が目立つ。
お咲は非常に魅力的な女性なので、恨みや僻みで書かれたのだろうと無視するが…。

この話も怖くはない。
面白かった。
コロナ禍と被り、昔だったらこんな感じになっていたのかな…と、非常に興味深かった。
女…やりよるね( ≖ᴗ≖​)ニヤッ


●あまぞわい

「そわい」は潮が引いた時にだけ顔を出す浅瀬や岩礁のこと。潮が満ちたら隠れる。
海女(あま)が生贄のような形で亡くなり「あまぞわい」と呼ばれる。
ユミは町育ち。
漁師に嫁ぎ、外見はすっかり変わる。
何もできないユミは村の女達から爪弾きにされ、夫からの暴力が絶えない日々だったが…。

こちらも、なんとも悲惨なお話。
どの話も女は暴力を振るわれたり、犯されたり(´・_・`)
昔はそれが現実だったんだろうなぁ。と。
海の女は強いと思った(-_-;)


●依って件の如し

利吉とシズの兄妹は母を亡くし、2人で生活していた。
シズはまだ幼い。
利吉は志願兵となり、日清戦争へ。
シズは、由次一家へ引き取られ、牛小屋で生活する事に。
戦後いつまでも兄が帰還しない中、シズは牛のような扱いを受ける。

この話が1番インパクト強かった…(^▽^;)
結末にびっくり。
牛と共に育った少女。
牛が唯一の話し相手……(´;︵;`)


どの話も真実が織り交ぜてあるのかな。
目を背けたくなるようなきょうてえ話ばかり…

昔の日本の様子が伺えました。

怖くはないが、興味深く、面白かった!!


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2023年06月13日

Posted by ブクログ

再読。
読み返す度に目の前に極彩色の男女の地獄が甦る。
表題作から艶めかしくゾッとする雰囲気の構築に惚れ惚れ。続く短編では合わせて岡山の農村の土塊の匂いや潮の香りも立ち上る鮮やかさ。
コレラが蔓延する村を舞台にした「密告函」は、このコロナ禍でギスギス疲弊する人間関係と酷似しているなぁ。ラストは確かに肝が冷えるけれど、直後にニヤリとしている自分はどうしようもなく女だ…。
男と女を待ち受ける「あまぞわい」のぽっかり口を開いた暗黒に魅せられ、「依って件の如し」はサスペンスの色合いも濃く最後までドキドキが止まない。

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2024年11月10日

A

購入済み

怖いけど

人間の怖さが描かれています。
怖いです。怖いはずなのです。
ですが、あまり怖く感じられませんでした。
ここに描かれている人間の怖さに
そういうこともあるかもねと思ってしまいます。
私も年を取ったものです。

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2020年07月11日

Posted by ブクログ

先輩からいただきもの!
人から本もらうの大好きだー

岡山地方の方言で「とても、怖い」という意味の「ぼっけえ、きょうてえ」。表題作のほか3篇。

どの作品も、心霊現象や妖怪の話ではなく、人間に潜む狂気さや残忍さを描いているが、そういう意味では限りなくリアリズム的な小説であって、とっつきやすく感じた。共通して、舞台はおそらく明治時代、大正時代の岡山。

岩井志麻子氏は今作で初めまして。お話としてよくできてるなと思ったのは最後の「依って件の如し」、個人的に一番好きだったのは「あまぞわい」。
巻末の京極夏彦の解説もまたいい。
基本的にどれもさくっと読めるので怖いというより文学として光る箇所が目につくような本、日本ホラー小説大賞と山本周五郎賞を同時受賞というのも頷ける。

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2025年09月01日

Posted by ブクログ

怖いというよりは悲しい物語たち。
当時の女性たちの哀しさが怖さに通づるのかな?
岩井先生、テレビのイメージから今まで拝読してませんでした、すみません!

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2025年05月22日

Posted by ブクログ


近代の有名なホラー小説としては両手で数えるまでに出てくる程の知名度を持つ本作。
表題に岡山弁が使われている通り、リアレンジされた岡山県産の怪談が4作収録される。
表題作含め、空気の作り方や描写は巧みなものの、丁寧な助走のまま終わってしまう感触。
ただ『あまぞわい』は、漁島の閉塞感と土着の不気味さが迫る見事な出来。
突き刺す様な恐怖は無いが、とても良い意味でホラーの入門として過不足無い作品だった。

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2025年01月05日

Posted by ブクログ

1999年第6回日本ホラー小説大賞
2000年第13回山本周五郎賞
受賞作
「ぼっけえ、きょうてえ」
岡山の遊郭の醜い女郎
客に話始める身の上話
恐ろしいのは人の業
ホラーかというと そうではない気がする
トータルリコールもセットで思い出します

「密告函」
疫病蔓延し始めるある村
罹患者を密告できる投書箱が役場に設けられる
函の管理を任せられた男が落ちる闇
よくできた妻の隠れた恐ろしさ

「あまぞわい」
そわいは海の浅瀬
岡山の酌婦が島の男に見受けされ結婚
美しい髪も肌も海の仕事に荒れていく
男は既に浮気と暴力
海女ぞわい が男の話
尼ぞわい が女の話
女は島の教師に恋をして
それは夫の知るところとなる
怖い恐いというより 貧しい女の生きる術
そわいが 女の場所になる

「依って件のごとし」
うー、これは辛くて、好きかも
家族は兄が一人だけ
村で疎外されながら過酷な労働をさせられる兄妹
それは 村人の死んだ母親への嫌悪の為
兄は労働にも出兵にも耐えて、妹を引き取る
そして 隠されていた真実にタイトルがストンとくる
こういう話は、ほんとうにあったんだろうな

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2024年09月15日

Posted by ブクログ

たまに訪れるホラー読みたい病が発病したので前から気になっていたこちらを拝読。
結果、あまり怖くありませんでしたが、昔祖母から御伽噺を聞いていた時のようなノスタルジックな感覚にはなれたので違った楽しみ方をしました。
私の親戚が岡山だった事もあり、よく遊びに行っていたのでこのお話の舞台も親近感が湧きました。思い起こせば従妹の家もかなり田舎だったので、確かにこんな不思議な事が起こりそうな空気感ではありました。

短編集なのでまたそれぞれに感想を書いてみたいと思います。全体的に日清戦争前後辺りのお話のようなのでそれを踏まえてお付き合い頂ければ幸いです。

【ぼっけえ、きょうてえ】
最初なんだこのタイトル?!と首を捻りましたが岡山弁で「とても、怖い」と言う意味らしく、遊郭に春を買いに来た客に遊女が自身の怖い身の上話をする、と言うお話。
当時はよくある話の食いぶちを減らす為と金を稼がせる為に売られて来た彼女ですが、それにしても生い立ちが壮絶すぎて怖い通り越して悲しくなりました。
岡山弁で語られるので信憑性も増してきて、思わず親戚に忌み地じゃないのか、そこ大丈夫?!と電話しそうになりました。(迷惑)
水子が出てくると怖いと言うより悲しさが溢れますね。自分がこの客だとしたら最後の遊女の言葉になんて返すかなあ…「だが、断る!!」しかないなあ…

【密告函】
個人的に一番好きなお話でした。
献身的な妻を裏切って怪しい祈祷師の女と不貞を働く男の話なので、これを好きだと公言すると私の人格まで疑われそうですがホラーとしては一番楽しめました。
伝染病が蔓延して多くの死者を出している岡山県某市。
まだ医療も発達していない時代なので当然物凄い勢いで蔓延していきます。例に洩れず差別も横行するので、市役所に感染した人を無記名で投函する密告函が設置されます。これを主人公の不貞男、弘三が調査する役目を担うのです。
嫌でした、この仕事。伝染病以前のお話の蠅がたかっている強烈な家に彼が出向いた時は食べていたポテチをそっと皿に戻しました(読書中のおやつが一番おいしいです)
その流れで怪しい祈祷師の美女と出会ってしまうのですが、この祈祷師の力なの弘三は怪奇現象に悩まされます。
これがもし祈祷に使われる怪しい煙のせいだとしたらまた違った方向で怖いのですが、本当に怖いのはダークホース、弘三の妻のトミ。
どんどん弘三に対しての地味な嫌がらせがエスカレートしていって遂に…
ラストシーン、良かったなあ。映画でこの終わり方ならそれはもう震えて映画館を後に出来ます。

【あまぞわい】
今度は不貞の女が登場します。皆どんだけ浮気すんねんというツッコミも入れたくなりますが、こちらはちゃんとした訳ありです。
元遊女(作中では酌婦)のユミが漁村の漁師の錦蔵に身受けされて漁村に嫁いで来るのですが、漁師の妻も中々ハードな職業なので当然ユミは馴染めず村八分になってしまいます。
そのユミを見て錦蔵がユミに暴力を奮うようになってしまうのです。DV>不貞だよね、とユミが思ったかどうかは定かではありませんが、これまた漁村では浮いている村一番の金持ち、網元の息子の恵二郎と良い仲になってしまうのに時間はかかりませんでした。
結局バレて最後にはこの世のものではない『あまぞわい』に恐ろしい目に合わされてしまうのですが、このあまぞわいは錦蔵が聞いていた伝承とユミが聞いていた伝承が微妙に異なります。要は海で亡くなった海女さんのお化けです。
全然怖くなさそうな書き方をしましたが、実際はもっとおどろおどろしい情念がこもったスタンド攻撃をして来ますので非常にやっかいです。
これも怖いと言うよりは悲しかったなあ。皆思うように幸せになれたら良いのに…

【依って件の如し】
タイトルかっこよすぎだろ!と思って読み始めたらこれまた悲しい話でした。
『くだん』とは中国発祥の妖怪で、この本の中では頭が牛で体が人間のまあ化け物のような形で描かれていますが、これまた貧困にあえぐ兄妹が必死に生きている所からお話が始まります。
妹のシズの母は亡くなっていますが、美人でしたが狐憑きのような奇妙な行動を繰り返した為に、村で公然と行われていた夜這いの対象にもなりませんでした。(津山三十人殺しでもこの件が問題になっていましたが、凄い風習ですね)
そのせいでシズと兄の利吉も村八分になってしまい、利吉が必死にシズの食い扶持を稼いでいます。
シズは少し知恵遅れな所があるのですが、覚えている母の面影は何故か真っ黒な牛の頭をした女の姿なのです。これらがとんでもないラストへの伏線です。
このお話は途中までは不気味な空気を纏った悲しいお話だったのですが、最後「嘘だろ?!」と小さく叫ぶ位の強烈なお話でした。
兄ちゃん…そりゃあないぜ!!!

ジョジョ風味満載でお送りしましたが、総括としては切なくておどろおどろしい御伽噺、と言った感じでした。
間違ってもお子様には聞かせられませんが。

そして岡山の恐怖は続きます。
狙った訳ではないのに、この後名探偵のはらわたを拝読し私は再びこの恐怖の地へ足を踏み入れる事となるのです。(東京に続いて失礼すぎる)

to be continued

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2024年07月16日

Posted by ブクログ

登録しているとばかり思っていたけど、
登録してなかったのか、これ。

…と、いう事で再読。

何年ぶりだろう、TwitterのTLに甲斐荘楠音の絵が流れてきたのをきっかけに、夏だし再読するか!と本棚から出してきた。

話のスジをほとんど忘れていたけど、
これって今ならイヤミスとも評されそうな作品。
表題の「ぼっけえ、きょうてぇ」もだけど、他の3作品も本当に極上のイヤミスだと思った。

どの作品も明治時代の岡山、北の方の貧しい農村だったり、あるいはあけっぴろげながらも排他的な漁村が舞台で、全編で岡山弁がとても効果的に使われている。

「ぼっけえきょうてぇ」のみ、遊女の独り語りで話は進行するんだが、これについては本作もさることながら文庫本の解説が素晴らしくて、気を抜けばそのままコピペしてしまいそうなほど。
…さすがの京極夏彦先生だわ。

語られる内容は、最初からわりとハードなんだが、途中からもうひとつギアが入ったようにさらに不穏で大変しんどい展開になっていく。
淡々と独り語りするそのおぞましい物語を聞かされている聞き手…、遊郭の客に、読者が思わず同一感を得てしまう構成になっているんだけど、そうなった後のラストが秀逸。
これは確かにタイトルを思わず口にしたくなるな。

表題以外の3作品もそれぞれが恐ろしさや陰惨さに際立っていて、読み終えた後すごくイヤな気分になる。
なんと言うか全編通してこの時代の、女性であることの業が特濃に漂っていて、それを感じさせる表現力が半端ないと思った。
密告箱のラストは、この作品だったことさえ忘れていたけど、食中毒の季節になると普通にうっすら思い出したりしてたから、イヤな印象を与えるインパクトが物凄いんだと思う。

メンタルがわりと元気な時に、お腹の底からやってくる、いやぁなザワザワ感を楽しむにはうってつけの作品です。

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2023年07月18日

Posted by ブクログ

本作は言い伝えが強く伝えられている土地を舞台とした部落ホラー(?)である。言い伝えや登場人物の生い立ちが異なる4つの物語で構成されている。

※以下ネタバレ注意※

特に好きだったのは「密告箱」でした。平穏な暮らしに満足ができない男が破滅的な女と出会い、堕ちてゆく。そして、しまいには連れ添っていた女の怨念自体が密告箱となって男を陥れる様は男が根本的に悪いのだが、可哀想でした。他の物語はあまり響かなかったので星3つです。

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2023年05月16日

Posted by ブクログ

4篇の短編集。やっぱり好きなこの世界。
題名の意は岡山地方の方言で「とても、怖い」

物の怪よりも人間が1番きょうてえ。
短いので入りやすい作品かと思います✍

「でえれえ、やっちもねえ」を読みたいなと思ったらまず今作を読み返したくなって…
1冊丸ごと岡山弁で綴られているので分からない言葉も多いのに
サクサク読める、というか止まらない面白さの「ぼっけえ、きょうてえ」

怪奇的な怖さではなく人間の業の怖さのお話。
最後まで読んで「コワッ…」人間ちゃ怖い…。
タイトルどストレートにとても怖いって付けるって
なっかなかのハイセンス。

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2023年05月13日

購入済み

そっか、怖い話だと…

怖い話だとこういう表現も出てきますよね、そりゃ。
1話目の途中で断念しました…。
この手の表現は苦手なのですが、別の作品の怖い話を見た時にも出てきたので和ホラーと言えばのような所はあるのでしょう。

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2022年12月19日

Posted by ブクログ

人間の怖さをこれでもかというくらい煮詰めたような作品。
何番目か忘れたけれどコレラの話は背筋が凍る思いがした。
漁師の妻の話は、男女の価値観の違いが丁寧に描かれており、とても他人事とは思えずいろいろ考えさせられた。

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2022年09月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

表題の「ぼっけぇ、きょうてぇ」がとても良かった。なまぬる~い空気を感じます。江戸時代の閉鎖的な村では空気も人間も淀んでいくんだなーと思いました。ところで、僕はよい本とは心が動く本だと思います。これは良い方向にも悪い方向にもです。この本では心を気持ち悪い方向に思いっきり引っ張ってくれました!ありがとう!!

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2022年07月01日

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