【感想・ネタバレ】ぼっけえ、きょうてえのレビュー

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Posted by ブクログ

『ぼっけえ、きょうてえ』
表題作は岡山県の方言で「とても、怖い」という意味。そのタイトル通り、この作品は「ぼっけえ、きょうてえ」のである。
表題作の他に3篇収録されており、そのどれも明治時代の岡山の田舎の女性の物語。田舎の閉鎖的な因習の残る集落で、人間の醜さと怪異を鮮明に描いている。京極夏彦先生の解説にもある通り、「ぼっけえ、きょうてえ」という言葉は、登場人物の言葉はではなく、読者の、そして作者の言葉である。読後に戦慄を禁じえない傑作恐怖小説。

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2023年01月15日

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全体に白黒‼︎真夏のシーンでさえ始終白黒の本(笑)
しかしうすら怖い内容でグイグイ読み進めます。
面白かった。

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2022年12月14日

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初版から何度も読んでいるホラー小説。何度読んでもぼっけえ、きょうてえ。岡山の、暗い時代の因習を噛み締めるような、日本の悪き文化を目の当たりににするような、非常にセンスある一冊。作者自身のことは忘れて作品に集中して読んでほしい。この一冊は本当に素晴らしく恐ろしいから。

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2022年04月29日

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陰鬱な雰囲気に、艶かしい岡山弁が融合されて、素晴らしい世界観を醸し出しています。
表紙の横櫛も、「よくこんなばっちり雰囲気のあった絵を探してきたな」と感嘆させられました。

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2021年12月26日

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第 6 回日本ホラー小説大賞を受賞した表題作の「ぼっけえ、きょうてえ」を含む、短編 4 篇が納められた本。
「ぼっけえ、きょうてえ」は岡山弁で”とても、怖い”の意。
随分前に一度読んだのですが、今回再読。
いずれの作品も、怪談というよりも人の怖さを描くものとなっています。
岡山弁で語られる、閉鎖的な村落のまとわりつくような湿った空気感が、なんとも言えない不気味さを生み出していてよかったです。

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2021年11月07日

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白黒の日本映画を観ているような読書感です。対話形式なんだけど、一人語りという珍しい形式で書かれ、そのこちらにしゃべりかけてくる感じが、読み進めていく内にある瞬間にゾッとします。後ろ確認してしまいます。ろうそくの灯りで読んだりしたら、眠れなくなりますね。でも、どこか女の切ない美しい感じも読み取る事ができて、日本女性の奥ゆかしさと、恐ろしさを感じます。失われつつある日本文化を感じる素敵な作品です。

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2021年09月09日

購入済み

しばらく引きずる作品

岩井志麻子さんのファンとして
この本は読まないといけないと思いながも
書店で冒頭を読んだ際に
時代背景が昭和初期、岡山弁、怖い内容と言う
ハードルがあり、避けていました。
しかし、ページを進めるごとに
すっかり文体に慣れ、岩井志麻子さんの世界観に
入り込みました。
やはり岩井志麻子さんだからこその
女性描写はルサンチマンに溢れています。

読み終わっても、内容を思い出してしまい
ぼっけえ、きょうてえ作品です。

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2021年01月28日

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ネタバレ

人生で初めて読んだホラー小説。明治時代あたりの話が好きだったため、読むことができて嬉しかった。
調べると映画化もされているらしかったが、思いのほかきょうてえ話だったから、視聴を躊躇っている。
読み進めていけばいくほど斜め上の展開が待っている。

色恋に妬み恨みが付随した話が主だった。
登場人物は周りから聞いた怖い話に恐怖し、事件に遭遇又は事件を起こし、化けて出た幽霊などを目撃するが、結局怖いのは人間であった。
明治時代の岡山あたりの背景もあり、今では考えられない生々しい世界があった。

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2024年05月21日

Posted by ブクログ

これ、なんといっても題名がいいですね。岡山県人でないとまず分からないけど、色々想像力をかきたてられます。

純然たるホラーというより、土俗的で人間の業を描いた短編が四つ。どれも雰囲気は似ており、貧しく因習に縛られながらも必死に生きる女性が描かれている。読んでいてなんとも切なくなるが、日本人のイヤラシしさもよく描かれていると思う。

こういう作品を読んでいると、岡山が津山三十三人殺しが起きた地で有るのも、横溝正史が傑作を産んだ地の舞台が岡山が多いのもうなづける。

一度瀬戸内の岡山でなく、北部の岡山をゆっくりおとづれてみたい。

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2024年01月31日

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ネタバレ

岡山地方の方言が出てくるので少しわかりにくいが、四つのホラー短編共に楽しく読めた。読んでいて夢に出てくるかと思うくらい怖い苦笑。

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2023年12月09日

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ホラー的な怖さもあるが、昔の童話を読んでいるような不思議な怖さもあり面白かった。明治時代の岡山を舞台にしており、どれも女性が惨めで貧しくて切なかった。

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2023年07月23日

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「ぼっけえ、きょうてえ」とは
岡山県の方言で「とても、怖い」という意味である…………(´-ω-)ウム

怖いと言うより、悍ましい感じの話で終始
胸糞さ全開でした!!Σ(゚д゚;)

幽霊だの祟りだの怪異だのと言うよりかは終始、ヒトコワがメインでした!!

おすすめホラー小説として度々、目にしてきた
本作『ぼっけぇ、きょうてぇ』
実はわたくし、岩井志麻子作品は初読です!!
どんな人なんだろ〜と思い、ググると…
「見た事ある!!」そう!岩井志麻子先生を
僕は某番組で見た事があったのだ!!
その時はホラー作家とは気付かず…
「なんだ?このヒョウ柄全身タイツのおばちゃんは?まじウケる笑笑」としか思っていなかった。
しかし…本作の著者である事に気付いた時は
ある意味で1番!ぼっけえ〜、びっくりした!www

話が脱線しましたね笑笑
戻します!!
物語の構成は……短編集的な感じでいいのかな?
繋がっているようで繋がっていない
一応舞台は共通して岡山県で、
必ずと言っていいほど、亭主関白が突き抜けた
とりあえず殴っとけば大丈夫みたいなクソ男が登場してくる。
あと色々共通点はあるのだが、話は別々なので
短編集だと思う。

では少しあらすじを交えて物語を紹介していきます。

1、ぼっけぇ、きょうてぇ
本作のメインみたいな物語でいいのかな?
遊郭で働く女郎視点で話が進みます
客の男が自分が寝るまでお話を聞かせてくれと言い、女郎は遊郭での話、そして自分の幼少期の話を始めるのでした………

この女郎めちゃすごい顔してます‍www
あと幼少期が凄まじいです…
1番印象に残ったのが父親の無理矢理すぎる言い訳があまりにもアホすぎるので笑ってしまった。

2、密告函
岡山県内でコレラが流行し、とある村ではコレラ陽性、疑いの者を知っているのならば密告函に
投稿せよ!ただし匿名でも構わない。
こうしてどう考えても一悶着ありありな対策を実施した役場、担当に選ばれたのは弘三くん
すると同じ名前を幾つも発見
それはエセ祈祷師の娘お咲、彼女は金さえ払えば
誰にでもオカイチョウ〜する女であった。
調べない訳もいかず、弘三くんはお咲を調査する事になるのだが………

最近までコロナ禍だったから、、みたいな感覚
しかしコレラより人の欲望からの妬み恨みの方が
怖かった……

3、あまぞわい
岡山県内のとある漁村に干潮時だけに顔を出す
岩礁、その穴を「そわい」と言い
良い死に方をしなかった人間が居ると言う言い伝えがありました。
ひょんな事からその村に嫁いだユミ
しかし村人の嫁たちに村八分にされ
挙句に旦那からは暴力の日々、、
そんなユミに救いの手がしかしそれが悪夢の始まりとは知らずに、、、、

怪異と思いきや!!
昼ドラの様な愛と欲望のドラマみたいwww

3、依って件の如し
利吉とシズ2人は母を、亡くし
村人からも村八分にあい
超極貧生活を、おくっていました。
そんな蔑まされた生活を変える為に
兄は日清戦争に志願兵なり出兵するのでした
兄の出兵中は妹シズは隣近所の由次一家に引き取られる事にそこからなんとも悍ましい事になるとは、、、、、

まさかの最後は、、、ふんっ!∑(๑ºдº๑)!!ってなったwww
やりすぎや!!www

篇読み終わって思ったのは
確かに物語は面白い!
個人的には良かった作品は
「ぼっけえ、きょうてぇ」
「密告函」
「依って件の如し」
が良かったです!(≧∀≦)
しかし人間の醜い部分をこれでもかと
悍ましく書かれていたので終始胸クソループ状態
しかし!実際にあったであろうなんかを、織り込んでいたりと少し勉強にはなった!

恐怖とかを、求めるには適さないが
閉鎖的村が、好きな人は好きかも!
是非!機会があれば読んでみてほしい。
人間とはこうも醜いきょうてぇ〜生き物である事を知る為に、、、、( ≖͈́ ·̫̮ ≖͈̀ )ニヤリ

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2023年06月14日

Posted by ブクログ

怖く…はないが…、悍ましい。

色々な意味で勉強になりました……(´•ω•̥`)



●ぼっけえ、きょうてえ

「ぼっけえ、きょうてえ」は、岡山地方の方言で「とても、怖い」という意味らしい。

全然知らずに読んだので、造語かと思っておりました。
『ぼぎわんが来る。』のぼぎわんみたいな。

遊郭の女郎が客に身の上話をするのですが、その内容がぼっけえ、きょうてえんです…:(´◦ω◦`):

怖いというより、不気味…。

客が寝付くまでの静かな空気の中、方言で語られるので、余計不気味…。

女郎は津山出身。

岡山、津山と聞くと『八つ墓村』の元になった津山事件(津山30人殺し)が思い出される。

この事件はずっと後の話だが、何だか複雑な気持ちで、不気味さが増す。


短編集なので、ぼっけえ、きょうてえ話が他に3話収録されている。


●密告函

明治34年、コレラ病が蔓延。
罹患した事を隠そうとする人々。
そんな中、岡山市役所に『密告函』が設置される。
密告された人の家を回り、コレラに罹っているかどうか確認する弘三。
密告された者の中に「お咲」という名前が目立つ。
お咲は非常に魅力的な女性なので、恨みや僻みで書かれたのだろうと無視するが…。

この話も怖くはない。
面白かった。
コロナ禍と被り、昔だったらこんな感じになっていたのかな…と、非常に興味深かった。
女…やりよるね( ≖ᴗ≖​)ニヤッ


●あまぞわい

「そわい」は潮が引いた時にだけ顔を出す浅瀬や岩礁のこと。潮が満ちたら隠れる。
海女(あま)が生贄のような形で亡くなり「あまぞわい」と呼ばれる。
ユミは町育ち。
漁師に嫁ぎ、外見はすっかり変わる。
何もできないユミは村の女達から爪弾きにされ、夫からの暴力が絶えない日々だったが…。

こちらも、なんとも悲惨なお話。
どの話も女は暴力を振るわれたり、犯されたり(´・_・`)
昔はそれが現実だったんだろうなぁ。と。
海の女は強いと思った(-_-;)


●依って件の如し

利吉とシズの兄妹は母を亡くし、2人で生活していた。
シズはまだ幼い。
利吉は志願兵となり、日清戦争へ。
シズは、由次一家へ引き取られ、牛小屋で生活する事に。
戦後いつまでも兄が帰還しない中、シズは牛のような扱いを受ける。

この話が1番インパクト強かった…(^▽^;)
結末にびっくり。
牛と共に育った少女。
牛が唯一の話し相手……(´;︵;`)


どの話も真実が織り交ぜてあるのかな。
目を背けたくなるようなきょうてえ話ばかり…

昔の日本の様子が伺えました。

怖くはないが、興味深く、面白かった!!


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2023年06月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

弘三は概ね今の生活に満足していた。嫌な上司はいるが、衝突もなく、黙々と与えられた仕事をこなして定刻に帰ればいい。家には愛する嫁と子どもがいて過ぎる事もなければ不足することもない。そういう生活を、あの日までは送っていた。

***

長らく積読していた本。随分前に出版された本だが、去年続編が出たので、これが機会に違いないと読んでみる。
読んでみると、長らく読んでいなかったことが悔やまれるほど面白い本であった。

どの話が面白いと問われると困るぐらい甲乙つけがたい。

全編を通して、著者の出身地である岡山が舞台である。時代は現代ではなく明治時代当たり。文明開化の輝かしい時代とは裏腹に、貧しい生活を強いられている農村や、沿岸部の村を舞台としており、どこまでもどこまでも寒く、暗い雰囲気が漂う。
出てくる多くの人物たちが、現在の生活にあえぎながらもどうにもならないと知り、諦観して生きている。
灰色の絵を思わせる情景のその最中、スポットライトが当たった登場人物たちが恐ろしいが、それでも妖しく美しいと”読者”に思わせるような出来事の中を過ごしていく。

登場人物たちの側に立てば、尋常の沙汰でなく、恐ろしい限り、気味の悪い限りの出来事でたまったものではないのだが、それでも鳥肌の立つような色濃い美しさを感じる。

男女の情が複雑に絡み合い、時には露骨に目の前に現れるのだが、不思議と下品には感じない。ホラーに男女の情念が持ち込まれるとドロドロした雰囲気がまとわりつき辟易するものだが、これはその感情もわかなかった。なぜかただひたすらに、それすら艶やかと感じる。実際目の前で繰り広げられると吐き気を催すほど嫌悪する内容にもかかわらずである。

肝をつぶすような派手な恐ろしさはないが、現れた恐いものがそっと寄り添っているような恐怖感を覚える。恐怖感を覚えるが狂おしい。私の言葉では表しきれない世界観なので、未読の人はぜひ読んでほしい。

いつもなら、タイトルを上げて、大体どんな話でという事を述べるのだが、語るなら全部を語りたいという衝動に駆られる。
全てを語ればネタバレどころではないので、控えたいと思う。

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2022年05月02日

Posted by ブクログ

"読後必ずぼっけえ、きょうてえと言うだろう"

4.4点

遊女のピロートークが思いもよらぬ終わりを迎える表題作。

当時のコレラの恐怖と閉鎖的な集落の湿度の高い恐怖を描く密告函。

幸せを掴んではすり抜け、掴んではすり抜けた末の地獄を描くあまぞわい。

こちらも田舎特有の閉鎖空間からの、閉鎖的であるが故のある行為により吐き気を催す依って件の如し。

岩井志麻子と言えばテレビで下ネタ発言をする人という認識であったが、こんな文章を書く人であったとは!(こちらが本職ではあるが)

ジメジメとした湿度の高い土着の描写が、岡山という土地を知らないからこそなのか恐怖が増長しているように感じた。

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2022年02月23日

Posted by ブクログ

これ岡山県北の話やったんや!!と分かって手に取りました。
タイトルだけはめっちゃ有名で、以前はエンタメにそんなに興味なかったからこれから先も読むことはなかろうと思いよったのに、今わたしは岡山県北に住んでるし、人のくらいとことか、ちょっと不気味で怖い話は好きだし、粗筋きいたら読んでみたくなったやん。

そうかきょうてえって怖いって意味か。「悪魔の手毬唄」でも登場人物が「きょうとい」てなんべんも言よったよね。あれも県北よね(モデルとして作東地方が有力らしい。近所。)
それにしても悪魔の手毬唄もやけど、県北て闇が深いね。密告箱は最近実物が津山の民家で出てきたらしいし、県南や岡山市に対する、何か羨望と妬みがまざりつつ「あそこの人間と自分らは質がちがう」と思っとる排他的な感情とか、ほんとにすぐ近所の話を見てる気分で読んでて面白かったー。

閉鎖的な田舎の村のやばいとこがいっぱい詰まっててほんとに楽しかった。ホラーという感じはなかったけど、閉鎖的な村ってだけでホラーだよ。ミッドサマー。
田舎の村のやばい俗習とかいろいろ知りたくなった。遠野物語とか読むべき?

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2021年10月03日

A

購入済み

怖いけど

人間の怖さが描かれています。
怖いです。怖いはずなのです。
ですが、あまり怖く感じられませんでした。
ここに描かれている人間の怖さに
そういうこともあるかもねと思ってしまいます。
私も年を取ったものです。

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2020年07月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

短編が4つ。
1作目は孤島の鬼やないか、という感じ。癒着した双子の要素を入れて、更に江戸川乱歩を超えるのは難しすぎるでしょう。
全体的に描写がオーバーであまり好みではない。絶叫した、と間髪入れず描写されるとガナリ漫才の同じツッコミが連続した時のようの白ける。
四作目が一番すっきりした。

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2023年12月30日

Posted by ブクログ

たまに訪れるホラー読みたい病が発病したので前から気になっていたこちらを拝読。
結果、あまり怖くありませんでしたが、昔祖母から御伽噺を聞いていた時のようなノスタルジックな感覚にはなれたので違った楽しみ方をしました。
私の親戚が岡山だった事もあり、よく遊びに行っていたのでこのお話の舞台も親近感が湧きました。思い起こせば従妹の家もかなり田舎だったので、確かにこんな不思議な事が起こりそうな空気感ではありました。

短編集なのでまたそれぞれに感想を書いてみたいと思います。全体的に日清戦争前後辺りのお話のようなのでそれを踏まえてお付き合い頂ければ幸いです。

【ぼっけえ、きょうてえ】
最初なんだこのタイトル?!と首を捻りましたが岡山弁で「とても、怖い」と言う意味らしく、遊郭に春を買いに来た客に遊女が自身の怖い身の上話をする、と言うお話。
当時はよくある話の食いぶちを減らす為と金を稼がせる為に売られて来た彼女ですが、それにしても生い立ちが壮絶すぎて怖い通り越して悲しくなりました。
岡山弁で語られるので信憑性も増してきて、思わず親戚に忌み地じゃないのか、そこ大丈夫?!と電話しそうになりました。(迷惑)
水子が出てくると怖いと言うより悲しさが溢れますね。自分がこの客だとしたら最後の遊女の言葉になんて返すかなあ…「だが、断る!!」しかないなあ…

【密告函】
個人的に一番好きなお話でした。
献身的な妻を裏切って怪しい祈祷師の女と不貞を働く男の話なので、これを好きだと公言すると私の人格まで疑われそうですがホラーとしては一番楽しめました。
伝染病が蔓延して多くの死者を出している岡山県某市。
まだ医療も発達していない時代なので当然物凄い勢いで蔓延していきます。例に洩れず差別も横行するので、市役所に感染した人を無記名で投函する密告函が設置されます。これを主人公の不貞男、弘三が調査する役目を担うのです。
嫌でした、この仕事。伝染病以前のお話の蠅がたかっている強烈な家に彼が出向いた時は食べていたポテチをそっと皿に戻しました(読書中のおやつが一番おいしいです)
その流れで怪しい祈祷師の美女と出会ってしまうのですが、この祈祷師の力なの弘三は怪奇現象に悩まされます。
これがもし祈祷に使われる怪しい煙のせいだとしたらまた違った方向で怖いのですが、本当に怖いのはダークホース、弘三の妻のトミ。
どんどん弘三に対しての地味な嫌がらせがエスカレートしていって遂に…
ラストシーン、良かったなあ。映画でこの終わり方ならそれはもう震えて映画館を後に出来ます。

【あまぞわい】
今度は不貞の女が登場します。皆どんだけ浮気すんねんというツッコミも入れたくなりますが、こちらはちゃんとした訳ありです。
元遊女(作中では酌婦)のユミが漁村の漁師の錦蔵に身受けされて漁村に嫁いで来るのですが、漁師の妻も中々ハードな職業なので当然ユミは馴染めず村八分になってしまいます。
そのユミを見て錦蔵がユミに暴力を奮うようになってしまうのです。DV>不貞だよね、とユミが思ったかどうかは定かではありませんが、これまた漁村では浮いている村一番の金持ち、網元の息子の恵二郎と良い仲になってしまうのに時間はかかりませんでした。
結局バレて最後にはこの世のものではない『あまぞわい』に恐ろしい目に合わされてしまうのですが、このあまぞわいは錦蔵が聞いていた伝承とユミが聞いていた伝承が微妙に異なります。要は海で亡くなった海女さんのお化けです。
全然怖くなさそうな書き方をしましたが、実際はもっとおどろおどろしい情念がこもったスタンド攻撃をして来ますので非常にやっかいです。
これも怖いと言うよりは悲しかったなあ。皆思うように幸せになれたら良いのに…

【依って件の如し】
タイトルかっこよすぎだろ!と思って読み始めたらこれまた悲しい話でした。
『くだん』とは頭が牛で体が人間のまあ化け物のようなものの事らしいのですが、これまた貧困にあえぐ兄妹が必死に生きている所からお話が始まります。
妹のシズの母は亡くなっていますが、美人でしたが狐憑きのような奇妙な行動を繰り返した為に、村で公然と行われていた夜這いの対象にもなりませんでした。(津山三十人殺しでもこの件が問題になっていましたが、凄い風習ですね)
そのせいでシズと兄の利吉も村八分になってしまい、利吉が必死にシズの食い扶持を稼いでいます。
シズは少し知恵遅れな所があるのですが、覚えている母の面影は何故か真っ黒な牛の頭をした女の姿なのです。これらがとんでもないラストへの伏線です。
このお話は途中までは不気味な空気を纏った悲しいお話だったのですが、最後「嘘だろ?!」と小さく叫ぶ位の強烈なお話でした。
兄ちゃん…そりゃあないぜ!!!

ジョジョ風味満載でお送りしましたが、総括としては切なくておどろおどろしい御伽噺、と言った感じでした。
間違ってもお子様には聞かせられませんが。

そして岡山の恐怖は続きます。
狙った訳ではないのに、この後名探偵のはらわたを拝読し私は再びこの恐怖の地へ足を踏み入れる事となるのです。(東京に続いて失礼すぎる)

to be continued

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2023年10月14日

Posted by ブクログ

登録しているとばかり思っていたけど、
登録してなかったのか、これ。

…と、いう事で再読。

何年ぶりだろう、TwitterのTLに甲斐荘楠音の絵が流れてきたのをきっかけに、夏だし再読するか!と本棚から出してきた。

話のスジをほとんど忘れていたけど、
これって今ならイヤミスとも評されそうな作品。
表題の「ぼっけえ、きょうてぇ」もだけど、他の3作品も本当に極上のイヤミスだと思った。

どの作品も明治時代の岡山、北の方の貧しい農村だったり、あるいはあけっぴろげながらも排他的な漁村が舞台で、全編で岡山弁がとても効果的に使われている。

「ぼっけえきょうてぇ」のみ、遊女の独り語りで話は進行するんだが、これについては本作もさることながら文庫本の解説が素晴らしくて、気を抜けばそのままコピペしてしまいそうなほど。
…さすがの京極夏彦先生だわ。

語られる内容は、最初からわりとハードなんだが、途中からもうひとつギアが入ったようにさらに不穏で大変しんどい展開になっていく。
淡々と独り語りするそのおぞましい物語を聞かされている聞き手…、遊郭の客に、読者が思わず同一感を得てしまう構成になっているんだけど、そうなった後のラストが秀逸。
これは確かにタイトルを思わず口にしたくなるな。

表題以外の3作品もそれぞれが恐ろしさや陰惨さに際立っていて、読み終えた後すごくイヤな気分になる。
なんと言うか全編通してこの時代の、女性であることの業が特濃に漂っていて、それを感じさせる表現力が半端ないと思った。
密告箱のラストは、この作品だったことさえ忘れていたけど、食中毒の季節になると普通にうっすら思い出したりしてたから、イヤな印象を与えるインパクトが物凄いんだと思う。

メンタルがわりと元気な時に、お腹の底からやってくる、いやぁなザワザワ感を楽しむにはうってつけの作品です。

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2023年07月18日

Posted by ブクログ

本作は言い伝えが強く伝えられている土地を舞台とした部落ホラー(?)である。言い伝えや登場人物の生い立ちが異なる4つの物語で構成されている。

※以下ネタバレ注意※

特に好きだったのは「密告箱」でした。平穏な暮らしに満足ができない男が破滅的な女と出会い、堕ちてゆく。そして、しまいには連れ添っていた女の怨念自体が密告箱となって男を陥れる様は男が根本的に悪いのだが、可哀想でした。他の物語はあまり響かなかったので星3つです。

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2023年05月16日

Posted by ブクログ

4篇の短編集。やっぱり好きなこの世界。
題名の意は岡山地方の方言で「とても、怖い」

物の怪よりも人間が1番きょうてえ。
短いので入りやすい作品かと思います✍

「でえれえ、やっちもねえ」を読みたいなと思ったらまず今作を読み返したくなって…
1冊丸ごと岡山弁で綴られているので分からない言葉も多いのに
サクサク読める、というか止まらない面白さの「ぼっけえ、きょうてえ」

怪奇的な怖さではなく人間の業の怖さのお話。
最後まで読んで「コワッ…」人間ちゃ怖い…。
タイトルどストレートにとても怖いって付けるって
なっかなかのハイセンス。

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2023年05月13日

購入済み

そっか、怖い話だと…

怖い話だとこういう表現も出てきますよね、そりゃ。
1話目の途中で断念しました…。
この手の表現は苦手なのですが、別の作品の怖い話を見た時にも出てきたので和ホラーと言えばのような所はあるのでしょう。

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2022年12月19日

Posted by ブクログ

人間の怖さをこれでもかというくらい煮詰めたような作品。
何番目か忘れたけれどコレラの話は背筋が凍る思いがした。
漁師の妻の話は、男女の価値観の違いが丁寧に描かれており、とても他人事とは思えずいろいろ考えさせられた。

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2022年09月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

表題の「ぼっけぇ、きょうてぇ」がとても良かった。なまぬる~い空気を感じます。江戸時代の閉鎖的な村では空気も人間も淀んでいくんだなーと思いました。ところで、僕はよい本とは心が動く本だと思います。これは良い方向にも悪い方向にもです。この本では心を気持ち悪い方向に思いっきり引っ張ってくれました!ありがとう!!

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2022年07月01日

Posted by ブクログ

明治から大正時代の陰鬱としたイメージを体現した作品だと思いました。それ以前の因習等が信じられている時代から現代の目に見える物だけが信じられる時代の間の、なんとも言えないない怖さを感じられました。あと、中国地方って東北地方とはまた違う雰囲気の怖さがあり、東北の人間としてはより一層怖かったです。

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2022年06月25日

Posted by ブクログ

前半と後半で受ける印象の違う物語。
前半は、貧しくて、痩せていて、皆愚かで、それでもなぜか寂しく美しい日本の原風景のような物がしきりに浮かぶ。
そして後半は、オチに向かって主人公も人間臭く生きていく。周りの鬼や、自分の中に棲む別の鬼のせいで、美しい無垢の世界から堕ちていく、そんな印象。

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2022年03月11日

Posted by ブクログ

最初の話が一番怖かった。どうしようもなく辛い描写が秀逸。土俗的な因習みたいな、薄気味悪い描写がほんとによい。

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2022年01月16日

Posted by ブクログ

期待してただけに期待外れでした。怖くはない。
しかし思わず読ませる文章というか、作者の筆力が凄い。
ラストの話は少しゾッとする内容でお気に入りです

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2022年01月25日

Posted by ブクログ

まずは表紙と意味不明なタイトルからして不気味。「ぼっけえきょうてえ」は岡山弁でとっても怖いとの意味。
人間的な陰湿なジメジメとした話が中心で読んでいて怖いというより暗い気持ちに。
ホラー小説ということで自分の中でちょっと期待しすぎて読んでいたため星3つで。

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2021年12月31日

Posted by ブクログ

なんというか、貧しい人たちの恐怖体験は泣きっ面に蜂というか、ただただ悲しいばかり。

日本ホラー小説大賞受賞の表題作をはじめ全4篇収録の本書はどれも岡山県が舞台。山陰と山陽。住む場所によって文化や気質が異なるこの県を舞台に、貧しい娼婦や村八分にされた兄妹など、不幸の渦中にある人びとが、その不幸がゆえに恐怖に囚われます。どれも心の底から怖い!というのではありません。登場人物の顛末になんとも哀れで、惨めな気持ちでいっぱいになる。そんな作品でした。

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2021年10月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

もっと怖いのかな〜って思ったけどそうでもなかった
明治辺りの古い日本を舞台にしたホラーってやっぱり現代のものよりは怖くない
共感性が低いからだろうなあ

にしても、近親交配でできた子供なのにしっかりしてるなあ

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2021年09月30日

Posted by ブクログ

何かジャケットの女の人と、タイトルに惹かれて…
「ぼっけぇ、きょうてぇ」って、めっちゃ怖いって意味なんや。
4編の短編やけど、怖いって言っても、お化けとか、心霊とか言うんと違って、人の狂気とか、残酷なとことかが怖い(−_−;)
時代も明治とかの農村、とか遊郭、それも貧困半端ない。
男尊女卑、差別とか、酷い!
そんなとこにおったら、狂気の一つや二つあるやろ!って思う。
どこも逃げ場ナシ!何か希望も何もない…
う〜ん。しんどい…
こんな時代とかあったんかな?と思いつつ。
精神的に疲れた〜ハァ…(_ _).。o○

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2021年09月24日

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