岩井志麻子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
昭和の初め、第二次大戦の少し前。岡山の山奥に閉じ込められた集落。深い森は呪われており、入るとろくでもないことが起きると信じられ、村民は村の中で近親婚を繰り返す。そんな中、両親に先立たれ、自らも肺病に侵された辰男は、村人から病人と疎まれていた…。
夏の角川ホラー祭。もう手持ちが殆どないけど、ワンシーズンはいけるかな。ハインラインも読むよ。
短編集かなと思ったら、章ごとに切れているだけで、村の異常さや村民の異常さを視点を変えてネチネチと描かれる。ホラーではないのだが、それほど最初の章のインパクトは大きい。
その後も同様ではあるものの、この人の一部の作風に感じる、読んでも読んでも霧の中といったような、世界の広がらなさ、透明度の低い文字を追うことでやっとという世界が広がっていく。とにかく、会話や会話が終わった途端に誰やったっけ?という固有名詞が乱発されるため、それなりに把握するまでに、半分くらいを要する。
半分くらいまで来たところで、それなりに霧が晴れ始めるとともに、なぜホラー文庫なのか、例の話かと気がつくわけである(買う前にあらすじ読みませんねん)。
岡山弁は知っているので抵抗はないものの、「だめだ、おえん」など、わざわざ標準語を混ぜるサービス精神が文章の勢いを殺しているように感じる。
ホラー的な部分はほんのちょっとなのか、それとも全体なのか、なかなか判断に苦しむ作品であるが、変にホラー文庫と構えたレーベルではなく、一般のレーベルから出していい作品である。
とにかく、切れが悪いな。言葉を多少改善したリマスター版が出たら☆4はいけると思う。 -
購入済み
いまどき…
岡山の古き慣習を現代に伝承。
いくらなんでも今時これは無しでしょう。
個人的にはこのような短編小説を期待しており楽しませていただきましたが抜けませんでした。
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Posted by ブクログ
ネタバレ文庫書き下ろしの10短編。
タイトルからも分かるように「今昔物語」からインスパイアされた作品だが翻案ではない。あまりに短編で、深みが足りないが、面白かったのは、霊能力者が未解決の暴行殺人事件の現場で死者の声を聴くと、実は犯人の一人だった自分の声も聞いてしまう最後の話。
ほかに、母親が昔殺された理由が今の団地の売春組織から分かった話。売れっ子歌手と結婚するため、邪魔者を次々殺し、幽霊が出ても平気な女の話。外国でチンピラを殺して、そのまま帰国した男の妻が産んだ子に、チンピラの入れ墨と同じ痣があった話。
ホラー漫画家の姉が殺され、兄が失踪し、兄を外国で見かけた知人が追って開けたドアの向こうは姉が死んだ部屋だった話。落ちぶれた大女優が暴露本を出したが、ゴーストライターのストーカーになり、ライターの家で妻の死体を見つけてしまう話。捨てた女の家に暫くぶりでいって泊まったら、翌朝女はすでに白骨化していた話。
40年前に女子中学生を殺したことを占い師に話したら、実は占い師は妻で殺した時にいたもう一人の中学生だった話。
盗作疑惑の作家に昔アイデアを盗まれ、嫌がらせまで受けたという「被害妄想」の女性の話はよく分からなかった。 -
Posted by ブクログ
津山三十人殺しの都井睦雄については、横溝正史「八つ墓村」に影響を受けて取材した島田荘司「龍臥亭事件」で親しんだ。(wikiで山岸凉子「負の暗示」も思い出した))
猟奇、狂気、因習、といったおどろおどろしさを前者が協調しているのに対し、
後者は、夜這いの風習から阻害された個人の内面に踏み込んで描いていた。
本書はその折衷。
さらには周囲の人物の群像劇を通じて、彼が犯行に至る殺意の高まりが描かれる。
一歩先に出ているのは、個人の内面というよりは、村のトポス、森の持つ磁場、から集団の殺気が醸成され、それをひとりの男が実現したという構図になっているところ。
特筆すべきは辰男に共感していると言ってもいい人間が複数いる、ということだ。
敷衍すれば全員が辰男になってもおかしくない、そんな場所がある、ということ。