乙一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本作を読んで心の奥にじわりと染み込むような孤独を感じた。
登場人物たちの内面は痛々しいほどに繊細で、人と相容れないことへの恐怖や孤独感、
そしてそれに伴う葛藤を的確に哀しく書かれている。
特に印象に残ったのは、「見えなくてもいい世界」と「見えることの有り難さ」という対比。
視覚障がいを抱えるミチルにとって、外の世界は自分を傷つけるものに満ちており、
背を向けて生きるしかないことが恐ろしい。
そこには、見える者と見えない者の世界の距離感に作品自体の深さを感じた。
奇妙な関わり方から始まった二人が、それぞれ孤独を抱えながらも、
互いの存在によって少しずつ変わっていく。
人と関わることは恐ろしく -
Posted by ブクログ
負荷をかけられているような感覚で、
いわゆる後味の悪さとは少し違って、作品に浸る間ずっと息苦しさや重さを抱え込むような読感が続く。
「アオ」という存在をどう捉えるか、それは救いなのか呪い、はたまた怨恨の権化にも感じられる。読み手によって解釈が大きく揺れる余白があった。
また、担任によるいじめの描写には強烈な生々しさを感じ、最初は反発心を抱くものの、それがやがて諦めへと変わり、最後には「これが真っ当なのだ」と思い込んでしまう。被害者の感情の移ろいが恐ろしくリアルで、ただのフィクションとして片付けられない重苦しさがある。
「人は理不尽にどう折り合いをつけるのか」という問いを突きつける作品だった