行成薫のレビュー一覧
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ネタバレ初読みの作者さんの作品。
粗筋と題名から映画に関係して、若者のドッキリを題材とした明るい青春物と思いきや、良い意味で大いに裏切られました。
プロポーズ大作戦と、美女に接近していく展開が長年温められていた展開に繋がるとは!
破滅的なマコトの最期があの映画のセリフと同じだったときの衝撃は凄かったです。あのシーンが思い出されしばらく読む手が止まってしまいました。
ヨッチが何となく登場しなくなってからは展開が想像できるところはありましたが、男二人が普通ではない世界で思いを募らせる生きて行くのは、悲しいながらも3人の強い絆を感じました。
ハッピーエンドとは言い切れないですが、残されたキダちゃんが納得し -
Posted by ブクログ
これはもうプロレス好きとしては満点つけざるを得ない小説だと思う。試合場面の迫力、技の詳細や流れなど本当の試合が目の前で繰り広げられているようだ。プロレスファンは世間的には肩身が狭い。
今でこそプ女子などが認められて一般的なメディアでも取り上げられて来たが、私が子供の頃はプロレス好きというと好奇の目で見られた部分も確かにあった。この小説はプロレスに偏見を持っている人にこそ読んでもらいたいものだ。登場人物の小林虎太郎の母(大のプロレス嫌い)が虎太郎に言うプロレスに対する偏見は、世のプロレス嫌いの人を代弁しているのだろう。虎太郎がそれに対して言う言葉はプロレス好きが世間に対して言うべき答えともなって -
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ネタバレかなり面白かったし、読後感もさわやか。だが、物語の作り方は「名もなき世界のエンドロール」と同じように色んな時間軸を行ったり来たりして少しずつ真相を読者に伝えていく。この作風が続くと、この作風しか書けないのか勘ぐってしまう。面白かったけど。。。
ミツルと成瀬と海斗がどういう経緯で今対峙することになっているのかが、次第に明かされていき、終盤はページをめくる手が止まらなかった。海斗は成瀬の策略にハマらないで欲しかったけど、成瀬は既に王様で、それに比べると海斗は普通の人ということだから、仕方ないのか。
友達のために命をかけるミツルの生き様は真似できないけど憧れる。青春時代を思い出す良い話だった。 -
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それぞれ季節の中で、料理を作る人に焦点を当てたお話たちでした。間に挟まるおむすび屋さんの話も人と人を繋ぐようなお話で、どれも熱く、心が温かくなる。
たとえ料理を作る動機が始めは利己的なことだったとしても、食べてくれる誰かを思うことで作り手の心に温かなものが宿っていく様は、とてもグッときました。
とくに、『おむすび交響曲』内で度々登場する「おむすびは人と人とを結ぶもの」と言う言葉が心に響きました。
おむすびは日本人なら誰でも馴染みのある食べ物で、簡単に作れるようで加減が難しく、シンプルなのに奥深い食べ物だと思います。
それが作中でも登場人物たちを繋いでいき、どんどん「美味しい」という幸せの輪を広 -
Posted by ブクログ
油の匂いにまみれた暖簾をくぐると、
そこには労働の汗が立ち昇っている。
飲食店は、作家にとって
市井の人々を味わい深く描く舞台装置だ。
皿の縁に残るソースの跡まで、
人生の伏線に見えてくることがある。
それは、意味を欲しがる人間の癖。
ちょっと面倒くさくて、でも愛らしい。
誰もが気づかぬまま、
その癖をそっと育ててきたのだ。
社会の片隅で、自分自身の物語を
静かに煮詰めながら。
意味なんて、あとから付いてくる。
作家とは、その「あとから」を
少しだけ先回りして拾う人たちだ。
そして読者は、その一杯の描写に
自分の物語の匂いを感じてしまう。 -
Posted by ブクログ
ふわっとろの金白が、狐色のカツを
やさしく包み込む。
揚げたての衣は、サクッ…じゅわっ…
出汁を吸って、旨みの泉へと沈んでいく。
小ネギがパラパラッと彩りを添え、
湯気とともに立ち昇る三つ葉の香り。
ご飯のひと粒ひと粒に染みる幸せ──
あら、今日はカツ丼の気分じゃない?
うーん、じゃあ、やりなおし。
玉ねぎが飴色にとろけるころ、
鍋の中では静かに魔法がはじまる。
トマトの酸味と赤ワインの深みが出逢い、
牛肉は、ほろり…と崩れる柔らかさに。
黄金に輝くルゥが器に注がれる瞬間、
花束がほどけるように、
スパイスの芳香が鼻先に咲きこぼれる──
え?カレーでもない?
うーーーーん、なら