行成薫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『パパたちの肖像』は、父親を主人公にした短編集です。育児の喜びや苦労を描いた作品集ではありますが、読んでいて強く感じたのは、「家族の幸せの形は様々、一般論では語れない」ということでした。ノウハウでは語り尽くせない生々しさに心揺さぶられます。
特に印象に残ったのは「息子の進学」です。
父親は、豊かな暮らしや便利な都会での生活に価値を見出してきました。一方で息子は、収入や効率よりも、自分が本当にやりたい研究の道を選ぼうとします。どちらが正しいという話ではありません。むしろ、親子であっても見ている世界が違うこと、そして父親が息子の価値観を理解しようとする姿に心を動かされました。
「髪を結ぶ」も忘れられません。不器用な父親が子育てに悪戦苦闘し、自分は父親に向いていないのではないかと悩みます。しかし子どもは、完璧な父親ではなく、一生懸命向き合ってくれる父親をちゃんと見ている。長所だけでなく弱さも含めて受け入れていることに心打たれます。
そして「そういう家族がそこにある」。共働きから専業主婦という選択をした家族が描かれますが、本作が教えてくれるのは「一般論では人の幸せは測れない」ということです。外から見ればリスクに見える選択でも、その家族にはその家族なりの理由と幸せがあります。
読んでいて何度も感じたのは、家族であっても相手の気持ちは完全にはわからないということです。それでも理解しようとすることはできる。価値観の違いに戸惑いながらも、対話を重ねていく姿がとても温かく描かれています。
パパの育児小説の目線から、家族という小さな共同体の中で、人がどう成長し、どう相手を受け入れていくかを描いた物語集でした。
子育て中の人はもちろん、親との関係や夫婦関係について考えるすべての人におすすめしたい一冊です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレドッキリスト、ビビリスト、プロポーズ大作戦、交際一年のモデルの彼女……。
単純な恋愛物語だと思い読み進めるが、違和感がずっとまとわりつく。正直に言ってしまうと、その違和感とオチは序盤から予想できてしまう。が、終盤に近付くにつれて鮮明になっていく様が鳥肌ものだった。
10年以上をかけた長いドッキリは、普通の人間では考えつかないし実行なんかできない。しかし、彼らはどこかが欠け、欠落していたから仕掛けることができた。
読後、映画を観た。キャストに申し分はなかったが、小説内にある見せ場が大幅カットされていたことが少し残念ではある。彼らはもっと欠けていて、自分勝手な生き方をしている。この文量を100分に収めたのだから当然ではあるのだが。だけど映画ならではの追加要素があり、観て損はない。主題歌の「ゆるる」もぴったりだった。
映画視聴済の方も、細かな経緯や想いが大量に補完されているため、ぜひ読んでほしい作品でした。 -
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ネタバレチャーハン!兄弟!伝説!奇跡!最強!
チャーハン好きだし、おもしろおかしく、そして楽しく読めるかなって思って手に取った。
ぶっ飛んだ兄ちゃんに、斜に構えた弟。
おもしろかったし楽しく読めた。でも、途中泣かされた。
どポンコツから周りの人達の助けを得て伝説の幕開けまで漕ぎつけたハッピーエンドのフィクションだ。
ぶっ飛んだ兄ちゃんにも、斜に構えた弟にも、2人を取り巻く人達にも、読者みんなに心当たりがあり、またそうありたいと思うところがあるんだと思う。
兄ちゃんのようにまっすぐでありたいし、弟のように真面目でありたい。周りの人達のように、力になってあげたいと心から思い、そう動ける瞬間を体験したい。他人にはわからない誰に言い回るでもない積み重ねがあり、想いがある。
通勤電車の中で涙を堪えることになるとは思わなかった。
作ってくれる人を目当てに行くお店っていいな。
チャーハン食べたい。 -
Posted by ブクログ
かつ丼・カレー・ラーメン・パン…飲食店を営む人たちの心温まるエピソードがゆるりと繋がる短編集。前作『本日のメニューは。』に登場したお店や働く人のその後もちらりと覗える。
普段飲食店で何気なく注文して食べているメニューの裏にもきっと数々の試行錯誤があって。できたての料理を美味しく食べて欲しいという作る側の思いにハッとなった。忙しいとつい機械的に口に運んでしまうけど、一食一食を大切に食べないとダメだなぁと。
前作同様、登場人物がみんな優しくてあたたかくて、ゆるい繋がりだと思われたストーリーがラストで素敵な繋がりに変わる瞬間に感動。タイトルが活きる素晴らしい構成。
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Posted by ブクログ
年始に流行り病にかかって以降、味覚と嗅覚障害に悩まされ食欲不振に陥っていた中、食事を楽しむリハビリにと思って手に取った一冊。
おいしい!を前面に押し出す食事本ではなく、食べることの手前にある気持ちと作り手の熱い思いの交差するあたたかいお話ばかり。無理に感動させにくる感じではなく、それでも生活は続いていく…っていう温度感がすごくやさしくて良かった。
緩やかに登場人物がクロスする5つの連作短編の中で、特に『おむすび狂詩曲』が好きだった。おにぎり ではなく おむすび なのがポイント。
その単語だけで手で結ばれた丸いフォルムと湯気の残る温度感が脳裏に浮かぶし、ふっくらしたお米が頭の中でほどける感じが再生される。
味や食感をうまく感じられない中で読むのは思い出せるのに実感できないのがもどかしくもあったけど、味覚と食欲が戻ったら一番に誰かが握ってくれたおむすびが食べたいなぁと思えた。
料理の作り手にはそれぞれの拘りがあって、食材の質や見た目、味もコストももちろん大事で。でもそれだけが料理の魅力ではないと気付かせてくれた一冊。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ・エンドロールというと、黒い画面に白いフォントで出演者の名前がつらつらと流れてくるのに寂しい感じがする。それは、これまで華やかだった映画の世界から一転、単調的に流れてくるエンドロールの対比からくるものなのか。この作品は、フィルムカメラを通して物語を読んでいる、そんな感じがした。だから、全体的に乾燥してるような、寂しい感じがしたのかもしれない。
・書評にこの作品はハッピーエンドなのか、バッドエンドなのか、どちらとも言い切れないとあった。確かにそうだと思ったが、プロポーズ大作戦が成功したこと、マコトは天国でヨッチに指輪を渡せたことを考えるとハッピーエンドなのかと、、。