行成薫のレビュー一覧
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春「YOLO」、夏「夏の鉄板前は地獄」、秋「サンクス・ギビング」、冬「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」の季節ごとの4編と、その間をつなぐおむすび屋さんの掌編からなる、ごはんに因んだ短編集。行成薫のごはん小説として3作品目らしいのだが、いきなり本作から読んでしまった。しかも、今の季節感からいって春って気分じゃないなぁと思って秋の話、「サンクス・ギビング」から読み始めてしまった。フランスのシェフ・クロエの手がけるオーベルジュの在り方と地方の人々との関わり合い方がとても良い。いい話だなぁと読み進めて、「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」の重さにびっくりした。小さな漁港で生きる冬美という女性の20代
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ネタバレかなり面白かったし、読後感もさわやか。だが、物語の作り方は「名もなき世界のエンドロール」と同じように色んな時間軸を行ったり来たりして少しずつ真相を読者に伝えていく。この作風が続くと、この作風しか書けないのか勘ぐってしまう。面白かったけど。。。
ミツルと成瀬と海斗がどういう経緯で今対峙することになっているのかが、次第に明かされていき、終盤はページをめくる手が止まらなかった。海斗は成瀬の策略にハマらないで欲しかったけど、成瀬は既に王様で、それに比べると海斗は普通の人ということだから、仕方ないのか。
友達のために命をかけるミツルの生き様は真似できないけど憧れる。青春時代を思い出す良い話だった。 -
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油の匂いにまみれた暖簾をくぐると、
そこには労働の汗が立ち昇っている。
飲食店は、作家にとって
市井の人々を味わい深く描く舞台装置だ。
皿の縁に残るソースの跡まで、
人生の伏線に見えてくることがある。
それは、意味を欲しがる人間の癖。
ちょっと面倒くさくて、でも愛らしい。
誰もが気づかぬまま、
その癖をそっと育ててきたのだ。
社会の片隅で、自分自身の物語を
静かに煮詰めながら。
意味なんて、あとから付いてくる。
作家とは、その「あとから」を
少しだけ先回りして拾う人たちだ。
そして読者は、その一杯の描写に
自分の物語の匂いを感じてしまう。 -
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ふわっとろの金白が、狐色のカツを
やさしく包み込む。
揚げたての衣は、サクッ…じゅわっ…
出汁を吸って、旨みの泉へと沈んでいく。
小ネギがパラパラッと彩りを添え、
湯気とともに立ち昇る三つ葉の香り。
ご飯のひと粒ひと粒に染みる幸せ──
あら、今日はカツ丼の気分じゃない?
うーん、じゃあ、やりなおし。
玉ねぎが飴色にとろけるころ、
鍋の中では静かに魔法がはじまる。
トマトの酸味と赤ワインの深みが出逢い、
牛肉は、ほろり…と崩れる柔らかさに。
黄金に輝くルゥが器に注がれる瞬間、
花束がほどけるように、
スパイスの芳香が鼻先に咲きこぼれる──
え?カレーでもない?
うーーーーん、なら -
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忙しい母が作ってくれる
お弁当の中身はいつも同じで、
内心、「またこれ?」って
うんざりしてた高校の頃。
友だちのお弁当は彩りが綺麗で
可愛くていいなって思ってた。
湯気に包まれて台所に立つ母の背中。
無骨で大きかった、あのお弁当箱。
年頃の女の子らしくない
ぎっしり詰められた白いご飯。
今ならあの重みが、
お腹をすかせないようにという
母の愛だったんだとわかる。
メンチカツ。卵焼き。
あとは昨夜の残りものが少し。
読みながら思い出して、
ふと、また食べたいなって思ったら
思いがけず目の奥が熱くなった。
今では、私が娘に卵焼きを焼く日々。
いつか、娘も思うのかしら。
「また食 -
Posted by ブクログ
ネタバレ料理を作る人と食べる人、それぞれのドラマがあつて読み終わったあとはおいしいご飯を食べられることいつも自分を支えてくれる人へ感謝の気持ちを感じさせられた。
特にマイ・ハート・ウィル・ゴー・オンという章は、亡き夫が好きだった豚汁が巡り巡って誰かを救っている話で、豚汁を作った奥さんはかなり困難な状況だったけど、豚汁を作って自分を奮い立たせ、またそれが誰かを救っているという繋がりに感動した。
他の章でもおいしいそうな食事が出てきて、どれも食べたくなってくるお話ばかりだった。食べることは生きること、というように人生と食事は密接に関わっていると思う。ただ栄養をとるだけではなく、時に食事は自分自身を支え