支倉凍砂のレビュー一覧
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「ホロとロレンスのその後」の話も4冊目。
いろいろありましたが、ホロとロレンスもようやくミューリとコル坊を追って旅立ちました。
でも、そろそろお互い、親離れ・子離れをしたほうがいいんじゃないかと思うんです。
シリーズは、ホロ・ロレンス組の『狼と「香辛料」Spring Log』と、ミューリ・コル坊組の『狼と「羊皮紙」』に別れて、再開後は交互に、というか、「香辛料」が出て、あまり間をおかずに「羊皮紙」が出る、という形で、どちらもこれまで4冊ずつ刊行されています。
最初は「香辛料」側に未刊行の(短編としてどこかに掲載されたものの、文庫にはなっていなかった)在庫がそこそこあり、また「羊皮紙」もある程度書きためてからスタートしたからでしょう、順調な刊行ペースでしたが、在庫が切れてからは通常ペース(というか、スローペース。著者あとがきによると「狼と香辛料VR」を作っていたからだそうですが)にペースダウンしています。
ところで、「香辛料」+「羊皮紙」で通常ペースということは、「羊皮紙」単独ではちょっと間延びした感じになってしまっているのです。
もう一つ言えば「香辛料」は大団円の後のお話です。ホロの魅力は変わらないとしても、結婚して子供もいる2人の間にラブコメ要素はそんなにたくさんは持ち込めません。
「こんなちょっとしたエピソードがあって2人の仲がいっそう深まった」ってお話ばかりではもうパワー不足です。大団円前のシリーズでもそんな中休み的な巻は4~5巻に1冊だったのに、今はそんな巻ばかり4巻連続してしまっています。そろそろ「羊皮紙」に合流して「羊皮紙」の中の一章としてホロ・ロレンス組に触れるか、各地で事件に遭遇するか、そんな展開を切望します。
なお、今回「狼と旅の卵」で初めてミューリ・コルの尻拭いで事件に遭遇して解決する展開がありました。デリバディブも引っ張り出して、ようやく往年の「狼と香辛料」の香りを感じることができました。
今後、さらに力が入った長編を読んでみたいなあ。
以下、各話毎に一言。
「狼と湯煙の向こう」
残される側のセリム視点のお話。
ホロとロレンスがお互いに相手に旅を続けさせるための理由作りをしているあたり、オー・ヘンリーの「賢者の贈り物」を思い出しました。
ホロ・ロレンス組の旅も半年程度の物見遊山で終わらせるつもりはなさそうです。期待してます。
馬氏や鹿氏には名前をつけてキャラ付けをするつもりが毛頭なさそうなので、主人夫婦が留守中の「狼と香辛料亭」が語られることはなさそうです。
「狼と秋色の笑顔」
道中、道を間違えて迷い込んだ森の中で蜂の巣取りをする話。文字どおりお荷物だった硫黄の新たな使い道を発明するおまけつき。
…ではあるものの、上に書いたとおり、こういったショートストーリーにはやや食傷気味です。
「狼と森の色」
ホロに日記をつけさせるという着想は、Spring Logというサブタイトルの伏線を回収するとともに、シリーズ全体が実はホロの日記だったかもしれないというメタフィクション的な視点をシリーズ全体に持ち込んでいて、すげぇと思いました。そのホロが日記を書きすぎてインクが足りなくなりました、という話。
ロレンスの機転でピンチをチャンスに変えるといういつものストーリー。
ただ、ホロが日記を(まめに)つけているって設定は自分的にちょっと大事だと思うので、あまり小ネタ的には使って欲しくなかったり。
「狼と旅の卵」
先行したミューリ・コルが立てた波を追うホロ・ロレンス組が被った話。今後も「香辛料」と「羊皮紙」が別々に刊行されるんだったらこういう感じの話が増えてくるのかなあ。
これまでと比べ、日記だけでなく絵姿も描いてもらいたいホロの欲求とか、劣化コピーが出てくるほどのコルの活躍とか、ようやく話が転がり始めた感じです。
今はようやく先行したミューリ・コル組を追いかけ始めたばかりで間隔が開いていますが、大きな一つの事件を二組がそれぞれの視点とそれぞれの技能を活かして解決に奔走し、ラストでお互いがお互いの行動を知ってびっくりみたいな話も期待しておきます。
「狼ともうひとつの誕生日」
10歳になったミューリがコルのことをはっきりと意識したときのお話。
似たような話をいくらでも量産できる作者の手腕には感心しますが、でもそろそろもっとずっしり腹にたまるお話を読みたいのです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ舞台はウィンフィール王国の大都市ラウズボーン。
教会(腐敗してるけど、万国共通の権威であり商人としてはメリットもある)・王国(商人が信頼を寄せるにはまだまだ頼りない。国際法も主権国家体制もありはしない)徴税人(商売の邪魔だけど、教会の腐敗を糺す存在かも、との期待もある)、これらをうまく操り利益を貪ろうとする商人が物語を引っ掻き回し、コルたちは翻弄される。
いちいち言うまでもないが、腐敗した教会の〇〇をぶっ殺せ的な考えは広い視野で見たらまあそうあってほしいという物語であって、結局は長い歴史の中で成立した、ベストではないにせよ成り立っている制度だ。qwertyキーボードのような。
そこに正しいキリスト教(キリスト教とは名言されていないが、宗教改革とか西方の新大陸とか、16世紀をイメージしているのは明らかだろう。ニーチェの引用とかあるし、あくまでファンタジーだけど)のあり方とは?と一石を投じ(てしまっ)たコル。それは教義に沿ったあり方を求めれば清いことなんだろうけど、教義に沿ったあり方が人間にとってタイヘンだから解釈を変更するなり抜け道作るなりして折り合いをつけてゆく、というのが従来の後ろ向きかつ現実的な解決手段だった。聖職者だってエッチなことはしたいわけで。
そういった意味じゃ教義と人間の欲望が割とマッチしてる資本主義ってすごいなって思った。この物語では商人が滅茶苦茶強いけど、実際の16世紀には資本主義なんて言葉すらないわけで、実際のところ商人の力というのはどんなもんだったんだろう。経済史として調べてみるのも面白いかも(そもそもこの辺りの時代は知識がないし)。
現実の世界史においては、宗教改革はここから17世紀まで血みどろの宗教戦争を巻き起こす。本作がライトノベルである以上、虐殺事件なんてそうは描かないだろうし、ウィンフィール王国が地理的にイギリスっぽいこと考えたら(国名はオーストリアっぽいけど)うまいこと平和裏にウィンフィール国教会ができあがったりして、しかもそれが商人も各国もうまくやっていける教義になって、良い感じに大陸側にも伝播していくみたいな超ハッピーエンドもあったりするのかな?なんて思ったんだけど、そんな歴史的大風呂敷を畳めるのはそれこそ神くらいだろう。
全く関係ないが、3巻と4巻冒頭に出てきた羊の化身イレニア・ジゼルは、おっとり系ゆるふわショートボブで、しかも揺るぎなき強い心があって若干年上のお姉さん的なオーラも醸し出しており、とどめに数少ない挿絵も可愛くて非の打ちどころがなかった。
西にあるという未知の大陸というのは現実でいうところのアメリカ大陸を意識しているのだろう。ラウズボーンという街の名前も、モデルは大航海時代に世界商業の中心だったリスボンだろうし。
現実においては迷える子羊がコンキスタドールとなり、捉え方によっては歴史的な文化破壊行為及び大虐殺を行った。『狼と羊皮紙』の世界では彼女の「人ならざる者たちの国をつくる」という壮大な夢がどのように紡がれるのか。コルテスやピサロのような大虐殺を行い果ては悪名高き三角貿易に手を染めるイレニアも見たいし、平和な国を築き上げるイレニアも見たい。外伝か何かで読んでみたいなと思った。『羊と狼皮紙』とか。……本編より展開速そうだし。
……以下は残念に思ったこと。
今回は、あんまりコルが良いところがない。というか、
「よし、こうしよう。きっとうまくいくぞ」→「薄明の枢機卿さま、現実が見えておられない」→「そんな……」という展開が10回くらい延々と繰り返され、かなり苦痛だった。物語がさして前進するでもなし。論理で詰まったと思ったら力業、からの取って付けたような狼変化シーン。
『狼と香辛料』時代でも確か4巻辺りは踊り場的な物語だったと記憶しているが、本シリーズでは1~3巻でアクセルを踏んでいるわけではない。次から面白くなると思って4巻まで読んできたが、そろそろしんどくなってきたというのが正直な感想なのだった。5巻も買うけど。 -
Posted by ブクログ
ニョッヒラに残されたホロとロレンスの日常を描く、狼と「香辛料」のほうの続編。3冊目になりました。
・ 春の「発情期」を絡めた(ケモミミものだとありがちですw)「狼と春の落とし物」
・ ミューリ出発前、異端調査官の視点で「狼と香辛料亭」の繁盛の秘密を語らせた「狼と白い猟犬」
・ 前巻、「狼と香辛料の記憶」の日々のなんということのない出来事を、ロレンスと死別した後もホロが思い出せるよう日記をつけることにした、というエピソードを受けて、逆に日々の小さな幸せを先に日記に書き、実現させるようロレンスに迫るという「狼と飴色の日常」
・ 山中で硬貨の打刻槌を持った行き倒れを見つけたホロが、自分たちの身の上を重ねて不安がる「狼と青色の夢」
・ 「狼と香辛料亭」を任せられそうな人(?)材を得て、とうとうホロとロレンスが再び旅立ちを決意する「狼と収穫の秋」
の5編。
作者も後書きに書いていますが、正直、ネタ切れ感とマンネリ感がかなり強烈です。
何と言うことの無い日常を描いた前4編は、メインのストーリーがホロとロレンスからミューリとコルの旅に移行した後の彼らを見送った側の日常を外伝的に描くだけですから、本編の無い外伝ばかりをいつまでも続けて読めるものではありません。さらに、本編側のミューリのいる・いないがよく前後するのが散漫な印象に拍車をかけているように思えます。一番活発に物語を動かしているミューリですから、ヘルプで出演させたくなるのは分かりますが、旅先からコルが送ってくる手紙を読んで一喜一憂(というか、心配ばかりでしょうが)するシーンで本編の進行を感じたいのに、ミューリが登場することで時空がゆがむwのです。
19巻のラストできれいな落ちをつけたのですから、ホロとロレンスは、後は「羊皮紙」のほうで時々登場して、主役はコルとミューリに譲ったほうがいいのかも(新シリーズが始まるってそういうことだと思うんです)…と読み進んで、最後「狼と収穫の秋」でまた旅に出ることになって、唐突さにびっくり。
一番のきっかけはニョッヒラのよその宿屋に届いたそこの息子の訃報だったのですが…ロレンスの旅に出たい気持ちがあまり募っていないように思えるのです。行商に戻りたい、各地の知り合いを訪ねたい思いは薄っすらとあるのかもしれませんが、日々の「狼と香辛料亭」の経営に忙殺されてそれどころではなさそうですし、ミューリを心配するあまりの旅立ちだったとしても、それは「羊皮紙」の2巻3巻で実際に命の危機に直面したことを知っての行動ではなく、ぼんやりとした「もしミューリの訃報が届いてしまったら…」という過保護・過干渉とも言える思い込みに過ぎず、ホロがロレンスの背中を押してやるのもこれまでのミューリとコルを信頼していた様子からかけ離れていて不自然です。
後書きによると、「羊皮紙」は「羊皮紙」で、そして「香辛料」は「香辛料」としてシリーズを続けるようです。「羊皮紙」側は3巻に至ってようやく方向性が定まり、軌道に乗ったように思えるのですが、追いかける「香辛料」側はどうなるのか、楽しみでもあり心配でもあります。
また、そこここに書いた文庫未収録の短編という貯金があったこれまでと違い、ミューリ側ホロ側それぞれ新たなストーリーが紡がれるのでしょうから、「香辛料」「羊皮紙」それぞれで見た刊行ペースは半分になると思われます。「ミューリがどうなったか読みたい!」と思ったときに、なかなか刊行されない、ちょっと間延びした感じになりそうなのも心配です。
秋ぐらいに「羊皮紙」の続編が手にできるんだろうと勝手に思っていますが…「羊皮紙」側はあんまり変化がないのか、それともニョッヒラからの便りでホロとロレンスも旅に出たことを知るのか…まあ、楽しみに待っているしかないですね。
ところで、余談ですが冒険に出た(巻き込まれた)わが子を心配して過保護な親も冒険に出る(巻き込まれる)話を自分は知っています。「ファインディング・ニモ」。
あんな感じで、ミューリ側の冒険とホロ側の冒険が交互に語られるのでしょうか。そうであるなら、ラストはミューリが人ならざるものたちを指揮して人の世の秩序の網から逃れる…ことになるのでしょうか。あんまり妄想しても仕方がありませんね。
もう一つ余談ですが、「香辛料」の表紙イラストは17巻目まではずっとホロが1人で描かれたもので統一されていましたが、再開後の18巻からは、ホロとロレンスが2人で描かれるようになりました。それだけロレンスがホロにとって欠かせない半身になったことの表現なのでしょう。さらに、「羊皮紙」のほうは同様にミューリとコルが2人で並んで描かれており、同時期に刊行された「香辛料」と「羊皮紙」はほぼ同じ構図を左右に反転させたものになっています。
この巻と「羊皮紙」の3巻もやはりそういう構図なのですが、前2組は「香辛料」が暖色系、「羊皮紙」が寒色系でまとめられていたのが、この巻では逆になっています。何か意味があるのか(特にないんだろうと思いますが)深読みしたくなってしまいます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレいつか終わりはくるけれど、とはいえ長く続く二人の生活を、様々な味付けで楽しもうとしている感じが良い。燕麦のパンも黒パンも、楽しむ方法はあるんだぞ?といった感じ。
「成就した恋ほど語るに値しないものはない」「幸福な家庭はすべて互いに似かよったものであり…」そんな言葉は間違いでなく、時として感情を揺さぶられることが楽しさであり充実であるのではないか、とすら思える。
ただ、飽きは必ずやってくるもの。このシリーズは21巻があるとすれば話が動きそうだけど、どうかな。
もちろん、ロレンスによるホロをお姫様のように扱いつつの楽しい会話の掛け合いは相変わらず面白い。ホロの言葉の裏に含まれた意味を吟味する辺りは、言葉の機微に疎い私にとっては魔法のよう。