星野智幸のレビュー一覧

  • 俺俺

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    最初の日常の一場面からまさかまさかの展開。 想像だにしないストーリーに、とにかくこの混乱を早く治めたくて、ページをめくればめくるほど更なる混沌が待ちかまえていて。 凄かったです。なんでしょう。非現実なホラーな世界なんだけど、明瞭にイメージできる世界に圧されて震えちゃいました。 ラストの意外性も良かったです。手放しでホイホイと人に勧められないのですが、是非読んで体感してみてほしいと思える強烈な一冊。 できれば前知識無しに手にとることをお勧めします。ようこそ俺俺ワールドへ。

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    2022年07月30日
  • 焔(新潮文庫)

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    超現実な物語たちだった。自分じゃないものになりたい願望?みたいなものを感じた。焔の前に最後に残った私が語る、いろんな人生の選択の結果としての星野幸智が邂逅する話とか特にそうで、『俺俺』みを感じた。現実が異化して疎外化される感じ。話す言葉や書いた文字が眼魚に食い散らされてしまったり、みんなが死んでしまっていたり。最後の相撲の話ではジェンダーレスボーダーレス、むしろ純日本人が低く見られる事態を描いていたが、それまでの話では国籍を意識して書かれているからこそヘイトっぽく聞こえるところもあってモヤモヤした。

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    2022年06月12日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    ネタバレ

    12編のアンソロジー。
    どの作品も変愛の名に相応しかった。この一冊に密度濃く詰め込まれたそれぞれの変愛。愛と一口に言っても当たり前ながら1つも同じものはない。
    その中でも特に好みだった2つについて書きたい。

    『藁の夫』
    2人の間に嫌な空気が流れる、その始まりはいつも些細なことなのだと思い出させる自然な流れだった。あんなに幸福そうだったのに、藁に火をつけることを想像させる経緯、鮮やかな紅葉にその火を連想させるところがたまらなく良かった。

    『逆毛のトメ』
    シニカルでリズムのいい言葉選びが癖になる。小説ってこんなに自由でいいんだと解放して楽しませてくれた。躊躇なく脳天にぶっ刺す様が爽快だし、愚か

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    2022年04月21日
  • 植物忌

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    短編が10.最初の「避暑する木」を読んで、意図がつかめなかったので、「あまりの種― あとがき」を読んでみると、作者の思いが何となく分かったと感じたので、最初から読み返した.植物化する人間がテーマではあるが、発想が飛んでおり、出てくる言葉も異様だ.「からしや」のコンセプトが全体にはびこっている感じだが、個々の作品自体は独立している.題名も飛んでいる.「ディア・プルーデンス」「記憶する密林」「スキン・プランツ」「ぜんまいどおし」「植物転換手術を受けることを決めた元彼女へ、思いとどまるよう説得する手紙」「ひとがたそう」「始祖ダチュラ」「踊る松」「桜源郷」「喋らん」.理解の範囲を超えた発想には驚いた.

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    2021年11月22日
  • 俺俺

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    安易にオレオレ詐欺に手を出していとも簡単に成功してしまう冒頭、道徳的に過ぎるラストはどうかと思った
    チンケなオレオレ詐欺こら人類創世、個の誕生まで読ませる

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    2021年09月08日
  • 大江健三郎賞8年の軌跡 「文学の言葉」を恢復させる

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    少し前の新聞に中村文則の「掏摸」が紹介されていた。中村さんは今や海外でも名を知られた作家だが、そのきっかけになったのが大江健三郎賞を受賞した本作が、賞の特典として翻訳されたからだ、という内容だった。
    大江健三郎賞は聞いたことがあったが、選考委員は大江健三郎さんひとりで、賞金の代わりに海外に翻訳されて紹介される、賞は八年続いて既に終了しているということも知らなかった。
    で、その賞の始めから終わりまでの受賞作の紹介とそれぞれの著者との対談を収録されているのが本作。
    なかなか手ごわい本だったがおもしろかった。
    受賞作のどれも読んだことが無いが、長島有の本は読んでみたいと思った。対談も一番楽しかった。

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    2020年07月24日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    タイトル通り変愛を集めた短編集。

    「お、おう、そんなところに」「そんなのと」「え、何この設定」とか本当にそれぞれ変な愛ばっかり笑

    吉田篤弘目当てだけど、電球交換士が出てきていたとは。

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    2020年04月16日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    「恋愛」ではなく「変愛」…変わった形の愛が描かれたアンソロジーです。
    面白かったです。
    ディストピア文学が大好きなので、「形見」が好きでした。工場で作られる動物由来の子ども、も気になりますが、主人公の子どもがもう50人くらいいるのも気になりました。色々と考えてしまいます。
    「藁の夫」「逆毛のトメ」「クエルボ」も良かったです。藁の夫を燃やす妄想をしたり。クエルボはラストは本当に名の通りにカラスになったのだろうか。。
    多和田葉子、村田沙耶香、吉田篤弘は再読でしたがやっぱり良いです。
    岸本佐知子さんのセンス好きです。単行本から、木下古栗さんの作品だけ再録されなかったようですが。
    表紙の感じに既視感が

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    2019年08月30日
  • 呪文

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    ネタバレ

    自分は役に立たない、自分はクズだという思い込みは多くの人が持っている。
    図領の意見は最初は正しい。
    ー理不尽なクレーマーに屈してはいけない。毅然として戦う。
    その軌道が少しずつ逸れていく。
    ークレーマーや人に迷惑をかける者は失格だ、クズだ。クズの使命は何か。積極的に前向きに死ぬことでこの世の中をよくすることだ。だから一人で死ぬのではなく、できるだけ多くのクズを「覚醒」させ集団自決する。クズ道とは死ぬことと見つけたり。
    新興宗教のように人々を洗脳し、自分に邪魔な者、いらない者を排除しようとしていく図領や栗木田。日本の社会は、成功できない者を努力の足りないクズとして追い詰め、居場所をなくしているの

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    2019年08月18日
  • 俺俺

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    ネタバレ

    軽いノリから意外と深いテーマへ。
    この作家の作品は初めて読みましたが、非常に洒落た作品だと思いました。
    途中の流れはこれ必要?という点もあったけど、
    思いついた自身のテーマをドヤ顔で描き切った感じが、
    非常に好感持てました。

    秀逸です。

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    2019年01月27日
  • 俺俺

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    映画をみてから興味を持って読んでみました。主人公のおれおれぶりが活字の場合、また違った勢いを伴っていて面白かったです。

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    2019年04月30日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    いくつか読んだことがある作品も収録されていましたが、今までの愛に対する見方を思いっきり揺さぶられる一冊であることは間違いなし。
    どれもこれもお勧め?
    「韋駄天どこまでも」は漢字遊びの要素なので、編者も書いているように翻訳は超絶技巧が必要だなぁ。
    単行本にしか収録されていない作品があるそうなので、単行本も読まねば。

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    2018年07月21日
  • 夜は終わらない(上)

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    星野智幸『夜は終わらない(上)』講談社文庫。

    読売文学賞受賞作にして、現代の「千夜一夜物語」。あの木嶋佳苗事件を彷彿とさせる玲緒奈を主人公にした何とも奇妙な物語。ミステリーなのか…はたまた…

    次々と男たちに寄生し、男たちの財産を巻き上げて、男たちを亡き者にしていく玲緒奈。男たちの残り火の長さを決めるための儀式は男たちが自ら語る奇妙な物語…

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    2018年02月24日
  • 俺俺

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    ありえない、と一蹴することもできる反面、いままさに、そんな現実に直面しているとも言えるのではないか。

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    2016年07月15日
  • 俺俺

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    ファーストフード店で、たまたま隣り合った男が携帯を「俺」のトレイに置き忘れていった。なんとはなしに、その携帯の持ち主になりすまして、その携帯の持ち主の親からお金の振込もしてもらい、俺俺詐欺のような話になったところで異変が起きる。金を振り込んでくれた「親」がアパートにやって来て、まるで最初から「俺」が息子だったかのように振る舞う。自分の実家に帰ると、同じ顔をした「俺」が応対に出て、この頃似たような「俺」が訪ねてきてトラブルになったという…

    「世にも奇妙な物語」風味に話が進んでいく。途中から「自分と他者の違い」「自分の中に潜む凶暴性、凶悪性」が引き出され、職場でのいじめや、多数の「俺」が互いの

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    2016年02月03日
  • 俺俺

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     出来心で詐欺を働いた日から増殖していく俺。始めは元の自分が何者であるか分かっていたのに、次第に記憶も曖昧になり、いつの間にか別人の名前を語り、別人の記憶と境遇を生きている主人公俺がとても不気味だ。
     他者を心の中で疑いながら自らの役割を演じているというのは怖いけど、同じようなことを日常的に行っているのは自分だということに改めて気付かされる。物語のラストは、自分とは違う他者と完璧に理解し合うことは無理だけど、相手の立場を想像する力が大切だと考えていた最近の自分とシンクロしていて、腑に落ちた気分。

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    2015年12月02日
  • 俺俺

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    パラレルワールド系の話かと思ったら全然違った…あんまりSFを楽しむって感じじゃなくてちょっとお説教臭い感じ。大人になったらまた読みたい。

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    2015年05月27日
  • 俺俺

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    ネタバレ

    テンポのよい文章に、読むほどにスピードが増してくる。
    それは、何も考えさせず、読むことそれだけに集中させるための著者の故意なのかもしれない。
    あそこにも俺、そこにも俺、ほぼ俺。
    実はそれは心地のよいものではなく、俺自身が俺によって翻弄される。
    オレオレ詐欺からカジュアルに始まった物語は、想像以上の展開を見せる。

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    2015年05月07日
  • われら猫の子

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    どれも好きな話だけれど、特に「紙女」がよかった。
    紙であることがどういうことなのか、言葉を書くということがどういうことなのかについて考えさせられる。
    すべてが終わったあとに書かれたこの話を紙に印字された本という媒体によって読むことを思うと、渦巻きにはまっていく気がする。

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    2011年01月08日
  • ファンタジスタ

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    おもしろかった。
    ユニフォームじゃなくてマルチフォーム、最高。
    スポーツがもたらす一体感が閉塞感を伴うことがあざやかに表現されていて、読後も満足感があった。

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    2011年01月07日