*ネタバレ、っていうほどないです。
文章から、作家の波打つ動脈のようなものが感じられた。
今にもちぎれそうな、破裂しそうな血管と、その中に流れる熱い血潮。
喉にへばりつくような空気感、臭気、粘り気。
星野智幸の小説にはこういう「気候」がよく用意されてるけど
わたしこれが好きだなー。
この『無間
...続きを読む道』という小説からは
すぐに読みとれるストーリーはない。
主人公の動きを追うようなストーリーじゃなくて
3章にわたって繰り返される構造が
「物語」として浮き上がってくる。
たぶんだれでも気づくだろうな。
「これは無限ループのおはなしだ」って。
物語の構造自体がストーリーを引き寄せ、
それはまた小説全体の書き方にも及んでる。
だからきっと本当に読むべきは
その無限ループじゃないんだ。
「無限ループ」っていう言葉から想像されるのは
<まったく同じことの繰り返し=無意味>だと思うんだけど
この小説で感じられる反復は、ずれを、ともなっている。
繰り返しているんだけどずれている。
ずれているんだけど繰り返してるといえる。
似ているけど違っていて、違っているけど同じに思える。
ずれてるからそこに、
新しい意味がまた繋がっていくんじゃないかと
新たな可能性を見つける可能性があるんじゃないかと
思えてしまうんだ。
ありえない世界のリアリティを
疑わせない描写力。
さすが命の懸けられた小説だったと思います。
読むほうのわたしも、何度か死にましたw
というか今生きてるのか、
生きてる証拠ってなんなのか、
「自分」が生きてるってどうしたら確信に至れるのか
だからもしかしたら死んだことあるのかもしれないとか、
わからなくなって危なかったよ。
でも絶望はしなかった。
大きなテーマでもあると思うけど「自殺」という問題。
ここでは、「自逝」か。
境界を飛び越えても終われない人の道。
自殺に救いはないという定説ができそうな小説です。
映画化はできんよね。
無残に腐った逝体の描写ばかり際立って
小説のメインであることばの細工を伝えることが
むつかしくなるから。
何回も読める小説でした。