長谷部恭男のレビュー一覧

  • これが憲法だ!

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    憲法学者の長谷部恭男と政治学者の杉田敦の対談を収録しています。

    おおむね杉田が長谷部の考えに対して疑問をぶつけることで、いくつもの興味深い論点が浮き彫りにされていきます。まずは、「立憲主義」を「価値観、世界観の多元性を前提にした上で、その間の公平な共存を図るための手立てだ」とする長谷部憲法学の根本的な発想が確認され、それに対して杉田は、こうした発想は「相互に対立する利益集団のせめぎ合いとして政治をとらえる」考えに近いものとして受け止め、公共性をめぐる原則的な問題を提出することで、長谷部憲法学が二枚腰、三枚腰の構えで構成されていることが明らかにされていきます。

    杉田の問いかけによって、長谷部

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    2019年05月06日
  • 日本国憲法

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    知っているようで知らない、自分が住む国の前提となっている憲法。
    その現行の憲法と、大日本帝国憲法、そして現行憲法の成立に関わった宣言や現行憲法に基づいて作られた条約など、憲法を立体的に読み解くための材料が提供される。
    まったく断絶していると思っていた旧憲法と現憲法に驚くほど共通点があったりと、いざ現物に触れたからこそ気付けることがある。
    国家の大原則であるはずなのに、どことなく触れてはならないもののような扱いになっている憲法だが
    まずは一読し理解したうえで、各々が判断していくべきなのだと感じた。

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    2019年01月27日
  • ナチスの「手口」と緊急事態条項

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    小政党の一つに過ぎなかったナチスがいかに権限を拡大して独裁国家を作り上げたかを解説し、日本で審議されている緊急事態条項のナチスの手口との類似点、危険性に言及。この分野は門外漢なのでとにかく難しかった。憲法学者は言葉のチョイスに厳格だなあ。一応理解した中で印象深かったことをメモ。
    ・ユダヤ人に職を奪われたと感じている貧困アーリアがナチスを支持した構図はトランプ政権に通じるものがあるなあ。
    ・ドイツでは大統領が緊急事態を規定できる仕組みになっていたことが濫用を招き、いつのまにか主権独裁になっていたと。
    ・日本の緊急事態条項に関して。緊急事態の判断は内閣総理大臣に委ねられていて緩い。
    ・そもそも大き

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    2017年12月19日
  • 憲法とは何か

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    ネタバレ

    ・近代立憲主義
    立憲主義は国家の権力を制限しようとする古くからある考え方。近代立憲主義は多元的な近代を制御するために生まれた考え方で、公私を区別し、国家は私的な領域に踏み込まず、私的信条は公共に持ち込まれない体制。これは人間の自然的欲求に反する。人は自らの信じることが社会全体に行き渡って欲しいと思うものであり、また唯一の明確な正義に従っていたいと思うものだから。近代人は異なる価値観の選択に常に悩む宿命にある。近代立憲主義の前提として、異なる価値観の比較不可能性がある。価値観の比較不可能性を認める論者は、マキャヴェリ、バーリン、ロールズら。認めないのは、レオ・シュトラウス、カール・シュミット、マ

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    2017年05月20日
  • 高校生と考える日本の問題点 桐光学園大学訪問授業

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    ネタバレ

    読書途中。20人の講師による。一人90分の講演会の収録である。一気に読めるはずもなく、じわじわと読んだ。
    姜尚中の講演のなかで、夏目漱石が奥さんをなぐっていたエピソードがあった。ノイローゼであったらしい。私は夏目漱石になれないけど、夏目漱石よりましだなと少し思った。考えかたとしてまちがっているのかな?どんな偉い人もほんとうにいろいろな苦しみにもがいていきているのだと思い直した。
    20名全て役に立つわけでないが、中には、気に入る人もいるかもしれないとのことだろうか?3.11後の話など考えさせられたり。光触媒の話は興味を覚えた。文学、美術に関心を持った。宇宙論や素粒子の話は、わからないので、もうい

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    2017年01月01日
  • 憲法とは何か

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    長谷部恭男氏(1956年~)は、憲法学・公法学を専門とし、日本公法学会常務理事、国際憲法学会(IACL)副会長を務める、現東京大学名誉教授。
    本書は憲法改正の議論が盛んになった2006年の出版であるが、立憲主義における憲法とは如何なるもので、如何に運用されるべきなのか、そして、それを踏まえて憲法改正についてどう考えるべきなのかを論じている。
    本書の主な主張、印象に残った点は以下である。
    ◆立憲主義とは、この世には、生き方や世界の意味について根底的に異なる価値観を持つ人々がいることを認め、それにもかかわらず、社会生活の便宜とコストを公平に分かち合う枠組みを構築することで、個人の自由な生き方と、社

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    2016年11月06日
  • 憲法と平和を問いなおす

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    そもそも多数決で決めるのは正しいのか、から始まって立憲主義とは何か、平和主義とは何をさすのかなどを丁寧に説明していく作品。ホッブズ、ルソーなどの古典はもちろん最近の政治学者の名前も沢山出てくるのだけど一つ一つの議論は比較的わかりやすい。個人的には自然権に関する説明が面白かった。

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    2016年06月03日
  • 検証・安保法案:どこが憲法違反か

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    安保法案についてはかねてから関心がありましたが、反対派の人たちの意見にはにわかに頷きがたいものが多かったので、不満でした。
    たとえば「戦争法案、反対!」と言われても、個別的自衛権だけでも日本が侵略されたら戦争は起こりうるのに……と疑問に思ってしまったりして。

    そこで、安保法案の違憲性や不合理性について、個別的自衛権と集団的自衛権の違いを踏まえ、今国会に提出された条文案を参照しながらコンパクトに論じてくれている本を探していました。
    (特にポイントだったのが「条文案を参照しながら」のところです。わたしは元法学部生なので、法律を学ぶならきちんと条文に当たらなくてはならないという信条があるのです。)

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    2015年09月18日
  • 憲法と平和を問いなおす

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    今や時の人になってしまった感もある長谷部恭男先生の著書。昨年夏に読んだものを再読。しかし難しい。去年読んだときも難しいと思ったが、再読でもなお難しい。この1年間に噴出した様々な憲法がらみの議論と照らし合わたとき、その多くが的外れであると指摘する内容だけに、現実とアカデミックな事実とのすり合わせによけい頭を使うことになる。しかしここには「民主主義や立憲主義やとは何か?」に関する様々なヒントが書かれていて、その豊潤さは汲めども尽きない。

    昨年初めて読んだとき、「ソーシャルライブラリー」用に書いた感想が意外にまとまっているので、それを以下に再録しておく。




    タイトルのイメージとはだいぶ違う本

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    2015年08月02日
  • 憲法と平和を問いなおす

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    先日おこなわれた憲法審査会での答弁がメディアで広く取りざたされるようになった著者が、立憲主義と平和主義との関係について基礎から考察をおこなっている本です。

    著者によれば、立憲主義が前提とする国家は、市民の生に包括的な意味と目的を示すものではなく、多様な価値観を持つ人びとが平和に共存し、社会生活の便益とコストを公平に分かち合う枠組みを作るための限定された役割を担うものとされています。そして著者は、公共性に高い価値を与えて、そこにこそ市民の生きる意味があると考えるアレントの立場を批判します。

    一方で、社会契約論の系譜を参照しながら、そこで国家を設立することで平和な社会の実現をめざすプロジェクト

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    2015年06月10日
  • 法の概念〔第3版〕

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    私は「法」についてこれまであまり突き詰めて考えたことが無かった。せいぜい、それは制度のなかに生じるものだから、権力作用の一形式くらいにしか考えていなかった。
    けれども、著者ハートは「法とは権威に支えられた強制力をもつ命令である」という従来の定説を徹底的に批判する。
    本書はそこから始まって極めて真摯に諸問題を検討し、「法」を「哲学」してみせる。
    法学自体が私の普段の興味の対象外でもあるし、これを読んでもすっきりしないところも残る。立法府よりも司法つまり裁判所の力のほうがこの法哲学にとっては重要であるというように話は展開されるが、その辺もすっきりと同意しきれない。しかし理解しきれなかった部分は、私

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    2015年01月13日
  • 憲法とは何か

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    第1章 立憲主義の成立
    第2章 冷戦の終結とリベラル・デモクラシーの勝利
    第3章 立憲主義と民主主義
    第4章 新しい権力分立?
    第5章 憲法典の変化と憲法の変化
    第6章 憲法改正の手続き
    終章 国境はなぜあるのか 

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    2014年07月29日
  • 憲法とは何か

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    近代立憲主義・公私区分・硬性憲法・憲法改正・現代までの国家の形態の変遷・国境の意義などについて書かれていた。

    上記のことについて学ぶには良書だが、新書で文字数が多くない。
    内容に物足りなさを感じる人もいるはず。
    また、近代立憲主義などの前提知識が無いと多少読みにくいと感じるかもしれません。

    ただ、非常に分かりやすく面白い本です。

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    2013年07月25日
  • 憲法とは何か

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    筆者は、立憲主義は人間の本性にそぐわないと考えている。誰もが共通の真理や正義を信じ、それにしたがって生きることができる、「正義の味方」が悪を斬る時代劇のような分かりやすい世界に比べ、自分の思うように考えたり行動したりできる「私的空間」と、異なる考え方や利害を異にする立場の者と生活を共にしなければならない「公共空間」を区別し、法によって利害を調整しつつ生きることを選ぶ立憲主義に基づく近代以降の世界は、たしかに中途半端で、すっきりしないかもしれない。

    しかし、二度の大戦とそれに続く冷戦の時代を経て、世界の多くの国がリベラル・デモクラシーの世界を選択していることはまちがいのないところだ。憲法が明記

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    2013年03月08日
  • 憲法と平和を問いなおす

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    民主主義と立憲主義についての理解が進む本。「憲法」「法律」は難しくて偉そうでつまらなくて面倒くさいものと刷り込み完了していたが、読後に日本国憲法を一読してみようと思った。

    民主主義はその社会で統一した結論が必要な時に、その構成員(国民)全体で合意した結論を出すことが期待される。基本的に多数決で決める。なので、少数派は割りを食う。そして世の中には多数決で統一した結論を出すべきでない問題がある。例えば、宗教とか価値観(どのように生きるべきかとや何を美しいとするか)とか。民主主義で扱うべき問題とそうではない問題の境界線を引き、民主主義の名のもとに行われる多数派による少数派迫害を制限するのが立憲主義

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    2013年01月12日
  • 憲法とは何か

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     もうすぐ選挙ですが、首相公選制と憲法改正ところが参考になりました。
    制定されて何十年もたつ憲法を改正しても意味がない。あとは、解釈の問題だ。環境権やプライバシー権は、法律で十分守れる。改正のハードルが高いのは、政治家が改憲論議に労力を使って通常の仕事をしなくなるからだ。みたいな事が書いてあったと思います。
     そりゃそうだ。

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    2012年12月08日
  • 憲法とは何か

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    立憲主義とは何か。それから導かれる憲法の役割とは。憲法の具体的内容でなく憲法そのものについて記した良書

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    2012年08月21日
  • 憲法とは何か

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    国家権力を制限することで個々人の人権を護ろうという理念として語られるのが通例である立憲主義を、異なる(筆者の言葉を借りれば「比較不能な」)価値観を持つ人々が公平に共存すための枠組みと捉えられている点に目を惹かれる。

    特に注目させられたのは、筆者が立憲主義、特にその公と私の弁別について「人の本性に反する」(p15)と言い切っている点である。人々が「人間らしい生活を送るため」(p9)の共存の枠組みが、人間の本性に反したものであるとは。価値観・世界観が異なる人々の共存とは何と困難なものであることか。

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    2012年04月11日
  • これが憲法だ!

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    ネタバレ

    [ 内容 ]
    国の安全に関わる重要な問題を、内閣法制局や憲法学者だけに任せていていいのか?
    圧政に苦しむ人々を、助けに行かなくてよいのか?
    憲法で縛るより、国会でその都度議論すべきではないのか?
    日本国憲法をめぐる最重要論点を、いま最も注目の憲法学者と政治学者が徹底討論。
    憲法学の現状への痛烈な批判も飛び出す、スリリングで最先端の憲法対論。

    [ 目次 ]
    第1章 憲法はデモクラシーを信じていない
    第2章 絶対平和主義は立憲主義と相いれない
    第3章 憲法解釈はだれのものか
    第4章 絶対的な権利なんてない
    第5章 あらゆる憲法は「押しつけ憲法」である
    第6章 憲法をいま変えることは無意味である

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    2011年06月07日
  • 憲法とは何か

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    ネタバレ

    [ 内容 ]
    憲法は何のためにあるのか。
    立憲主義とはどういう考えなのか。
    憲法はわれわれに明るい未来を保障するどころか、ときに人々の生活や生命をも左右する「危険」な存在になりうる。
    改憲論議が高まりつつある現在、憲法にまつわる様々な誤解や幻想を指摘しながら、その本質についての冷静な考察をうながす「憲法再入門」。

    [ 目次 ]
    第1章 立憲主義の成立
    第2章 冷戦の終結とリベラル・デモクラシーの勝利
    第3章 立憲主義と民主主義
    第4章 新しい権力分立?
    第5章 憲法典の変化と憲法の変化
    第6章 憲法改正の手続
    終章 国境はなぜあるのか

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆

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    2011年04月24日