長谷部恭男のレビュー一覧
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ネタバレ「そもそもなぜ憲法が成立したのか」、「なぜ憲法が必要なのか」といったことを問う「立憲主義」という立場から憲法について論じた本。著者は、外国勢力に対抗するため、改憲を声高に主張するタカ派の言説にも、9条を金科玉条とするハト派の言説にも欠けているのが「立憲主義」だと述べる。
立憲主義とは国家権力を憲法によって制御することで、国民の多様な価値観を擁護するという考え方。
他に日本のタカ派とハト派に共通しているのは「平和ボケ」なのではないかと思った。タカ派は外国が大挙して日本を攻撃・侵略しようとしている、と言うし、ハト派は「9条があるからミサイルが日本に飛んでこない」とか「改憲=戦争のできる国 -
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従来の議論においては、憲法というものは特別な地位を与えられていたように思われる。
護憲派については、憲法が成立するまでの闘いや、憲法の規定の素晴らしさ等を強調し、それを根拠に護憲を訴えていたし、
一方、改憲派については、特別な地位を与えていたからこそ、自分たちで決めなおそう、という主張になる。
しかし、長谷部の理解によれば、憲法にはそのようなロマンチシズムなどはなく、単に「調整問題の解」にすぎない、ということになる。
調整問題とは、大勢の人が、みんなと同じ行動をしたいと思っているときに、多くの選択肢があるときに発生する問題である。
例えば、車を走らせるのに、右を走るべきなのか、左を走る -
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憲法については、左右どちらかの立場から感情的に論じられることが多く、左の立場からは、憲法改正は絶対に認めない、まして9条改正などもっての他、右の立場からは、アメリカが短期間で書き殴った憲法など改正するのが当然、軍隊の存在を認めない9条など真っ先に改正すべき、という論議になりがちです。
この本は、左右どちらの立場にも偏らず、きわめて冷静に、論理的に憲法改正の無意味さ、大統領制よりも、議院内閣制がいかに優れている制度か、を論じています。
9条に関しては、「たしかに自衛のための実力の保持を認めていないかに見えるが、同様に、「一切の表現の自由」を保障する21条も表現活動に対する制約は全く認められ -
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筆者は立憲主義と民主制とを峻別する。これ自体は目新しい思考態度ではない。民主主義と自由主義とを区別したHayekや、市民的法治国的憲法はあらゆる政治制度に対する制約を目的とし民主制もその例外ではありえないとしたSchmittもその流れにある。
民主主義は何でもなしうるという、素人=「市民」的理解を長谷部は採用しない。
そして、立憲主義の適切な理解こそが、「憲法と平和」ついて語る鍵であるとする。
では、長谷部は平和主義とは何と語っているのか?
…語っていない。諸概念を列挙はしている。しかし、終始「〜ではない」の論法に徹している。それについて歯がゆく思うかもしれないが、それは当然に予定されたこの書 -
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「法とは何か」という当時執拗に繰り返されていたらしい質問を、分析哲学を持ち込んで解答しようとした書である。初版1976年。しかし、著者ハートは分析哲学のエキスパートではなかったのか、明らかに「法とは何か」について述べていない。解説のレスリー・グリーンは「法とは力の威嚇によって支えられた主権者による一般的命令である。」と定義している。「命令」が何なのかについて他に解する必要があるので、さらに検討が必要に思われる。
代案を出すと、我々にとっては、「法とは、その命題が真となったと政府が十分に確からしく確信を持った時に、その専有する暴力装置を作動させる、あらかじめ記載された命題集(命題の集合)であ -
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戦後憲法学の世代区分には諸説あるが、ざっくりと20年刻みで言えば、戦前から活躍した宮沢俊義、清宮四郎を第一世代とすれば、戦後世に出た芦部信喜、樋口陽一、佐藤幸治らが第二世代、戦後生まれでポスト冷戦期の90年代以降第一線に登場した長谷部恭男、松井茂記、やや遅れて石川健治あたり迄が第三世代、宍戸常寿や曽我部真弘など、現在の中堅どころがこれに続く。長谷部らの第三世代は彼らの生まれの年を冠してより狭く「55年組」と言われたりもするが、この世代はかつて「新人類」という言葉があったように、上の世代との間に明らかな断絶がある。
そのリーダー格たる長谷部の憲法学は一言で言えば「クール」という言葉が似つかわし -
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憲法とは、同質の価値観が維持されていた中世の宗教世界が崩れた近代において、多様な価値観・世界観を抱く人々の公平な共存を図るための枠組みであり、国家の構成原理である。
憲法は国家の構成原理であり、近代における多くの戦争は異なる憲法を攻撃目標とする敵対であるという点、国家の憲法と憲法典が違うという点は新しい視点だった。
長谷部先生の本は初めて読んだのだが、結構保守的な立場から書いてあるように感じた。
憲法典を変えても憲法が変わるわけではないし、変更の必要がある場合でも、解釈や一般法の制定で対処できるといった改憲についての議論は納得できる部分もあるが、九条については明らかに無理のある解釈をしてい -
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ネタバレ憲法改正論議を理解する参考文献として読んだ。
憲法学者の重鎮ということで、この著者の本をとりあえず読まねばという義務感で選書。
全然期待してなかったけど、表題どおり、憲法とは何か を知るために良い教科書的な本で、読んで良かった。
「憲法とは」基本的なことを知ってから改正論議をしないとダメだとわかった。ダイジェストでこの内容を国民みんなに知らせないで改正の是非を投票させるのは、ものすごく問題があると思う。
憲法典とは原理を示すもので、そこに書いてあることは法令で定めないと実行されない。改正して書き込んだことが必ず実行されるものではない。
例:アメリカ南北戦争後、黒人の人権を認めることを憲法