あらすじ
風雲急を告げる憲法改正。斯界をリードする憲法学者と政治学者が、9条、集団的自衛権、日米安保、人権など主要争点を徹底的に議論した。「憲法は国家という法人の定款である」「護憲派も改憲派も条文にこだわりすぎ」「絶対平和主義は立憲主義に反する」「アメリカもフランスも押しつけ憲法」「憲法解釈は芸である」などなど。目からウロコの発言を読めば、あなたも憲法改正に一家言を持つ専門家に。
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Posted by ブクログ
憲法学者である長谷川氏の自説に対して政治学者の杉田氏がツッコミを入れ、それに長谷川氏が反論するという形を取っており、長谷川憲法学を立体的に理解できるようになっている異色の憲法本。
長谷川憲法学の特徴は、なんといっても文言解釈に拘らない点。憲法の「コトバ」よりも憲法が何を守れるか、いかに機能しえるかという観点からダイナミックな解釈を展開しています。
また、杉田氏のツッコミも鋭く長谷川氏がうろたえる場面も見受けられますが、何とか答えようとする姿に自説の自信も感じられます。
Posted by ブクログ
従来の議論においては、憲法というものは特別な地位を与えられていたように思われる。
護憲派については、憲法が成立するまでの闘いや、憲法の規定の素晴らしさ等を強調し、それを根拠に護憲を訴えていたし、
一方、改憲派については、特別な地位を与えていたからこそ、自分たちで決めなおそう、という主張になる。
しかし、長谷部の理解によれば、憲法にはそのようなロマンチシズムなどはなく、単に「調整問題の解」にすぎない、ということになる。
調整問題とは、大勢の人が、みんなと同じ行動をしたいと思っているときに、多くの選択肢があるときに発生する問題である。
例えば、車を走らせるのに、右を走るべきなのか、左を走るべきなのか、これがまさに調整問題である。
長谷部は、憲法を調整問題の解であると論じる。
従来の議論からすれば、まったくもってロマンの欠片もなく、身も蓋もない。
しかし、一種の憲法教義化ないしは聖典化から大きく離れ、憲法をこのような比較的ドライなものとして捉えると、今まで見えなかったものが見えてくる。
ドライなものとしてもなお、改憲の必要がないというのは、憲法の素晴らしさを説くことで護憲の必要を訴える議論よりも幾分説得力があるように思える。
Posted by ブクログ
憲法学者の長谷部恭男と政治学者の杉田敦の対談を収録しています。
おおむね杉田が長谷部の考えに対して疑問をぶつけることで、いくつもの興味深い論点が浮き彫りにされていきます。まずは、「立憲主義」を「価値観、世界観の多元性を前提にした上で、その間の公平な共存を図るための手立てだ」とする長谷部憲法学の根本的な発想が確認され、それに対して杉田は、こうした発想は「相互に対立する利益集団のせめぎ合いとして政治をとらえる」考えに近いものとして受け止め、公共性をめぐる原則的な問題を提出することで、長谷部憲法学が二枚腰、三枚腰の構えで構成されていることが明らかにされていきます。
杉田の問いかけによって、長谷部憲法学の有効性がいっそう明確にされており、興味深く読みました。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
国の安全に関わる重要な問題を、内閣法制局や憲法学者だけに任せていていいのか?
圧政に苦しむ人々を、助けに行かなくてよいのか?
憲法で縛るより、国会でその都度議論すべきではないのか?
日本国憲法をめぐる最重要論点を、いま最も注目の憲法学者と政治学者が徹底討論。
憲法学の現状への痛烈な批判も飛び出す、スリリングで最先端の憲法対論。
[ 目次 ]
第1章 憲法はデモクラシーを信じていない
第2章 絶対平和主義は立憲主義と相いれない
第3章 憲法解釈はだれのものか
第4章 絶対的な権利なんてない
第5章 あらゆる憲法は「押しつけ憲法」である
第6章 憲法をいま変えることは無意味である
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
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読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
P157-の 憲法の及ぶ境界 の議論が個人的には面白い。「なぜ、われわれの範囲はネーションなのか。一級市民、二級市民とした方が 多くの価値が得られませんか?」や、境界線は移動するものなのに、なぜネーションという境界線を大切にするのか?という杉田さんの問い。長谷部さんを戸惑わせているけど、これから避けて通れない問題だと思う。
Posted by ブクログ
「絶対平和主義は立憲主義と相いれない」という項がいちばん興味深かった。
「平和が絶対なんだ」という考えに基づいて社会の方向性を決めると、一体どうなるのか。
国家の自衛権は、個人の自衛権という前提に基づいて成り立っている。という視点がヒントになってくる。
右でも左でもない日本国憲法をめぐる対談。
この本が考えるきっかけになるはず。