北杜夫のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ一代で大病院を築いた楡家の栄枯盛衰。
のほほんと始まり気楽なユーモア小説的なものかなと思いきや、突如として数々の災厄が楡家に襲いかかる。
楡家の人員は、お互いに憎み合っているという程ではないものの、自分のために他人を利用するか、あるいは疎ましく思っているかで、心の交流というものがほとんどない。そのため共感できる登場人物がなかなかいない。強いて言えば院長基一郎の長女龍子の夫徹吉ぐらいだろうか。楡家のごたごたに巻き込まれた被害者的な立ち位置である。
全体的にかなり引きの目線で描いていて、途中からはテンポが速く、あらすじを読んでいるだけのような気分だった。展開としては面白い。 -
Posted by ブクログ
本著は、青春を追体験できる良書である。青春とはその生きた時代によって流行や生き方が如実に反映する。私たちの中にある青春とは違う景色かもしれないが、同時に本質的なところで、バカなことをして笑ったり、挑戦して失敗を多くしたり、恥ずかしいことをしたり、失敗や孤独、葛藤もあり、そして、完璧ではなく、精一杯生きる大切さを体験できる良書である。
本著から学べることは多い、現代(2025)では、SNSや動画が日常の一部となり、常に他人と比較し、挑戦するまでもなく挫折する人や準備中毒になる人、絶望する人はとても多い。そして、「失敗」を人生の終わりとして捉える風潮が強くなっている。
私は間違っていると思う。失敗 -
Posted by ブクログ
北杜夫自選短編集
「岩尾根にて」「羽蟻のいる丘」「河口にて」「星のない街路」「谿間にて」「不倫」「死」「黄いろい船」「おたまじゃくし」「静謐」の10篇を収録。どちらかというと初期の短編集が中心に選ばれている。
「河口にて」「星のない街路」のような海外を舞台にした不思議な幻想的な雰囲気の短編もあれば、「不倫」のようなSF小説もある。若い頃は、「谿間にて」の蝶を採集するために台湾に渡った採集人の物語と信州の山中を舞台にした世界にあこがれ、信州大学に行ってみたいと思った時期もあった。
「黄いろい船」は作者の中期ともいえる時期のもの。こういう短編小説ももっと読みたかったなあ。 -
Posted by ブクログ
自分が学生だった一昔前には「どくとるマンボウ」シリーズはかなり人気があった記憶があるが、その頃は”ユーモアもの”と聞いただけで手を出さない偏った読み手だったので、中公文庫で新版が出た今回、初めて読むことができた。
1958年の11月から翌年の4月にかけて、水産庁の調査船に船医として乗り込んだ著者。当時は留学等でなければまだ海外に行くことが難しい時代だった。行程と著者が立ち寄ったところは、おおむね次のとおり。シンガポール(館山を出て12日目)ーマラッカ海峡からインド洋ー紅海ースエズー地中海ーヴェルデ岬諸島からカナリア諸島(ここが目的のマグロ漁)-リスボンーハンブルクーロッテルダムーアントワ -