北杜夫のレビュー一覧

  • 幽霊―或る幼年と青春の物語―

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    幼少の頃は、目の前の事象を理解する際に紐付ける「経験や知識」が少なくて、「何か別のもの」に紐ついてしまう事がよくあった。「説明不可能なものは、神の仕業である」とする近代までの宗教観に近いものがあるが、人の一生で考えてみても、「説明不可能なものが多い時期」というのは確かに存在するのである。

    物語の少年に影のように漂う「不安」の正体はこうした「説明不可能なもの」に象徴され、大人になっても理解はできない「死への不安」によって、その頼りなさは説得力を増す。

    天井や壁の模様から空想して何かを生み出したり、小学校における自分自身を仮の設定で妄想を膨らませたり。誰もいない部屋に恐怖を感じたり。遠い記憶は

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    2025年09月09日
  • どくとるマンボウ青春記

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    本著は、青春を追体験できる良書である。青春とはその生きた時代によって流行や生き方が如実に反映する。私たちの中にある青春とは違う景色かもしれないが、同時に本質的なところで、バカなことをして笑ったり、挑戦して失敗を多くしたり、恥ずかしいことをしたり、失敗や孤独、葛藤もあり、そして、完璧ではなく、精一杯生きる大切さを体験できる良書である。
    本著から学べることは多い、現代(2025)では、SNSや動画が日常の一部となり、常に他人と比較し、挑戦するまでもなく挫折する人や準備中毒になる人、絶望する人はとても多い。そして、「失敗」を人生の終わりとして捉える風潮が強くなっている。
    私は間違っていると思う。失敗

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    2025年08月08日
  • 夜と霧の隅で

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    医者でありながら芥川賞をとった朝比奈秋さんをテレビで拝見。なんか独特の雰囲気のある方でした。彼のお薦めということで興味深く臨みましたが、あえなく撃沈しました。

    ふわ~っとわかったような感じで最後まで来ましたが、説明してみろと言われたら虚空を見つめてしまいそうです。
    決して読みづらくないのですが、解説を読んだところで、、、

    難解でしたが、勉強させてもらえた感は残りました。
    The 強がり

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    2025年07月25日
  • 世を捨てれば楽になる

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    著者没後に過去のエッセイを編集したもの。北杜夫の著作はほぼ読破しているが、何度読んでも新鮮!内容を忘れているってことねv(**)v

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    2024年10月01日
  • 静謐 北杜夫自選短篇集

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    北杜夫自選短編集
     「岩尾根にて」「羽蟻のいる丘」「河口にて」「星のない街路」「谿間にて」「不倫」「死」「黄いろい船」「おたまじゃくし」「静謐」の10篇を収録。どちらかというと初期の短編集が中心に選ばれている。
     「河口にて」「星のない街路」のような海外を舞台にした不思議な幻想的な雰囲気の短編もあれば、「不倫」のようなSF小説もある。若い頃は、「谿間にて」の蝶を採集するために台湾に渡った採集人の物語と信州の山中を舞台にした世界にあこがれ、信州大学に行ってみたいと思った時期もあった。 
     「黄いろい船」は作者の中期ともいえる時期のもの。こういう短編小説ももっと読みたかったなあ。

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    2024年02月07日
  • 幽霊―或る幼年と青春の物語―

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    おぼろげな幼年期の追憶。見た記憶がないのにしばしば重なる母の姿。自然の中に浸かって五感で感じる神秘な世界に酔う。2023.10.14

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    2023年10月14日
  • どくとるマンボウ昆虫記

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    虫の話のようであり、虫を通して人を語るようでもあり、何とも胡乱で面白い。但し、昭和36年刊行とのこと、現代の虫取り少年にお勧めするには時代色が強すぎる…何せ沖縄返還前の話なので。既に本作の中でも生態系の変化について触れられているが、更に温暖化の進んだ現今では、恐らくそれ以上に変化が進んでいるだろう。また、譬え話の類が、これも時代性なのだろうが、如何にも偏見が目立つ。その辺りを含んで楽しめる世代は、限られるかもしれない。

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    2023年10月12日
  • どくとるマンボウ航海記

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    「読書会」 課題図書
    半世紀ぶりに再読
    初めて読んだ若い頃、すっかり北杜夫のファンになって
    たくさんの著書を読んだ

    あの目新しかったユーモア、珍しかった海外の様子
    それも懐かしかったが、海の描写が美しいのに感嘆
    やはりすごい作家だなあ

    でもやはりというか「昭和の男性」
    女性感は鼻についた

    自分が選ばない本を読む楽しみ
    「読書会」これからも参加したい

    ≪ 青春の 奔放な旅 もう一度 ≫

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    2023年10月12日
  • どくとるマンボウ航海記 増補新版

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    自分が学生だった一昔前には「どくとるマンボウ」シリーズはかなり人気があった記憶があるが、その頃は”ユーモアもの”と聞いただけで手を出さない偏った読み手だったので、中公文庫で新版が出た今回、初めて読むことができた。
     
     1958年の11月から翌年の4月にかけて、水産庁の調査船に船医として乗り込んだ著者。当時は留学等でなければまだ海外に行くことが難しい時代だった。行程と著者が立ち寄ったところは、おおむね次のとおり。シンガポール(館山を出て12日目)ーマラッカ海峡からインド洋ー紅海ースエズー地中海ーヴェルデ岬諸島からカナリア諸島(ここが目的のマグロ漁)-リスボンーハンブルクーロッテルダムーアントワ

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    2023年07月26日
  • 楡家の人びと 第三部

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    国家も家族も共同体の体裁を優先して個人の尊厳を踏みにじる。国家は反逆という手段を選択できても血縁という事実は逆らえない。そこに懐柔するかのごとく戦争へと闊歩した政府の罪は戦犯を罰するだけで解決したのだろうか。世間の空気を読むことを有益だと判断する家族に恐怖する。コロナ5類になったから安心だという根拠なき日常に訝しむ。なぜなら虐げられるのは常に弱者だから。そこにも皆と同等の命がある。それは誰も否定できない、看過してはならない。

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    2023年05月09日
  • 楡家の人びと 第二部

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    あれほど心を病むような慣わしに翻弄された人びとは、災害や病、そして戦争によって周囲のつながりが狂い出す。それは精神をむしばんでいくような毒ではなく、日常の生活や風景に溶け込んでいて知らぬ間に身体へと染み込んでいく。この緩やかな悲劇が怖くなる。

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    2023年04月29日
  • どくとるマンボウ青春記

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    40の歳を迎えた作者による、学生時代の青春の回顧。
    当時の鬱屈した世相と、その中で踠きながら駆け抜けていく姿に胸が少し詰まった。
    入れられたユーモアは航海記よりも自然で、円熟を感じる。
    暗さと明るさのバランスが性に合っていて楽しめた。

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    2023年01月29日
  • P+D BOOKS 少年・牧神の午後

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    『少年』北杜夫
    東京生まれの少年が松本高校で仲間と出合い自然の中で思索し青年へ至る過程が抒情的に綴られています。
    槍の肩で月光に照らさて黒藍色の空を区切る大槍の姿とその周りに陣をはる星座に放心、人間の儚さと哀れさを認識し、そこから生まれる可憐な意思を自覚し覚醒していきます。

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    2022年11月26日
  • 船乗りクプクプの冒険

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    導入から面白い!小学生の夏休みにぴったりな一冊。大人でも楽しめるけど、想像力豊かな子供の頃に出逢いたかったなあ。

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    2022年10月25日
  • 夜と霧の隅で

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    表紙が串田孫一の版で読んだ。最初に収録されている「岩尾根にて」が一番好きだった。自分と相手(と滑落死体)の区別がつかなくなる場面は映像で見たい。
    「夜と霧の隅で」では、精神病患者を助けようとするあまり、体制側と同じ思想(=人間は役に立たないと生きていてはいけない、何とか彼らを役に立つ人間にしなければ)に陥ってしまう医師の姿があわれだった。対照的に、半身不随でほとんど自分では何もできなくなった元院長は、患者たちから絶大な尊敬を集めていた。

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    2022年10月24日
  • どくとるマンボウ航海記

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    『火宅の人』を彷彿とさせるユーモア溢れる饒舌体の航海記。
    所々個人的には滑っていると感じてしまうのと、著者得意の抒情が欲しいところだった。
    締めくくり方は素晴らしかった。

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    2022年10月08日
  • 夜と霧の隅で

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    日本語を活字で見ることが好きだ。

    だから基本的には読み始めたものはどんなものでも倍速読みでもとりあえず読み終えようとする。
    だが、今回は、短編にも関わらず、何度も本を置こうとしたくて堪らなくなった。

    一言で言うと不快。
    ナチスによる精神患者の安楽死、その大まかすぎる粗筋のみに依拠して手に取ったことを後悔した。そんな短絡化できない気持ち悪さ。
    物語のプロットをここに書いてもこの作品の気味の悪さ、不愉快さはとてもではないが表しきれない。黒板に爪を立てたような、顔を背けたくなるような軋んだ音に満ちた正常を装った異常さ。

    ナチスの命令に抵抗する医師たちのもがき苦しみ?そんなつまらない文で要約なん

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    2022年09月19日
  • 楡家の人びと 第二部

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    登場人物が多いけれど、それぞれ特徴がしっかり際立っているので混乱せずに読める。昭和、開戦へ。一つ一つは日常の細かいエピソードだけど、少しずつ時代は移ろっていく。

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    2022年09月11日
  • 楡家の人びと 第一部

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    登場人物の紹介が延々と続いてなかなか物語が始まらないなーと思っていたら、どうやら様々な登場人物のエピソードを淡々と語っていく中で少しずつ物語は進んでいき、そこに面白さを見いだすタイプの小説なのだなーと気がついた。大正から昭和へ。精神病院の患者さんたちと桃子のエピソードがいきいきとしていて楽しい。

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    2022年09月09日
  • どくとるマンボウ航海記

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    ここ2ヶ月ほど北杜夫に興味を持っていて、3作目に読んだ。
    持って回ったような諧謔的な表現は内田百閒の随筆などを連想させる。旅行記としても十分おもしろい。ただ、どちらかと言うと「どくとるマンボウ青春記」の方が面白かった。

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    2022年09月19日