北杜夫のレビュー一覧
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父の本棚から抜き取って読み始めたのは中学生の頃か高校生になってからのことか定かではありませんが、その頃読んだ本は立派なケース入りの分厚い単行本でした。つい最近逝去された北杜夫さんのマンボウシリーズも楽しく読みましたが、この「楡家の人びと」に代表される純文学といわれる数々の作品も愛読していました。本屋さんの店頭には”追悼北杜夫”の帯がついた文庫本が並んだので早速買い求め懐かしく読みました。
この小説は、大正末期から昭和にかけて東京の青山にあった楡病院(精神病院)を舞台にした物語です。院長の楡基一郎が一代にして築き上げたその病院には楡家の家族はもとより、従業員から患者さんまで大勢が混然一体となって -
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やっぱり面白い。
昔、それこそ中学生ぐらいの頃に読んで面白いなあ~と思った記憶があるのですがやっぱり面白かったです。
とりあえず覚えていたエピソードはハナアブだかコガネムシだかを集めている趣味の2人のエピソードぐらいでしたが。
確かに人間の移動に伴い、今までその地域には生息したことのなかった動植物が繁栄してしまい、その結果その地古来より生息していたモノが被害をこうむる。その対策としてさらにお国はその動物の天敵を輸入する。そんなんで本当に大丈夫なのか?大丈夫じゃなかった例はアマミノクロウサギとか色々ありますよね。
それにしても私は昔ホームセンターで外国産のクワガタやカブト虫をつがいで -
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Posted by ブクログ
美しい文体で、美しいモチーフを用いて、記憶をめぐる物語を描き出す。紡ぎ出された物語もまた美しいのは必然とも言える。
昭和初期、幼い少年の記憶で幕を開け、敗戦前後の高校生の追憶を中心にこの物語は語られる。
非個性的な彼の感覚を通して淡々と描かれる現実と非現実の世界は幻想的でもある。
他人の心を理解することが不可能である以上、「難解である」という感想はとても生まれやすい小説だと思います。山場もありません。それでも、その世界の美しさに、心を動かされます。きれいな文章です。
耽美よりの方、和風好きでかつ洋物に心惹かれるという方なんかにおすすめです。(H19.04.30) -
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ネタバレ10章のうち8章までが戦争中を描き、残りの2章も終戦直後の物語である。
戦争に翻弄される楡家とその周辺の人々の群像劇が描かれていく。
第一部からここまでかなり長かったが、読み終わってみると多くの人々の人生を実際に体験したような感覚が残っている。その「長さ」そのものに意味と重みが宿っている、そんな小説だったように思う。
桃子と藍子の人生は幼少期と成長してからの落差があまり大きくなんともやりきれない。
龍子は強い。常に我道を行き、負けない。基一郎の血の濃さが感じられる。
中でも周二の戦時中と敗戦後の黙示録的・虚無的な考え方は非常に印象的であり、もし自分が同じ時代に生きていたなら、似たような考えに -
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ネタバレ基一郎没後の楡家と楡病院、そしてそれを取り巻く社会情勢が描かれる。
第一部ではどこかでたらめな人物に見えた基一郎だが、いなくなってみると、あれほどのカリスマ性と頼りがいを持つ存在はもう現れそうにない。作中では、なんとなく神格化されつつあるようにも感じた。
登場人物は多いものの、物語の軸は婿養子の徹吉に置かれているように思える。読み進めてようやく腑に落ちたが、徹吉は斎藤茂吉であり、その次男にあたる周二が北杜夫なんですよね。
徹吉・周二は楡家の内部にいながらも本来は外から入ってきた存在で、その“内からの視点”と“外からの視点”をあわせ持つ立ち位置が、この作品の独特の冷静に全体を見渡す視点を生み出 -
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中学時代に北杜夫氏の本と出会い、高校時代に筒井康隆氏の本と出会ってしまった。
荒唐無稽でナンセンスなお二人の本に青春の苦悩がバカバカしく思えるゆとりをいただいた。お二人には感謝しかない。
久しぶりの航海記。
精神科医の北杜夫氏が漁業調査船に船医として乗り込んで、5ヶ月の回遊する。不純な?動機で。
読んでみると、いまでは考えられないほどぶっ飛んでいる。今書いたら、大炎上のことだらけ。このユーモアが許された時代にはその時代なりのよさがあった。
「アフリカ沖にマグロを追う」では、うんざりするほでトロを食べ、
「ドイツでは神妙に」トーマス・マンを味わいにいく。
あとがきにあった。
「私はこの本の中で