北杜夫のレビュー一覧

  • どくとるマンボウ航海記 増補新版
    懐かしい本が再刊されていたので久しぶりに読んでみました。
    少年時代にイキがって手に取り、そのま夢中になって読み進め、ボロボロになるまで愛読した一冊です。
    今で言う厨二病全開だった当時が恥ずかしくも思い出されますが、なぜか本作の内容はまったく覚えておらず、かつて何度も繰り返し読んだにもかかわらず初読で...続きを読む
  • 楡家の人びと 第三部
    すべては戦争により、灰燼と帰してしまうのです。
    戦争の業火で。

    楡家も例にもれず、戦争へと召集されていき
    時に帰ってこない人もいます。
    一人その安否がわからない人がいますが
    恐らくな…

    私は経験上あの女性は嫌いです。
    プライドばかり高い人はね。

    まあこういう人はきっとしぶとく残るんでしょうよ。...続きを読む
  • どくとるマンボウ医局記 新版
    昔読んだことがあると思ったのだが、内容を全く覚えていなかった。それだけに新鮮に読むことができた訳であるが。
    どくとるマンボウシリーズなので、いつものユーモアあふれるエッセイを想像したのだが、本作はちょっと雰囲気が異なる。
    いや、最初の方はそんな趣で、医局にはこんなにも変人が多いのかと驚いたところであ...続きを読む
  • 幽霊―或る幼年と青春の物語―
    私の青春時代という時に何度も読み返した作品。
    久しぶりに読みたくなったので購入して読んでみた。
    今読むとどう感じるのだろうかと少し危惧するような気持ちもあったが、とても面白く読むことができた。
    文章が美しく叙情性あふれていて、ストーリーのようなものはほとんど無いのだが文章を読むこと自体を楽しんで読ん...続きを読む
  • 楡家の人びと 第三部
    戦争に翻弄される楡家の人々の個人史とも言うべきものだ。自分にはこの第3部が最もリアリティのある優れた文章に思える。各人戦争に呑み込まれ、いずれも悲惨な状況を迎えるが、きっと楡家は復活するのだろうと思えた。
  • 楡家の人びと 第一部
    一代で脳病院を築いた楡基一郎とその一族の記録だ。大正、昭和の時代と共に紡がれる楡家の物語。個性豊かな面々のその生き様が活写されている。
  • 幽霊―或る幼年と青春の物語―
    自伝的小説。幼少期をありのまま、皮膚感覚が蘇るくらいねっとり描く。姉、母、父、その喪失。忘却に沈んだ記憶をたぐる。ばあや、叔父、従兄。自分と境遇は違うけれど、なぜか懐かしさを感じる。その具体性が魅力。遊び、会話、植物、昆虫、心情の変化。おかゆに残る梅干しの赤。そこに読むものを引っ張っていく力がある。...続きを読む
  • 静謐 北杜夫自選短篇集
    学生時代に北杜夫の長編小説は何冊か読んでいます、マンボウ物も愛読していました。それから何十年経ちましたが短編小説はこの文庫本で初めて読みました。人を冷静に観察し、ユーモアをもって冷酷に表現する。すばらしい小説ばかりで、手元においてなんども読み返したくなる本です。
  • どくとるマンボウ航海記
    最初にこの本に、そして北杜夫さんの作品に出会ったのは中学生。
    ホラとマコトが入り混じったような、船の上でのあれやこれやを読み知って楽しくページをめくった。
    将来の進路を考える時に船乗りになろうと決意し、商船大学に入ったのもこの作品のおかげであり、ひがんだ言い方をするとこの作品のせいでもある。
    あれか...続きを読む
  • どくとるマンボウ航海記
    誕生日プレゼントに「私が手に取らなさそうな本」をリクエストした私に、友人が贈ってくれた本です。率直に面白かった…!それに表紙や冒頭の印象では、確かに私が選んで読むことは無かったような気がします。本をおすすめしてもらうの、すごく良いですね。
    内容は愉快なお医者さんが独特の視点で書いた旅の記録です。諸外...続きを読む
  • 夜と霧の隅で
    恐ろしいほど狂気に満ちた作品だった。
    ナチスドイツがさいしょに虐殺したのはポーランド人でもユダヤ人でもなく、同胞ドイツの精神病患者たちだった、という事実。それを当たり前だと賛同していた精神科医師たちが多くいたと言う事実。
    狂気の沙汰にあふれた時代を舞台に、患者を救うため一か八かの博打に打って出た医師...続きを読む
  • さびしい王様
    子供の頃の愛読書…だったはずなのだが、内容を忘れていたので再読。

    ちょっとおフザケがすぎる感じはあるが、なるほど、子供の頃はこういうのが好きだった。王様の長い名前も、頑張って暗記していたことを思い出した。

    今読むと、さびしい、というより、切ない話だな。

    「さびしい乞食」、「さびしい姫君」を読ま...続きを読む
  • 楡家の人びと 第一部
    時は大正時代。時代の流れのなかで紡がれる楡家の人々の物語。
    物語はその中心地である楡病院の院長にして創始者である楡基一郎の一代記でもある。

    楡基一郎は立志伝中の人である。大ぼらふきの気質にして、終始、躁状態を思わせるようなハイテンションで行動が変人。当時の時勢に乗って衆議院議員にもなるほどの野心家...続きを読む
  • 楡家の人びと 第一部
    作家本人のエッセイを読むと和製「ブッデンブローグ家の人々」らしいです。自分の家族をモデルにし執筆のためにインタビューを入念にしたらしいので書かれている内容はかなり事実に基づいているとのこと。物語としても面白いですが、当時の世相等を知る上での上等な資料としても面白い(貴重)です。
  • 幽霊―或る幼年と青春の物語―
    物語後半、主人公は少年期の記憶を思い出す。そのとき、読者も自分自身の少年期の記憶を思い出す、そんな美しい体験をもたらす、美しい小説です。
  • どくとるマンボウ航海記
    タイトルを見ると小説かと思ったが、読んでみると随筆で少々驚き。
    ユーモアもあってなかなか面白いと思った。
  • 楡家の人びと 第三部
    「小説を飲食物にたとえると」『楡家の人々』は「山海の珍味が入った豪華な鍋料理に当たります。」
    評したのは倉橋由美子(『偏愛文学館』)さん。

    そう
    豪華な食事、いえ読み応えのある小説でした。
    歌人斎藤茂吉の息子北杜夫がご自分の実家「青山脳病院」をモデルにして
    祖父母、叔父叔母、父母の生き生きした...続きを読む
  • 楡家の人びと 第三部
    第三部の舞台は第二次世界大戦である。登場人物のそれぞれが戦争の波の中で翻弄されていく。そして、ある人は死に、ある人は戦後を大きく生きていく。楡家もまた新しい時代にのって話も終わりになる。実に深い話であった。
  • 楡家の人びと 第一部
    じつに面白かった。なんといっても登場する人々がそれぞれユニークで行動も面白い。もちろん楽しいことばかりでなく、大変なことも起こるのだが、それを実によく乗り越えている。1部だけdも終わりそうなものを、これがどう続いていくのか、今から楽しみだ。
  • 楡家の人びと 第三部
    アパートの図書コーナーに「楡家の人びと」を見つけました。たまたま、12月24日の日経に紹介記事があり、これも出会いだと思って読み始めたところ、夢中になってしまいました。

    本書は楡脳病院を舞台に、大正7年から昭和22年までの約30年の中で、市井の人びとが何を考え、何を食べ、何に喜び、何で生計を立て、...続きを読む