北杜夫のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
しばらく前に 「どくとるマンボウ航海記」 を50
年振りくらいに再読して、 懐かしさと、 より大
きな面白さがあったので、 高校時代の思い出を
たぐりたくて本書を再読した。
ああ、なんと私の記憶と異なる作品なのだ。
記憶では松本高校時代の寮生活がほぼ全編に面
白おかしく描かれていた。
ところが松高寮生活の様子は楽しく描かれてい
るものの、主流は「青春記」に相応しい青年の
悩みと迷いの告白の書だった。
「一見自堕落な寮生活をつづけてはいたが、 私
たちの心の底には、青年の悩み、 孤独、 疑惑な
どが常につきまとっていた。」
という一文はほとんどの若者の胸に一度は去来
する思いではないだろう -
購入済み
苦しかった
本作は日露戦争から太平洋戦争直後までの波乱に満ちた世相を逞しく生きる家族の姿を描いたもの。
個性的な楡家のユーモアと共に反骨精神も持ち合わせている生活を描いた中盤までは楽しかったけど、大正から太平洋戦争直後までの時代を描いた後半はその個性的な人たちが苦しむさまは、読み進めるのが苦しかったです。やっぱり市井の人々を描く戦争ものは僕は読めない。 -
-
Posted by ブクログ
ネタバレジョーク8割の青春記。
あとがきにある
~私はこの本の中で、大切なこと、カンジンなことはすべて省略し、くだらぬこと、取るに足らぬこと、書いても書かなくても変わりないが書かない方がいくらかマシなことだけを書くことにした。~
の通りの本だった。良い意味で。
作者の宝物を詰めたような本。
古い本だから、聞き慣れない言い回しが多くて苦戦した。でも調べならが読むのも楽しかった。
~私が円周率を考究中のアルキメデスみたいな顔でうなずくと、~
この皮肉めいた一連の流れが特に面白かった。
この作者(北杜夫)のマンボウシリーズ、次は昆虫記あたりを読んでみたいと思った。 -
-
Posted by ブクログ
著者が40歳の頃に、自分の青春時代について書いているエッセイ。航海記、狂阪神時代と続いてこの著者のエッセイを読むのは3冊目。そのため、前者2作品のようなノリなのかと思い読み始めると、流石に少し重かった。青春時代を戦時中~戦後で過ごしたのだから無理はない。まずくても食べるしかないし古本屋で本を買うにも米がいる、というようにとにかく空腹との闘いという今では中流家庭以上では恐らく想像できないような暮らしをしている。
とはいえ、多くの人が書くと暗いエッセイとなるのだろうが、そこは流石北杜夫氏。個性豊かな登場人物と著者自身の行動に笑わざるを得ない。というかどこまでが本当のことなのかわからない。大変な時代 -
Posted by ブクログ
子供のころ、家の本棚にこの本の単行本版がならんでいた。お化けや妖怪(水木しげる系ね)のお話が好きだったわたしは「あの本を読みたい」と親に訴えて、あんたがおもっているような本じゃないんだよ、難しい本なんだよと、たしなめられていた。子供心に釈然としない、あきらめきれない思いが残ったのを覚えている。
著者が20代前半の頃に書いた作品で、副題のように、幼年時の記憶だとかマザコンみたいなものが主題。言われるとたしかにセンチメンタルだし若い感じがある。でも文章がすっきりしているので、センチメンタルさも嫌味にならない。ユーモラスな語り口であるとか、昆虫の描写には後の作品にも通じる北杜生らしさがある。