北杜夫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
自分が学生だった一昔前には「どくとるマンボウ」シリーズはかなり人気があった記憶があるが、その頃は”ユーモアもの”と聞いただけで手を出さない偏った読み手だったので、中公文庫で新版が出た今回、初めて読むことができた。
1958年の11月から翌年の4月にかけて、水産庁の調査船に船医として乗り込んだ著者。当時は留学等でなければまだ海外に行くことが難しい時代だった。行程と著者が立ち寄ったところは、おおむね次のとおり。シンガポール(館山を出て12日目)ーマラッカ海峡からインド洋ー紅海ースエズー地中海ーヴェルデ岬諸島からカナリア諸島(ここが目的のマグロ漁)-リスボンーハンブルクーロッテルダムーアントワープー(ル・アーブル)パリージェノヴァ(ミラノ)ーアレキサンドリアーコロンボーそして帰国。
パリやミラノで友人と会ったりはしたが、大体は航海中の船でのあれこれ、そして入港地での多少の公式日程、飲み屋での酒や遊び。
60年以上前の本で、多少時代が違う違和感はあるものの、全体に伸びやかな文章、闊達さが伺われて気持ちよく読むことができた。 -
Posted by ブクログ
日本語を活字で見ることが好きだ。
だから基本的には読み始めたものはどんなものでも倍速読みでもとりあえず読み終えようとする。
だが、今回は、短編にも関わらず、何度も本を置こうとしたくて堪らなくなった。
一言で言うと不快。
ナチスによる精神患者の安楽死、その大まかすぎる粗筋のみに依拠して手に取ったことを後悔した。そんな短絡化できない気持ち悪さ。
物語のプロットをここに書いてもこの作品の気味の悪さ、不愉快さはとてもではないが表しきれない。黒板に爪を立てたような、顔を背けたくなるような軋んだ音に満ちた正常を装った異常さ。
ナチスの命令に抵抗する医師たちのもがき苦しみ?そんなつまらない文で要約なんてできない。読み手の反発と嫌悪を引き摺り出す歪んだ文章。
他の作品を読むと同一の作者とは思えない。こんなにも全ての登場人物に共感できない作品は久しぶりだ。
文章をなぞるだけでは分からない。考えに考えを重ねて、立ち止まってひとつひとつ見つめ直さないとわからない。同時に分かろうとすることで染み込んでくる気持ちの悪い正体を振り払いたくなる衝動に駆られる。分かったと思っても分からない。そんな作品がみちっと詰められた狂気。
この作品だけでは判断がつかない凄まじい筆力だ。 -
Posted by ブクログ
しばらく前に 「どくとるマンボウ航海記」 を50
年振りくらいに再読して、 懐かしさと、 より大
きな面白さがあったので、 高校時代の思い出を
たぐりたくて本書を再読した。
ああ、なんと私の記憶と異なる作品なのだ。
記憶では松本高校時代の寮生活がほぼ全編に面
白おかしく描かれていた。
ところが松高寮生活の様子は楽しく描かれてい
るものの、主流は「青春記」に相応しい青年の
悩みと迷いの告白の書だった。
「一見自堕落な寮生活をつづけてはいたが、 私
たちの心の底には、青年の悩み、 孤独、 疑惑な
どが常につきまとっていた。」
という一文はほとんどの若者の胸に一度は去来
する思いではないだろうか。 -
購入済み
苦しかった
本作は日露戦争から太平洋戦争直後までの波乱に満ちた世相を逞しく生きる家族の姿を描いたもの。
個性的な楡家のユーモアと共に反骨精神も持ち合わせている生活を描いた中盤までは楽しかったけど、大正から太平洋戦争直後までの時代を描いた後半はその個性的な人たちが苦しむさまは、読み進めるのが苦しかったです。やっぱり市井の人々を描く戦争ものは僕は読めない。