北杜夫のレビュー一覧

  • 幽霊―或る幼年と青春の物語―

    Posted by ブクログ

    おそらくはユング心理学を還元法に用いて
    いま・ここにある私(作者)から捏造された過去の記憶の物語
    トーマス・マンの影響を指摘されるが
    教養小説というより、偽私小説とでも呼んだほうがしっくりくる
    とはいえ、自分を大きく見せようとするでもない
    性のよろこびや、人間としての生きかた
    それに、死に対する畏れが、幼心に目覚めていく有様を
    やや気張った文章で書いている
    その手法には、いま読んでも清新さを感じるが
    クソみたいなナルシズムの産物…と言われると
    それもまた認めざるを得ない

    北杜夫のデビュー作で、もとは自費出版だったという
    13冊売れたとか

    0
    2018年10月03日
  • マンボウ 最後の大バクチ

    Posted by ブクログ

    家族と友の愛に囲まれて、といったところですか。
    こういうの読まされてもなぁ、、、と思わなくもないけど、今だと非常識とか叩かれそうで、ある意味ノスタルジーな空気もまとっているのかも。
    大笑いとはいきませんが、くすりとくるエッセイですか。

    0
    2018年09月22日
  • マンボウ 恐妻記

    Posted by ブクログ

    プライバシーの切り売りと見るか微妙なところですが、まぁ当事者が仕方ないと思っているなら、その読者と共犯関係が成立する訳で。
    一つ言えるのは、自立性の欠落は日本の作家に長らく流れる良い意味でも悪い意味でも美徳とされていて、この作家もその流れにいるということかも。病というどうしようもない事実を勘案しても。

    0
    2018年09月09日
  • 船乗りクプクプの冒険

    Posted by ブクログ

    まぁ確かに子供向けの本ですよね、そういう意味では良い本なんだと思います。がすれてしまった今となっては、ダークな部分が足りないなと思ってみたり。
    駄目ですなぁ、当方。こういう本は無心で読んでクスっと笑わないといけないものなのに。

    0
    2018年09月06日
  • どくとるマンボウ航海記

    Posted by ブクログ

    あくまで肌に合う合わないの問題でしょうが、『深夜特急』とか『何でも見てやろう』ほどのめり込めなかったかな。
    この作家の私的部分が見え過ぎることがその因のような気がする。『楡家の人びと』もまぁその極致ではあるんですが、どうもエッセイだけにそれが露骨かなぁという感じ、何と言うか醒めた視線が前2作ほど鋭くないと言いますか。
    ちなみにドイツ料理にあまり感心しないことにはまったく不同意、まぁこれも個人的嗜好に過ぎないことではありますけれども。

    0
    2018年09月02日
  • 巴里茫々

    Posted by ブクログ

    辻邦夫への甘え、案内人との再会に関する現実、どちらも作家の人間性を垣間見るようでなかなか読ませてくれます。とくに後者は何と言いましょうか、厳しい訳ではないけれども現実というものはそういうものだと腹落ちするもので、妙に感動的でした。

    0
    2018年08月29日
  • 見知らぬ国へ

    Posted by ブクログ

    北杜夫への期待値が高かったせいか、まぁ普通のものかなぁ。
    もしかすると長旅でなければかなり物足りないものかもしれませぬ。

    0
    2018年08月29日
  • 人生のずる休み

    Posted by ブクログ

    この人の功績の一つが、躁鬱病に対する偏見を吹き飛ばしたこと。著者は精神科医かつ躁鬱患者なので、自らの障害にまつわる悲喜劇を笑い飛ばしつつ、医師としての冷静な分析も忘れなかった。自分は小学生の頃からこの人の著作に馴染んでいた。いい影響を受けたと思う。

    0
    2018年03月19日
  • 夜と霧の隅で

    Posted by ブクログ

    表題作の他にも短編が一緒に収められている。
    個人的には表題作ではなく、蝶採集人が語る「谿間にて」が好み。動物を相手に、厳しい自然の中窮地に追い込まれながらもひたすら闘う。ヘミングウェイの老人と海にも通ずると勝手に思っている。

    表題作も、初めは淡々と客観的に語られ、患者はもちろん医者も変わり者、というように始まった。そこからの切り返し。しかし語り口は変わらず。絶妙だと思った。

    0
    2017年08月03日
  • 夜と霧の隅で

    Posted by ブクログ

    北杜夫氏の初期作品集
    氏がそう状態の時に書いた、さまざまなユーモアあふれる小説ではなく、深い思索に入った時に書かれた作品が集められている。
    自然に入る、山に入る作品についても、その自然の描写、山の描写は主題ではない。そこに置かれた人の内面を抉り出すように書き残す。
    そして表題作の「夜と霧の隅で」
    ナチスドイツの優生思想の中に置かれた、精神科の医師たちの姿。
    北杜夫という偉大な作家の、ひとつの面にじっくり浸ることができる作品。

    0
    2016年11月11日
  • マンボウ 遺言状

    Posted by ブクログ

    うーん、正直な所、読んでいて寂しくなってくる1冊。
    ご本人はユーモアを交えて書いておられるつもりなのでしょうが、こうも死にたい死にたいと書かれますと、ねえ…お気持ちは分からないでもありませんが。

    「みんな長生きしそうだから今のうちに」と事前追悼文を綴った宮脇俊三氏も亡くなられてしまいました。時の流れは本当に残酷です。

    「遺言をするようなヤツに限って、なかなか死なない」と言い放つ解説に救われた気になりました。先日ちらっとNHKで見かけたときは車椅子でしたが、どうぞ長生きして頂きたいものです。

    0
    2016年11月05日
  • どくとるマンボウ人生ノオト

    Posted by ブクログ

    マンボウ先生、晩年のエッセイです。
    かつては船医として7つの海を渡り、カラコルム登山隊のドクターとしても参加した北杜夫さんですが、晩年は入院生活をされながらも、ご家族に囲まれて穏やかに暮らしておられたようです。
    年を取るといろいろな欲が消えるので、ストレスが無くなり、なかなか死ねない、アイロニイだが真実だと、医者らしいことをおっしゃっておられ、なるほどと思いました。老体となったご自分の姿を、衰えることのない独特のユーモアでしみじみと語られていました。
    昔話も多く、父茂吉のことが多く語られているのは、尊敬してやまない存在だったことが伺われます。
    年を重ねてゆけば、親しかったひととの別れも多くなり

    0
    2016年08月27日
  • 夜と霧の隅で

    Posted by ブクログ

    「夜と霧の隅で」ナチスのユダヤ人だけでなく不治の精神病者まで間引いていく命令に、考えられる治療を全て行い、患者が連行されていくのを防ごうとする医師。不治の対称でなかった日本人だけが治り、ユダヤ人の妻がもういないことを悟る。退院間近に自殺してしまうが、様々な苦難の現実に覚醒され、彼を絶望に導いたのか。他初期作品4編。2016.8.21

    0
    2016年08月21日
  • さびしい王様

    Posted by ブクログ

    いやー北杜夫さん!!!!!
    ふなのりクプクプの冒険がだいすきだった!
    小学生の時に笑い転げた。そんな著者の大人向けっぽい装丁&分厚さのこれを見つけて、分厚いから迷ったけど面白いに違いないから買いました。
    なんやこらーーーー
    何度も本で吹き出したの久しぶりです。
    テキトーすぎるしつじつま合わんしこれはひどい笑
    いい意味で。笑
    最後はネタ回収さえしてくれないし
    どーなったんwww
    なんなの!!!!と拍子抜けしたけど、なんか破天荒というかこんなのもアリだよねっていうか、肩の力が抜けました。
    こうじゃなきゃダメっておもわなくても、いいか。って思えた。
    もうなんか、無意味すぎてこんな分厚いのにこ

    0
    2016年08月20日
  • どくとるマンボウ航海記

    Posted by ブクログ

    1960年の刊行とのこと。文字が詰まって読みづらかった。楡家の人とは一線を画すユーモア小説。今の時代には馴染みづらい。2016.3.22

    0
    2016年03月22日
  • マンボウ最後の家族旅行

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    日立の「この木、なんの木、気になる木」は、年間五千万の維持費 ユーモアは人間の賢さであり、生きる知恵なのだと思うようになった ドクトルマンボウ史の一見順風満帆に見える人生、計り知れない試練があったと知る

    0
    2015年09月26日
  • 夜と霧の隅で

    Posted by ブクログ

    ・岩尾根にて
    ・羽蟻のいる丘
    ・霊媒のいる町
    ・谿間にて
    ・夜と霧の隅で
     の五編。

    最初の1編を読み終えて、あれ?
    これって別の話し?「夜と霧の隅で」でじゃないよね?

    とよく見たら、5編掲載の1編目であった。

    「夜と霧の隅で」
    読み始めて、ありゃ?
    これは、同じ芥川賞受賞作品でも、又吉君の「火花」とはちょいと違うな。大丈夫か。読み終えられるのか。
    苦手な、カタカナ名前がたくさんでてくるし。。

    でも、終盤は一気に読んでしまった。
    読み終えて、何ともいえぬ、重いもの(別に嫌な感じじゃなく)が残った。

    0
    2015年11月25日
  • 世を捨てれば楽になる

    Posted by ブクログ

    高校生のときに出会った、どくとるマンボウ。
    その衝撃は凄まじく、なぜかツボに嵌りエッセイを読破、さらには文芸作品も。
    さびしいシリーズ、楡家の人々、怪盗ジバコ・・・
    懐かしさで胸がいっぱいになる。

    0
    2015年07月08日
  • どくとるマンボウ航海記

    Posted by ブクログ

    現実逃避には紀行文がいちばん。できれば、凡人とは目線がズレていて、しかもコミカルなのがいい。『どくとるマンボウ航海記』は、まさしくそんな条件を満たす絶好の一冊。

    「掘りだされて一年目のゴボウのごとく疲れ果てた…」(上陸がうれしくてついはしゃぎすぎたマンボウ先生)

    「もっとも安くもっとも面白い場所を古ギツネのごとく捜しだす…」(古参乗組員について)

    「海と空の中間の色彩で、ほそく一直線におどろくほど起伏なくつづいている」「それはいかにも涯がなく,窺いきれぬほど暗黒なものを蔵しているかのようだ…」(船上から目にしたアフリカ大陸の眺めについて)

    こんな独特の表現とともに、いまはもう二度とこの

    0
    2015年02月06日
  • どくとるマンボウ青春記

    Posted by ブクログ

    なぜにこうも克明に青春時代を記憶しているのかと驚きながら読み進めてみると、氏はキッチリと日記をつけていたのだそうな。自分はもちろん日記など書いてもいなしし書いたとしても読み返したいとも思わない。
    氏のような文豪こそ値があるであろうと羨ましく読ませていただく。
    自堕落な生活が多く描かれているが、本当のところはきっと信念に基づく勉学と快活な生活も営まれていたとであろうと想像する。
    と、このような読書感想文を自分が後世に読み返すとどんな感覚になるのかすこしだけ興味を覚える。

    0
    2014年07月30日