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海外渡航が稀少だった昭和三〇年代、水産庁の調査船に船医として乗り込んだ若きマンボウ先生。アジアから欧州をめぐる約半年の船旅を、のびやかな詩情と軽妙な文体で綴り、一躍人気作家となった。戦後ユーモアエッセイの地平をひらいた記念碑的作品に、航海中の写真、エッセイ「傲慢と韜晦」などを収録した増補記念版。〈解説〉なだいなだ
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Posted by ブクログ
1960年、33歳、「夜と霧の隅で」で芥川賞を受賞する直前の出版。この『航海記』で大ブレーク。文章に勢いがあるし、ユーモアにキレもある。その年のベストセラー第3位になったのもうなずける。躁鬱の気配がさほどないのもいい。 1958年の11月から半年間、水産庁の調査船に船医として乗り込み、インド洋からヨ...続きを読むーロッパを回る。船上の人間観察がおもしろい。荒れた時の海の描写はさすが。 悪知恵をつける友人たち、AとHとMが何度か出てくる。Aは心理学者の相場均、Hは精神科の医師の堀内秀(なだいなだ)、ということまではわかるが、さて、ニューヨーク帰りの医師Mはだれ? 立ち寄ったパリでは、親友Tのアパートに投宿。Tの奥さんを「白人の女にくらべればまったくの小娘で、防寒のためにエスキモーみたいな珍妙な頭巾をかぶっている」と書き、さらには「チョコチョコ店頭の雑踏の中を走りまわっているさまは、日本人が見ても異様である」とまで。あんまりではないか。Tは辻邦生、奥さんは美術史家の辻佐保子。 本書を世に送り出した編集者は中央公論社の宮脇俊三だった。旅行記の産婆役としてこれ以上の人はいないかもしれない。
懐かしい本が再刊されていたので久しぶりに読んでみました。 少年時代にイキがって手に取り、そのま夢中になって読み進め、ボロボロになるまで愛読した一冊です。 今で言う厨二病全開だった当時が恥ずかしくも思い出されますが、なぜか本作の内容はまったく覚えておらず、かつて何度も繰り返し読んだにもかかわらず初読で...続きを読むあるかのように楽しく読めてしまい、うれしいやら情けないやら。 まあ得したと思っておこうかと自身を納得させています。
自分が学生だった一昔前には「どくとるマンボウ」シリーズはかなり人気があった記憶があるが、その頃は”ユーモアもの”と聞いただけで手を出さない偏った読み手だったので、中公文庫で新版が出た今回、初めて読むことができた。 1958年の11月から翌年の4月にかけて、水産庁の調査船に船医として乗り込んだ著...続きを読む者。当時は留学等でなければまだ海外に行くことが難しい時代だった。行程と著者が立ち寄ったところは、おおむね次のとおり。シンガポール(館山を出て12日目)ーマラッカ海峡からインド洋ー紅海ースエズー地中海ーヴェルデ岬諸島からカナリア諸島(ここが目的のマグロ漁)-リスボンーハンブルクーロッテルダムーアントワープー(ル・アーブル)パリージェノヴァ(ミラノ)ーアレキサンドリアーコロンボーそして帰国。 パリやミラノで友人と会ったりはしたが、大体は航海中の船でのあれこれ、そして入港地での多少の公式日程、飲み屋での酒や遊び。 60年以上前の本で、多少時代が違う違和感はあるものの、全体に伸びやかな文章、闊達さが伺われて気持ちよく読むことができた。
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