あらすじ
関東大震災による建物の消失、圧倒的なカリスマ性を誇った基一郎の突然の死。災いが続き衰退に向かう楡病院に、気位高く君臨する基一郎の長女・龍子、二代目院長を引き継いで病院経営と家庭の不和に悩む夫の徹吉、不幸な結婚で落ちぶれる龍子の妹たち、浮世離れした弟たち。時代は大正から昭和へ変わり、軍国主義の風潮が広がる中で、一族それぞれの運命は大きく分岐し変転する。
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桃子と徹吉が可哀想だったな。
私は女だけど、龍子より徹吉贔屓だ。
途中で院代が50周年記念のために気合い入れているところで
やっぱり基一郎は凄かったんだなと改めて感じた。
この巻は終わりの方に近づくほどに
戦争が近づいてくるのが分かって、いよいよかとドキドキした。
さて次はいよいよ戦中だ。どうなるのだろう、楡家。
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戦争に進んでいく不穏な空気と楡家の崩壊(?)が絶妙にシンクロしている。
史実を背景に物語を語りたい(語りたがる)作家は是非見習ってほしい。
最後の第三部、期待しとります。
Posted by ブクログ
基一郎没後の楡家と楡病院、そしてそれを取り巻く社会情勢が描かれる。
第一部ではどこかでたらめな人物に見えた基一郎だが、いなくなってみると、あれほどのカリスマ性と頼りがいを持つ存在はもう現れそうにない。作中では、なんとなく神格化されつつあるようにも感じた。
登場人物は多いものの、物語の軸は婿養子の徹吉に置かれているように思える。読み進めてようやく腑に落ちたが、徹吉は斎藤茂吉であり、その次男にあたる周二が北杜夫なんですよね。
徹吉・周二は楡家の内部にいながらも本来は外から入ってきた存在で、その“内からの視点”と“外からの視点”をあわせ持つ立ち位置が、この作品の独特の冷静に全体を見渡す視点を生み出しているのかな。
冒頭から予感はあったが、第二部は太平洋戦争の開戦によって幕を閉じる。
真珠湾攻撃へ向かう空母に乗り込んだ城木(周二の兄・峻一の友人)の体験談が生々しく、引き返せない一線を越えてしまう瞬間が描き出される。そのほかにも当時の出来事を挟み込む場面が多く、全体として強い臨場感を生んでいると感じた。
ラストの徹吉と周二の会話場面は、急に私小説めいた空気になっていて面白かった。
Posted by ブクログ
これはとてつもなくいっちまっている作品ね。
ちなみに実話がどうも元になっているようで
ある本を書いている人は…なのです。
結局この家は欺瞞の塊だったのでしょう。
見せかけの栄華を見ている感じですね。
その裏側には目も当てられない負債があるというのに…
院代の望むとおりにならないところが
没落を示唆していて痛々しかったです。
どんなに良くしようとしていても独り歩きだからね…
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シナ事変から太平洋戦争開戦と時代は楡家の人びとを押し流して行く。昭和初期の精神史を読むようだ。特に楡俊一の友人で空母瑞鶴に乗った軍医の語る開戦までの経緯は迫力がある。
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昭和元年〜第二次世界大戦までを記録。
終盤近くの、ある楡家の友人目線による真珠湾攻撃開戦時の空気感が生々しく、良かった。
仄かなユーモアと戦争突入前の日本の緊迫感がバランス良く、中弛みしなかった。
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大黒柱が去った後のバタバタを中心に。残された人たちも個性的だけど、物語中でも描かれているように、やっぱり先代と比べると皆が小粒に思えてしまうというか、そのせいで、展開そのものもやや小ぶりになってしまった感がありました。病院の勢いがやっと戻ってきたところで、今度は世界大戦に突入してしまう訳ですが、その絡みで、やっぱり家も没落してしまうんでしょうか。そのあたりが描かれるであろう下巻の結末に、期待は大きいです。
Posted by ブクログ
第2部は楡家の二代めに当たる人々やその子供たちが主役です。
初代の楡基一郎が強烈なキャラクターを発揮していたことからその後に続く人たちはどんな人でも苦労する宿命を負います。
それぞれが持って生まれたその気質のまんま、第二次世界大戦開始までの不穏な時代に沿うように、みんな穏やかざる人生を歩む様子が書かれています。
叙情的な部分とユーモラスな部分が織り交ざった、ドクトルマンボウと純文学を書き分けた北さんならではの小説です。
Posted by ブクログ
あれほど心を病むような慣わしに翻弄された人びとは、災害や病、そして戦争によって周囲のつながりが狂い出す。それは精神をむしばんでいくような毒ではなく、日常の生活や風景に溶け込んでいて知らぬ間に身体へと染み込んでいく。この緩やかな悲劇が怖くなる。