北杜夫のレビュー一覧

  • 夜と霧の隅で

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    ネタバレ

    精神障害者は殺処分すべしという極端な命令。抗う術は治療の希望を示すのみ。荒療治で患者を死なせつつも留まらない医師。彼のやり方を悪と同断するのは難しい。

    精神患者に価値なしとの発想は武田泰淳の富士にも


    そのほか、どんよりとした空気の短編が幾つか。

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    2022年08月22日
  • どくとるマンボウ青春記

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    ネタバレ

    高校の課題図書。松本旅行にあわせて再読。当時は読書嫌いで苦しんだが、読み直すと綺麗な文章じゃないか。航海記よりもしっとりとした部分が多く、これはこれで好き。
    学生時代はカンニングやらなんやらひどい生活を送りました、卒業すれば人を救うどころか殺してしまいかねない、これではいけないと精神科に進んだという件、ブラックジョークが効いている。


    松本で生まれ育った人間の地元への愛着が丁寧に書かれている。文学者でもないとこれだけの周囲の描写は難しかろう。

    船旅の連れは辻邦夫。思いがけず好きな作家があらわれる、本と本とが繋がる時の喜びよ

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    2022年08月22日
  • どくとるマンボウ航海記

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    いいなー! と思わせ、頭に絵が浮かぶ優しい文章。何となくのんびりしたい時に適当なページから読んでも楽しめます。

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    2022年08月11日
  • どくとるマンボウ航海記

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    なんだか次元を超えた話で面白かった。携帯もない、ただとにかく海の中を進むのを待つってどんな感じなんだろう(笑)全くもってわからない。そしてこの筆者もまたかなりの変わり者っぽくてまた読みたいな。

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    2022年05月20日
  • どくとるマンボウ航海記

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    面白い
    阿呆やなぁって思いつつ、ついつい笑かされる
    頭いい人ってやっぱり面白いなあ
    十二指腸潰瘍になったのは本当に気の毒

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    2022年04月25日
  • 夜と霧の隅で

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    ネタバレ

     客観的に間違っていることを頑固に信じるのが妄想だ。でも誰だって客観的に生きているわけではない。個人だって国家だって民族だってそうだ。
     
     精神を病むと言うことが深く沈みきること、人間の持つ最も原始的な地場に帰ると言うことになるのかもしれない。

    上記が心に響きました。第二次世界大戦中のドイツの精神病院を舞台に、精神病患者の心や脳に触れようとするものの、触れられない霞がかっているそれは何とも言えない小説でした。

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    2022年02月04日
  • どくとるマンボウ医局記 新版

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    ネタバレ

    私は大鬱になって呼吸をするのも苦しい状態も体験した。自律神経の失調も起こし、下痢をしたり便秘をしたり、或いは急に暑くなったり逆に寒けを覚えた時もあった。しかし、どんな鬱でも時期がくれば必ず治ると確信してじっとしている。これを私は虫の冬眠と称している。これだけは世間の人は私を見習っていただきたい。なにしろ精神科医にして、同時に患者でもあるこの私が言うことなのだから。

    鬱になった人間に、これほどに説得力があり心に響く言葉は他にないだろうと思う。
    この先また鬱になることもあるだろうけど、この言葉を思い出したい。

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    2021年09月29日
  • どくとるマンボウ人生ノオト

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    やる気ないときに読んだら、不思議と癒された本。
    骨折したり、肺を患ったり、躁うつ病になったりと、病気に忙しい印象を受けるものの、読んでいるうちに著者の世界に癒されている。それだけ魅力のある語り口ということなのだろう。
    実際にやる気ないときにWeb検索したら、文中の言葉がhitしたので購入したのだった。今はどのフレーズだったか忘れてしまったけれど、それも風情というもの。
    北杜夫氏の不思議と癒される世界。他の作品も読んでみたい。

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    2021年05月17日
  • 船乗りクプクプの冒険

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    初めての作家さんはいい!描く世界が新鮮。

    物語の中の物語、その中にキタ・モリオが小説家として出てくるなんて思わなかったなぁ。きっとお茶目な人なんだろう。

    どくとるマンボウ航海記の方も読みたい

    2021.2.20

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    2021年02月20日
  • どくとるマンボウ青春記

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    北杜夫の青春小説
    以下書き抜き
    模倣し、かつ模倣されない奴は駄目なんだ。
    みんなが馬鹿に見えて仕方がないときと、自分が片輪に見えて仕方がないときがある。しかし、みんなが片輪に見えるときや、自分が馬鹿に見えるときは一ぺんもない。
    ・一体、この世の若者で、死への誘惑を受けなかったものがどれほどいようか。よほどの強者か、相当に鈍感な者か、あるいは外界の危機が自己の内部を覗きこむことを妨げた場合を除いて。
    ・スペインのことわざに、三十歳までは女が暖めてくれ、そのあとは一杯の酒が、またそのあとは暖炉が暖めてくれる
    ・他のすべてのことに無能力だとしても、残されたただ一つのことに才能があるとは限るまい。

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    2021年02月19日
  • どくとるマンボウ航海記

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    軽快なタッチで描かれる、世界各地の港に降り立つ著者の旅。
    サトリを開く下りは、現代人でも思わず笑ってしまう。
    著者の降り立つ国や河川はどの辺りなのか、グーグルマップで調べながら読みすすめてみたが、思わず地理の勉強にもなった。
    全く真面目さを感じさせない著者が、船の中では医者として働く、そのミスマッチまでもが面白くなってきた。
    著者のような筆致で物書きをしてみたいものだ。羨ましい。

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    2020年12月24日
  • どくとるマンボウ航海記

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    なかなか海外に行けない世の中なので、行った気分になろうと思って手に取った作品。

    もう60年も前に書かれた作品なので、描写されている海外の様子などはだいぶ変わっては来ているだろうと思うが、漁業船の船医としての航海生活や寄港した港の風景や文化などの描写は、新鮮で面白かった。
    医者というエリートでありながら、尊大振ることもなく、逆にホラ吹きだったり、ナマケモノであったり、まるで少年かのような無邪気さ・好奇心の強さ、そして偏屈さがこの作品を愉快にしているのだと思う。
    独特なユーモア溢れる文章で、夢中になって一気に読みきってしまった。

    著者はあとがきにて、「私はこの本の中で、大切なこと、カンジンなこ

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    2020年06月04日
  • どくとるマンボウ航海記

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    ☆☆☆2020年4月☆☆☆


    コロナ騒ぎ真っ只中。戦後10年ぐらいの時期にマグロ漁船に乗り込んだ船医、北杜夫。公開で立ちよる先々で飲み歩いたり、国情を観察したり。また、当時の船員の気質を知ることができ、興味深かった。当時の人たちは戦争を経験しているからか、度胸が据わっているというか、なんというか。

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    2020年04月04日
  • どくとるマンボウ航海記

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    水産漁業調査船の船医として日本からヨーロッパにかけて航行したときの体験をエッセイにした作品。
    高校生に読んで以来、17年ぶりに思い立って読破してみた。どんな内容か全く覚えていなかったので実質初めて読む感覚だったが、自虐的な読み口、どこまで本当でどこまで嘘かわからない内容がすごく新鮮でおもしろかった。17年間の間に私が訪問した場所も増えたことで内容がより入るようになったことも、おもしろさを感じた要因ではないか。1960年頃はまだ海外渡航が珍しい時代だったと思うが、そのなかで海外に対して好奇心を持ちつつ、謙虚な姿勢で過ごされてこられたことに驚く。海外に渡航するにあたり大切な姿勢は、今も昔も不変だと

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    2020年05月05日
  • 夜と霧の隅で

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    頭から順に読んでいくと文芸というか文学というか
    解説に云う「透明な論理と香気を帯びた抒情」というふぜい
    つまり「お話」のない小説でない文章で
    心境を情景描写に仮託しているようなそれである
    仮託とかいうことばを使う時点でそんなかんじお察し

    最後に収められている表題作は他と違って「お話」が明瞭な小説として読める
    こういうのだと読み下しやすい
    またこのお話からみればその他の作品にある作者が描こうとしていたものも
    なんとなく理屈づけられて見えるような気がしないでもない

    つまり小説すなわち筋書きのあるお話でないものは
    筋書きでいちおう方向が示されているものに比べてどうとでもとれるのではないか
    どの作

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    2018年12月09日
  • どくとるマンボウ航海記

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    北杜生さんの訃報に接し、少し前に買っていたのを読みだした。

    この「どくとるマンボウ」シリーズは、親の書棚にあったのを小学生の頃に読んでいた。当時、教室の後ろの掲示板に読書記録を貼りだしており、そこに何冊か感想を書いて貼ったのを覚えている。まったく小学生らしくない。この航海記を読んだかどうか記憶は定かでないが、少々アダルトと言えなくもない内容も含まれていることから察するに、もしかしてこれは読んでいなかったのではないかと思う(青春記や昆虫記は読んだはず)。こうした韜晦に満ちた書き振りのエッセイが小学生の人格形成に影響を与えたか否かは不明である。

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    2018年11月05日
  • 夜と霧の隅で

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    ​ひさしぶりに文学な作品を読んだ。

    小説と文学の違い(とわたし流の分け方)は、
    地の文が説明、解説になっているものと、
    文が練れていて、雰囲気が漂うもの
    とである。

    もちろん、前者でも後者でもいいものはいい。
    コクがあるものが傑作なのであるし、読む楽しみになる。

    この短中編集に収めてあるのは
    「岩尾根にて」「羽蟻のいる丘」「霊媒のいる町」「谿間にて」「夜と霧の隅で」

    どの作品も心揺さぶられるのだが、やはり芥川賞の「夜と霧の隅で」が印象深い。

    第二次大戦中、ドイツ南部の町にある公立精神病院の医師たちは、
    ナチス政権による民族浄化というとんでもない思想の影響を受けざるを得ないそ

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    2018年10月10日
  • どくとるマンボウ青春記

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    生徒が「面白い」と言っていたので読んでみました。
    恥ずかしながら、北杜夫の作品は読んだ記憶がなかったのですが、エッセイはとても魅力的な文章が多かったです。
    斎藤茂吉の息子として、医者になることを父から強くおしつけられながらも、旧制高校時代の話や戦後の混乱期を自身の望通りに生きてゆこうとする著者の姿は、滑稽ながらも読者の人生観に訴えてくるものがあるように思います。
    自分がなすべき「仕事」とはどのようなものなのか、他者とのつながりをどのように持つべきものなのか、著者の一見すると自堕落で適当な生活にも、ヒントがあるのではと感じました。

    エッセイの文章も軽快で笑いに富んでおり、著者のほかの作品もぜひ

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    2018年08月10日
  • 船乗りクプクプの冒険

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    現実逃避がしたくなるのは、大人も同じ。
    突拍子もないことが起こる物語は、大人が読んでも子どもに負けないくらいわくわくする。
    大海原での貴重な体験は、タローにとって、机の上での勉強よりずっと大事なことだった。
    童心に返って、大らかな気持ちで読み終えることができた。

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    2018年02月24日
  • 夜と霧の隅で

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    「岩尾根にて」
    山中で自我を失ったような気分になる話
    クライマーズ・ハイかな?

    「羽蟻のいる丘」
    自暴自棄のため放射能Xの女王蟻に自分を重ねる女がいて
    気の毒なのはそれにつきあわされる幼い娘だが

    「霊媒のいる街」
    逃げ場のない大人たちはロマンを求めてたわごとを言う
    本当に過去を忘れられない坊やはハードボイルドにひたって生きる

    「谿間にて」
    蝶の採集で名を成したいあまりに精神の様子が少しおかしくなった人の話
    かつて失われた全能性が蝶のまぼろしとなって現れるのだろうか

    「夜と霧の隅で」
    ナチスの断種政策によって収容所送りにされる患者を1人でも救おうと
    無謀かつ無意味な実験手術に走る精神科医

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    2017年07月22日