苅谷剛彦のレビュー一覧
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コロナ禍での現代版鎖国。
自粛によるコロナ生活。筆者の日本でのコロナ対策の隔離生活が詳細にわかったのは興味深いと感じました。
海外留学生の再入国を認めないなど、海外との違いは初めて知りました。
自粛というと自ら進んで行動する様に思えるけど、同調圧力によるものというのは、自らの思考を止めてしまうことになる。
長い歴史の中で、権利は自ら得たものでなく、上から与えられたものという印象が大きいのは、明治維新然り、戦前また、戦後の体制が、実は今も続いているのではと思わずにはいられません。反抗心はあっても、上が決めたことに従順な気がします。
同調圧力に弱い日本人かもしれませんが、欧米諸国の様に、国民が -
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いつもながら読み込むのはちょっと難しいんだけど、はっきり分かったのは、コロナ後の教育は、もともと変革の流れができていたけどそれを後押しするように、変わるということだ。そしてそれはピンチだけどチャンスでもある。教育政策が突きつけてきているエセ演繹的な、理想を掲げて装飾した改革を受け取るのではなく、自ら帰納的に思考することが必要だ。
私のこれまでの関心としては、大学のあり方についての章が大変勉強になった。私が大学入学後からモヤモヤしながら追究してきたことは、日本型大学教育への不満から発していたもので、その解決には学生時代に他国の大学教育を受ければよかったのだということだ。定年退職したら、 -
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ネタバレ<目次>
はじめに 教育改革神話を解体する
第1章 日本型教育改革の習性(くせ)
第2章 入試改革、グローバル化~大学大混乱を超えて
第3章 人文科学の可能性
第4章 教育論議クロニクル…2016~2020年
終章 コロナ渦中の教育論
<内容>
目に鱗の内容だった。特に第1章。文科省が(中教審が)掲げて、押し付けてくる(教員になった当初は「目標」という感じだったが、近年は「法令順守」と言われる)指導要領は、「エセ演繹」なのだと。演繹から、その理論から具体的な実証をしなければならないが、指導要領改訂のたびに「何が変わったか」を示すものに、実証した根拠が見られないと。「観 -
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ネタバレ「○○はもう死んでいる」。北斗の拳で聞いたような台詞だが、本書で主に取り上げられているのは、オックスフォード、ハーバード、そして東大。決して死んでるような大学ではない。
「(昨今の)日本の大学改革論の不幸なところは、コンセンサスを得ようとしたときに座標軸(大学は何を目指すのか、何がクリティカルかという軸)を設定する人がいなくなってしまい、どこで自分たちが対立していて、どこで折り合いがつかないのか見えなくなってしまっている」(p.37)。その背景には「経済ナショナリズム」(p.40)と国家予算の削減。これが現場の混乱をもたらしているのではないか。
アメリカやイギリスの大学組織で見習うべき点は -
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英語教育、国語教育、社会学のプロの方が、それぞれ異なる立場からことばの教育について論を交わしている本。議論の中心となるのが、大村はまさんという国語教師の方が実践した教育方法。半世紀の間、ひたすら、言葉を使うことの重要さを子供に感じてもらうような実習を自ら考えだしては実践したらしい。
論点としては想像以上に幅広く、面白かった。国語教育・英語教育に共通する現在の問題点や重要な点は何か?ことばの力を育てるために有効な方法は何か?そもそも教育について考えるとき、「理論」とはどんなふうにつかうべきものか?
最後にまとめられていた通り、ことばの教育=考える力の教育という点が印象的だったし納得した。
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何かの書評から手に取ったが、とても興味深い本に巡り会えて感謝。この本のテーマは表紙の言葉で、「学校や大学での学習や研究の場面だけでなく、仕事の場や社会生活の上でも、一面的な見方にとらわれていたり、安直にわかったつもりで終わってしまう議論にならないためにも、問の立て方と展開の仕方を身につけることは役立つ思考力の要なのだ。」とある。オックスフォード大学で行われているチュートリアルという形式の、先生と生徒の一対一の学びを実際に行い、テーマにある問の立て方と展開の仕方を詳細している。先生はもちろん、生徒もレベルが高く、対話形式のまま記載されているので分かりやすい。最後に、少し時間をおいて生徒が振り返っ
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オックスフォード大学での学部生向けの個別指導(チュートリアル)と大学院生向けの研究指導(スーパービジョン)を日本人向けに再現したもの。論理展開の方法や問いの立て方など、具体的に応用できる技術が散りばめられている。受講者による学習レポートも、指導中に感じた違和感なども率直に綴られていて、読み応えがあった。
なお、指導の内容が身に付くかどうかは、学生自身の訓練が欠かせないし、「先生は教えることはできますが、後はモチベーションを出してもらうしかない」と言い切っていることは見逃せない。教員が教える技術を磨くことが必要なのは言うまでもないが、学生を良い意味で突き放すことも必要なのだろう(もっとも、突き -
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大学ランキングというものの本質が、
著者が言うように欧米の一部の有名大学による「外貨獲得」を目的にした、
留学生獲得(主に中国、韓国、東南アジアの裕福な学生)にあるのなら、
いったい、日本の大学が行っているグローバル化とは何なのだろうか。
世界の有名大学と肩を並べる大学になる必要性があるのか?
ランキングのルールや評価基準を制定しているのがイギリスなら、
圧倒的にイギリスの大学や英語が母国語に所属している国の大学が有利だろう。
そのランキングの上位に入りたいがために、行う改革とは、
果たして、有効なのだろうか?日本の大学のグローバル化は、
①国際ランキング(欧米の価値基準で)100位以内に1 -
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本書は既出の原稿をとりまとめたものだった。無理に各章のつながりを求めなくてもよい気がする。表題ありきの書籍編集側の商業的アイディアだろうか。とはいえ、読み手側で重要な知見と考えられるエッセンスは十分に抽出可能である。いかにいくつか引用した。それらは著者にしか指摘できない点が多い。また、SGUという和製英語の奇妙さを指摘した解説はやや赤面ものだった。ただより重要なのは、大学のランキング評価の結果から、大学の社活動の国際的な「遅れ」を導出し、一般の産業と同様に「追いつき型近代化」(p.202)を主たる問題解決の方法にしてしまっているという指摘である。
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教育の哲学的な模索を対談形式でまとめたもの。非常に参考になった。ただ、現場の視点ではなくあくまで原理原則から論じたものである。お二人の述べる理想的な教育を実際にどれだけの学校が、何人の教師が実現できるのかと問えば、かなり厳しいのではないか。
本書はそういう現実を超えて語られるところに意味があるのだろう。著書の方々が例えば5年現場で勤務すればかような意見は言えなくなるかもしれない。教室での教育だけに集中できる教員など実際にはほとんどいない。
では、仕事の山で遭難しかかっている現場の教員こそが偉いのかといえばそんなことはまったくない。教育学の先生方には大いに理想を語っていただきたいし、現状に