苅谷剛彦のレビュー一覧

  • 教えることの復権

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    教えることの専門職としての教師の役割についてはっとさせられた。自分がはっきり言葉にできないまま今まで来てしまったのを大村はま先生と刈谷夫妻が引き出してくれた。
    「社会人でも勉強はできるが、学ぶことだけを専門にしている時間は生徒、学生でいる間だけ。学校という場があって、教える専門職の教師があって、その中で学ぶことのを専門としている時期の子どもがる。社会の中で特別な場である。」本当にそう思う。

    0
    2018年04月07日
  • オックスフォードからの警鐘 グローバル化時代の大学論

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    リンガフランカである英語を母国語として教育を行う国は、常にグローバルな競争に晒される。その一方日本では「日本語」という障壁のため、人や資金や情報の国境を超えた行き来が遥かに少ない。そこでいう「グローバルな競争」は「リアル」なもの(実感できるもの)ではない。現実味がないから、「グローバル化戦略」もインセンティブに欠け、改革も形式的で実らないのである。

    グローバル化は、新自由主義経済と不可分の関係にあるが、それは「英国病」脱却のため、1979年に就任したサッチャー首相からスタートした。高等教育のグローバル化もその延長線上で、英語という言語資本を利用できる国々が、資金や人材を集めるためグローバル競

    0
    2018年03月14日
  • 学力と階層

    Posted by ブクログ

    この本の逸脱な所は、統計調査から精緻な分析を行い、
    そこから導きだされたファクトを世に知らしめたことです。

    この本の前半から中盤部分では、統計分析から、日本は既に「階層化」していると喝破し、
    「親の学歴は、子の学歴や学習へのやる気」に多大な影響を与えているとしています。
    出版されて、だいぶ経ちますが、このファクトを知った時は、かなり衝撃的でした。
    「何となく、そうだろう」と思っていたことが、はっきりと社会科学的に証明されたからです。

    また、この著作の後半部分は、より衝撃的な指摘を行っています。
    それは、「今後、日本社会は、【学習能力】が資本になる」ということです。
    そして、その学習能力の資

    0
    2017年10月06日
  • オックスフォードからの警鐘 グローバル化時代の大学論

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    スーパーグローバル大学を切り口にした大学改革政策の批判と、イギリスにおける高等教育政策の対比が描かれる。最終的にはグローバル化ではなく、内部の参照点を重視した地道な大学の改善政策が望ましいとの指摘。 それこそ、中教審の将来構想部会とか苅谷先生にメンバーとして参画してもらいたいところ。

    0
    2017年09月04日
  • オックスフォードからの警鐘 グローバル化時代の大学論

    Posted by ブクログ

    苅谷先生らしく、データを駆使して、この国の高等教育改革の「中身の薄さ」について警鐘を鳴らしている。アクティブラーニングはよいけれど、受講すべき授業が多すぎるとのご指摘はそのとおりです。

    0
    2017年07月17日
  • なぜ教育論争は不毛なのか 学力論争を超えて

    Posted by ブクログ

    刈谷先生の著書は教育問題を勉強する際に、何をおいても読むべきと考えている。
    当時は、東大の教授をされており、文科省とは切っても切れない関係であったであろうことは想像に難くない。
    しかし、例のゆとり教育論争では、文科省を正しい方向へ導く力にはあまりなれなかったようである。
    学者らしく、きちんと論議を分けて展開しており、ロジカルでわかりやすい。
    また、ごく当たり前の論理を冷静に記しており(たとえば歴史教科書問題など)、もっと教育行政に反映させるべき人物であると思われるが、文科省としては都合が悪いらしい。
    最近、教育現場ではアクティブラーニングが大流行である。子供の学ぶ意欲も含めて違いがあるのに、一

    0
    2017年05月10日
  • グローバル化時代の大学論1 - アメリカの大学・ニッポンの大学 - TA、シラバス、授業評価

    Posted by ブクログ

    1992年に書かれた日米の高校・大学教育比較についての本を2012年に新書化したもの。20年間の経過による補足もある。

    0
    2017年04月06日
  • グローバル化時代の大学論2 - イギリスの大学・ニッポンの大学 - カレッジ、チュートリアル、エリート教育

    Posted by ブクログ

    子供の大学の入学式で、この本の著者が来賓に招かれ、スピーチをしていたので読んでみようと思いました。
    オックスフォード大学のチュートリアルという教育方法の話は全然知りませんでしたので、非常におもしろく、勉強になりました。マンツーマンに近い教育で学生を徹底的に鍛え上げ、インフォーマルな関係も含めて全人教育を施すというのは、現代の視点から見るとそうとうのアナクロニズムのようにも思えますが、これだけ世の中が効率化・均質化の方向に行ってしまった現代だからこそ、逆に極めて重要になってきているようにも思います。
    子供にもぜひ読んで欲しいと思いましたが、本人は大学生活に忙しく、本には全く興味ない模様。この本に

    0
    2015年05月04日
  • 大衆教育社会のゆくえ 学歴主義と平等神話の戦後史

    Posted by ブクログ

    古い本だけれど、感情論になりやすい教育論が丁寧に考察されていてとても良い本だった。古いからこそ、流行とは無関係に読める点も良い。
    教育には何ができないのか、を考えるべきだという提言に納得。

    0
    2014年10月30日
  • 大衆教育社会のゆくえ 学歴主義と平等神話の戦後史

    Posted by ブクログ

    自分が受けた中学での補習授業はこうした状況の中で行われていた。友人はだから大学へは進まなかった。自分はなぜ大学へ進みたかったのか。

    戦後と言う社会状況の中で、教育がどのような歴史的意味をもっていたのか、教育社会学の視点でたくさんのことを知ることができる良書である。国際的な比較を通した、「平等」の考え方は多くの教育実践者にも知ってほしいと思った。

    サブタイトルの「学歴社会と平等神話の戦後史」のほうが、本書の内容をよく表している。

    0
    2013年04月23日
  • 教育と平等 大衆教育社会はいかに生成したか

    Posted by ブクログ

    「学校制度は画一的で個性を潰す。だから市場化しなければならない」というお決まりの言葉に待ったをかける一冊。

    戦後日本の義務教育制度は6・3制という、先進的である意味実験的な挑戦をした。
    その際に最も問題になったのは、教育資源の配分、それによる学力格差の問題だった。

    1930年代は1教師が平均63.5人の生徒を受け持っており、80人を超える県もあった。
    この教育条件の貧困さは教育資源の配分の問題で、戦後各地方自治体間の格差を是正するため、1952年に義務教育費国庫負担法が制定された。
    最も小さな単位である学級間の教育条件に格差を作らないため、「標準法」が制定され、資源配分が細かく設定され、執

    0
    2013年04月01日
  • グローバル化時代の大学論2 - イギリスの大学・ニッポンの大学 - カレッジ、チュートリアル、エリート教育

    Posted by ブクログ

    「聞く」ことを中心とする日本の大学教育と対照的に、「読んで、書いて、議論する」というチュートリアルによる英国のエリート教育の実態が描かれている。そうした知的訓練によって、英国の若きエリートたちは物事を批判的にとらえて説得する能力を磨いているのである。それはガバナンスに必要な基礎能力そのものである。政治にしろ、企業や組織にしても、日本で自ら改革が起こりにくいのは、そうした訓練がされていないからに違いないと納得。
    著者の問題意識と改革の提案が、日本の教育界や行政で真正面からとらえられることを強く願う。

    0
    2012年10月22日
  • グローバル化時代の大学論1 - アメリカの大学・ニッポンの大学 - TA、シラバス、授業評価

    Posted by ブクログ

    米国と日本とでは大学の仕組みがだいぶ異なるのだという。確かに「米国の大学は入学するのは簡単だが卒業するのが難しい,それに対して日本では入学しさえすれば卒業は簡単だ」などということ耳にすることも多い。本書は,英国の大学に籍を置く教育社会学者による,TA(ティーチング・アシスタント)制度,シラバス及び授業評価,入学者選抜制度などの視点から書かれた日米大学比較論である。

    ところで,本書は20年前に出版された同名の著書の新書版である。新書化にあたって元の著書の一部が削除され,替わりに一章及び各章末の新書版付記が追加された。しかし本書の内容は現在でも十分に読むに値する。例えば日米の大学教育を比較した第

    0
    2012年10月20日
  • 大衆教育社会のゆくえ 学歴主義と平等神話の戦後史

    Posted by ブクログ

    1995年発行とは思えないほど現代的で、今も筆者の言う構造があるように感じられる。
    神話にあふれる教育の世界、抽象的な「本当の教育」といった終章での意見は非常に共感できた。

    同じ平等な教育といってもイギリスは階級的、アメリカは多民族的に考え日本の差別感を与えない教育=平等という考え方の特殊性を明らかにしていく部分や日本の場合、社会的出生=入試による生まれ変わりがあるといった主張は非常に参考になった。

    0
    2012年08月26日
  • 教育と平等 大衆教育社会はいかに生成したか

    Posted by ブクログ

    90年代の名著「大衆教育社会のゆくえ」の続編であり、大衆教育社会を成立させたのは何だったのかについて論じている本。

    著者は、その原点を、学制ができてから常に問題視された教育公務員の予算(日本は階層差よりも、都市と農村(僻地)の差が大きいこと)、それによる教育標準化の流れ(学級の人数、学習指導要領、学力テスト)の中で、明らかにしようとしている。

    そのような中で、学級というシステムを使って平等を作ろうとしていた面があるとも指摘している。

    文章はやや難解であるので読み直す必要はあると思うけれど、自分が受けてきた環境を当たり前とせずに、史料から丁寧に読み解くことが大切だということを教えてくれた本

    0
    2012年03月31日
  • 大衆教育社会のゆくえ 学歴主義と平等神話の戦後史

    Posted by ブクログ

    大衆教育社会が成立したが、そこには表だって問題とされない、(学力)階層社会が存在していたということを、いろいろな資料によって明らかにしている。また、日本は諸外国にはない、平等的な学校システムが作られた国でもある。

    これは、日本的な能力主義、平等主義が生み出していったものであるとする。90年代半ばに、社会の変革を的確にとらえて、大衆教育社会が成立し、そして揺らぎ始めていることをとらえている。

    当たり前のことを分析したうえで、しっかりとした意見を構築しないと、砂上の楼閣になりかねない。そんなことを、わからせてくれた本だった。

    0
    2012年03月31日
  • 考えあう技術 ――教育と社会を哲学する

    Posted by ブクログ

    「なぜ学ぶのか」。
    これを哲学者と教育社会学者が語りあった、対談とエッセーを収めた本。

    「学び」は「自分のため」か。
    他者との関わりの中での、他者のための学びの可能性を展開できないか。
    そのような可能性を探る意味でも、非常に参考になる一冊。
    教員志望者には特にオススメ!

    0
    2012年03月16日
  • 大衆教育社会のゆくえ 学歴主義と平等神話の戦後史

    Posted by ブクログ

    これは非常に面白かった!!
    文句なく人にオススメできる本。

    「階層と教育」の問題に切り込み、この問題が戦後の絶対的貧困の解消から現在に至るまで人々にどう扱われてきたか、そしてそれらが日本人の教育観にいかに影響して、最終的にいかなる教育が生成されたかを語る。

    最終章が秀逸すぎて震えた。
    アメリカの社会哲学者フィッシュキンの「トリレンマ」の話もさることながら、最後の一言。

    「教育に何ができるかではなく、何ができないかを語りなさい。教育に何を期待するかではなく、何を期待してはいけないかを語りなさい。」

    教育関係者、特に教員志望者をはじめとする学校教育を考える方々に是非ぜひ読んでほしい!
    「教

    0
    2012年03月13日
  • なぜ教育論争は不毛なのか 学力論争を超えて

    Posted by ブクログ

    こういう議論をもっと聞きたいと思える本でした。
    思うところがたくさんあったので,後ほどまとめようかと思います。

    0
    2012年02月27日
  • 大衆教育社会のゆくえ 学歴主義と平等神話の戦後史

    Posted by ブクログ

    東京大学大学院教育学研究科教授(社会学)の苅谷剛彦(1955-)による大衆化する教育社会における階層問題の考察。

    【構成】
    第1章 大衆教育社会のどこが問題か
    第2章 消えた階層問題
    第3章 「階層と教育」問題の底流
    第4章 大衆教育社会と学歴主義
    第5章 「能力主義的差別教育」のパラドクス
    終 章 大衆教育社会のゆらぎ

    「大衆教育社会とは、教育が量的に拡大し、多くの人びとが長期間にわあたって教育を受けることを引き受け、またそう望んでいる社会で」あり、本書で挙げられる特徴は以下の3点である。
     (第1の特徴)高い高校進学率・大学進学率
     (第2の特徴)「メリトクラシーの大衆化状況」の現出

    0
    2012年02月18日