苅谷剛彦のレビュー一覧
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かなり難しい本でした。
ちゃんと理解できていないかもしれないですが、私なりに理解したのは以下のことです。
日本の教育格差問題が解決しないのは、そもそも「格差」という言葉が曖昧過ぎて、具体的でないからだ、ということです。
大衆という言葉は、英語のmassの訳語で、1920年代にできたけど、英語のmassとは違う意味を持つようになった。
opportunityという英語は、「成功への機会」という「成功」と結び着いた言葉だが、日本語の「機会」は、「成功」という概念がなくなってしまって、単なる「場」や「時」を表す言葉になってしまった。
などははじめて知りました。
難しいことはわかりませんが、論文や解説文を読む時は、使われている言葉の意味をよくよく注意して読まないといけないなと思いました。 -
Posted by ブクログ
結末に完全に納得するかは別にして、教育の機会均等や格差、階層といった言葉がユーフェミズムであり、それらが曖昧な意味で用いられ、曖昧な議論が続いている、という主張は傾聴に値する。特に日本で信仰の根強い努力神話が、イギリスやアメリカの知能との対比で語られるあたりで、アメリカに住むとわかるが、日本人ほど努力を珠玉のものだとみなしていない、と感じたことをふと思い出した。ただ、これは著者も書いているとおり、日教組等の知能への忌避感もあったのだろう。
原典で読むと翻訳版とは印象が変わる、というのは実は的を射ている。もっとも、かなり感度が高くないとそれらの違いを感じることはできないだろうし、この辺の著者の学術的な信憑性については専門家に任せるとしても、機会均等や格差等と、巧みに(?)すり替えられてきた言葉への感度を高めなければならないと感じることができた。 -
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教え学ぶ技術
問いをいかに編集するのか
著:苅谷 剛彦
著:石澤 麻子
出版社:筑摩書房
ちくま新書 1436
本書は、オクスフォード大学で行われている、チュートリアルというマンツーマン方式の指導方法を、日本語化して解説するものです。苅谷先生と、石澤学生との対話になっています。
第1部は、学部生向けに、ロジカルなドキュメントをどうかけばいいかを扱う
第2部は、院生向けに、学術論文に向き合うための、リサーチクエスチョンをどう見つけるかを扱う
根幹にあるものは、知識を吸収して我がものとする学習から、探究をを主体とする方法への転換である
アクティブ・ラーニングといわれる、主体的・対話的な深い学びを中心とした新しい学習ー教授方法が推奨されています。
いろいろな方法で、考え方をふかめていくところ、問いを分割したり、再考してほりさげていくところは参考になりました。
気になったのは、以下です。
■チュートリアルとは
先生1人、生徒は多くて3人で行う、個別指導方法であり、オクスフォード大学で現在行われている指導方法でる
・毎週課題図書10冊の著書や論文が与えられて、それらを読んで、エッセイといわれる小論文にまとめる
・エッセイは、A4で10頁ほどであり、先生がだしたエッセイ・クエスチョンに文献リストに示された文献をつかって自分なりの議論を展開して、解答を用意する
・チュートリアルの時間に、事前提出したエッセイをもとに、質疑応答や、議論が行われる
・チュートリアルが終わると、振り返りの短いセッションが行われる
・それが、1学期に8回行われる
・チュートリアルの他に、学習を補助するための講義が行われる
学部生には、リサーチ・クエスチョンという、論文のテーマは、先生から与えられる
院生には、自ら、リサーチ・クエスチョンを用意するという範囲が拡大される
■第1部:いかに論理を組み立てるか:学部生向け(2日)
1日目 抽象と具体によって課題を明確化する
・クエスチョンをどう読み取ればいいのか
・大きな問いを、サブクエスチョンに分けていく
・導入部:最初の段落をどう書くか
・書き方:誤解をうけないように記載する
・考え方:深く考えるというのはいったりもどったりする
・論理の抜けを防ぐ
・3つの文献を出したら、3つとも使い切る
・ぼんやりとしたアイデアを明確に言語化する
・適切に接続詞を使う
・使えそうな概念をあたまの片隅においておく
・変化を描くために、時系列の表現を行う
・議論に広がりを持たせる。逆に、議論を限定して、話を広げ過ぎない
・議論を限定させることで、着地点をみつける
・考えたことをメモしておく
2日目 分析枠組みはこう使う
・1日目の振り返りを行う
・自分の議論をどこまでするのか
・変化を描くために、時系列の表現を行う
・分析の枠組みを使いこなす、ガイドライン、キーワード
・論理を突き動かす力
・分析の枠組みをつかって、物の見方を決める
・パラドクス、アンビバレンツ(相反感情)、コントラディクション(矛盾)
・文献を読んだときに使えるところがないかを、メモに残しながら読む
・自分の中の師とキャッチボールする
・考えると考え抜く
エッセイを最終稿へと落とし込む
■第2部:自分が解くべき問いを見つける:院生向け(4日)
1日目 問題意識を俯瞰する
・関心のある事項をあげてみる
・具体から抽象へあげて、比較する
・抽象化、概念は、サーチライト
・関心の先、現象か、背景か
・その問いがわかると、どんないいことがあるか
・言語化して、次元を変える
・自分主体、先生の意見は参考
・物事を俯瞰してみる
・初発の質問からさらに、質問をほりさげる
2日目 関心をコンテクストにのせる
・複数の問いを、5W1Hをつかって、複数の文脈に変換する
・役割をわけて、比較する
・場所を変える、言葉自体を問題化する
・問いを翻訳する
・事象のねじれを感じる
・メタ視線から、問題を分解する
・どう研究するか、方法と理論を検討する
・誰に読んでもらいたいかを事前に考える
・どうやったら、オリジナリティを生み出せるか
・WhyをWhyで分割していく 等
3日目 キーワードを探すために
・いかにキーワードを増やすか
・現象がどのような言葉で表現されているのかを探す
・何々以前、以降に注目する
・アクター(人)に焦点をあてて、別の面を探す
・言葉がみあたらないときは、とりあえず、Xと置いてみる
・出来事から、キーワードを探す
・モヤモヤからそこにある言葉を探す
4日目 問いから、リサーチクエスチョンへ
・文献をどのように検索すればいいのか
・ピンとくるキーワードと、そうでないものとの違い
・キーワードの様々な布置連携
・対となる言葉をさがす
・調べる先は、研究だけとはかぎらない
・問題関心が埋まっている現場を探す
・さらに問いを掘り下げる
・具体的なリサーチ・クエスチョンにするために
・問いを振り返る
・どうリサーチして、どう研究成果を使いこなすか
目次
序章 「問いを編集する」とはどういうことか
第1部 いかに論理を組み立てるか
1日目 抽象と具体によって課題を明確化する
2日目 分析枠組みはこう使う
第2部 自分が解くべき問いを見つける
1日目 問題意識を俯瞰する
2日目 関心をコンテクストにのせる
3日目 キーワードを探すために
4日目 問いからリサーチクエスチョンへ
学習レポート──チュートリアルを振り返って
ISBN:9784480072498
判型:新書
ページ数:304ページ
定価:920円(本体)
2019年09月10日 第1刷発行 -
Posted by ブクログ
大学は死んでいる吉見俊哉☆☆☆
現代の大学論・改革論の基礎を網羅している、著者の見識の深さ素晴らしい
されど日本社会は、少子化・財政逼迫の中で争われ、中期ビジョンの実行のための取組は為されにくい
1.大学の環境変化
①18歳人口激減②グローバル競争激化③Digital革命の社会構造変化
91年大学設置基準の大綱化
大学院の劣化 教養教育の弱体化
「カレッジ」大学の基本
生活共同体(旧制高校) 帰属の単位→エリートの育成
2.大学改革の機運
①日本社会にとって大学の重要性が高まる
②従来の大学教育には問題があった
③科目数の多さ15科目
米国は5つゼミのごとく 2冊読破/毎週→ハード実質
④大学入試が大学問題ではない
トータルシステムの見直し=教育・成果が本質
3.印刷革命15世紀グーテンベルク活版印刷→知の拡散
Digital革命も知の体制改革へ
大学<出版の隆盛 知の拡大へ
21世紀 Digital革命→新たな「知の再編・再構築へ」 -
Posted by ブクログ
大村はまに関する著書は何冊か読んできたが、何度読んでも大村はまの言葉には身につまされる。
本書も何度も繰り返し読みたくなる金言、また私もやってみたいと思える実践がたくさん。
例えば、目標を具体化し、その評価を毎回の授業のたびにしていたというエピソードや、中学生を大人にするために話は必ず一度で聞くようにさせたこと、掲示物はこまめに張り替えていたことなどが印象に残っている。
どれも奇をてらった取り組みではなく、むしろ当たり前にやらなくてはいけないことなのかもしれない。
しかし、実際にこれらを継続的に行うには教師の覚悟が必要である。
大村はまの言葉からその覚悟と教師としての矜持を感じた。
72歳まで自分の話をテープに採って聞いていたというのだから脱帽だ。
ちなみに本書の刊行は2003年。約20年経っても教育問題として取り上げられていることはあまり変わらないように思える。いくら新しい時代の学力観と騒ぎ立てたとて、大村はまの思想が今でも色褪せないように、教育の本質は不易流行であると改めて感じた。
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榎本博明の「教育現場は困っている」に引用されていた所から興味を持って読んでみた。
本書の情報は2012なので少し古いが、2020年にも通じるところは多くある。著者の苅谷はイギリスの名門オックスフォード大学で教鞭をとる日本人だ。本書の内容は彼(在英日本人)から見たオックスフォードの内情について、そして日本の大学制度についてである。
●オックスフォード含めオックスブリッジは生活の中心となるカレッジと学科教育の中心であるdepartmentからなる。
●departmentは日本に似た講義形式の授業だが、カレッジでは毎週1度マンツーマンないし1対2程度で行われる個別指導だ。オックスブリッジの学びの中心はカレッジで学生は毎週大量の参考文献の読書(インプット)とそれについての議論、論文化を行う。
●学生の採用は、高い学力をクリアした上での面接重視で、教員は自分が指導したくなる、世界トップレベルの教育に耐えられる学生を採用し「教育された市民」をつくる。
●日本の大学教育は、大学での学問教育(知識の伝授の更に上にある、運用力)が特に人文社会系で行われていない、また社会的にも価値が認められていない。
●日本も「コップの内側」から世界に目を向けなければならない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ外国語習得の基盤は母語(国語)。「第二言語としての英語」(ESL)≠「外国語としての英語」(EFL)。後者を意識的に勉強した学生の読み書き能力が高いことは珍しくない。異言語習得の基盤は「母語」だから。
BICS(日常会話力)CALPS(認知的学習言語能力)。CALPSにはまず、母語の獲得が大切。だから母語を獲得してから海外に行った方が学習言語を習得するのが早い。
にも拘わらず、(日本語が覚束ない)幼少期から英語漬けにしようとする。母語をしっかり獲得しないから、日常会話レベルの発音だけは流暢になっても学習言語の修得がおぼつかない。にも拘らず、もてはやされるのは日常会話レベルの流暢さ。
考えてみれば、英語教育もまた言葉(人間)を育てる教育。言葉であるからには、生き生きと興味深い豊かな世界に直結しているはず。しかし単語を暗記したり、学術的な文法書を読んだり、単なる入試対策であったり、TOEICの点数を上げるためであったりと、英語は無機的は要素の集積のように感じてしまう。言葉として当然持っているはずの豊かさや人間らしさ、社会や文化ということを忘れ、スキルの集合体としての英語ばかりを見るようになっている。
原点に戻って、言葉(人間)を育てる英語教育を目指すべき。
協同学習は「自律性」の涵養に有効とはいっても、学習者中心の能動的な学習を誤解して、生徒や学生をグループに分けて話し合いをさせる(自由放任)だけでは学びにならない。共同学習の原点は、「周囲との相互行為を通して一人では到達できない領域に達する」ところにある。教師による適切な介入と丁寧な指導があってこそ「共同学習」は「自律性」の育成に大きな役割を果たす(p198)。これが、コミュニケーションとしての英語の学習の原点なのだろう。
それにしても80年代から、教育行政に(教育素人の)経済界が(自社の利益を念頭に置きながら)割り込みすぎ。英語は人間育成でなく、産業育成に成り下がっている。こういった現状が教育をダメにしていることを考えれば、必読の価値がある一冊だ。