【感想・ネタバレ】大学はもう死んでいる? トップユニバーシティーからの問題提起のレビュー

あらすじ

なぜ大学改革は失敗し続けるのか――? オックスフォード大学の苅谷剛彦と東大の吉見俊哉が徹底討論! 大学入試改革が混乱を極めているが、大学の真の問題はそこにあるのではない。日本の大学が抜け出せずにいる問題の本質に迫る刺激的な対論! 今、大学は歴史的に見ても大きな変革期にある。世界の多くの大学が、いわば瀕死の状態に陥っており、とりわけ日本の大学が抱える問題は根が深い。幾度となく改革が試みられるものの、ほとんど成果が上がらないのはなぜなのか。本書では、オックスフォード大学教授の苅谷剛彦と、ハーバード大学でも教えた経験のある東京大学大学院教授の吉見俊哉が、それぞれの大学を比較し、日本のトップレベルの大学が抜け出せずにいる問題の根幹を、対論を通じて浮かび上がらせる。

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Posted by ブクログ

大学は死んでいる吉見俊哉☆☆☆
現代の大学論・改革論の基礎を網羅している、著者の見識の深さ素晴らしい
されど日本社会は、少子化・財政逼迫の中で争われ、中期ビジョンの実行のための取組は為されにくい
1.大学の環境変化
①18歳人口激減②グローバル競争激化③Digital革命の社会構造変化
91年大学設置基準の大綱化 
 大学院の劣化 教養教育の弱体化
「カレッジ」大学の基本 
 生活共同体(旧制高校) 帰属の単位→エリートの育成
2.大学改革の機運
①日本社会にとって大学の重要性が高まる
②従来の大学教育には問題があった
③科目数の多さ15科目 
 米国は5つゼミのごとく 2冊読破/毎週→ハード実質
④大学入試が大学問題ではない 
 トータルシステムの見直し=教育・成果が本質

3.印刷革命15世紀グーテンベルク活版印刷→知の拡散
Digital革命も知の体制改革へ

 大学<出版の隆盛 知の拡大へ
 21世紀 Digital革命→新たな「知の再編・再構築へ」

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2022年04月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2020/1/22 喜久屋書店北神戸店で購入。
2020/1/27〜1/30

読む順リストを大幅に飛ばして読む。
東大とオクスフォード大の教授お二人による対談形式で日本の大学と欧米の大学についての分析と批評が繰り広げられる。欧米がすべて良いわけではないが、文科省主導の日本の大学改革が良い方向に向かっていないのは明らかで、そのあたりの現状分析は鋭い。また、分析するだけでなく、対策なども議論されており、非常に優れた内容。順番を飛ばして読んだ価値があった。

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2020年01月30日

Posted by ブクログ

日本は早期後発型の近代社会として、100年以上にわたり母国語で研究教育を行う余裕があり、日本語による独自の知を生み出すことができた。しかしその蓄積が逆に英語化を難しくし、国際社会の周辺に取り残される要因ともなっている。だからこそ今さら無理にグローバル競争に追随するのではなく、日本的な方法で柔軟に適応する道を探るべき。

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2025年10月01日

Posted by ブクログ

大学は知識ではなく思考力を得るところ
大学はカレッジ、ファカルティー、ユニバーシティが合わさったもの
積分的思考の文系と微分的思考の理系が合わさって新しい知見が生まれる
グローバル化を履き違えている日本の大学
出版と大学による知の再生
どれも新鮮な視点で、目が覚める様。
日本の大学の未来は明るくないが、絶望的ではないと思う。

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2020年08月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「○○はもう死んでいる」。北斗の拳で聞いたような台詞だが、本書で主に取り上げられているのは、オックスフォード、ハーバード、そして東大。決して死んでるような大学ではない。

「(昨今の)日本の大学改革論の不幸なところは、コンセンサスを得ようとしたときに座標軸(大学は何を目指すのか、何がクリティカルかという軸)を設定する人がいなくなってしまい、どこで自分たちが対立していて、どこで折り合いがつかないのか見えなくなってしまっている」(p.37)。その背景には「経済ナショナリズム」(p.40)と国家予算の削減。これが現場の混乱をもたらしているのではないか。

アメリカやイギリスの大学組織で見習うべき点は、教員・学生ともに複数の組織に所属しているということ。例えば、オックスフォードの苅谷剛彦先生の所属は3つ、「ニッサン現代研究所(地域研究)研究員」、「(ユニバーシティの)社会学科教授」、「セント・アントニーズ・カレッジ(学寮)フェロー」だ。一方学生は、メジャーとマイナー(あるいはダブルメジャー)そしてカレッジ(学寮)に所属する。つまり「多様性と流動性」が大学組織の中に組み込まれているのだ。

日本の場合は、学部の上に大学院があることが多く、教員も学生も単一の組織の中で生活を送る。特に大学教員は、(グローバルな)横社会というより(多様性と流動性が乏しい)縦社会である。教員が求めるのは「安定したポスト」。実質的に教員が実権を握る日本の大学では、組織は一元的で、閉じてしまう。

一方、学生にとって大切なのは「多様性と流動性」。この状況を補っていたのがクラブ活動や寮生活であろうが、その(実質的な)加入率、入寮率は極めて低い。だから日本では、単一の閉じた組織になる。これに拍車をかけるのが国際性の欠如と世代的同質性というわけだ。

学問が、理系・文系に分かれたのは、産業革命(18世紀半ばから19世紀)以降。しかし、もともと大学のカリキュラムであった「リベラルアーツ」は、言語系の3学と数学系の4科。これらを同時に学ぶことで、当たり前だと思っていることを疑う「Critical Thinking」が可能になる。だから、少ない科目であっても(履修科目を絞ってでも)、文理複眼思考で「客観的な知識を分析的に獲得し、論理的に組立て、説得力ある意見をわかりやすく述べる」力の養成が必要となるはずだ。これが大学の学びの根幹(オックスフォードがチュートリアルの目的そのもの)ということだろう。

最後に、「大学のキャンパスは(自由の根幹という意味で)遊び場でなければならない」(p.279)という理想。その一方でアカデミックキャピタリズムの担い手と位置づけられた大学の厳しい現実。イギリスとは異なり「大学とは何かということが社会の中で定義(共有)されていない日本」。そもそも「大学」って何なんだろう?

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2020年05月02日

Posted by ブクログ

#大学はもう死んでいる ? #刈谷剛彦 #吉見俊哉 #集英社新書 #読書記録

283ページの新書の中で、日本の大学改革についてから、グローバル人材の定義、日本の大学と知と出版について、日本の大学の成り立ち、難しさ、優位性についてまで、幅広く語られる。
最後は、それまで端端で語られてきたように、オプティミズム。


語られる中で、自分の仕事に結びつけて、考える。それは、大学改革というテーマに関わらず、人の生き方や、考え方や、動き方について。
これが、いわゆる知なのだろうと、文系の学問の意味のものすごい狭ーいけれど、発展的なものなのだろうとも思う。

脳に汗が出るほど考える、思考する日々を、学ぶということを、したい、と思いもする。

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2021年01月31日

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いちおうプロの大学職員だと思ってるので、このタイトルに食指は動かない。むしろ副題には嫌悪感を抱く。それでも購入したのはやはり、苅谷×吉見両先生への“信頼感”だと思う。オックスフォード内で行われた対談は、若干拡散気味だが、どんどん読み込めた。
「もう死んでいる?」としながら、基本的に楽観な内容に共感し、「大学が遊びに満ちた結界(p279)」であり続けられるよう行動しようと思った。

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2020年11月01日

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ネタバレ

苅谷剛彦さんと吉見俊哉さんの対談形式の本。
教授や大学運営の立場から割と書かれていて、オックスフォードとハーバードで教鞭をとった経験から、日本国内の大学状況を比較して課題を論じあっていた。

全体としては日本の大学は経済ナショナリズムの延長にあって大学とは何か、という理念の部分が欠けている、というようなことを言っていたと思う。
大学制度や組織だけを変えようとしても解決できない課題だと思った。

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2020年10月03日

Posted by ブクログ

大学とは、大学の本質とは何か?
日本と欧米、ハーバード・オックスフォード・東大の違い
について、2人の教授が鼎談する内容。
知の追求とは何かがちょっとわかる気がします。

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2020年08月23日

Posted by ブクログ

エモーショナルな部分を含む知の交流、人と人との出会いが、教育や学問の根底にはある。それが魅力的なのは「楽しい」からだ。


あれだけロジカルな苅谷さんが、最後、「楽しい」という感情で結論づけてしまうあたりが良かった。

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2020年08月19日

Posted by ブクログ

海外大学から俯瞰的に見ながらも、現実的に実現が難しい点について論者二人とも十分に理解できていないと感じた。大学人に読むことは薦めない。

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2020年01月21日

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