作品一覧 2021/09/24更新 教え学ぶ技術 ──問いをいかに編集するのか 試し読み フォロー 日本の私立大学はなぜ生き残るのか 人口減少社会と同族経営:1992-2030 試し読み フォロー 1~2件目 / 2件<<<1・・・・・・・・・>>> 石澤麻子の作品をすべて見る
ユーザーレビュー 日本の私立大学はなぜ生き残るのか 人口減少社会と同族経営:1992-2030 ジェレミー・ブレーデン / ロジャー・グッドマン / 石澤麻子 「2018年問題」と言われた18歳人口の減少の中、廃校となった私立大学は予想に反して少ない。この謎を解明するのが、本書である。 私立大学が生き残りを掛けて採った方策には以下のものが挙げられる。 ・規模縮小 ・提供するコースの調整(改組・名称変更) ・高校卒業生市場の掘り下げ ・中等教育機関を運営する...続きを読む学校法人と大学を有する学校法人との間の「垂直」の戦略的統合 注目すべき点は、70-80年代の入学生減少期に米英の大学が採った以下の方策とは異なることだ。 ・社会人学生や遠隔学習者(パートタイム学生)の確保 ・海外からの留学生の確保 ・研究費補増やすための産業界とのパートナーシップ 日本では、90年代に中身が伴わない「ショーウインドウ化」した大学院の量的・質的充実が課題となり、アメリカの大学を参考にしつつ以下の制度も採られたが、「失敗」と評されことが一般的だ。 ・2000年代初頭の大学院の拡充 ・株式会社立の大学(2003-) ・専門職大学院制度(2003-) ・法科大学院制度(2004-)(74校➔39校に減少)。 結局、私立大学の歳入の内訳(財政構造)は、18歳人口ピーク時の90年代の頃から変っていない。生涯教育・リカレント教育のかけ声にも拘わらず何の変化も生じなかった。 それでも(歴史の浅い小規模大学が多い)「私立大学協会」に属する新興の「同族経営大学」の多くが存続している。それはなぜか。これら大学は、革新的な教育や経営的なアイディアを取入れ、試し、発展させ、カリスマ的な教育リーダーが熱心に改革を進めることができるからだ。同時に、コングロマリットの中で主要な”フラッグシップ”となる大学を閉鎖すると、学校法人全体の評判に傷をつける。系列の学校全てだけでなく、経営一族までが被害を受ける。だから大学を存続させることは必須で、これがレジリエンスに繋がったということだ。 しかし、コーポレートガバナンスを強調することは「アカデミック」ガバナンスの仕組みの希薄化に繋がる。これまでどおり私立大学は「公益性を備えた存在」となり得るのか。理念と現実との相克の中で、「同族経営大学」は、営利企業のように継続していくのでであろうか。 この問い対して各大学は、「政府によるコントロール」と「マーケットの力学に任せる」という矛盾した政策の中の「匙加減」で、私立大学は翻弄されていくのだろう。 Posted by ブクログ 日本の私立大学はなぜ生き残るのか 人口減少社会と同族経営:1992-2030 ジェレミー・ブレーデン / ロジャー・グッドマン / 石澤麻子 人口減少の影響で多くの私立大学が潰れるだろうとの2018年問題。この予想は外れ、多くの私立大学は粘り強く生存し続けている。これは何故か? この謎に挑む一冊となっている。素晴らしい研究成果で、社会人類学的な分析手法に拠っている。メイケイ学院大学(仮称)で繰り広げられる生き残り策がホントに「あるある」で...続きを読む、不祥事も含めてそれらが丁寧に分析されている。 で、実は私大の問題は日本社会の特質でもあるわけだ。だから日本の研究者には、ここでの結論に辿り着けなかったんだろうね。 Posted by ブクログ 日本の私立大学はなぜ生き残るのか 人口減少社会と同族経営:1992-2030 ジェレミー・ブレーデン / ロジャー・グッドマン / 石澤麻子 めちゃくちゃ面白かった。久しぶりに時間を忘れて一気読みして、次の予定に遅れそう。少子化によって減少すると考えられた日本の私立大学の多くが生き残っている要因として、同族経営の重要性が見過ごされてきた点を指摘、最終的には優れた日本社会論になっている。 ・最近の学生は真面目という言説を目にするが(少なくと...続きを読むも本書が扱う某私大では)定員維持のため大学が真面目に教え始めた方が先 ・前近代的な世襲システムがいまだに持続する要因を検討すべき ・私大の三類型(思想背景を持つ結社型、宗教系が多いスポンサー型、起業家型)は実感に沿う 最後駆け足で読んでしまったこともあると思うが、n=1の話を最終的には日本のイエの話まで昇華させるstorytellingの力はすごい。ただ、結局のところ本当に同族経営がパフォーマンスに結びついているかが分からない点は、消化不良というか、今後の課題だなと感じる。 Posted by ブクログ 教え学ぶ技術 ──問いをいかに編集するのか 苅谷剛彦 / 石澤麻子 教えるとは、学ぶとはどういう営みなのか。教師が生徒に教えるという上から下へに知識を授けるというような方法をイメージしがちな気がするのだが、果たして本当にそのようなことが可能なのだろうか。自身の経験を思い起こしてみると、教師に教えてもらうことがなかったとは言わないが、本当に学ぶということは自分で本を読...続きを読むみ、話を聞き、調べ、自分の頭で考え、書き記し、まとめ、テストへの回答や文章にするなど何らかの仕方で出力する過程を経ることで学びとしてきたように思う。それゆえ、教師とは教える存在というよりも、生徒が学ぶ方向づけをし、学習のペースを崩さないように見守り、時に調整をしてくれるコーチのような存在なのではないかと考えていた。 本書はオックスフォード大学で実施されているチュートリアルという教師と学生が一対一、あるいは教師一人に対して学生が二、三人で構成する個人指導を文章で再現している。チュートリアルとは、「毎週、小論文を書くための問い(エッセイ・クエスチョンと呼ばれる)と、それに回答するために読むべき課題文献リストが渡される。毎週10冊ほどの著書や論文である。それらを読んだ上で、小論文を執筆する。エッセイでは、教員が出したエッセイ・クエスチョンに、文献リストに示された文献を使って、学生が自分なりの議論を展開し、回答を与える。そして、実際のチュートリアルの時間には、学生が事前に提出したエッセイをもとに、教員との間で質疑応答や議論が行われる」というものだそうだ。 この概要の説明を読んだだけでも、何と贅沢な時間だろうと感じた。そして、そのチュートリアルの再現である本書を読んで、その嫉妬にも似た憧れの感覚はますます強くなった。羨ましい。教員と学生とのやりとりにより、当初学生が発した問いが様々な手法、見方で分解され、より深い問いへと導かれていく様は、学生本人にしてみたら手に汗握る緊張の連続かもしれないが、しかしそれは視野を拡げてくれるとても貴重な経験になる。日常感じ、発された素朴な問いをメタ化し、5w1hで分解し、whyを重ねるなどし、発展させることで、深化させるのだ。教員はそれを導くだけで、実際に深化させるのは学生本人であるところが魅力的である。 Posted by ブクログ 日本の私立大学はなぜ生き残るのか 人口減少社会と同族経営:1992-2030 ジェレミー・ブレーデン / ロジャー・グッドマン / 石澤麻子 外国からみた私立大学の経営に関する本。元々は英語書籍で、family-tuned private universitiesというタイトル。 同族経営、というくくりは、日本人にとっては聖域じみていて触れられてこなかった領域に切り込んでいる。 本著で同族経営によるレジリエンス(サバイバビリティ)に切...続きを読むり込むのは、後半から。前半はMGUという仮名の大学を例示して、日本の私立大学の典型例をリアルに書く。その中であの手この手で大学を存続させる施策やトレンドに触れる。 自分自身はこういう場面に直接入っていく機会はなかったが、営利企業らしいしたたかさと、同族経営っぽい存続への想いなど、こう顕在化するのかと興味を持って読めた。 MGUは茗溪、大阪学院大学のことかな。 Posted by ブクログ 石澤麻子のレビューをもっと見る