石澤麻子のレビュー一覧

  • 日本の私立大学はなぜ生き残るのか 人口減少社会と同族経営:1992-2030

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    ネタバレ

    「2018年問題」と言われた18歳人口の減少の中、廃校となった私立大学は予想に反して少ない。この謎を解明するのが、本書である。
    私立大学が生き残りを掛けて採った方策には以下のものが挙げられる。
    ・規模縮小
    ・提供するコースの調整(改組・名称変更)
    ・高校卒業生市場の掘り下げ
    ・中等教育機関を運営する学校法人と大学を有する学校法人との間の「垂直」の戦略的統合

    注目すべき点は、70-80年代の入学生減少期に米英の大学が採った以下の方策とは異なることだ。
    ・社会人学生や遠隔学習者(パートタイム学生)の確保
    ・海外からの留学生の確保
    ・研究費補増やすための産業界とのパートナーシップ

    日本では、90

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    2023年06月18日
  • 日本の私立大学はなぜ生き残るのか 人口減少社会と同族経営:1992-2030

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    人口減少の影響で多くの私立大学が潰れるだろうとの2018年問題。この予想は外れ、多くの私立大学は粘り強く生存し続けている。これは何故か? この謎に挑む一冊となっている。素晴らしい研究成果で、社会人類学的な分析手法に拠っている。メイケイ学院大学(仮称)で繰り広げられる生き残り策がホントに「あるある」で、不祥事も含めてそれらが丁寧に分析されている。
    で、実は私大の問題は日本社会の特質でもあるわけだ。だから日本の研究者には、ここでの結論に辿り着けなかったんだろうね。

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    2022年02月13日
  • 日本の私立大学はなぜ生き残るのか 人口減少社会と同族経営:1992-2030

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    めちゃくちゃ面白かった。久しぶりに時間を忘れて一気読みして、次の予定に遅れそう。少子化によって減少すると考えられた日本の私立大学の多くが生き残っている要因として、同族経営の重要性が見過ごされてきた点を指摘、最終的には優れた日本社会論になっている。
    ・最近の学生は真面目という言説を目にするが(少なくとも本書が扱う某私大では)定員維持のため大学が真面目に教え始めた方が先
    ・前近代的な世襲システムがいまだに持続する要因を検討すべき
    ・私大の三類型(思想背景を持つ結社型、宗教系が多いスポンサー型、起業家型)は実感に沿う

    最後駆け足で読んでしまったこともあると思うが、n=1の話を最終的には日本のイエの

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    2022年01月05日
  • 教え学ぶ技術 ──問いをいかに編集するのか

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    教えるとは、学ぶとはどういう営みなのか。教師が生徒に教えるという上から下へに知識を授けるというような方法をイメージしがちな気がするのだが、果たして本当にそのようなことが可能なのだろうか。自身の経験を思い起こしてみると、教師に教えてもらうことがなかったとは言わないが、本当に学ぶということは自分で本を読み、話を聞き、調べ、自分の頭で考え、書き記し、まとめ、テストへの回答や文章にするなど何らかの仕方で出力する過程を経ることで学びとしてきたように思う。それゆえ、教師とは教える存在というよりも、生徒が学ぶ方向づけをし、学習のペースを崩さないように見守り、時に調整をしてくれるコーチのような存在なのではない

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    2019年12月17日
  • 日本の私立大学はなぜ生き残るのか 人口減少社会と同族経営:1992-2030

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    外国からみた私立大学の経営に関する本。元々は英語書籍で、family-tuned private universitiesというタイトル。

    同族経営、というくくりは、日本人にとっては聖域じみていて触れられてこなかった領域に切り込んでいる。

    本著で同族経営によるレジリエンス(サバイバビリティ)に切り込むのは、後半から。前半はMGUという仮名の大学を例示して、日本の私立大学の典型例をリアルに書く。その中であの手この手で大学を存続させる施策やトレンドに触れる。

    自分自身はこういう場面に直接入っていく機会はなかったが、営利企業らしいしたたかさと、同族経営っぽい存続への想いなど、こう顕在化するのか

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    2023年06月02日
  • 日本の私立大学はなぜ生き残るのか 人口減少社会と同族経営:1992-2030

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    日本の、いわゆる三流大学が、1990年以降の急激な若年人口減少にさらされたのに、予想に反して大半が生き延びてきた背景には、創業者一族が一つの大学だけでなく複数の学校を所有して、グループ全体で相互に助け合う事によって収益を最大化することができるという同族企業の強かさがある。

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    2022年05月09日
  • 教え学ぶ技術 ──問いをいかに編集するのか

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     楽しいのは、第Ⅱ部のやりとり。
     一番印象に残ったのは、“クェスチョンはあってもパズルが無い”というオックスフォードの言い方。確かにそうだ。
    学びが深まるためには、そういう知的な面白さが必要だ。
     それから、問をブレイクダウンしていくうちに、抽象化したキーワードが浮かび上がってくるプロセス。

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    2020年05月14日
  • 教え学ぶ技術 ──問いをいかに編集するのか

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    何かの書評から手に取ったが、とても興味深い本に巡り会えて感謝。この本のテーマは表紙の言葉で、「学校や大学での学習や研究の場面だけでなく、仕事の場や社会生活の上でも、一面的な見方にとらわれていたり、安直にわかったつもりで終わってしまう議論にならないためにも、問の立て方と展開の仕方を身につけることは役立つ思考力の要なのだ。」とある。オックスフォード大学で行われているチュートリアルという形式の、先生と生徒の一対一の学びを実際に行い、テーマにある問の立て方と展開の仕方を詳細している。先生はもちろん、生徒もレベルが高く、対話形式のまま記載されているので分かりやすい。最後に、少し時間をおいて生徒が振り返っ

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    2019年12月30日
  • 教え学ぶ技術 ──問いをいかに編集するのか

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    オックスフォード大学での学部生向けの個別指導(チュートリアル)と大学院生向けの研究指導(スーパービジョン)を日本人向けに再現したもの。論理展開の方法や問いの立て方など、具体的に応用できる技術が散りばめられている。受講者による学習レポートも、指導中に感じた違和感なども率直に綴られていて、読み応えがあった。

    なお、指導の内容が身に付くかどうかは、学生自身の訓練が欠かせないし、「先生は教えることはできますが、後はモチベーションを出してもらうしかない」と言い切っていることは見逃せない。教員が教える技術を磨くことが必要なのは言うまでもないが、学生を良い意味で突き放すことも必要なのだろう(もっとも、突き

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    2019年09月22日
  • 日本の私立大学はなぜ生き残るのか 人口減少社会と同族経営:1992-2030

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    事実誤認あり。

    P.158 学習指導要領の指定内の語彙数で英語の入試が作られていると正しく指摘しているが、本文で挙げられている例はこれにそぐわない。

    また脚注26に、「『ジーニアス英和辞典』に収録されている英単語は五段階の難易度に分かれているが、入学試験ではその中で最も優しい三段階に含まれる一万三二〇〇語だけを使うことになっていた。」とある。

    しかし、学習指導要領が指定する学習すべき語彙数は最大で約5000語であり、この著者たちの調査期間では、これよりも少ない語彙数だったはずで、上記の記述は事実誤認。『ジーニアス英和辞典』の一・二段階の語彙を使って入試問題は作られている。現に、『ジーニア

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    2022年03月27日
  • 日本の私立大学はなぜ生き残るのか 人口減少社会と同族経営:1992-2030

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    少子化で入試レベルが低い私立大学は軒並み潰れると思われていたが、案外現在も存続している。その理由を分析し、大学以外に様々な学校を併せ持つ同族経営が大学存続の一つの鍵だったと分析されている。なるほど、意外に面白い。
    本書は、外国人によって英語で発表されたものを日本語に翻訳されたもののようで、その意味では、日本人による日本国内向けの内容とは視点も異なっている。そもそも大学を運営する学校法人がどのような構成になっているかということは、あまり公になっていないし、学校のウェブサイトにも詳しく載っていない。学術的な分析、国際比較の部分に比べて、メイケイ学院大学(仮称)の個別具体的なエピソードが面白い。

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    2022年03月19日
  • 教え学ぶ技術 ──問いをいかに編集するのか

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    私の所感では、「ロジカルシンキングをどう実践するか」をテーマにした本だと受け取った。「問いを立て、問いを解く技術」の方がふさわしいように思う。

    著者のオックスフォード大学での「チュートリアル」の経験をそのまま日本に持ち込んだ。「チュートリアル」とは、欧米の大学の厳しさの代表格で、ある課題について大量の図書を読んで小論文を執筆し自分なりの答えを出すというもの。例として、「日本の教育は社会の平等・不平等にどのように貢献したのか」を取り上げている。少人数の学生に大学講師が張り付いて手厚い指導や深い議論を行う。

    本書の大半は学生と著者の指導・議論で構成される。

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    2019年11月19日
  • 教え学ぶ技術 ──問いをいかに編集するのか

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    <目次>
    序章  「問いを編集する」とはどういうことか
    第1部  いかに論理を組み立てるか
     1日目  抽象と具体によって課題を明確化する
     2日目  分析枠組みはこう使う
    第2部  自分で解くべき問いを見つける
     1日目  問題意識を俯瞰する
     2日目  関心をコンテクストにのせる
     3日目  キーワードを探すために
     4日目  問からリサーチ・クエスチョンへ
    学習レポート~チュートリアルを振りかえって

    <内容>
    オックスフォード大学で教鞭をとる苅谷剛彦が、オックスフォード大学留学経験のあるライターを相手に、英国流の課題解決の流れを公開したもの。話は硬いが、子弟の会話で進んでいくので、ポイ

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    2019年10月07日