苅谷剛彦のレビュー一覧

  • 教えることの復権

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     いきつけの料理屋がある。使用されるのは大将自らが収穫した旬の野菜。大将はこちらが好きな料理を熟知してくれていて,新しいおすすめをさり気なく紹介してくれる。常に新しいメニューが登場し,頻繁に通っても飽きることがない。自然と饗されるその一皿に,人知れぬ苦労があることを大将の所作から感じられる。さらに,遠方から来店した客への心配りも忘れない。客に美味しい物を提供したいという大将の心が,痛いほど感じられる。

     本書を読んで,そのように相手に心を尽くすことの共通点を感じられた。
    「教えることの復権」と題された本書。教育社会学者である刈谷剛彦らが,国語教育の大家である大村はまの指導法と対談をもとに,教

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    2014年08月27日
  • 欲ばり過ぎるニッポンの教育

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    日本の教育を国際比較した本。日本の教育は一つの完成品である。ただ、時代の要望と合わなくなっただけ。変えなくても大丈夫だけど、変えたいとのこと。不安があるから。

     日本の教育は’’学問としての誇りを捨てて人材訓練場’’になるべきか。そこが論点なのかなと思った。
    でも、日本はまだまだ経済力があるからそんなに勤労意欲高くいかなくてもいいのになぁ…。

     2006年のこの本から日本の教育はどれだけ変われているだろうか。2012年のPISAの結果は、①数学的リテラシー:日本7位(フィンランド12位)②読解力:日本4位(フィンランド6位)③科学的リテラシー:4位(フィンランド5位)、とりあえずPISAで

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    2014年05月19日
  • グローバル化時代の大学論2 - イギリスの大学・ニッポンの大学 - カレッジ、チュートリアル、エリート教育

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    アメリカとは違い、こちらは矢張り老舗の風格、学ぶべき点は多い。日本の近代は初めはその西洋の薫風に憧れたのだった。しかし、戦後は東からアホの西洋がやってきたということ。教育関係者は本著を読んでも、もはや希望は見つからず、どこから手を付けるべきかに途方に暮れるしかないのでは。日本の近代教育は遂に失敗だった、という気がしてならない。

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    2014年03月13日
  • 欲ばり過ぎるニッポンの教育

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    対談になっているので、とても読みやすい。
    小学校での英語教育批判にはなるほどなーと思った。
    既に小学校に英語教育は導入されているが、これ以上増えたら…。

    日本の教育はポジティブリスト主義(やりたいことをすべてリストアップする)になってきている。たとえば小学校で英語を必修化した場合、時間やエネルギーの制約もあるため、他のことができなくなってしまう、いろんな制約がある中で、リストにどんどん足したって、必ず何かはみ出る。必ずはみ出すものがあるのに、はみ出すものを何にするかという議論をしないまま、英語を入れたほうがいいと言う議論には反対だ。意識調査をするときに「英語を入れるかわりに国語の時間が減りま

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    2013年09月06日
  • グローバル化時代の大学論1 - アメリカの大学・ニッポンの大学 - TA、シラバス、授業評価

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    第一章は少し古いがTAについてかなり詳しく解説してくれている。この部分をよむかぎりあでは、アメリカの大学の素晴らしさだけが伝わってくる。序説的な部分。第一章は読み物として面白く、かつアメリカの大学の授業とそのための準備も詳細。

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    2013年07月20日
  • グローバル化時代の大学論2 - イギリスの大学・ニッポンの大学 - カレッジ、チュートリアル、エリート教育

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    日本語に守られた日本の大学の特殊性と中世から伝統を持つ世界レベルの大学の特殊性を比較する。

    日本の大学教育,いや,教育制度全般を変える時が差し迫っている。大学教育を小手先の改良をしても全体に波及するのに長時間かかる。全体を変えるには手続き上長時間かかるし,コンセンサスを取っていくのにも時間がかかる。

    多くの国民が高度な教育を受けられることは国力の高さに反映される(はず)。名ばかりの大学,名ばかりの高等学校となっていないだろうか。その国の最高学府で学問をする矜恃を教員・学生は持っているのか。

    本の中で入学試験を受ける者の知的水準の違いを述べていた。知識量は日本も見劣りはしないであろう。その

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    2013年07月15日
  • 大衆教育社会のゆくえ 学歴主義と平等神話の戦後史

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    ●教育の量的拡大
    ●メリトクラシーの大衆化
     高校進学率の爆発的拡大と合わせて、経済的理由によって進学を断念しなけらばならないという貧困問題が希薄化。だれでも努力次第で進学できるように見える社会が到来した。
    ●学歴エリートの非選良性
     量的に拡大した新制大卒層がエリートとしての自覚や世代間再生産の後ろめたさを持たないまま、漫然と中間層上層を構成している現代日本の実態

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    2013年05月12日
  • 教育と平等 大衆教育社会はいかに生成したか

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    戦後日本にとって、地域間格差をなくすことは、大きな課題であった。
    日本の教育システムはどのようにして、平等を実現してきたのか、また、それが意味する平等とは何であったのか。

    これからどこを目指そうとしているのかも含めて興味深い1冊だった。

    ”1950年代を通じて、その後の日本の教育と社会を特徴づける「標準法の世界」が制度化された。それは、明治以来、日本の教育にとってトラウマともいえた地域間格差の問題を是正するために、教育財政の仕組み(義務教育費国庫負担制度)と、教育資源としてもっとも重要な教員の定数・配置に関する制度(「公立義務諸学校の学級編成及び教職員定数標準に関する法律」、いわゆる義務教

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    2013年02月11日
  • なぜ教育論争は不毛なのか 学力論争を超えて

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    教育を議論していく際に考えさせられる内容の一冊。

    観念論や理想論、単純な二項対立に陥りやすいのが「教育」。
    ただ、それに待ったをかけているのが著者。
    これを読むと、今までの教育論争がいかに不毛なのかまさにわかる。
    タイトル通り。

    教育を扱った議論に違和感を感じたら読むといいかも。

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    2013年01月03日
  • 教育改革の幻想

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    「ゆとり教育」に対して様々なデータを紹介しながら果たしてこのまま行っていって大丈夫なのか、「子ども中心主義」の問題点などを指摘している。2002年に出ているが、現在起きているコトをすでに予見しているので今読んでも十分参考になる一冊。

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    2013年01月03日
  • グローバル化時代の大学論2 - イギリスの大学・ニッポンの大学 - カレッジ、チュートリアル、エリート教育

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    東大からオックスフォード大学に移籍した著者の体験的、日英大学制度の比較と評論。大学教育に関心のある方なら必読書かなと思う。

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    2013年01月01日
  • グローバル化時代の大学論2 - イギリスの大学・ニッポンの大学 - カレッジ、チュートリアル、エリート教育

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    続いてイギリスの大学と日本の大学との比較論です.端的に申し上げれば,大学にもグローバル化の波が押し寄せており,オックスフォード大学のような名門中の名門大学が,精力的に変革を進めている一方で,日本の大学は「閉じたコップ」の中でのみ競争を続けているというものです.

    当事者としては,こちらの方は多くの点で頭の痛い話です.

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    2012年12月24日
  • グローバル化時代の大学論1 - アメリカの大学・ニッポンの大学 - TA、シラバス、授業評価

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    本書は,1992年に玉川大学出版部から出版されたものを新書版にしたものとのことです.

    実際,タイトルにもあるように,書かれている内容は,TA,シラバス,授業評価に関する話題が中心で,既に日本の大学で導入され,運用されています.しかしながら,少なくとも私が勤務しているの大学のそれは,あまりにも形式だけの導入にとどまっており,一体どんな効果が期待されるのか全くもって不明です.私の推測では,その主要因は,教員,学生がともに当該制度の導入意図を十分に認識できていないこと,仮にできたとしても我々の業務過多を増長させるに過ぎないことが挙げられると思います.

    従って,1992年に問題提起された本書のテー

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    2012年12月23日
  • 大衆教育社会のゆくえ 学歴主義と平等神話の戦後史

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    <概要>

    『知的複眼思考法』で有名な(少なくとも個人的には…)苅谷剛彦氏の著書。
    日本に特有な「大衆教育社会」が成立した経緯及び生み出される問題、隠されている問題を検討する。「大衆教育社会」の特徴は以下の三つである。
    ①教育が量的に十分供給されており、国民に広く行きわたっている。
    ②学校における成績によってエリートが選抜され、エリートがその後の人生において非エリートに対する相対的な優位に立てることが社会的にある程度認められており(メリトクラシーの大衆化)
    ③エリート層はあくまで「学歴エリート」であり、独自の文化を持たず大衆に基盤を置いている。

    まず日本における教育機会に関する検討が行われる

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    2012年12月09日
  • グローバル化時代の大学論1 - アメリカの大学・ニッポンの大学 - TA、シラバス、授業評価

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    ネタバレ

    オックスフォード大学に所属する著者によるイギリスの大学と日本の大学の比較。
    入学者選抜は顔の見える相手として選抜を行う事、歴史に裏打ちされた自信がある事、チュートリアル制度によってきめ細かい指導を行うといった特徴が日本にはないものだという。

    日本の大学はこれでいいのか、という事を考えるのによいきっかけになる本だと感じた。

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    2012年11月18日
  • グローバル化時代の大学論2 - イギリスの大学・ニッポンの大学 - カレッジ、チュートリアル、エリート教育

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    読後感は、暗い。
    内容が悪いのではなく、日本の状況を振り返るととてつもなく暗くなる。
    「日本社会という閉じたコップの中」で大学改革は遅々として進まない。
    教育の質を高めるには学修時間を増やせば良いというような答申が未だに出てるような状況だし、最近就任した大臣は裁量逸脱で混乱を招いている。

    この本を読むとこのように暗くなるのであるが、あのオックスフォード大の専任教授としてこのような貴重なレポートを発し続けていただくことがコップを割るような改革につながっていかないだろうか。

    潮木先生の解説がまた素晴らしい。
    「我々は人材を失ったのではなく、強力なイギリス観察者をオックスフォードに送り込んだので

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    2012年11月04日
  • グローバル化時代の大学論2 - イギリスの大学・ニッポンの大学 - カレッジ、チュートリアル、エリート教育

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    前書のアメリカの大学に物足りなさを感じたのはおそらく時間経過であるということがわかった。リバプール大学の集中講義で学ぶよりも早く本書に出会うことができればよかったと感じる内容であった。

    ただし、どうしても高等教育研究における各国の比較研究はエリート大学などに偏っている点が研究の網羅性として多いに疑問を感じてしまう。しかし、反対に考えれば研究のフロンティアは残されていることになるため、研究領域としては行き詰まりよりも明るいゴールドラッシュを望む西部開拓民のような心持ちで望めるものであると感じる。

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    2012年10月29日
  • 教育と平等 大衆教育社会はいかに生成したか

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    ネタバレ

    内容は難しい箇所があったが、刈谷先生の文章はわかりやすい。

    「文部省=国家の統制によって、上からの力だけでこの<システム>が作り出されたわけではない。それを歓迎し、招き入れる下からの働きが呼応したことで、教育の画一化も、一元的な能力主義もその成立を見た(p269)

    この日本独特の<システム>のキーワードがアンビバレンス。

    読みごたえのある新書だった。

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    2012年09月01日
  • 教育と平等 大衆教育社会はいかに生成したか

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    戦後日本の教育史は「面の平等」といったキーワードを用いて説明できるとしている。

    財政面の配分方法の分析から「面の平等」=個の平等ではなく「学級」単位の平等が標準法の制定のなかで実現したことや戦後の大きな地域格差のため次善の策としてとられた「学級」単位の平等が教育条件の均質化につながったことなどを示している。

    その過程は上からの一方的な指導ではなく下からの自主的な動きも伴っていた。

    単なる言説研究だけではなく統計的な手法を有効に使っていて説得力があった。特に筆者が「知られざる革命」とよぶ学校教育費の配分が逆進的なものから累進的なものへと変わっていくことを示した部分は非常に説得力があった。

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    2012年08月29日
  • 大衆教育社会のゆくえ 学歴主義と平等神話の戦後史

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    教育社会学のパイオニア・苅谷剛彦氏が書いた15年前の書である。しかし、内容は今にも通じるものばかりである。経済から見た教育格差。大衆化した大学教育とメリトクラシー。教育格差から生まれる階層・文化の違い。国際比較から見た日本の教育の現状etc...いずれにしても両極端に偏ることなく、バランスのとれたものが多い良書。教育社会学のバイブル。

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    2012年05月08日