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高い学歴を求める風潮と、それを可能にした豊かさに支えられ、戦後日本の教育は飛躍的な拡大をとげた。一方で、受験競争や学歴信仰への批判も根強くあるが、成績による序列化を忌避し、それこそが教育をゆがめる元凶だとして嫌う心情は、他国においてはユニークであるとみなされている。本書は、このような日本の教育の捉え方が生まれた経緯を探り、欧米との比較もまじえ、教育が社会の形成にどのような影響を与えたかを分析する。
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Posted by ブクログ
古い本だけれど、感情論になりやすい教育論が丁寧に考察されていてとても良い本だった。古いからこそ、流行とは無関係に読める点も良い。 教育には何ができないのか、を考えるべきだという提言に納得。
自分が受けた中学での補習授業はこうした状況の中で行われていた。友人はだから大学へは進まなかった。自分はなぜ大学へ進みたかったのか。 戦後と言う社会状況の中で、教育がどのような歴史的意味をもっていたのか、教育社会学の視点でたくさんのことを知ることができる良書である。国際的な比較を通した、「平等」の...続きを読む考え方は多くの教育実践者にも知ってほしいと思った。 サブタイトルの「学歴社会と平等神話の戦後史」のほうが、本書の内容をよく表している。
1995年発行とは思えないほど現代的で、今も筆者の言う構造があるように感じられる。 神話にあふれる教育の世界、抽象的な「本当の教育」といった終章での意見は非常に共感できた。 同じ平等な教育といってもイギリスは階級的、アメリカは多民族的に考え日本の差別感を与えない教育=平等という考え方の特殊性を明ら...続きを読むかにしていく部分や日本の場合、社会的出生=入試による生まれ変わりがあるといった主張は非常に参考になった。
大衆教育社会が成立したが、そこには表だって問題とされない、(学力)階層社会が存在していたということを、いろいろな資料によって明らかにしている。また、日本は諸外国にはない、平等的な学校システムが作られた国でもある。 これは、日本的な能力主義、平等主義が生み出していったものであるとする。90年代半ばに...続きを読む、社会の変革を的確にとらえて、大衆教育社会が成立し、そして揺らぎ始めていることをとらえている。 当たり前のことを分析したうえで、しっかりとした意見を構築しないと、砂上の楼閣になりかねない。そんなことを、わからせてくれた本だった。
これは非常に面白かった!! 文句なく人にオススメできる本。 「階層と教育」の問題に切り込み、この問題が戦後の絶対的貧困の解消から現在に至るまで人々にどう扱われてきたか、そしてそれらが日本人の教育観にいかに影響して、最終的にいかなる教育が生成されたかを語る。 最終章が秀逸すぎて震えた。 アメリカの...続きを読む社会哲学者フィッシュキンの「トリレンマ」の話もさることながら、最後の一言。 「教育に何ができるかではなく、何ができないかを語りなさい。教育に何を期待するかではなく、何を期待してはいけないかを語りなさい。」 教育関係者、特に教員志望者をはじめとする学校教育を考える方々に是非ぜひ読んでほしい! 「教育の無限の可能性」「子どもの無限の可能性」を信じる人には、必ず読んでほしい。 教育と社会とが目指す姿、目指せない姿、そしてそれらがいかなる思想、教育観を前提としているか。 人によってはショックを受けるかもしれない内容。 日本一有名な教育学者が語る「教育の現実」。 ぜひ手にとってみてほしい。
東京大学大学院教育学研究科教授(社会学)の苅谷剛彦(1955-)による大衆化する教育社会における階層問題の考察。 【構成】 第1章 大衆教育社会のどこが問題か 第2章 消えた階層問題 第3章 「階層と教育」問題の底流 第4章 大衆教育社会と学歴主義 第5章 「能力主義的差別教育」のパラドクス 終 ...続きを読む章 大衆教育社会のゆらぎ 「大衆教育社会とは、教育が量的に拡大し、多くの人びとが長期間にわあたって教育を受けることを引き受け、またそう望んでいる社会で」あり、本書で挙げられる特徴は以下の3点である。 (第1の特徴)高い高校進学率・大学進学率 (第2の特徴)「メリトクラシーの大衆化状況」の現出 (第3の特徴)大衆化したメリトクラシーを通じて選び出される特定の社会 階層の文化との親近性格をそれほど強く持たない「学歴エリ ート」の存在 1950年代には至るところで見受けられた貧困層の低学力問題は、高度成長を経て一億総中流の大衆社会の出現によって消滅した。かわって、学歴エリートへの批判が持ち上げってくる。1991年の中教審小委員会の中間報告においては、私立中高一貫高の国公立大への進学実績伸張による、大都市部富裕層によるエリート階層の独占化が危惧された。しかし、この批判が的外れであることを1950年代以来のエリート層輩出家庭の分析により明らかにされる。つまり、東大をはじめとする有力大学は一貫して、上層ノンマニュアル層の子弟の寡占状態であり、私立中高一貫校の普及とは関係がない。 とはいえ、教育社会学の研究者が長年積み重ねてきた階層と教育の問題が社会的な問題として大きく取り上げられる機会は少なかった。 それは、学歴取得前ではなく、学歴取得後の社会的格差を問題にし続けた「能力主義教育批判」という教育界の一大潮流にあった。この潮流こそ、教育の形式的な画一化を求める「画一的平等化」と平等原則に基づく教育の機会拡大を求めることになった。しかし一方で、このような教育機会の平等化要請により、同等の学力レベルに達した生徒達による学歴獲得競争が激化するというパラドクスも同時に生じた。 以上のような、大衆教育社会の状況を、実証的に示す本書の議論は明快である。同時に このような歪な大衆学歴社会を改善する特効薬も見あたらないのもまた本書で明らかにされている通りである。評者を含め我々戦後世代が歩んできた「学校教育」の構造的な問題点を認識する上で、本書の存在は非常に有意義であり、教育について少しでも関心のある人間には是非一読していただきたい一冊である。
新書で体が震えたのは「ビジネス・インサイト」以来かな。 ゼミ論で使えそうだと思ったから丁寧に読書ノート取りながら読んでたけんども、考えさせられる事が非常に多い。いかに今までの自分の考えがうわべだけだったのかを実感させられる。批判的な態度で臨んでもこのざまか、という自分に失望クリスマス。歴史は偉大で...続きを読むした。やはり歴史的布置連関もしっかり追跡しますよ。 戦前から90年代にいたるまでの学校教育史の本。メインは戦後いかに「大衆教育社会」が成立したのか、であるよ。能力主義を嫌って平等主義をうたった方針がいかに確固たる能力主義制度を作り上げたか、またいかに不平等を覆い隠すシステムを作り上げたか(←教育の問題を社会から切り離して論じる限り、方針が変わろうと歴史は繰り返される)。欧米との差別観の差異も面白い。ブルデューもハマータウンも頭の中で大活躍でした。
生まれながらの身分制が(ほとんど)存在しない日本という国で、 学歴というものが持つ意味を考える なぜ「学歴」なのか
ちょっと古い本ですが内容的には全然古くなっていません。 内容も読みやすく、非常に分かりやすいです。 統計データは使いますが複雑な話ではないので、苦手な人にもオススメ。
これみんなに読んで欲しい!!って特に大学の人はこれを読んで自分の歩んできた教育と現状を理解して欲しい。それでいて自分達の状況が当たり前ではない事を……。無理か!! それにしても僕は学校の先生にはなりません。これめっちゃ面白かった!!
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大衆教育社会のゆくえ 学歴主義と平等神話の戦後史
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