【感想・ネタバレ】ことばの教育を問いなおす ──国語・英語の現在と未来のレビュー

あらすじ

学習指導要領の改訂や大学入学共通テストへの記述問題・民間試験導入で大きく揺れ動く国語教育・英語教育。本書では、この危機の時代に、国語と英語という「ことばの教育」にはそもそもどんな意味があるのか、そしてどうやって「ことばの力」を鍛えるのかを、それぞれの分野の専門家三名がリレー形式で思考する。私たちの思考の根本をつくるのは「ことば」である。その教育が、子どもたちの未来をつくる。「ことばの教育」を考えることこそが、いま大切なのである。

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ネタバレ

対談形式で、ことばの教育について日本語、国語、英語にかかわらず、哲学や理論など様々な視点で語られている。
互いに批判を恐れず、誤解を解き合い、少しずつ本質に迫っていく姿勢に尊敬の念を抱かずにはいられない。



p198〜
教える者がなすべきは、自身が研鑽を積んで真剣に学習者と向き合い、彼らに刺激的な知を提供して学びを深化させること、そのような教育を通して自律性を育むこと。
国語であれ英語であれ、ことばを教えることも、根本はそれに尽きる〜

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2023年03月21日

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戦後の国語教育を支えて来た大村はまの教育実践。そして、グローバル化に伴い小学生から授業として取り組まれていく英語。アクティブラーニング、英語のみの授業といった指導方法。この本を通して、私自身も授業について考えさせられました。

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2021年09月02日

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国語教育での大村はまの実践的な指導方法を継承している刈谷夏子と、英語教育で先進的な発信をしている鳥飼玖美子が、ことばの教育について議論した好著だ.まとめの形での刈谷剛彦の提言も良い.『星の王子さま』を例に英語、フランス語、日本語の絡みを議論する部分が楽しめた.(p155-)
大学入試の問題点について的確な議論がなされている.

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2020年08月15日

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ネタバレ

外国語習得の基盤は母語(国語)。「第二言語としての英語」(ESL)≠「外国語としての英語」(EFL)。後者を意識的に勉強した学生の読み書き能力が高いことは珍しくない。異言語習得の基盤は「母語」だから。

BICS(日常会話力)CALPS(認知的学習言語能力)。CALPSにはまず、母語の獲得が大切。だから母語を獲得してから海外に行った方が学習言語を習得するのが早い。
にも拘わらず、(日本語が覚束ない)幼少期から英語漬けにしようとする。母語をしっかり獲得しないから、日常会話レベルの発音だけは流暢になっても学習言語の修得がおぼつかない。にも拘らず、もてはやされるのは日常会話レベルの流暢さ。

考えてみれば、英語教育もまた言葉(人間)を育てる教育。言葉であるからには、生き生きと興味深い豊かな世界に直結しているはず。しかし単語を暗記したり、学術的な文法書を読んだり、単なる入試対策であったり、TOEICの点数を上げるためであったりと、英語は無機的は要素の集積のように感じてしまう。言葉として当然持っているはずの豊かさや人間らしさ、社会や文化ということを忘れ、スキルの集合体としての英語ばかりを見るようになっている。
原点に戻って、言葉(人間)を育てる英語教育を目指すべき。
協同学習は「自律性」の涵養に有効とはいっても、学習者中心の能動的な学習を誤解して、生徒や学生をグループに分けて話し合いをさせる(自由放任)だけでは学びにならない。共同学習の原点は、「周囲との相互行為を通して一人では到達できない領域に達する」ところにある。教師による適切な介入と丁寧な指導があってこそ「共同学習」は「自律性」の育成に大きな役割を果たす(p198)。これが、コミュニケーションとしての英語の学習の原点なのだろう。

それにしても80年代から、教育行政に(教育素人の)経済界が(自社の利益を念頭に置きながら)割り込みすぎ。英語は人間育成でなく、産業育成に成り下がっている。こういった現状が教育をダメにしていることを考えれば、必読の価値がある一冊だ。

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2020年08月20日

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教育の本質的な部分を手堅く突いた、正攻法の指南書です。本当に大切なことは、こういう書物にこそ書いてあります。
最近はYaho●や●martNewsでやたらと英語、プログラミング、早期教育、教育改革を煽り、人々を煙にまく論調が目立つ分、このような書は見向きもされないのかもしれませんが。。悲しいことです

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2020年01月07日

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英語教育、国語教育、社会学のプロの方が、それぞれ異なる立場からことばの教育について論を交わしている本。議論の中心となるのが、大村はまさんという国語教師の方が実践した教育方法。半世紀の間、ひたすら、言葉を使うことの重要さを子供に感じてもらうような実習を自ら考えだしては実践したらしい。

論点としては想像以上に幅広く、面白かった。国語教育・英語教育に共通する現在の問題点や重要な点は何か?ことばの力を育てるために有効な方法は何か?そもそも教育について考えるとき、「理論」とはどんなふうにつかうべきものか?

最後にまとめられていた通り、ことばの教育=考える力の教育という点が印象的だったし納得した。
(現状は国語・英語教育ともに必ずしもそうなっておらず、表層的な部分で特に話すスキルを重視する風潮にあるが、書くことで思考能力を高める段階を経ないと、深い思考を言葉にして話すことはできないとのこと)

同時に、だからこそことばの教育は難しい。
また、本書でもふれられていた通り、教育の理論は、実践を振り返る際のよりどころとしてには参考になり重要ではあるが、誰にでも効果的な教育方法というのは成り立たない。

そんな中でも、ことばの力・考える力を育てるのに重要なこととしては、次のような点が挙がっていた。

・帰納的思考(抽象化)と演繹的な思考(具体化)を往復する。

・メタ認知の視点(自分の使っている言葉が自分のいいたいことにあっているのか?を反省的にみる視点)を持っておく。

・話す力を鍛える前に、書く力を鍛える。書くためには、まず読むことで、筆者の思考のプロセスを学び取る。

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2020年01月25日

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国語力はありがたいことにいつの間にか身に付いていたと言う部分がかなりある。机の前に座ってテキストを広げ、先生から習うと言う勉強とは必ずしも直結しない。育っていく過程で、本人が勉強と何度も言わずに母語の基本を習得できていた。

小学校高学年に入った頃、勉強の内容が複雑化したり、抽象化したりして、日常の暮らしから離れていく時期に、ことばが内容を背負いきれない、複雑な思考を進めるための言葉の力を十分に持っていないとということがでてくる。
国語力が育つ第一の条件は、本気になって言葉を使うこと。主体的に言葉で考えるリアルを見せ、体験させることで育つ。

大村はま…「民主主義というならば、普通の庶民がちゃんと話し合える人にならないといけないはず。そういう人を育てよう」ということで「一生を通じての財産であり武器」としての言葉の力を育てた。登山家がハーケンを打ち込みながら岩山を登るように、言葉を頼りに一歩一歩考えや感情を認識し、整理し、気づき、疑問を持ち、分かり、納得した歩みを進めながら生きていく。

『子どもの英語にどう向き合うか』
全ての子供は生まれながらに言語への鋭い感性に恵まれている。〜母語の重みを認識すること、そして言語とは一生を通して学ぶものだと理解すれば、英語学習について焦る必要はないと分かる。

『日本語から始める小学校英語〜』
ことばは人間だけに与えられた宝物であることを認識し、その上で力を発揮すべく、直感が利く母語について仕組みと働きについての理解を深め、その理解をもとに母語以外の言語について学んで欲しい。

言語は世界を理解し、考えるという行為を支える。それがしっかりしたものでないと、帰納と演繹、抽象化と具体化、認知とメタ認知といった往復運動が崩れてしまう。
何かを表現したり理解したりする時に、最初に思いついたたった一つの案や言葉でよしとせず、せめてもう一つの言葉を求める努力をする。それが大きな差を生む。考えを進めるとっかかりになる。その時何をもう一つ持ってきて並べるか、それ自体が知恵であり、経験であり、その人らしさに通ずる。

【読むことは書くことの基礎】
読むことで知識をインプット。読むことも書くことも自分のペースで行える。前に書いたことを見直したり、読み飛ばしたりペースの取り方を自分の思考に応じて行いやすい。自分の考えを構築する上でも役立つ自己鍛錬。

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2025年09月02日

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ネタバレ

ことばの力とは何か? どうやって育てるのか?

それぞれ専門分野が異なる3人の往復書簡のような意見交換。自分の中では鳥飼先生の分野にもっとも馴染みがあるので、鳥飼先生の意見が一番スッと入ってきた。しかし大村はまという大きな教育をどのように受け継ぐかは興味がある。教育に王道なしとはよく言ったもので、同じ生徒、同じ先生という条件にはないのだから、唯一絶対のメソッドなんてない。大村はまの教育がどんなに優れていようと、うまく適用されない現場や生徒がいるだろう。だからそれぞれの優れた教育法の核を認識して、教員がそれぞれの教室で一人ひとりの生徒をよく見て、もっとも適した方法を取る必要があるのだ。それはとても大変な道だけど。

英語と日本語を比較することで深まる部分というのは自分の中にめちゃくちゃあった。自分は文法(というか文の構造)大好きなので、句や語に分解して理解していくというのを、英語・古文・漢文すべてでやっていたな、と。でもそれが万人に通じるとは思わないし、学習初期には向かないだろう。

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2024年04月07日

Posted by ブクログ

ざっと読んだ。大村はまの話が半分以上。こういう本を読む人たちが、この本に書かれていることで知らないことというのは、どのくらいあるのだろうか。

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2019年12月08日

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