夢枕獏のレビュー一覧
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登山家・麻生誠は、現地政府の許可を得ない違法なアタックでヒマラヤの霊峰・マチャプチャレに挑む。猛吹雪に襲われ、友の生命と自身の指五本を犠牲にしながら頂上を目指した麻生が目にしたのは、煌々とした月の光に照らされた巨大なオウムガイの化石だった。
なんとか下山して帰国した麻生は、オウムガイに異常な執着を見せるようになる。連日通う水族館でオウムガイを担当している布引と交流するようになり、布引からオウムガイにまつわる様々な奇譚を聞き、さらにオウムガイへの興味を深める麻生の身に、やがて不思議な出来事が降りかかる・・・。
事前に知ってはいたんですけど、こちらの想像以上に突然、本当に突然、話が終わります。ブチっと終わります。これ以上ないほど話を放り出した形での「未完」作品です。
それでも、巻を閉じた後にそれなりの充実感があるのは、夢枕獏作品ならではの世界観と美学に満ち溢れているから、でしょうね。
未完であることをもって激しく罵倒しているレビューも散見されますが、正直申し上げて、夢枕獏作品はかなりの割合で未完です(苦笑)作者本人が飽きてしまうのか、疲れてしまうのか?その辺はよくわかりませんが、まぁそういう作家で、読む方もある程度織り込み済みで読んでますので、未完であること自体には、鴨はそれほど抵抗はありません。
未完作品ばっかり世に送って、それでもこの作家が作家として活動を続けていられるのは、一重にストーリーよりも物語の世界観や肌触りに重きを置く作風だから、だと鴨は思います。螺旋・宇宙・月・音楽・雪山・女体・時間・・・様々な要素をてんこ盛りに盛り込んで、感覚的に「理解できそうで理解できない何かを語る/騙る」、それが夢枕作品です。ロジカルな構築は、ほぼ感じられません。ひたすらに感覚的で官能的で、とにかく美しければ良い。理屈はいらない。そういう作風です。だから、未完でも刊行されちゃいますヽ( ´ー`)ノ
そんな特徴的な作風を、思いっきり凝縮している作品だと、鴨は思います。
とはいえ、さすがにこの尻切れトンボっぷりは、高評価することはできません。でも、それなりに面白いですよ。
十数年ぶりに夢枕作品を読んで、「そうそう、これだよな〜」と不思議な充実感を味わえました、はい。 -
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「夢枕獏」の短篇集『鳥葬の山』を読みました。
「夢枕獏」作品は6年前に読んだ『神々の山嶺』以来なので久しぶりですね。
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都内で小さなデザイン事務所を経営する「夏木」は、あくせく働く日常の代償に、二週間の休みをとり、チベットで過ごすことにした。
ラサの町でハゲワシに人間の死体を処理させる鳥葬を見ることができると聞き、「夏木」はその場に立ち会った。
以後、毎夜夢に現われる奇怪な光景の謎。
表題作以下、『羊の宇宙』『渓流師』『超高層ハンティング』等の「夢枕」ワールド八篇。
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おどろおどろしい作品から、SF作品、渓流釣りをテーマにしたドキュメンタリータッチの作品まで、バラエティ豊かな「夢枕獏」ワールドを体験できる8篇が収録されています。
■柔らかい家
■頭の中の湿った土
■鳥葬の山
■閑古鳥〈かっこう〉
■あやかし
■超高層ハンティング
■羊の宇宙
■渓流師
■あとがき
■解説―蚊屋と恐怖 中島らも
印象的だったのは、やはり『柔らかい家』、『頭の中の湿った土』、『鳥葬の山』、『閑古鳥〈かっこう〉』等の不気味な後味の残るおどろおどろしい作品ですね、、、
特に主人公の男が、夜道に迷い、たどり着いた山中の一軒家での恐怖体験を語る『柔らかい家』は、ホントに怖い… 奇妙な生き物が溢れ、家がひとつの生態系を成してるような世界観は圧巻でしたね。
怖いし、気味が悪く、悪夢のような作品ですが、「夢枕獏」の想像力の素晴らしさには感動を覚えましたね。
『鳥葬の山』の主題となっている鳥葬って、遺体をそのまま岩の上に放置して鳥に食べさせるものだと思っていたんですが、跡形もなく全てを鳥が食べ切り、この世から存在を消し去るために、料理で言うところの調理・仕込みにあたる、様々な手順を踏むということを初めて知りました… 凄惨なシーンですが、崇高な儀式なんでしょうね、、、
その後、チベットから日本に帰国してからの映画『鳥』のようなシーンも印象に残りましたね。
『羊の宇宙』は、カザフ族の少年が語る宇宙の心理に関する話の聞き役にまわっている老物学者が「アインシュタイン博士」だったというオチが印象的… 科学のことを、もっと良く知っていれば、何倍も愉しめたんじゃないかと思います、、、
それでも、なんだか解らないけど、科学のことがわかったような気分を味わえましたね。 -
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陰陽師絵物語の四冊目「鼻の上人」。
四冊目というものの、他の絵物語持っていないや。どこかで買い求めるのか、求めないのか。それはそのときどき次第ということで。
妙法寺の僧、善智内供の悩みは顎の下まで垂れ下がる長い鼻。悩みを抱える僧の前に蘆屋道満が現れて、という物語。
この長鼻の僧侶の話って、どこかで読んだ気がするけど思い出せない。元ネタを知っていると思うのだけど、どこだっけ?小坊主が食事の際に鼻を持ち上げて、の絵を見た気がするので、どこかで漫画見たと思うんだけどなぁ。思い出せない。
村上豊さん追悼の一冊となりました「鼻の上人」。
昔話の素っ頓狂な部分と、綺麗な場面が魅力的な絵を描く人でありました。陰陽師絵物語は、それを堪能できるものであったのか。
他の三冊も買わねば読まねばなるまいな。 -
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陰陽師の十六巻「女蛇ノ巻」。
「さしむかいの女」冒頭でいつになく恋話に話を咲かせる晴明と博雅の二人。なんかいちゃいちゃ度が増しているように思えます。基本、陰陽師は二人のいちゃいちゃから始まることがほとんどですが、今回は微笑ましかった。博雅を称して「自然の人」というのは、こういう純粋な面があるからでしょう。
「狗」と「にぎにぎ小納言」がよかった。というか怖い。
祟りの怖さがあった二つ。「狗」の方は多弥子になんの落ち度もないのが、祟るという執着の強さを感じてしまって怖い。どちらも肉親の情が強いからこその怪しき事。
情の強さは強さということか。
「つよさ」で「こわさ」と読むのは、表裏一体が事実であるという証明な気がする。 -
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ネタバレ萩原朔太郎の静かに追い詰められていく心が…終章の、明らかに書き過ぎている手紙が本物の引用というのも狂気的でした。室生犀星からの返事は創作だろうけどこちらも良いです。
埋められている「僕」、神父、萩原朔太郎の三つの視点でお話が進んでいくけれど、この三人の関係性は昏い。腐りゆく天使の甘い腐臭。
引用されてる朔太郎の詩は勿論、作品の文体も好きでした。
「しかし、心の裡にその美を感知する能力のない者にとつては、そこには美は存在しないのです。(中略)言ひかへるなら、心の裡に美を持つ者だけが、その美に感応することができるのです」「心の裡に神を持つ人が、神を見ることができるのです」「人の、裡なる神の量によつて、外なる神の量もまた決まつてゆくのではないでせうか」。印象的な神父の言葉です。