夢枕獏のレビュー一覧
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8編+あとがき。この8編が多様なお話で、とても充実、得したような気分になった。
このシリーズを読むと、いつも真っ先に思うのは、このように酒を呑んでみたい、酒を楽しみたいということである。この夕べをページの奥とは言え、主人公らと共有できるのが実に嬉しく、しかしながら同時にページの隔てがあることが寂しい。
「媚珠」は不思議と芥川龍之介を感じた。文体はもちろん、異にする。芥川の雲母の欠片がプレパラートでも思わせるようなヒリヒリとするような輝きとは違うが、どこか共通するリズム感があるように感じた。そして、杜子春だろうか、羅生門だろうか、怪しい雰囲気は一つに思えた。全く個人の感想だから、違うと言われれば -
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シリーズ5番目
晴明からたびたび、お前は良い男だな、優しいな、と言われる博雅の魅力がいっぱいに散りばめられたストーリーとなっています。
博雅と晴明のキャラもよく見えて、エンタメとして読むのが楽しみになってきました。
。。。
博雅と長年の思いびとの徳子姫との一部始終。
博雅の笛を橋の袂で聞いたことから、お互い恋心を持ってきたが、徳子姫は別の男性と結婚して、そののち捨てられ、鬼に変貌してしまった。男性の新しくできた恋人を呪い殺し、浅ましい姿になり、それを博雅に見られるという失態。
恨みと辱めと愛憎がぐるぐるして恐ろしい情景が描きだされるのだが、最後は大きな博雅の愛に包まれて、元の徳子に戻ってい -
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文句のつけようなど一つとしてございません。
漫画→アニメ映画→原作という順だが、
結局この原作小説が一番心に来た。
理由の一つに、とにかく夢枕獏氏の文章の巧みさ、読みやすさが上がる。
本当に賢い人は、誰にでも伝わりやすい言葉で簡単に表現できると言うが、
まさに氏のような方のことを指すはずだ。
とにかく氏の文章は、読み易いばかりでなく、人や時代が匂い立つように浮き上がる。
こと本作の表現の話題になると、
冬山の美しさや冷徹なまでの過酷さ、孤高の登山家の心の在りようなどに焦点が当たる。
しかし私はそれ以上に、
当時の日本の情景や日本人たちの描写が異様に巧みであるがために、
その勢いのま -
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とにかく登山家たちの登頂への思いは想像するより遥かに強い。
エベレストに三度挑んだジョージ・マロリーが登頂できたのかは、マロリーが亡くなって何十年も経った今でも謎のままである。
ネパールの地で、マロリーのカメラの謎と羽生という登山家を追う深町。
ある意味山岳ミステリーとも受け取れる作品。
主人公の深町自身は、ちょっと情けないというかふがいないというかそんな印象を受けるが、その経験を通して強く成長していく。
そこら辺も見所のひとつだと思う。
マロリーが残した名言「そこに山があるから」は、正確には「そこにエベレストがあるから」である。
なぜか日本語ではエベレストを山と訳されるのだが。
実在の登山家 -
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ネタバレこの物語は主人公・安倍晴明の活躍と、その親友である源博雅の悲恋を描いた物語です。
博雅は12年前のある夜、得意の笛を吹いている時に一人の姫と出会う。
その後も笛を吹くたび現れる姫。彼は名も知らぬまま彼女に惹かれ、いつしか会えなくなってからも ほのかな想いを持ち続けていた。
時が流れ、博雅はある男から相談を受ける。
かつて情を通じたが今では疎遠になった姫が、夜な夜な呪いをかけて男を殺そうとしているというのだ。
博雅は男を救うべく親友・晴明の力を借り、共に姫を待ち受けるが、生成りとなり現れた女…徳子姫は 彼が思いを寄せたその人であった。
あさましき姿を博雅に見られたことに絶望する徳子 -
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【神々の山嶺】
夢枕獏の最高傑作!!
どうだ!!と叩きつけられるような本でした。
昨年のアニメ映画じゃ全然伝わってなかった…。漫画もあるけど、これは絶対に小説で読むべき。この熱量はそんな簡単にトレースできない。
山岳小説ど真ん中!ストレート一筋。超どセンターを一切躊躇なくこれでも足りないか!というほどに叩き込む。磨きこまれてるが、ゴツいダイヤモンドのような物語。
もうこれ以上熱くて面白くて夢中になれる山岳小説はないんじゃないか。今後出てこないんじゃないか。と、思ってしまうくらい圧倒的な作品。こんな本があったのか…夢枕獏、恐るべし。
あとがきの「書き終わって体内に残っているものは、もう、 -
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夢枕獏『大江戸火龍改』講談社文庫。
江戸時代に凶悪犯を取り締まる火附盗賊改に実は裏組織が存在したという設定の連作短編小説。火龍改と呼ばれる裏組織は秘密裏に人外のものを狩ると言う。しかし、裏組織と言いながらも、様々な怪異と対峙するのは遊斎という白髪の奇異な風体をした男のみという不可思議。
夢枕獏らしい、なかなか面白い歴史奇譚小説であった。
『火龍改の語』。まずは、軽く火龍改についての説明から。
『遊斎の語』。ここからが本編なのだが、まだ序の口。火龍改の相談役か頭らしい遊斎が次々と明らかにする怪異事件の数々。
『手鬼眼童』『首無し幽霊』。こちらも遊斎が解決した数々の怪異事件が紹介される。