夢枕獏のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ再読。
今回はいつにも増してなんか二人が……らぶらぶ??
鉄輪
這う鬼
迷神
ものや思ふと……
打臥の巫女
血吸い女房
以上6篇収録。
「鉄輪」の1シーン。
晴明は御簾を下ろして、博雅を見やった。
「すまぬな、晴明──」
「何がだ」
「いろいろ、なぐさめられた」
「急に何を言う」
「晴明よ、おまえはよい漢だ」
いつも晴明から言われていることを、博雅は言った。
「ばか」
晴明が苦笑してからほどなくして、牛舎が停まった。
「打臥の巫女」
「おれはな、晴明。おまえがいるから、この世はそんなに悪いものでもないと、そんな風に思っているのだ」
→これすごい口説き文句ではないですか? 普通こんなこと言う? 恥ずかしい男だな、でも真の漢だぞ博雅……!
「おまえ、本当は、淋しいのだろう。この世に、自分しかいないと思っているのだろう。おれは、おまえのことが、時々、痛々しく見える時があるのだよ」
「そんなことはないさ」
「本当」
「おまえがいるではないか、博雅」
ぽつりと晴明が言った。
博雅は、とっさのことに、次の言葉を口にできずに、
「ばか」
そう言って、怒ったような顔をして歩き出した。
→博雅よ、お前がそういう男だから、晴明も超絶素直に言うんだぞ……。絶対晴明は捻くれた物言いの相手には捻くれた物言いしかしない男だぞ……。 -
無料版購入済み
平安京の秘事と女の悲恋の怨念
何時も晴明と博雅の会話は堂々巡りでまどろっこしいですが、酒と肴の会話は見ていて飲みたくなります。
平安京の秘事の説明は結構難しく「応天の門」に登場する藤原基経の話になり、悪鬼悪霊が横行する理由が解る‼
鬼と化した女の悲恋の怨念と、菅原道真迄登場し呪文による鬼の調伏物語と、不思議な童子を描く天邪鬼の物語。
とにかく耽美妖艶で美麗な作画にウットリします!
晴明は線が細くどちらかと言うと女っぽく変に色気がある美形で、博雅はサッパリした男らしい美形で楽しめます!
表情の描写が素晴らしく、平安時代の男性の衣装はとても魅力的です! -
Posted by ブクログ
阿刀田高、黒川博行、佐藤正午、西村京太郎、馳星周、星新一、夢枕獏『一か八か ギャンブル傑作コレクション』角川文庫。
ギャンブル小説のアンソロジー。7編の短編を収録。西村京太郎、星新一のギャンブル小説はかなり珍しいのではないか。
自分はギャンブルは余りやらない。遥か昔、20代から40代の頃はパチンコをやっていたが、主に羽物という極めてギャンブル性の低い機種であった。羽物だと打止め台の開放を狙えば、少額ながらほぼ勝てた。
7編の短編のいずれも、麻雀、競輪、競馬、カジノ、賭け将棋とバレエティに富んだギャンブルをテーマにしており、いずれの作家も勝つか負けるかの真剣勝負のジリジリした感じを見事に表現しているのが面白い。
阿刀田高『ギャンブル狂夫人』。阿刀田高は久し振りに読んだ。最後に阿刀田高らしいオチが待ち構える短編であった。結婚1年目の夫婦が記念に奈良と京都に旅行する。旅先で見掛けた中年の夫婦は2人が行く先々に現れ、少しずつ挨拶を交わすようになる。結婚1年目の夫がホテルのバーで1人飲んでいるとそこに件の中年夫婦の夫人が現れる。夫人はタバコを吸っただけで銘柄を当てられると言い、30万円を賭けて勝負することになる。
黒川博行『東風吹かば』。昔、黒川博行はかなり読んでいたように思う。最後に読んだのは『後妻業』だったろうか。実を言えば、自分は関西弁の台詞が苦手で、次第に読まなくなったのだ。さて本作。バリバリの麻雀小説である。負けが混み、手持ちの資金も底を尽き、次第に焦る博打打ちの心情を上手く描いている。作家の黒田ヒロユキが編集者からの依頼で若手女性作家の花沢唯と麻雀を打つことになった。
佐藤正午『きみは誤解している』。佐藤正午の作品は余り読んだことがない。知らず知らずにギャンブルにのめり込んでいく浅はかな男の姿が残酷に描かれる。結婚を間近に控えたJR職員の男と車内販売員の女。男は父親の形見とも言うべき500円の当たり車券を元手に競輪で一点買いを続け、元手を200万円までに増やしていた。女はギャンブルにのめり込む男を諌めるが、男は言う事を聞かない。男は結婚とその後の幸せな人生を選ぶのかギャンブラーへの道を選ぶのか。
西村京太郎『三十億円の期待』。西村京太郎と言えば鉄道トラベルミステリーのイメージが強いが、ギャンブル小説も書いていたとは全く知らなかった。しかも、本作はディック・フランシスの競馬ミステリーのような味わいの短編だったことに驚いた。鉄道トラベルミステリーの傍らで、手慰みに書いた短編ではなく、レベルが高く、非常に面白かった。中央競馬会の職員である望月という男が本命馬に騎乗した佐々木騎手が落馬し、次のレースでも落馬、さらに次のレースでは手綱を引き、棒立ちになるというあり得ない失態を犯した原因を探るのだ。
馳星周『笑窪』。既読であった。『古惑仔』の中に収録されていた1編。まさに馳星周と言っても良いほどの馳星周らしいピカレスク小説。あらためてこういう類いの小説を読むと、最近は大人しい小説ばかり書いているような気がする。酒と博打と女に目が無い腕利きの板前が地下カジノでマレーシア人ディーラーの女にのめり込む。
星新一『四で割って』。星新一も物凄く久し振りに読んだ。ショートショートではなく賭け事をテーマにしたユーモラスな短編である。賭け事が好きな四人組が公営ギャンブル以外の様々な賭け事をする。やがて四人は賭博容疑で警察に捕まり、裁判に掛けられるが、ありとあらゆることを賭け事の対象にする。
夢枕獏『銀狐』。こちらも既読であった。真剣師の加倉文吉を主人公にした短編。『夢果つる街』に収録されていた1編。祭りで賑わう街の一角で金を賭けての詰将棋を商売をする木崎という男と加倉文吉が出会う。木崎の作った詰将棋を次々と詰んでみせる加倉に木崎は賭け金を釣り上げていく。
本体価格960円
★★★★★ -
Posted by ブクログ
夢枕獏『黒い陰陽師』文春文庫。
『陰陽師』シリーズ史上、最もダークな陰陽師である蘆屋道満を主人公にした短編集。10編を収録。
『陰陽師』シリーズは『瀧夜叉姫』辺りまでしか読んでいない。夢枕獏の小説自体は好きなので、『陰陽師』シリーズの新刊が刊行される度に横目で見ていた。
自分は想像力が乏しいせいか、高校時代から日本史や世界史が苦手で、どうも安倍晴明の頃の時代小説というのが苦手なのだ。
安倍晴明よりも歳上で、陰陽師の腕は同等と言う蘆屋道満。安倍晴明が清流であるならば、蘆屋道満は濁流と全くの正反対なのである。陰と陽、表と裏、男と女、明と暗、世の中は全て二律背反で成り立っているのだ。陰陽師のドーマンセーマンのドーマンは蘆屋道満、セーマンは安倍晴明に由来するのだろう。
『道満、酒を馳走されて死人と添い寝する語』。蘆屋道満はダークな陰陽師というより無辜の命を救う優れた陰陽師として描かれている。幼い頃から身体が弱かった橘琦麻呂だったが、『観音経』をとなえるようになると普通に生活出来るようになる。妻を迎えて子供も授かった琦麻呂だったが47歳の時、転んだ拍子に顎が外れて3日後に命を落とす。そこに現れた汚らしい身なりをした老人こそ陰陽師の蘆屋道満だった。
『牛怪』。蘆屋道満も登場するが、奇々怪々をの怪異を解決したのは安倍晴明と源博雅のコンビ。検非違使の役人である橘貞則は破れ寺で身体を休める、やんごとなき身分の女性と老女、2人が連れた牛を目にし、2人に声を掛ける。幡音という女性は行く当てが無く、老女、牛と共に貞則の屋敷に住まうことになる。しかし、夜な夜な幡音が何処かに出掛ける様子で、貞則が不思議に思っていると蘆屋道満という陰陽師が声を掛けて来た。
『夜叉婆あ』。蘆屋道満のダークぶりが窺える短編だった。夜の山路を何者かから逃れるように必死に走る多人と真人の猟師の兄弟は明光寺という破れ寺に駆け込む。そこで声を掛けて来たのは陰陽師の蘆屋道満だった。
『仙桃奇譚』。蘆屋道満の酒好きは様々な怪異を呼び込むようだ。何と孫悟空の逸話が描かれるとは。もと仏師で現在は猟師を生業にする明念には病弱の真足という息子がおり、最近はすっかり食が細くなり、衰弱していた。ある日、明念は秋にも関わらず、山に桜が咲き誇る木を見付ける。その幹は仏のようにも見え、幹にある穴の中から桃の実を見付ける。
『山神の贄』。山の魔物でさえも操る蘆屋道満の恐ろしさが窺える。絃という女が独り山道を歩いていると鹿麻呂、蛭丸、熊男の3人の盗賊が現れる。絃を救ったのは陰陽師の蘆屋道満であった。
『筏往生』。昔も今も仏の御心は時に残酷である。山中で酒の匂いに釣られた蘆屋道満は炭麻呂という男と出会う。炭麻呂は山で上人様の有難い言葉を聞き、嬉し涙を流していた。
『産養の磐』。かつて日本にも狼が居たようだが、海外の狼などと比べるとかなり小さい。今でも秩父山中では狼の生き残りが居るといった噂はあるようだ。赤子を宿した女が独り旅の途中で山中で道に迷う。女は山の中で大きな岩の傍らに漆塗りの箱を見付け、その中に入っていた5つの餅にあり付く。女がしばらく歩くと里に辿り着き、民家に助けを求めると餅を全て食べ尽くしたと聞いた村人はその女を餅の代わりに灰坊様の生贄にする。
『狗』。動物に好かれる人間もあれば、嫌われる人間も居る。自分は驚くほど動物に好かれる。牧場に行けば、多くの馬が寄って来る。フラミンゴで有名なレストランのメヒコで食事をすると全てのフラミンゴが集まって来た。ヤギが放し飼いにされている山中の施設に行った時には3頭のヤギが走り寄って来た。他にも犬や猫には好かれるようだ。ある屋敷に仕える女の童は飼われている狗に吼えかかられ、襲い掛かろうとされる。以来、その女の童と狗とを引き合わせないようにしていたのだが……
『にぎにぎ少納言』。自分のベッドには夜な夜な黒ギャルならぬメスの黒猫がやって来る。昨夜は午前2時から1時間起きにやって来て、撫でろ撫でろとせがみ大変だった。少納言の坂上彦摩呂は夜になると白い衣の女が来て右手を噛むので困っていた。そんな少納言のもとに現れた蘆屋道満は酒を馳走になる代わりに少納言を助けると言う。
『道満月下に独酌す』。風流でありながらも、怪異を感じさせる掌編。巨大な楓の古木の前で萱鼠に舞を踊らせ、独り酒を飲む蘆屋道満。道満は何処からか女まで呼び寄せ、酌をさせる。
本体価格780円
★★★★★ -
Posted by ブクログ
やっと魔宮変の続きを読めた。呪殺変が再開して、昨年やっと終了したのを知っていたので、いつ発売されるか待っていた。最終巻の聖獣変が出版された後なので、続きがちゃんと出るか心配していた。あとがきによると、これからも作者が生きているかぎりは書いていくのだろう。次は煉獄変だ。
今まで語られてきた過去の話が少しずつ繋がってきた。なんと、赤須子は現代まで生きているのか。雪蓮の一族、曹元深(能海寛)と一緒にいた真蓮の正体も驚きだった。今も生きているあの人物だったのかぁー。
それぞれの対決がやはりおもしろい。大鳳とグリフィン、トゥントゥプとグリフィン、大鳳とアンドルッチャンと闘いは繰り広げられ、そこへ巫炎が空から息子を助けに。九十九と猛宗元の対決には、典膳と菊池が現れ…。典膳が間に入るとますますおもしろかった。鬼勁、硬功などの体術に加え、飛鉄、笹の葉でさえ武器になる死闘が鮮やかに表現されている。
ルシフェル教団に加え、中国政府プロジェクト関係者と、ここにきて登場人物が増え、赤や刑天というキマイラみたいなやつらがどう絡んでくるのか。これではなかなか終わらないのも当然。話の筋は以前より進んでいるので、これからに期待したい。
内容とはほとんど関係ないと思うが、今巻の章タイトルには作者の遊び心が見えた。夢枕獏のファンならばすぐ気づくはずだ。夢枕獏が今まで書いてきた作品のタイトルが並んでいる。伝奇、SF、バイオレンス,山岳などの小説にエッセイの本まで。内容に関係ないはずが、それぞれの作品を知っている人にはなんとなく内容に寄り添っているような気もしてくる。思わずニヤニヤしてしまった。