あらすじ
身体のあらゆる部位を必殺の武器となす琉球の武術「唐手(トゥディー)」。二度目の「警視庁武術試合」で、保科(西郷)四郎の相手は唐手の使い手に決まった。しかし強さの頂点に迫る中で四郎は告白する。「闘うことがこわい」骨が砕け、肉が潰れ、魂が軋む死闘をへて、苦悩の末に下した決断とは――。明治武道界に嘉納治五郎が起こした革命の物語『東天の獅子 天の巻』、感動の最終巻。
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Posted by ブクログ
私がフォローしてる〇〇さんの感想を見て読んでみたくなった作品。「神々の山嶺」以来、久しぶりの夢枕獏先生。
冒頭いきなり「まえがき」で著者が語る。
「いいなあ。
まっさらな状態でこれが読めるなんて。
あなたのことが。ぼくは本当にうらやましい。
作者が本気で読者に嫉妬しているのであります。
2008年9月12日
東京にて 夢枕 獏」
より始まる物語。
相当な入れ込み様です。
これに近い導入は何度か他の著者にて拝読した事がありますが、読む前にハードルが上がってしまい逆効果で残念な手法として記憶しています。
しかしながら流石夢枕獏先生。私の予想を良い意味でかるーく裏切ってくれました。
確かに面白い。
柔道が総合格闘技であり、柔道で1番強い者が、世界で1番強い者、という時代の物語。
写真や逸話でしか知らない凄い「漢達」がそれぞれに面白いエピソードを持って登場してきます。しかも皆豪傑である。そして紛れもなく実在の人物で、それがまた物語の奥深さや真実味を増す。
闘いのシーンも凄まじい。
競技としての「JUDO」しか知らない私自身、当時の「柔術」を見た事がなく、当て身がどの様なものか想像するしかなく、目潰しや金的有り、腕一本を折ったり靭帯断絶は当たり前、かつ試合時間も無制限となれば、試合なのか?殺し合いなのか?紙一重で、敢えて試合と呼ぶなら、試合内容は私の想像の域を超えて「決闘」と形容する以外の言葉も表現も持ち合わせていません。それを作中、著者は対決する二人の心の対話で見事に表現しています。
物語の後半での闘いのシーンは文字や文章が音符と化し行間から溢れる音楽にあわせて踊っているかの如く、流れるままに読んでいると、いつの間にか闘う者達の息遣いしか聞こえない世界に引き摺り込まれています。
この「天の章」で11年、次作の「地の章」で何年きることやら。早く続編が読みたい。著者があとがきで言ってる「絶筆」だけは勘弁してほしいものです。
Posted by ブクログ
二度目の「警視庁武術試合」で西郷四郎は、唐手の使い手と死闘を繰り広げる。死闘を経て、苦悩の末に四郎が下した決断とはー。
4巻まで一気に読まされました。
これほどまでに熱い格闘・時代小説いわゆる剣豪小説があったかと思うくらい、格闘場面が見事に表現されていました。
まさに命を賭けた格闘をここまで表現できた小説はないのではないでしょうか。
嘉納流柔術が現代に柔道という形で世界に展開していることを思うと、この明治という時代に闘った男たちの熱い思いが連綿と続いているのだと思うととても感慨深いものがありました。
天の巻はこれで完結しましたが、あの心に残る結末から次の地の巻につながるということなので、今からとても楽しみです。
Posted by ブクログ
沖縄唐手の達人と講道館 四郎による、行き詰まる寝技と立ち技の死闘の先にあった、決まり手『それまで』。 同じく講道館四天王 横山と、中村半介の死闘は、さながら全日本プロレス四天王時代の、60分フルタイム激戦の様。その決着は『あずかり』。凄か結末。そして終盤にちょっぴり登場する前田光世。 続編への期待は煽られるが… 「地の巻」は、いつ着手されるのですか夢枕先生!