夢枕獏のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
山岳小説を読むのはほとんど初めて。
タイトルからしてただ山に登るだけのストーリーかと思っていたが、人間ドラマが濃密に描かれた、人の生きざまを描いた作品。
ネパールのカトマンドゥ、怪しげな古道具屋で主人公があるカメラを手にとったことで物語は動き出す。
そのカメラは、かつてエヴェレスト登頂に挑戦して帰ってこなかったイギリスの登山家、ジョージ・マロニーのカメラと同じ型のものだった。
そのカメラを通して、羽生という山に生きる男と出会い、主人公は羽生に惹かれていく。
本作品の発刊後、ジョージ・マロニーは遺体で発見されたのだが、カメラは実際見つかっていない。
マロニーはエベレストの初登頂を果たしたのかどうか。
そのカメラのフィルムには、真実が写っていると言われている。
上記のような史実をミステリー要素として組み込み、上下巻のボリュームでもさらさらと読めていく。
発刊されたのは20年以上前だが、気になることは特にない。
羽生というキャラクターは実在した日本人の登山家をモデルにしたと言われている。
カトマンドゥの町の熱気、高山病、標高5000mより上の登山環境、ベースキャンプの様子など、緻密に描かれており、特に高山病の描写(幻覚、幻聴など)は読んでいるこちらまで苦しくなる。
「エヴェレスト南西壁冬季無酸素単独登攀」、人類が成し遂げたことのないことへ挑戦する羽生と、それをカメラで追う主人公。
最後に羽生が残した手記が心に刺さる。
「ありったけのこころでおもえ。想え。」
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Posted by ブクログ
やはり最初から読んできた小説を完結まで読み切る事が出来るという事は幸せです。
栗本薫、田中芳樹、夢枕獏という壮大な話をぶち上げて放り出す人達に翻弄された少年期でありましたが、ようやく獏さんが重い腰を上げてくれました。本当にうれしい。
臨場感とスピード感のある格闘シーンはやはり獏さんの独壇場です。
最後の結末はびっくりしましたが、これだけは絶対にここには書けないです。知りたければ読むのだ!と同年代で読むことを辞めた人たちに強く言いたい。読みなさい。
さて、でも苦言もあるんですよ、山ほど。愛するからこそですけれど。
剣豪小説に同時代性を求めないのと同じで、その年代で書いたのであれば「プロレスと空手どちらが強いか」という牧歌的な時代のままで書き続けてもらえたらというのが偽らざる感想です。
格闘技を愛するあまり、現在の潮流を無視する事が出来なかったのはとても理解できます。それでも当初の若者達ではない、総合的な格闘技者がなだれ込んできたおかげで悲哀や詫び寂びの部分が欠落してしまったような気がしました。
芥菊千代、志村礼二、竹智完、室戸武志、彼らをもっと描いて欲しかったし、特に芥の母との確執は全く出て来なくなってしまい、その異常性がいつの間にやら有耶無耶になってしまったのは残念。慟哭のシーンがもっと欲しかった。竹智がブラジリアン柔術に行く必然性もよく分からなかった。あと金的蹴りをみんな多用し過ぎでしょと。そりゃ急所攻撃が一番効果的なのは分かるけれど、反則負け、勝ちが多すぎて大会がめちゃくちゃになってしまうのがちょっといらっと来た。
打撃系の格闘技が今の時代、最強対決の中では不利なので、当初のコンセプトの中ではキャラが動かないのも理解できた。だからこそ前述した通り、同時代性を求めず限られた時間軸の中で書いて欲しかったと思うのであります。 -
Posted by ブクログ
まさかまさかの
横溝正史か!と思うような動機の数々…(ネタバレか?)
思惑に思惑をかぶせて、なおまた思惑が交錯する。
白居易の『長恨歌』をモチーフに、
「宇宙」=「人の心」を描いた1800ページでした。
読み終えてみれば
「マンガだな」
なんですけど、
やっぱりそのへん、上手いよね…書き方が。
結局、物語の拠り所を
真言密教の持つ道徳観、人間観、美意識…等々にしているので
ややもすれば法力合戦とか、お涙頂戴とかになりそうなんですけど
そうはならないんだよな…。仕掛けがとても上手いな、と思います。
さらに言うと
この小説自体が、つまり、夢枕流の曼荼羅ってことに…なるんだよね?
ということに気付くと、
作者は「自画自賛」と言っていたけども、
こんなの自画自賛でも何でもなく、
よく書いたな(驚嘆)
です。
この人の小説って、ほとんどページの下が白くって読みやすいので
なんだか読んだ気になるのが好き(笑)
あと
つまらないことですが
中学か高校の漢文の授業で『長恨歌』やるようだったら
これ読んでからがいいかも。
「あー、これがあのシーン…」
って授業中ボロ泣きしながら受けられます(笑) -
購入済み
獅子の門1の読後感
夢枕さんの本は若かりし頃愛読していましたが、歳いってから読むのは久々振りです。懐かしくまた夢枕さんの世界に没頭させていただきました。また続編も読ませていただきたいと思います。
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Posted by ブクログ
青春時代の鬱屈を多大に晴らしてくれていた夢枕獏氏。内なる暴力性を読むことで昇華させてくれていたと今になると思います。勧善懲悪ではなく誰も彼も後ろ暗く、心の傷からどろどろと膿を流してのたうち回るような氏の文章はサービス精神の塊でありました。エロスとバイオレンスをこれでもかとぶち込みながら、人間の心内の泥の中に咲く一輪の花の美を描こうとしてきた人だと思っております。
その筆力は超名作「神々の山嶺」で証明され、陰陽師で一般の人達にも浸透する事となりました。
でも僕にとってはやはり「キマイラ」「餓狼伝」の獏さんなんですよね。30年程前に夢中で血をたぎらせて読んだのは今でも僕の血肉になっています。僕にとって読書の原点は「栗本薫」「田中芳樹」そして「夢枕獏」その人です。僕と同年代の人の中には同じ思いが有るのではないかと思います。そしていつの間にやら彼らの本を卒業してしまった自分と同じような人も沢山いると思います。
その夢中に読んだ中でも先が気になっているのに全く出ず諦めていた本の一つに、本書「獅子の門」が有ります。
本屋でたまたま見つけ、数十年ぶりの再会に大興奮でした。まさか完結していたとは・・・。
1巻読んで思った事は、登場人物がいつの間にやら年下になっていてビックリした事でした。おっさんだと思っていたキーマン「羽柴彦六」まで年下になっているとは。年を取るはずであります。
あれから何千冊も本読んできましたが、そんなおっさんの期待を裏切らぬ面白さです。