保阪正康のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
昭和史で有名な著者が、昭和を語る上で、三人の首相を挙げていて、その一人にフォーカスをあてた著作です
とりとめもないですが、印象に残った部分を書きます
・握手を選挙に持ち込んだのは、日本では角栄が最初だったらしい 立礼文化なのに不思議だなぁとは思っていたのですが、なるほど角栄なら有り得そうでした
・権力の頂上を目指すためには、大将に取り入ることと、「人の悪口を言わない」ことが大事とのことです 敵を作らず、自分を好いてくれている広大な中間地帯を作っておくのが重要らしいです
・大平正芳さんは、外務大臣より良いポストを求められたのに、日中の国交正常化への意欲から外務大臣を選んだとのことでした なんとな -
Posted by ブクログ
戦後80年日本は平和を享受してきた。私自身もその中で豊かさを享受してきた1人だが、日本の平和は日米安保つまりアメリカ軍に守られた歪んだ平和という事実がある。
日本は2度と戦争はしてはいけないという意見を否定する人は少ないだろう。そのための手段が左派と右派で大きく異なる。
筆者は唯物史観をベースとした左派も皇国史観をベースとした右派も否定し、あくまで実証主義をベースとして歴史を客観的にみるべきと主張する。
日本はペリーの来航以来、戦前も戦後も現在も良くも悪くもアメリカの影響を受け続けている。
無批判に戦前の軍国主義を否定し、戦後民主主義を肯定するのは思考停止であり、自分の頭で平和とは何か、どうや -
Posted by ブクログ
戦後80年の節目に本書を読みました。そこに並ぶ言葉は、人々を縛り、命を奪い、社会を沈黙へと追い込んだ「嫌な言葉」でした。
特に「国民は無色」という表現に震えました。権力が人を“無色”とみなし、思考を奪う危うさ。私たちは一人ひとり声を持ち、それを発することで社会は形づくられるのだと痛感しました。
また「諦観」という言葉が示す、恐怖と無力感に支配された時代の重さ。戦争は戦場だけでなく、人々の心をも支配していたのだと深く考えさせられました。
そして「軍人である前に人間である」という言葉は、今の私にとって「会社員である前に人間であれ」と響きました。立場よりもまず人としての倫理を大切にすべきだと。
言葉 -
-
Posted by ブクログ
太平洋戦争における、日本国内の混沌がよく理解できる。
日本という国の体質が、ありありと描かれている。
理念もなく、戦略もなく、戦術だけを考える。戦術も場当たり的で、最終的には精神力だけで乗り切ろうとする。
国際政治には、3つのPが重要と言われる。Philosophy(哲学)、Paradime(物の見方)、Policyである。戦後日本の政治は、Policy専攻で、アメリカの言いなりになってきた。哲学もパラダイムもないから、一貫した戦略を取れない。
しかし、この本を読んで、元々日本人には、日本にはそういう体質があったのかもしれないと気付かされた。
また、天皇親政による過剰な右への傾倒は、こ -
Posted by ブクログ
昭和陸軍がなぜあのような戦争を招いてしまったのかを、著者が大量の資料や太平洋戦争時に従軍した人のインタビューをもとに纏めたのが本書である。冒頭で著者は昭和陸軍の特徴として、成績至上主義、親ドイツ、反英米、人間に対しての洞察力の欠如をあげている。これらをふまえて、上巻では明治時代における建軍の歴史と昭和時代に起きた張作霖爆殺事件、満州事変から山本五十六戦死の歴史を紐解いていく。本書を読んでいくと、昭和時代の陸軍の指導者は一部を除いて、理性や論理を重んじるのではなく、そのときの雰囲気、空気に任せて決断を下していたことがわかる。また同じ陸軍でも内部で派閥抗争が盛んであったことや、多くの高級将校たちは
-
Posted by ブクログ
第一章 旧日本軍のメカニズム
第二章 開戦に至るまでのターニングポイント
第三章 快進撃から泥沼へ
第四章 敗戦へー「負け方」の研究
第五章 八月十五日は「終戦記念日」ではないー戦後の日本
旧日本軍の組織の様子や、どのように戦争に向かっていったか、また戦争が進行し、敗北を重ねた軍部がいかに戦果を取り繕ったか、よく分かる一冊。
対局的な目線も持ちつつ、印象としてはその時その時の人物の行動や発言を取り上げているので、より鮮やかに当時の様子が伝わってくる。
例えば、「日本のマッカーサー」とあだ名されたという堀栄三という人物について。
陸軍参謀本部の情報部に所属しており、アメリカ軍が次にどこを攻めて -
Posted by ブクログ
昭和初期の多くの首相答弁は建前として国民生活の為の経済活性化を狙っての発言が目立つが、本質は軍事費への負担増を如何に対処するかが伺え、軍拡への抑止のたびにテロによって首相が暗殺、抑制された。また、金本位制、金輸出解禁などの政策の陰で操る政治家の一部が大儲けしている姿も垣間見える。当時、景気回復のためには戦争は必須であるという軍需関係の政治家vs軍拡を止め軍需・軍事費削減を図ろうとする政治家の対立構造となったが、国民生活よりも国家主体の軍事的発想が国民を幸せになると解き、陸軍などの圧力から無責任な軍拡への勢いが目立った。
現代のこの「平和論」vs「戦争論」では、ロシアが言う「核の使用もありえる」 -
Posted by ブクログ
本書は「日刊現代」に連載された記事を抜粋して構成されており、昭和100年を前に昭和前期の激動期であったアジア・太平洋戦争、戦時下の様相、そして敗戦の流れを短編でまとめた。第1章では、「日米開戦への道」として戦争に至る外交政策や近衛文麿、東条英機、松岡洋右などの人物評価の検証を行う。第2章では、「戦争の真の姿」として、東条英機の弾圧政治、学徒出陣の運命などを検証する。第3章では、「いかにして戦争は終結に至ったのか?」として、鈴木貫太郎の登場から、ポツダム宣言受諾の経過を検証し、敗戦か、終戦かを問う。第4章では、「平民新聞は時代をどう伝えたか」として、大逆事件の幸德秋水や堺利彦らの言論活動を検証
-
Posted by ブクログ
昭和だろうと平成だろうと令和だろうと天皇皇后両陛下が大いに語るなんてあるだろうか――。この本も大いに語っているわけではないけど、ちょっと知らなかった明仁さま、美智子さまの姿が感じられる貴重な内容だと思う。
保阪さんと半藤一利さんが2013~2016年に断続的に数回、天皇皇后両陛下に招かれて歓談したときのことが書いてある。えっ、こんなことまで書いていいのかななんて思うような、明仁さまの邪気がないゆえか我を張ってなのかと思わせる発言のことが書かれていたり、保阪さんも平成天皇と明仁天皇の間に二面性がなく過ごしているのではないかと書いているけど、これって言い換えれば公と私というか象徴と私人の間を自由に -
Posted by ブクログ
本書は、2022年1月から12月まで「保阪正康が語る昭和史の謎」の講座を再編集し、大幅に加筆修正した作品である。よって、ロシアのウクライナ侵略の視点は含まれるが、ガザの問題は、含まれていない点を留意した上で、読み進める必要がある。とはいえ、世界がウクライナ戦争で大きく揺らぎ、長期化していく中で、「核抑止力下の平和論」の危機を指摘する。
明治からアジア太平洋戦争を「近代史」とし、日本の敗戦以降を「現代史」とした上で、明治以降、戊辰戦争や西南戦争などの内戦を経て、欧米列強に負けまいとした侵略戦争と植民地支配に加わった日中戦争、日露戦争、第1次世界大戦、アジア太平洋戦争・第2次世界大戦の74年間 -
Posted by ブクログ
対談形式で、昭和の名将と愚将について個々に論評していく一冊。
悪口や皮肉交じりの文体も相まって、読み易く面白かったです。
名将とされた人は、総じて人格的にも優れ自分で責任をきっちり取れる人、一方で愚将とされた人は、責任転嫁をしたり、責任逃れをしながら戦後ものうのうと生きた人、などが取り上げられているように思いました。
ただ、そういう人たちが戦後も生き延びられたってことには、ちょっとやるせなさも覚えます。
知らない人が多かったのですが、名将とされた今村均さんの生き方は、他の書籍も読んでさらに掘り下げたくなりました。
人としてどうあるべきか、ってことが結局は大事な気がする。 -
Posted by ブクログ
BS-TBSで今も放映中のTV番組の一番最初のシーズンを書籍化したもの。
私がこの番組の存在に気づいたのは第二期目に入ってからだったので、この本でカバーされている部分(大政奉還から明治天皇崩御まで)の放映はまるごと見逃している。最初から全部見たかった、と悔しがってもどうしようもないので、書籍化されたものをありがたく読む。
小中高で私が受けてきた歴史の授業は、教科書の前半の古代史とか中世史はたっぷり時間をかけてやるけど、後半の近現代史は途中で時間切れになって終わる、というパターンばかり。たぶん一度も最後までやってないと思うなあ。板垣退助とか日露戦争あたりで記憶が途切れている、、、
でも、ほんと