保阪正康のレビュー一覧
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先日お亡くなりになった半藤一利氏と保阪正康氏の対談集である。
保阪氏は「名将の条件」を、「理知的であること」「原則論に振り回されないこと」と、陸軍士官学校をはじめとする陸軍教育の弊害をあげて話す。半藤氏は、「決断を下せること」「目的を部下に明確に伝えられること」「情報を直につかむこと」「過去の成功体験にとらわれぬこと」「現場に身を置くこと」「部下に最善をつとめさせること」としている。お気づきのように、まさにリーダー論である。
おなじ陸軍士官学校でも、アメリカは違うようだ。『ウエストポイント流 最強の指導力』では、危機に立ち向かうリーダーの三原則として、「リーダーは誰でも危機に直面する」「リーダ -
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昭和史を勉強すると、瀬島龍三(せじまりゅうぞう)という名前がチラつく。「司馬遼太郎が瀬島龍三と対談しているのを読んで、司馬に非協力的になった元軍人がいた」というような話から、瀬島龍三とはどういう人物なのかに興味を持った。
瀬島龍三は陸軍幼年学校、陸軍士官学校、陸軍大学校と進み、陸軍大学校をははな首席で卒業したエリートである。参謀本部の作戦課に長く在籍し、多くの作戦に関わった。
終戦後はシベリアへ11年間抑留され、東京裁判の証言のために一時帰国。その後、昭和31年に正式に帰国。繊維メーカーに過ぎなかった伊藤忠商事に就職し、大手商社にのし上げた実績から、会長にまで上り詰めることになる。
半藤一利 -
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保阪正康氏の本は何冊か読んだがハズレがない。膨大な調査の上に書かれていて信頼できる。
しかし、本書を読み始めてすぐに、自分が昭和の通史を知らないことを痛感して、半藤一利『昭和史』を読むことにした。
『昭和史』を読みながら、本書の関連する箇所を読んでいた。よく分かる。やはり大雑把にでも通史をおさえることが大事だ。何事も全体像をつかんでから部分をおさえることが大切なのだ。
本書で保坂氏は、集めた事実から「確実に言えること」を推論する。そのように推論しようと試みている。
それには高い知性が必要だ。集めた情報の断片から分からないところを推論するのは容易ではないからだ。
本書の最後には保坂氏と原武史氏の -
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保阪正康(1939年~)氏は、北海道生まれ、同志社大文学部卒の作家・評論家。2004年、菊池寛賞受賞。昭和史に関する著書多数。
本書は、1999年に単行本で出版され、2002年に文春文庫、2020年に朝日文庫から刊行された。
本書は、題名の通り、1947年に『きけわだつみのこえ』の元となった『はるかなる山河に』(東大版)が発行されてからこれまでの、『きけわだつみのこえ』を取り巻く歴史を辿ったものである。
著者は「あとがき」で次のように書いている。「『きけわだつみのこえ』(東大版、光文社版、岩波文庫旧版)は、戦後日本の文化的遺産である。この書がこれまでに三百万部近くも売れたという事実が、それを裏 -
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☆☆☆2020年9月☆☆☆
社会全体の倫理観が損なわれていることが恐ろしい。
「五・一五事件」でテロリストが礼賛されたことを指している。「動機が正しければ殺人も許される」という空気。それが毎年のように繰り返されるテロやクーデターにつながり、軍国主義が収まらなくなった原因の一つと考えられる。
僕は、「赤穂事件」が美化されているところにも
日本人の倫理観のおかしさを見る。
翻って現代はどうか? 「自粛警察」など、相互監視社会は続いているし、ちょっと変わった人を皆でたたいて「スッキリした」なんて番組もある。
弱いものいじめ、空気を読めない人の排除、それが日本社会に根付きつつないか?
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購入済み
Part1より面白そう
現在読み進めていますが、私の親類(故人)に関わるエピソードが、この本に載っていたことに、驚きと同時にこの本との距離感が縮まった様な感覚を覚えました。昭和史の謎を解き明かすことが益々困難である今日、教科書にない事実を可能な限り知って、誤った認識を押し付けられることのない、確固たる近代日本の歴史観を持てる様、今後も学んでいきたいと思います。
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現代の日本の状況を憂慮する、丹羽宇一郎と保阪正康が対談する。
同じ過ちを繰り返すのが人間だから、戦争をするなと言うのではなく、「戦争に近づくな」と、丹羽氏は訴える。
日本は感情的な国なので、過去の戦争も感情論から始まったし、曖昧模糊、無責任体制、権限・責任の不明確さという精神風土はいまだに変わっていないと。
その証左として、安倍首相の「任命責任は私にあります」の言に転じる。
言葉だけで終わらせないように「任命責任で5回間違ったら首相を辞める」とか、ルールを作ったらどうかと提案する。
役人についても、5回間違ったらクビとか。
アメリカ駐在や中国大使を経験した丹羽氏は、
「同じコップの中に同じ水が -
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面白い面白いと聞いていたけど、これはスゴ本だ。下手なスパイ小説や戦争モノを読むよりよっぽどヒリついててスリリング。
東條英機、石原莞爾、犬養毅、渡辺和子、瀬島龍三、吉田茂についての膨大なインタビューをもとに、それぞれに問題提起をしつつ実像に迫っていく本。
東條英機はホンモノのクズだったっていうのは本当に膝の力が抜けるくらい悔しいというか腹が立つというか。全くのグランドデザイン無しに非科学的な思想のみでこいつは一体何人の人間を死に追いやったのか。「東條英機とは戦争というものを全く理解していなかった日本陸軍という組織の結晶のような存在である」という風な批判が引用されていて、なるほどそれならば確 -
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ネタバレ私にとっての昭和史は、子どもの頃の「記憶」と大人になってからの「知識」が交錯しています。
子どもの時に見聞きした事件や人物について
「もっと知りたい」
「詳しく知りたい」
「本当のところはどうだったんだろう」
「どんな意図があったのだろう」
と感じると、すごく興味を持ちます。
本書は、興味のある人については面白かったです。
野村吉三郎の章では、電報遅延の内幕になるほどと思いました。
田中角栄は、子どもでも印象強い人物で、興味深く読むことができました。
本書で最も面白かったのは、伊藤昌哉氏。
「自民党戦国史(上)(下)」
「池田勇人とその時代」
「自民党「孫子」―孫子理論による政治力学 -
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三島由紀夫、近衛文麿、橘孝三郎、野村吉三郎、田中角栄、伊藤昌哉、後藤田正晴の7人を取り上げる。大戦前後の近衛、橘、野村から始まり、最後の護憲派といわれたカミソリ後藤田まで。意外な真相の解明が楽しい。近衛が東條に首相の座を譲った真の理由、戦争終結へむけた動き、野村大使の真珠湾騙し討ちとなった真相、また「自民党戦国史」の著者、伊藤プーさんが実は角栄が嫌いで、大平を守ろうと動いていた…。その田中の社会主義者的な側面など、興味の尽きない話の数々だった。なかでも著者と後藤田の築き上げた信頼関係から出てくる後藤田の姿は他の本では知り得ない話ばかりだと思う。後藤田から著者の奥さんに感謝の電話があったというの