保阪正康のレビュー一覧
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特攻と聞いて先ず考えるのは、将来有望な若者達が命令であれ自分たちの意思であれ、大きな爆弾を抱えて敵の空母や戦艦に体当たりする凄惨なシーンであり、彼らが一体何を考えながら死んでいったのかという事だ。無論、前者のような命令で言ったのであれば、最後まで命令者を恨んだまま逝ったのかもしれないし、後者、自分の意思であったにしろ、死への恐怖を克服する事が果たして出来たのであろうかという事を考える。
私たちは例えば病気などで余命を告げられ、死を目の前に控えた時、どの様な行動に出るだろうか。何を考えるだろうか。数日後、数時間後に水水盃を交わし、エンジン始動と共に整備兵の少年たちが、自機の周りから離れていく。離陸さえして仕舞えば後戻りなど出来ずただ迫ってくる確実な死、十死零生へと突き進む。後はひたすらに大きな獲物、敵空母を探して突っ込むだけである。脱出装置もなくパラシュートも要らない。旅立ちに際しては片道の燃料しかない。あわよくば敵の弾幕の前に突っ込む前に海へ落ちれば鮫の餌食にもなる。勿論大半の場合、無傷で落ちる事など無いだろうから、海に沈んで息が続く間、ただ苦しいだけである。何故彼らがそうした道を選んだのか。いや当時の日本が置かれた状況を考えれば、道を選ばざるを得ない彼らの心理を探っても、中々答えは見えてこない。
本書のスタンスはそうした彼らの心理に迫ろうとするものであり、また一つの回答を導き出している。決して喜び勇んで死ぬ様な、自分の命を軽んじる若者とは違う、当時のエリート大学へ進学し、将来にたくさんの夢を持つ普通の若者達である。彼らの遺書を集めた「きけわだつみの声」をはじめとする遺言の数々を読めば、普通に恋人や家族、友人を想い多くの国家や日本の情勢には聞き入れられない声なき声が聞こえてくる。その文章や死に挑んで残した辞世の句などを目にした時、日本は大変な財産を失った事に改めて気付かされる。もし彼らが生きていれば戦後日本の立て直しに活躍できたであろうし、家族や恋人は死への悲しみを味合わずに済んだはず。
だが、それ程優秀で惜しむべき彼らが旅立ちに際して考えた事は、きっと恐らく全ての悲しみや恐れ、この世への未練から解放され、自分に与えられた(与えられてしまった)運命を受け入れる事ができたのではないかと感じる。いや、そう考える事で彼らの多くは救われるのではないだろうか。
家族を想い、国を想い、未来の復興を信じて旅立った彼らを、現代社会に今に生きる我々が身勝手に想像する事も、批評する事も出来ない。本書もそうした身勝手さを出さない事に細心の注意を払いつつも、居た堪れない気持ち、悲しさを超越すべく筆者が筆をとった作品であると思う。
平和の礎とか、無駄死にとか、神として讃えることなど後世に生きる人間の勝手な考え方や行為であり、それのどれもが真実であるかはわからない。唯一正しいのは、戻ることの出来ない死への旅路を、それでも突き進み散って行った若者が居たという事実のみである。
何か読み終わった後に心にぽっかりと穴が開いて、そこから生暖かい空気がすーっと抜けていく様な感覚、尚且つ天井の一点を見つめるその画像が、滲んでぼやけて、窓から入ってくる光を乱反射させていく。 -
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昭和史研究の第一人者・保阪正康の著書『歴史でたどる領土問題の真実 中韓露にどこまで言えるのか』を読みました。
保阪正康の作品は、8年近く前に読んだ半藤一利との共著『そして、メディアは日本を戦争に導いた』以来なので久し振りですね。
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尖閣、竹島、北方四島――どう守り、返還させるか? 威勢のいい言葉だけでは進展はない。
解決策は「歴史」の中に書かれている! 明治維新時の領土と、その後の戦争による拡大。
敗戦での急激な縮小と、戦後の枠組み。
それらの歴史の裏側までを厳正に検証する。
21世紀の視点に立った日本の主張!
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2011年(平成23年)に刊行された作品……明治維新時の領土とその後の戦争による拡大、敗戦での急激な縮小と戦後の枠組み、それらの歴史の裏側までを厳正に検証し、日本が取るべき領土問題の解決策を示した一冊です。
■序章 主張すべき姿勢とは
■第1章 昭和前期の領土空間とその崩壊
■第2章 近代日本の領土拡充史
■第3章 「歴史」と「政治」の北方四島
■第4章 条約と現実の竹島問題
■第5章 資源と外交の焦点・尖閣諸島
■終章 次代に託されている論点
■あとがき
■本書関連略年表
近代日本の領土は明治以降に拡大し、昭和期には膨張と収縮の二つの局面をかかえた……近年は海底資源がからみ、関係国のナショナリズムが噴出する、、、
日本は中韓露をどう論破し、世界に発信すべきか? 21世紀の視点から歴史を検証し、解決策を提議する。
日本の領土問題に関する歴史的な検証と主張を述べた新書……この本の魅力は、歴史的な事実を丁寧に説明しているという点ですね、、、
日本の領土問題において、日本の立場を強く主張しつつ、その主張の根拠や論理が詳細に示されていました……中国や韓国、ロシアの主張に対しても、反論や批判を行っていますが、それも歴史的な資料や文献に基づいており説得力がありました。
領土問題を解決するためには、歴史的な真実を知ることが重要なんですよねー しかも、北方四島(ロシア)、竹島問題(韓国)、尖閣諸島(中国)は、それぞれ歴史や経緯も異なっており(歴史+外交(ロシア)、条約+外交(韓国)、資源+外交(中国))、ケースバイケースで考えないといけないことについても改めて気付かされました……日本の領土問題に関する歴史的な真実を知るためには、非常に参考になる作品だと感じました。 -
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ネタバレ関口氏と保阪氏の対談で進んでいく一冊。
わかりやすくて大正〜昭和史をザックリ知りたい人にはオススメの一冊。
教科書には載らない話などもちらほらで、「尼港事件」(ロシア革命時、出兵していた日本に対しロシアのパルチザンが日本人を虐殺した事件)
なんかはお恥ずかしながら全く知らなかった…。
教科書にも載せるべきだと思うんやが。
大正天皇と昭和天皇の話も良かった。
体調を崩されてから、昭和天皇が摂政として務められてたらしいけど、
やっぱり天皇にも自分なりの権威というものがあるんやね。
摂政としての仕事をどこまでやっているか、という点をすごく気にされていたエピソードに納得でした。
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「歴史」は暗記するのではなく、意味・教訓を見出す。
「トゥキディデスの罠」の教えも同じ歴史の教訓
著者は日本の歴史の第一人者 半藤一利・加藤陽子らと共に
1.戦争 目的・やり方・原価計算と決算
→軍事哲学と算盤が不 賠償金可欠
2.巨額の軍事予算と日清戦争での巨額賠償金
→軍部も政治も国民も病みつきになった
遅れてきた帝国主義国家
戦費2億円(予算の三倍) 賠償金3億円
⇒日本人は浮かれてしまった
「戦争をビジネスのように捉えた」
政治から独立させてしまった=統帥権独立
軍部は独立採算で自由にやると
3.軍事哲学なき場当たり的対処
戦争の本質を深く考えない 陸海軍大学も
「前例踏襲」ばかり シナの歴史・民族主義を無視
欧米は尊重「租借」限定
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「昭和の怪物」シリーズ第二弾。今回は、三島由紀夫、近衛文麿、橘孝三郎、野村吉三郎、田中角栄、伊藤昌哉、後藤田正晴の7人。
中でも駐米大使で、真珠湾攻撃のだまし討ちの責任者となった野村吉三郎(武官時代、ハーバード大学でルーズベルト大統領と同窓だった)についての考察が面白かった。宣戦通告電報の遅延という凡ミスの原因は、大使館内の人間関係の悪さ、事務連絡の不手際、開戦前の緊張感不足が重なり合った結果だった。そもそも参謀本部は奇襲攻撃の事前通告に反対しており、外務省はそれに協力させられたが、その経緯が駐米大使には知らされていなかったという点で、本来の責任は、米国課長の加瀬俊一、参謀本部の戸村盛雄と瀬島龍三にあるとの説が説得力あり。とはいえ、米国では既に日本の暗号は解読されており、奇襲攻撃だと思わされていたのは日本だけという間抜けぶり。
宏池会事務局長も務めた伊藤昌哉の章では、「日本の道を誤らせるのは、人間を生身で見ることのない連中に政権を託すことだ」「日本の政治が成り行き主義に陥り、明確な戦略無き国家の悲劇が戦前も戦後も続いている」「小資源国である日本が生きるには、科学技術を活かすこと、政治家の能力を高めることでしかない」との卓見も。
一本筋の通った護憲派政治家、後藤田正晴は、既に自民党の政治家レベルに愛想を尽かしていた。政治改革に鈍感で、派閥意識でしかものをみないから。もう30年以上前の言葉だが、自民党の政治家はあの頃よりもさらに劣化してしまったようだ。 -
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東條英機、石原莞爾、犬養毅、渡辺和子、瀬島龍三、吉田茂といった昭和史の著名人を手際よくまとめた労作です。
特に、戦中最も日本の舵取りが重視された局面で、最もつけてはいけない人物がトップに配置されてしまった、それが東條英機です。当時イケイケドンドンの陸軍を代表する東條が任命されたのは、強硬派の東條によって軍内を統制させるという「毒をもって毒を制す」意図があったからだが、器の小さい東條は自分に反発する有能な人材をことごとく左遷させ、彼の周りにはイエスマンしか残さなかった。彼は精神論にとり憑かれ、妥協や譲歩は敗北、従って理論的思考よりも前進あるのみという亡国思想の権化だった。彼の迷言「戦争は負けたと思った時が負け」で多くの命が無駄に失われた。
東條英機と犬猿の仲だったのが、東條より4年後輩の石原莞爾。石原は理論派でかつ直言居士なので、東條が最も嫌悪した人物です。歴史にイフはありませんが、せめて石原が東條より先に生まれてくれていれば、東條の様な人物が軍内で重用されることはなかったのではと思われます。
続く、五・一五事件で殺された犬養毅と二・二六事件で殺された渡辺錠太郎の娘渡辺和子の章は必読です。軍人テロで文字通り命懸けだった政治家の毅然とした態度は感動的ですらあります。
一方で、国益よりも我が利権を優先する今の政治家の体たらくぶりが余計に悪目立ちします。 -
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著者の作品は多く読んだ事があり、いつでも解説内容や考えは明確でわかりやすい。だからこそ好き嫌いが分かれるものだが、勿論戦争礼賛でも努力を伴わない様な待ってるだけの極端な平和主義でもない。戦後多くの戦時のエリートに取材を重ねた事からも、偏った考え方でもないから戦争(特に太平洋戦争までの道のり)の流れを掴むには丁度良いだろう。
歴史は繰り返されるというが、人間の身体的な能力も新しい技術を生み出す智力もどこの国であってもそれ程は変わらないだろう。だから二国間の戦争も内戦も多数の国家が巻き込まれるような大戦であっても繰り返されるものと感じる。もしか圧倒的な力の差や、破滅的な殺傷力のある兵器を日常的に用いる技術・生産力げあったなら、いずれか若しくは双方、そして複数または全体が死滅するはずであるから、戦争は2度と起こらなくなる。歴史は繰り返されないはずだ。日本を中心に見た場合でも、日清、日露、第一次大戦、そして第二次大戦と大きな戦争をなん度も繰り返した。局所的に見れば膨大な戦利品を得た勝利かもしれないが、次につながる流れ、その結果と順を追って見ていけば、最終的に日本がボロ負けした太平洋戦争に繋がるので負けたとも取れる。戦争と戦争の間の戦間期の社会は突然ながら前の戦争の結果を引きずるだろうし、全く繋がらないという事はあり得ない。
人々の心理、社会の発展(武器になる技術力向上など)、軍隊の強さなどは戦争によって変わり、次の戦争に繋がるのが普通だ。有名なところでは第一次大戦からヒトラー登場後の第二次大戦は明らかに原因として深く繋がっている。
そうして流れ自体を異なる時間的なスケールで切り取れば、勝ち負けの捉え方は大きく変わる。軍事的な勝利が必ずしも戦略的な勝利とイコールにはならず、その逆のあの時戦闘に負けたから、次の勝利に繋がる教訓が得られた、といった考えになる。そして最後には今の状態がある。日本は今経済的には発展してGDPは中国に抜かれインドにも追い越されるのも時間の問題だが、それでも先進国中の先進国だ。今を見れば過去の戦争の後に出来た平和憲法やアメリカの力を盾に経済発展を遂げた日本は勝利者と言える。歴史にifはないが、もし太平洋戦争で日本がドイツと共に勝利し世界を支配していたら。私はきっと今でも安心して寝てられない戦時にあったと思う。戦争と戦争の間の戦間期に勝利や敗北を元に人は考え、未来へと行動を起こす。反省か勢い任せかは、前の歴史の上に決める分かれ道のような物だ。
何度もいうが、歴史を長短様々な長さのスケールで見れば勝ち負けの判定など無用かつ不可能、意味がない。歴史がそういう物だと理解して読み進めれば、本書は違和感なく読める。
本書のあの戦争は「勝ち」だったというタイトルに、どの戦争?どの時点の判定?と質問しながら読み進める事になるだろう。それを自分なりに流れで掴んであぁなるほど、このシーンでは確かに勝ちだな、と理解できれば楽しく読める。 -
Posted by ブクログ
過去の筆者の言をテーマに沿って並べ替えた内容には、読み始めは少し違和感を感じた。確かに大きなテーマとしては拾い集めた数行の文は合致するのだが、前後の文章が流れを持って編み込まれて行く感が無いため、何か短編の詩を読んでる如く一気に読み進められない。
所が読み進めるうちに、前章の内容が後続の章に見事に繋がり、最終章辺りでは一冊の戦記物を読んだ様な感覚に陥っている。編集の凄さを感じた。
話はタイトル通り「昭和の急所」(始めはタイトルと内容についての意味を理解できなかった)について、過去の著書を引用してくるのだが、そこには著者が多大な労力をかけて集めた生の声も多く登場する。そこには嘘偽りない戦争・軍部に対する批判や誤ちを指摘するものも見受けられる。
中にはかなりの書籍を読んできた私でも初耳なもの、認識を変えるような物もある。
私がこうした歴史に触れる場合、それを鵜呑みにしない事、発言や記録の背景を読み取る事に十分注意する事を心がける。戦中の音声や日記ならある程度は個人の意見として真実に近いだろうが、必ずしも日本人として真実だけを残しているとも思えない。日記も誰かに見られる事を意識して書けば本音が隠される。戦後に繰り広げられる故人への批判もそうだ。生きていたら正面から言えるのか。
戦争に至るまでには、現場を知らないエリート層の考え、忖度にかこつけた自論の押し通し、中には自己の利益追求、単なる市民としての人間が抱える恐怖、民衆への迎合、数え挙げたらキリが無い程の想い・思惑が入り乱れる中で「事」は進んでいく。それらが混ざり合って渾沌とした世界、加えて、時間の経過により薄れる記憶、自己都合で変えられる記憶、正当化する発言もそこに加われば、真実などは分厚い皮に何重にも囲まれている様なものだ。真因は見つからない。
だがそれこそが歴史、歴史は自分で考えるものだという考えに至る。
本書には参考になる声がたくさん含まれている。後半に描かれる昭和・平成の天皇のお姿に触れる事で読み終わりは清々しい気持ちにもなれる。
最後まで読んで欲しい。 -
Posted by ブクログ
対談形式で読みやすい。
出身地など個人のアイデンティティや戦争に関係ないエピソードの話も多く、居酒屋で話す会社の人事裏話のような話も多い。
昭和の戦争の是非や負けた戦争に名将も愚将もあるのか?と言うことは置いておいて、現代にも通じるリーダー論として読んでみた。
優れたリーダーの資質は色々あるが、愚かなリーダーの定義は非常にシンプル。
名将:
①理知的、兵士から畏敬念で見られる人、論理的にものを考える、陸大の恩賜の軍刀組(腰巾着)以外、駐在武官経験者、幼年陸軍学校よりも一般中学出身
②自分で決断、目的を明確に伝える、情報を自ら掴む、過去の成功体験に囚われない、焦点の場所に身を置く、部下に最大限の任務遂行を求める
愚将:
責任ある立場で最も無責任だった将軍
戦争に至った背景:
明治以降の軍人が海外で戦争して賠償金や権益を獲得する構造が不幸。
政党政治の不況や恐慌に対する無策。
満州事変以降の国民世論、新聞やラジオが煽る。
官僚による国体民微運動や過度な西洋文化排斥。
玉砕、特攻は本来の日本の文化ではない。