保阪正康のレビュー一覧

  • 「特攻」と日本人

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    2004年の夏、鹿児島県の知覧町と加世田市(現・南さつま市)に行って来た。
    特攻基地があったところだ。

    ちょうどとても暑い日に訪れ、思いにふけた。

    特攻に行った人たちよ、安らかにと。

    その後この本が出版された。

    「国を思って、あの人たちは特攻へ行った」

    ある意味、英雄的な感じさえ私は持っていた。

    この本によると、特攻へ行った人は、当時の指導者によって特攻へ行かされてし
    まった犠牲者だという。

    英雄でも、犬死にでもない。

    犠牲者である。

    私にとって、これは新鮮な論だった。

    そうか、当然、犠牲者であるという考えが出てこないとおかしいじゃないか。

    この本には、「きけ わだつみのこえ」に記載されていない「遺書」が載ってい
    る。
    そして、彼らの発言のメモも載っている。

    「ああ、だまされちゃった」

    …こんな発言も載っていて、驚きだった。

    ただ、二度とあってはならないことには間違いない。

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    2009年10月04日
  • 昭和史の論点

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    昭和の初期を4人の方が論じています。政治や軍部の裏の知らなかったことがたくさん書いてあり、興味深かったです。

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    2009年10月04日
  • 参謀の昭和史 瀬島龍三

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    労作。旧日本軍の仕組みを知らない身には何度も繰り返し読まなくてはならずとっつきはいいとはいえないけど。個人的には、自分の幼少時代の「土光臨調」のあり方がこういうことだった、ということが一番皮膚感覚で迫る。上質のミステリ。

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    2009年10月04日
  • 昭和史 七つの謎 Part2

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    相変わらず「虐殺」を信じていたり、何度もこの人から聞いたとか、そう思われる、では無いかといった感じの推測が多いわけですが、今回はネタ的に面白かったです。
    陸軍中野学校、田中角栄、大本営発表、宮中祭祀このあたりは非常に興味深く読めました。
    角栄に関しては、なんかのTVの特番でもやっていたりしたけど、まったく違う方向や、TVでは語られなかったコトなどがズラズラ出てきていた。やっぱり、あれは大物だし、すごい人だ。
    ゾルゲ事件とかも書いてあるけど、Pert1でもやったことの焼き直しみたいだったし、吉田茂のネタも微妙ですねぇ。
    今回は読む価値アリです。

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    2009年10月04日
  • 「特攻」と日本人

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    作者がちょっと感傷的すぎるのが気になる。特攻隊員たちに気持ちが入れ込んでしまうのはわかるのだが…。この本で指摘されているとおり、実は特攻隊員はほとんどが“学徒”だった。学徒ゆえにこの戦争に対する洞察や自分の死に対する悩みが、すごい深く哲学的だ。死を定められた彼らに同情を禁じえないが、その一方で生きる目的、死の意義が短絡的であるにせよできたことは、ひょっとすると、現代の悩める若者より幸せなことだったかもしれないと、不謹慎なことも考えたりした。

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    2009年10月04日
  • なぜ日本は〈嫌われ国家〉なのか ──世界が見た太平洋戦争

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    日本はかつて世界を敵にまわし戦争を行った。誰もが知る真珠湾攻撃は、アメリカが知りながらハワイを犠牲にして黙認したとの陰謀説もあるが、ハルがどう言った反応をしようが、アジアを目指した日本がいずれ早晩、ヨーロッパ列強の持つ植民地を侵略し、列強と戦争になる流れは大して変わらなかったかもしれない。アメリカによる対日の石油や鉄屑の輸出禁止は日本、特に軍部にとっては「戦争を始める」良い口実だったのかもしれない。そして1941年12月8日未明(ハワイ現地時間:の1941年12月7日朝)、大日本帝国海軍はハワイ・オアフ島の真珠湾を根拠地とし、そこに停泊していたアメリカ太平洋艦隊とその基地を奇襲した。こうして始まった太平洋戦争でアメリカ国民から「卑怯な日本人」呼ばわりされるのは、至極当然のことである。時を同じくして、マレー半島に進出して、オランダやイギリスとも戦闘状態になる。緒戦の日本は連戦連勝を重ね、ヨーロッパ列強の植民地を次々と奪っていった。特にイギリス海軍の最新鋭戦艦プリンス•オブ•ウェールズを航空機で撃沈するなど、イギリスの怒りを買ったのは言うまでもない。それまで優越的に振る舞っていた白人相手に、アジアの端っこにいる黄色い日本人が刃向かっただけで、相当な怒りであった事は容易に想像できる。ヒトラーが「我が闘争」の中で日本人のことを黄色い猿と記述していたのは有名な話だ。ドイツもイタリアも劣等扱いしていた日本に好意的な感情をもって同盟を結んだわけではない。
    そしてそれより前、中国との泥沼の戦争、更には朝鮮半島を併合した日本人は同じアジア人からも嫌われる。日露戦争で大敗を喫したロシア(ソ連)も日本に対して大きな恨みを抱えたままだ。本書がタイトルでも示す通り世界から嫌われる日本。それは今でも当時を知る高齢者からすれば、消え失せることのない恨みであるかもしれない。だから今も中国や韓国は国家間の友好度を測らねばならぬほど、必ずしも仲の良い国とは言い難いのが現状である。若い頃に韓国を旅行して道に迷った際に、高齢者が日本語で道案内をしてくれた。何故そんなに日本語が上手なのか。若い頃に戦争で植民地化された際、日本語教育を受けていたそうだ。戦争の爪痕は後々まで残り、表面的にはそう見せずとも、日本人を嫌う気持ちは残っているのではないだろうか。流石に本書はタイトルそのままに、日本人を嫌う理由と、かつて日本がしてきた悪事や幼稚な外交について並べていくから、仕方ない事だと諦めたくもなるのだが、今を生きる我々現代人が、このまま何もしなければ、それを変えることは叶わない。その点では補償は終わっているとか、ODAがどうとか関係なく、ただ歴史の過ちを認め、お互い歩み寄れる状況をまず日本が作らねばならないと感じる。一生嫌われ者では生きづらい。

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    2026年08月25日
  • 「特攻」と日本人

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    特攻兵たちは英霊なのか、犬死になのか。特攻はなぜ起こって、国民に容認されていったのか。国の動きと特攻兵が書き残した遺稿をもとに、特攻という悲劇の源流を探る。
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    戦争について、あれやこれやと知識はあるものの、それらはあちこちから集まった断片的な知識にすぎなくて、実は総合的にまとめて体系的に学んだことってあまりないのではないか。戦争のあれこれについて、実は自分が思っているほど知らないのではないか、と最近思っていて、折に触れてこうした本を読むようにしています。
    特攻については様々な見方で多くの本がありますが、膨大な資料をもとに信頼できる内容を書き上げるのはなまなかな話ではありません。それをやるのが保阪さんという作家だと思いました。特攻兵士たちが残した膨大な遺稿と、国に残っている特攻に関する膨大な資料を突き合わせて、なぜ特攻ははじまったのか、国民(臣民)たちはこれほど非道な攻撃をなぜ容認したのか、そして特攻兵たちは、心の中でどう思っていたのかを立体的に論じた良書だと思いました。
    特攻については様々な角度から知ることも大切だと思っているので、本書の中で引用された書籍など引き続き読んでみたいと思います。しかし「きけわだつみのこえ」に続いてこんなの読んでいるので精神的にはかなりこたえます(夏だ)。

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    2026年08月25日
  • 「昭和天皇実録」の謎を解く

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    参謀総長の梅津が戦後も生き残り敗戦文書の署名もしたのに、なぜ陸相の阿南だけが直後に自決したのか長年よく理解できなかったのだが、クーデター計画を阿南が持ちかけ梅津は同調しなかったという経緯があったとは驚く。半藤も知っていて伏せていたかのような話しぶりでサラッと流されているが、本書を読んで一番の新発見だった。
    どうも気になるのはこの対談・鼎談を読んでいると、日米開戦前の天皇は軍部と一人で直接対峙していたように見えてしまう。奈良や本庄ら侍従武官は登場するが、木戸や牧野ら宮中内臣の影響力が全く見えてこない。そのために天皇の態度の揺らぎが「どうお考えだったんでしょうかねぇ」といった個人の内面の迷いとして処理されてしまい、ブレーン達の意見の齟齬や事態の推移に従った彼らの保身も含めた軌道修正等、複雑な事実の蓄積として映らないのだ。
    実録自体が本当にそんな書き方になっているのだろうか。大いに疑問であるがこの大著に挑戦する予定は今のところ無い。

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    2026年08月16日
  • あの戦争は何だったのか―大人のための歴史教科書―

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    半藤一利専門だったので、8月だし、保阪正康も読んでみようと思って読んだ。半藤さんの、「事実を基にした歴史探偵」と言いつつ、幾分感情的になりがち(それはしょうがないこと)な部分に比べるとより実証的に書かれていると感じた(裏付け取ってるわけでないのであくまで感じ)。とはいえ感情的になっている部分もあるし、筆者がいうほどあの戦争を概観視できるのは本書だけ、とは思わなかった。他にも読んでみたい

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    2026年08月13日
  • 「昭和天皇実録」の謎を解く

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    軍人として教育を受けた天皇は、昭和天皇だけだったとか、昭和天皇も天皇、軍の最高元帥、神事を引き継ぐ立場、など一つの立場ではない状態であった。戦争時は短波でUSの情報で情報を得ていたなど、
    色々興味深い

    夏なので昭和史関連本を

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    2026年08月02日
  • 虚構の昭和史 海軍善玉論、石原莞爾名将論の陥穽

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    毎年この時期(終戦記念日8月に近く)になると、書店は多くの太平洋戦争関連の書籍が出版され、店頭に専門のコーナーが設けられ、沢山並んでいる。かつては半藤一利氏だけで本屋の一角を占領するくらいあったのだが、その半藤氏も数年前にお亡くなりになられた。他にも太平洋戦争関連を描く研究者たちが、同じ様な題材で新しいものをリリースしてくれるのだが、毎年似た様な顔ぶれであって、なんだか安心してしまう。
    本書はこの時期になると書店を賑わす太平洋戦争の著名な研究者たちの座談会形式の様な内容となっている。顔ぶれは、保阪正康氏、戸高一成氏、大木毅氏の3名だ。個々が記してきた書籍もかなり読んできたので、私としては本書内でどの様な会話がなされているのか、買わずに通り過ぎる事は出来ない。
    大きなテーマとして扱っているのは、海軍善玉論、石原莞爾、山本五十六、黒島亀人や源田実に代表される戦後生き残った人々についてであるが、いずれも高名なお三方であるから、一体どの様な話が飛び出すのか、通説とは異なる側面や裏話が盛りだくさんとなっている。戦後何故陸軍が悪玉に仕立てられ、海軍は先見性のあるインテリの様なイメージで戦争に反対した善玉と見られたのか。真珠湾を急襲し緒戦の大勝利を齎し、その後も数々の名言を残した山本五十六、彼は本当に英雄だったのか、はたまた単なる博打内だったのか。戦後天才戦略家として最もその名を上げた石原莞爾は天才だったのか。そして、宇垣纏の日記を盗んで焼いたと言われる黒島亀人や、戦後の自衛隊でもその名を轟かせた源田実。戦後はひっそり身を表に出さなかった黒島と、書籍まで出して表舞台に立ち続けた源田。対照的な2人であるが、いずれも戦争中は重要なポジションで作戦の成否に重要な影響を及ぼしてきたが、結果的に日本は敗戦した。2人が消し去りたかった戦時中の黒い歴史とは何か。
    わざわざこうした本を出すのであるから、一般的に知られている様な事実や描写、人物像に止まらず、様々な戦争関係者へのインタビューなどから得られた、知られざる話(あまり知られていないという意味で。どこかで既出の話であることには変わりない)中心に進められる会話。読み手にも様々な思い入れや考え方があるであろうが、一つの側面を捉えたものとして、どの話も興味深い。
    「またこの人たちか」という感覚の方もいるとは思うが、戦争経験者が減り、口頭での伝承が難しくなる今後に備え、こうした経験者へのインタビュー経験のある研究者から我々は学びたい。毎年同じ様な顔ぶれに私は安心感しかない。

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    2026年07月26日
  • 昭和史 七つの謎

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    パート2から遡って手に取ったが、やはり一冊目の方が面白い。特に第五話「なぜ陸軍の軍人だけが東京裁判で絞首刑になったか」では陸軍のそれも軍政系の軍人ばかりが選ばれている点を指摘して、軍令系の責任を問えば大元帥である天皇を免責できなくなると謎を解く。この点は実に鮮やかである。

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    2026年07月02日
  • 「昭和天皇実録」の謎を解く

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    興味深く思った点を幾つか列挙。
    ・実録執筆者の中に“エース”(昭和史の核心を担う執筆者)を想定し、“エース”が昭和天皇の「天皇像」を明確にし、天皇に「プラスに働く材料」(p.128)がない箇所は、記述が少なくなったりするという保阪正康の指摘。
    ・「軍部にとって天皇とは、最高指揮官などではなく、神殿の壁のようなもの」(p.81)で、それは幕末の長州藩の藩主が“そうせい様”(報告さえすれば、「そうせい」としか言わず、自由に行動させてくれる)で、この長州藩が後の明治政府の担い手となったことで、この「神殿の壁」構造が引き継がれていったのだ、という磯田道史の指摘。
    ・戦中戦後を通じて、短波放送が昭和天皇にとっての重要な情報源だったという話。(p.253~)
    ・昭和天皇が、立憲君主である「天皇」、軍を統帥する「大元帥」のほかに、皇祖皇宗に連なる大祭司である「大天皇」という三つの顔を持っていて、開戦・終戦の時期において「天皇」と「大元帥」の間に生じる齟齬に悩む「大天皇」という図式の話(p.100)と、「国体」について軍部と意識が違っていたという話(p.231)。ページは飛んでいるがこの話は一つながりのものと思う。「大天皇」であるところに昭和天皇自身のアイデンティティを置かざるを得なかったがゆえに、終戦時の昭和天皇にとって、国体護持とは、領土や戦争責任よりも「三種の神器をいかに守るか」(p.230)にあった。

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    2026年05月31日
  • 眞説 光クラブ事件 戦後金融犯罪の真実と闇

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    三島由紀夫の『青の時代』の題材としても知られ、戦後の価値紊乱、典型的アプレゲール型の事件と評された山崎晃嗣の光クラブ事件。
    「事件」とは言うものの、東大生が金融業を興したことが物珍しく脚光を浴びただけで、よくよくみると、法のグレーゾーンで運営していた新興金融会社が杜撰な経営と社会の急激な変化により破綻し社長が自殺した、という話である。「東大生」の冠が無ければ話題にもならなかったのではないだろうか。
    ただ山崎はその死に際して手記を2点遺しており、また自殺の直前には芥川賞作家らと雑誌で鼎談する等メディアを賑わしていて、その妙に印象的な言説で後々まで語られる存在となった。自己演出の塊のような人物である。
    著者の見立ては、その演出の煙幕の後ろに親族との葛藤や挫折感の残る戦争体験があり、東大生という肥大したプライドによって世間との無謀とも言える対決にのめり込んでいったのではないか、という。
    同じ11月25日に死を選んだ山崎と三島。おそらく相当な親交があったのではと著者は見るが、三島が事件決行の日を選ぶのに、山崎のことが念頭にあったのか、気になるところである。

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    2026年05月09日
  • 石橋湛山の65日

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     石橋湛山という政治家についての知識はなにもなかったのですが、意外と大きな役割を果たしたということと、評判も良かったことを知りました。戦後の日本の政治の功労者は圧倒的に吉田茂であり、鳩山はソ連と国交を回復し、岸は安保改定したということで知られているが、石橋って何したの?って感じですよね。戦前から言論人として戦争推進派には与せず、理由なき公職追放を受け、それでもその後の55年体制の基礎を作った人らしい。
    我々はどうしても「権力者が残した歴史」に惑わされてしまうのだ。

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    2026年04月23日
  • 昭和の怪物 七つの謎

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    調査報道になるのだろうが、調査したことが十分整理咀嚼されておらず、無駄な脱線、引用、感想が随所に挿入されていて、読みにくかった。先日読んだ「あの戦争〜」で描かれていた東条英機像と真っ向から対立する、精神論だけで戦略もないまま徹底抗戦を譲らず、日本人の被害を拡大させた独裁者という理解だった。良識的で正義感にあふれ、学識もあり思慮深い石原莞爾との単純な2項対立のようだ。辻田氏の論調が理路整然として冷静な書き方になっている分、こちらのほうが信憑性が高いように思われてしまう。

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    2026年04月18日
  • なぜ日本人は間違えたのか―真説・昭和100年と戦後80年―(新潮新書)

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    二・二六事件、東京裁判、高度成長、田中角栄、昭和天皇など昭和史における歴史的な事象について改めて記した書。「真の保守主義」の立場での現代につながる論考を期待したが、放談のような印象で、やや期待外れな感じ。左翼的史観に対する批判は的を得ているとは思うが、現代では敢えて強調する必要性は薄く、次作では、むしろ昭和史を歴史として語る中で、いわゆる「保守」の無知・不勉強を指摘していくような評論を期待する。

    【目次】

    まえがき

    第一章 「昭和百年」とは何だったのか――左翼史観に歪められた歴史の見方
    近代日本を形づくった皇国史観  唯物史観とアメリカ的な実証主義  半藤氏の四〇年周期説、胡耀邦が語った八〇年周期説  暴力革命、革命純化、板垣は裏切り者  マスコミと教育現場を支配した左翼的史観  歴史を見る目を歪めたマスコミと文化人  自分史、日本史、人類史――三段階の歴史観  左翼系知識人の偽善  「東條について書くなんて右翼だ」  ジャーナリズムに対するアカデミズムの傲慢  記憶を父として、記録を母として  歴史に向き合ってものを書くこと

    第二章 「あの戦争」とは何だったのか――大きな戦略に呑み込まれた日中・対米戦争
    一五年戦争、太平洋戦争、アジア太平洋戦争  辛亥革命に日本はどう関わったか  国家統一に向けた中国の大戦略  イギリスの先進帝国主義の原価計算  国民党の軍事指導者が明かした抗日戦の真相  華族になりたい一心から国家を破滅に導いた  失われた武士道という倫理  対米戦争とは何だったのか――近現代史の俯瞰図  近代化の手本はアメリカではなくプロイセン  対中政策をめぐって高まった日米の軋轢  アメリカへの最大の援軍となった「本土決戦」  対米関係に支配され続ける国  対アメリカ観を再構築できるか

    第三章 「二・二六事件」とは何だったのか――狂信者たちの目的は達成された
    ファシズムへの導火線、新統制派の実権掌握  事件と共産主義者を結ぶ点と線  「天皇と一体化」という危険な精神構造

    第四章「東京裁判」は何だったのか――平和と人道という名の下の復讐
    天皇を訴追しないと決めたマッカーサー  隠された事実を晒す大掛かりな情報公開  訴状を推し戴いた被告たち  大きな無理を抱えた検事団の起訴状  自分の首を絞めた敗戦前後の資料焼却  戦争よりも虐殺行為への復讐が目的  パル判事の「日本無罪論」を否定する  「これでアメリカと戦争をやったのか⁉」  ソ連の証人になった「昭和の参謀」瀬島隆三  法務省地下に埋もれた資料が語ること  「東條を真人間にしてあの世に送った」

    第五章 「高度成長」とは何だったのか――経済官僚が挑んだ軍人への復讐戦
    「政治の季節」から「経済の時代」へ  平時の予算の組み方を知らない大蔵官僚  高度成長を取り仕切った「短現」出身者  七〇年安保とは高度成長のアダ花  復讐戦の終焉から低成長の時代へ  歴史の法則性と準備運動

    第六章 「田中角栄」とは何だったのか――大衆の生贄にされた無作為の社会主義者
    際立った三つの特徴  昭和天皇の前で話しまくる  キッシンジャーを激怒させた「アメリカ離れ」  『日本列島改造論』の先見の明、狡猾な大衆のエゴイズム  支持率七〇パーセント、驚異的人気の秘密  「国のためになど死んでたまるか」

    第七章 「昭和天皇」とは何だったのか――時代の象徴にして人間天皇という二面性
    明治・大正天皇の分裂から昭和天皇の一体化まで  象徴天皇にして人間天皇へ、苦渋の変身  日本人として理解すべき天皇の二面性  近代天皇制への理解不足

    第八章 「戦後八〇年」とは何だったのか――言葉の呪縛と思考停止の時代
    中国訪問で「あなたはなぜ謝罪しないのか」  「した部隊」と「しなかった部隊」の違い  政治的プロパガンダより生身の証言  モラルが逆転した戦争体験を聞くルール  歴史認識は食い違うのが当たり前  報道と戦争は今も昔も相性がいい  自分の意思と関係のない「世代の宿命」  日本人は本当に「わだつみのこえ」を聞いたか  「国のために死ぬ」というアンビバレンス  「一国平和主義」「平和憲法」への自省はあるか  「戦後」「戦後民主主義」に潜むエゴイズム  新しい戦争観と平和理論を構築できるか  「戦間期の思想」を持たなかった国

    あとがき

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    2026年04月10日
  • 太平洋戦争、七つの謎 ──官僚と軍隊と日本人

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    タイトルの七つの謎を史実のミステリと受け取ると肩透かしを食う。開戦を決めたのは官僚で、人間を武器とした特攻の非道さを説き、天皇の聖断により終戦となったとのオーソドックスな戦後民主主義的太平洋戦争観が語られる。
    戦場体験と戦争体験との違いへの拘りに見られるとおり、著者は一貫して兵士の視点から戦争を見ている。終戦の聖断でも天皇が「軍を切り捨てた」と明言するところには盟友・半藤一利の戦争観と微妙に色合いを異にするように思える。
    講演の書き起こしである。

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    2026年03月28日
  • 太平洋戦争、七つの謎 ──官僚と軍隊と日本人

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    「戦場を知らない人が戦争を語る言は、どこか観念的であり、道徳的である」。この言葉が示す様に、現代に生き戦争史を語る多くの人々は戦場も戦争も経験していない。一昔前なら、当時の参謀クラスや司令官クラスが戦後に自身の経験や判断の経緯などを雄弁に語る書籍も多かったが、それも戦場を体験した内容のものは、全体の中ではごく僅かだ。自身は戦場から遠い場所に身を置きながら、俯瞰的に捉えたものが多く、弾が飛び交い爆弾が炸裂する様な、最前線の兵士の体験とは異なる。だからと言ってそれらに真実味が無いという訳ではなく、戦場とは違う場所から見た戦争体験は、一兵士と違う場所から当時の戦争をリアルに告白するものとして、その後の戦争の反省と平和の構築に役立つものが大半だ。
    一方で自身が飢えや熱さ寒さと対峙し、一瞬の戦闘で命を失いかねない危険な最前線にいた兵士の体験記は多くない。敵兵士と矛を交える前に、飢えや感染症と闘い、常に命の燈を風に晒した様な体験は語られる事が少ない。それらの声に耳を傾けて(執筆当時で)4000人ばかりを取材してきた筆者、保阪正康氏が太平洋戦争について語る講演内容を集めたものが本書の内容となっている。本当の戦場を知る人間は、極限状態の自身の経験を言葉や文字にする事も難しいのかもしれない。それを書籍に起こそうとすれば、記憶に残る当時のシーンやなくなった戦友の顔を思い出さなければならない。記憶の奥に閉じ込め、生涯封印した想いを改めて思い起こす事は、戦場のリアルを知る兵士達にとっては非常に辛い事である、というのは容易に想像がつく。
    本書は戦時中に生まれた世代である筆者が、かつての日本の経験した大戦争について、様々な観点から語る内容となっている。戦争がなぜ始まったのか、稀代の天才山本五十六とは、肉体そのものを武器にする特効、そして敗戦に向かう日本の姿と、そこにいた天皇の存在について語っていくものとなっている。技術内容としては良くあるよく知るものが多いが、定期的にこうした内容を振り返り、繰り返し繰り返し記憶に深く刻んでいくことは大切だと感じる。人は忘れる生き物であるが、誰かが後世にこれらの記憶を引き継いでいかなければ、再び過去の過ちを犯しかねない。世界中が自国優先主義で他国の利益を奪うことばかりに目を向ける今、過去の戦争に至った背景と同じ空気を感じたりしないだろうか。静かに目立たずに足元の地面がゆっくり沈み込む様な、沼にいる感覚。混沌とする世界で、再び世界がかつての戦争と同じ方向に進まないためには、過去の戦争の悲惨さや、戦争に至った背景を学ぶ事が有効だ。本書は真新しさではなく、今一度振り返るといった書籍に仕上がっている。

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    2026年02月26日
  • そして、メディアは日本を戦争に導いた

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    10年以上も前に書かれた本なので、現在とは認識の異なることも多い。2人の会話を軸に書かれているため、構成も話題の連続性も恣意的なところがある。中には眉唾物の話題もあって、日中戦争が始まった昭和10年代と比べて昭和初期を美化しすぎているのではと思われる記述も多々あった。それでも彼らの懸念事項は現在確実に深刻化しているし、単純短小化されたネット情報になじんだ人たちの言説には恐怖感しかない。圧倒的な国力のあるアメリカとの戦争になだれ込んだ昭和の失敗を学ぶことなく、圧倒的な国力のある中国との争いにも引きずり込まれる日はそう遠くないのかもしれない。

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    2026年01月20日