保阪正康のレビュー一覧
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一番身近な時代でもあるはずなのに、戦国時代や幕末などメジャーな時代以上に資料も揃っているはずなのになかなかその真相がわからない『昭和』。
正直、学生時代から自分が生きている時代であった昭和については関心が持てなかった。
歴史の授業でも最後の最後に飛ばすくらいで終わっていた時代。
今思うと、あえて飛ばされてたのかと勘ぐってしまう面もなきにしもあらずであるが。
そんな『昭和』にも年をとるにつれて興味が沸いてくるようになった。
なぜ、昭和に興味が持てないのだろうか?明治維新までの歴史というものには、その時代時代の『役者』に焦点が当たっているものの、昭和という時代を説明するにあたり、役者よりも歴史的事象に終始しており、役者の顔が見えてこない、役者を教えられてこなかったからではないか?
そんな疑問から徐々に昭和モノを読むようになってきたのである。
本書は主に戦争を主導してきたといわれる陸軍省、海軍省、内務省という3つの巨大官庁が、太平洋戦争後にどのように解体されていったか、または綿々と今の時代にも影響をもたらしてきたのかということが、当時のそれぞれの立場の戦争指導者や士官の行動を元に書かれている。
そういう面では役者の顔がハッキリしており、あの時代をわかりやすく理解できる。
陸軍がなぜ戦後『悪』の権化のように国民から思われるようになったのか、それに比べてそれほどの悪いイメージはなくむしろ戦争反対派として、なぜ海軍は『善』のイメージで捉えられるようになったのか?
明治以降近代化の中心をなした内務省はなぜ解体させられるにいたったのか?
等々、GHQの施策による戦前の体制の解体がそれぞれの組織戦略の有りや無しかで三様の末路を辿った経緯がわかりやすくまとめられている。
惜しむらくは、本書はあくまで3官庁の解体の話なのでしょうがないと思うが、GHQ側の思惑、特に日本の占領施策でG2とGSの対立があった等々、米国側の思惑ももっと取り上げていただきたかった。 -
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日本が抱える3つの領土問題の本質について,分析しています。
特に,元外務省官僚だった著者の東郷氏が,当時,当事者として関わった「北方領土問題」について語っているのを読むと,「領土問題は,双方の歩み寄りが,色んな形で必要なんだなあ」ということがよく分かります。「両国間には領土問題は存在しない」「もともとここはうちの土地だ」なんて言っているだけでは,外交は進まない。
日本は「武力による問題解決をしない」と決めた以上,少しずつ前進する如かないのだと思います。
ナショナリスティックな構えだけで突き進むのは大変危険です。
本書を読んで,冷静な対処が一番大切なんだなあって思いました。
そして,あきらめないことも…。 -
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全部で2部構成、第1部は東郷和彦さんの主張が丁寧に、こってりと。
第2部は、お2人での対談という構成となっています。
その東郷さんは元外交官、佐藤優さんの上司として、
主に北方領土問題に携わってこられた方です。
凄く頭の良い方なんだなぁ、、と感じました。
それだけに、部下としてついていく方は大変そうだ、とも。
その東郷さんの主張、読み解くのはなかなかに骨でした。
一点して、保阪さんとの対談となった第2部はわかりやすかったです。
印象に残ったのは、徹底的にリアリズムを貫いているとの点でしょうか。
外交の最前線におられただけに、なんとも説得力のある言葉として響いてきました。
“交渉で決める以上は、双方で「これでよかった」という案を見出さねばならない”
外交の最大の目的は“戦争を避ける”ということ、
そのためには、彼我の国力差を冷徹に見つめる必要がある。
そして、結果としての譲歩もやむを得ないとは、
共感するかどうかは別として、、理解できる筋立てでした。
“(武力で来る相手に対する)唯一の抑止力は、
自ら適切な武力を行使してたたきかえせるかということ”
日本の“今”の抑止力がどの程度あるのか、
そして、周辺諸国との相対的な国力の差をどう把握するのか、、
フラットに相手の立場を俯瞰していき、その上で、
個人のプリンシプルと重ねて、譲れない部分をフォーカスする。
交渉とはこういうものなのかなということを、なんとなく。
そして、“力なき正義は無力”ということもあらためて、なんて。 -
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ネタバレロシア、韓国、中国と抱える領土問題を歴史を紐解きつつ、著者は昭和18年の日本が高揚している時期の日本地図を度々引用しながら、領土とは何かを冷静に考えさせてくれる好著である。ソ連、中国の強かさだけではなく、ヤルタ会談以降、サンフランシスコ講和条約、沖縄返還に至るまでの米国の政治的な思惑が曖昧さをあえて残したということで、現在の日本と3国の対立の芽を残したという考え方はもの凄いですが、事実なのでしょう。著者によれば、ソ連はSF講和条約を拒否しており、日本は千島全体の領有を主張しても可笑しくないというのは、決して国粋主義的な考えというわけでなく、素直に結論できるということが理解できます。逆に1880年には琉球処分にあたり、「宮古島・八重山群島を中国領土とする」と清国に伝えたというのは皮肉なことであり、領土問題がその時代の政治的思惑に左右されていたという奥の深さを感じる本でした。竹島も島を発見したというフランスが領有権を主張していたら・・・考えるのも楽しいものです。
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北方領土
1年ちょい前に本書が発刊されたときには北方領土交渉の糸口は無かったが、東郷氏は2011年10月3日のラジオ「ロシアの声」でプーチンはガスプロム社長に「日本、韓国、中国などとの協力発展についての拡大的な提案を準備するよう支持した」と発言した話を紹介し、この紹介順が日本に対するメッセージになっていると言っている。
ともかく昨年の森元首相訪問、に続き安倍首相訪問で交渉再開ができることにはなった。ただし東郷氏の見立てでは四島一括返還にこだわる限りは交渉は決裂するし、メドベージェフ訪問以降北方四島のロシア化は進んでいる。少なくともプーチンは平和条約締結後に色丹、歯舞諸島の返還をするというのは過去にも認めている。2島先行返還でも択捉、国後への道はつながると信じると言うがそれは正直な所わからない。四島一括と言う正義の御旗をかかげていれば国内的な批判は受けずに済むかもしれないが過去の交渉は何度かこの国内向けの強気な表現で決裂している。
対談での保坂氏の爆弾:2島返還で決着するのはどう考えるか?
竹島
韓国からみると1905年の島根県の竹島編入はその後の1910年の韓国併合とワンセットで捉えているらしい。歴史的にどちらの領土であったかと言うとどちらの主張にも瑕疵はあり(韓国の主張は位置的に無理があり、日本も編入までは日本領とは見なしていたとは言えない)、結局20世紀の初めは無主の地であり国際法上は編入は有効で日本の領土であったとしても、韓国からすると力関係上文句が言えない際に取られた土地と言う感情があるのだろう、1950年以降は韓国ナショナリズムのシンボルになってしまっている。逆に日本からしても敗戦後どさくさ紛れに武力支配されたと言う思いは残っている。韓国にある独島ナショナリズムあるいは独島憧憬主義には東郷氏もどうしてそこまでと理解しがたい物はあるらしい。
2010年京都産業大学で開かれたセミナーをきっかけに名古屋大学池内教授の「竹島/独島と石島の比定問題・ノート」と言う論文と嶺南大学金秀姫教授の「竹島の日制定後の日本における独島研究動向・石島解釈論」と言う批判論文が鉢合わせした。(大韓帝国勅令41号:1900年に韓国政府は鬱陵島を鬱島と改名し管轄地域を鬱陵全島と竹島石島とした。この竹島石島が何をさすかという話、江戸時代の鳥取藩は鬱陵島を竹島、竹島を松島と呼んでおり1696年幕府に対し松島は鳥取藩に属さないと答えている。名前がかぶるのでややこしい)だがこの二人の意見は真っ向から対立しているにも関わらずお互いの研究の進め方に敬意を払いそれぞれの意見を尊重した議論が出来たそうだ。
対談での保坂氏の爆弾:主権を放棄し経済利権だけ確保するのでどうか?
尖閣諸島
これは日本がチャレンジを受ける立場、東郷氏は領土問題があると言う認識に立つべきではないかと。そして武力衝突につながらないように緊張緩和策を検討すべきだと言っている。(国有化で緊張は高まってしまったのだが・・・)しかし同時に武力衝突やむなしと覚悟して十全たる準備もすべきだと。
その上での東郷氏の爆弾:主権は維持するとして日中台共同で石油開発をしてはどうか?
保坂氏からの逆提案:3つの領土問題をあわせて国際司法裁判所に提訴してはどうか? -
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●は引用、→、無印は感想
領土問題(外交)は、時代とともに、歴史的背景(太平洋戦前・戦中、占領期、冷戦期、冷戦後)、経済的背景(日本のバブル期・ソ連の崩壊直後・中国の経済開放直後とそれ以降)によって変わっていく。
北方領土、竹島、せんがく諸島。同じ領土問題でも、それぞれ問題点(歴史的、領土的、領土的)が違う。そのことを理解させられる。
北方領土問題については、その歴史的事実を認識していたが、竹島、及びセンガク諸島問題がそれぞれ日露戦争(韓国併合)、日清戦争(台湾割譲)という日本帝国の植民地の歴史としての認識は欠けていた。
●私は、特に、この孫副隊長の発言には、仰天した。もしも中国が本当に管轄権の主張を実力で示そうとするなら、行き着く先は、武力衝突の道しか残っていない。それが、この時の私の直感だった。
●私は、民主党政権が、たとえ無様な姿であっても船長の釈放という形で事態を旧に戻さなかったら、何度目かのステップには、かならず軍艦がでてくるだろうと思った。軍艦は、当初は威嚇のためにでてくる。しかし、その威嚇が効果を持つためには、万一の場合は撃つということでなくてはならない。2008年12月の海事当居の発言とあわせ読んで、私は、最も本質的な意味で、戦後は終わったと思った。2010年9月7日、日本は、新しい時代に入ったのである。憲法9条というイデオロギーで日本を守っていた時代は終わった。外交の先に武力衝突がありうるという時代が始まったのである。戦前の外交官は、戦争にならない外交のために命を懸けた。この日以降、日本の外交は再びそういう時代に入ったのである。その後の日本の安保政策は、おおむねこのラインで進んでいる。2010年の「防衛計画の大綱(NPDG)」が国防の重点を南方にシフトし、海上自衛隊の力を増強しているのは当然の動きである。
→2013年2月、海上自衛隊護衛艦が中国海軍フリゲート艦から射撃管制用レーザーの照射を受ける事案が発生した。本書の指摘どおりに事態が展開している。以下の引用にあるようなバックドアは開いているのだろうが、ちょっと怖い。
●東郷 はい。今尖閣に関して勇ましい議論をきくと、この方は本当に考えたことがあるのかなと思ってしまいます。戦後外交で私は初めて、戦争のリアルな危険性が出たと思っています。(略)安保条約第5条によって日本施政下にある尖閣が攻撃されればアメリカは防衛に参加する条約上の義務がありますし、そのことに疑問を呈する理由もありません。しかし、こういう話の言葉にならない根本常識は、日本自らが国を守って血を流すという覚悟と実行あってのことです。
●東郷 先日テレビで見て知って驚いたのですが、30年ほど前から自衛隊の幕僚長クラスのOBと中国軍部の佐官クラスが、日中関係全般に関する対話を行っているんですね。この30年間、常に日中関係は良好だったわけではないのですが、にもかかわらず、一度も欠かさずに対話を継続してきたということです。(略)東郷 30年前の中国は、経済力も国力も今と比べようもないほど小さかったのですが、当時から自衛隊は将来の中国を見越していたのかもしれません。それが30年にもわたるチャンネルにつながった。これはまさに戦後の自衛隊のあるべき姿だし、心から尊敬を表明したいです。
→”先日テレビで見て知って驚いた”とは。部課が違うとこういったインテリジェンスコミッティーとは関わりがないのか?
●保坂 自衛隊幹部や防衛大学校の関係者と話をしますと、彼らは必ず、「われわれは戦争をするためにいるんじゃなくて、戦争を抑止するために存在する集団なんです」と言いますね。総じて今の防衛省は、シビリアンコントロールの下で抑止の視点からの防衛を真剣に考えているのではないでしょうか。旧軍のそれゆけ、やれゆけの体質はありません。→疑問 -
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ネタバレ前半は東郷氏による講義形式で、後半は保阪氏との対話形式で各領土問題を解説、解決の糸口を探ります。
東郷氏は領土問題には「法的」「政治的」「歴史的」な3つの側面があると分類し、各問題に対して、前提となる史実、条約文書などをあげながら、一つずつわかりやすく解説してくれます。領土問題は「政治的」な解決しかありえなく、しかしそれが「歴史的な」問題からくるナショナリズムと結びついたときには、その問題を解きほぐし何らかの解決に導くという事にはきわめて大きな困難が伴う、と指摘します。
ナショナリズムとの結びつきという側面でとらえると
竹島>尖閣諸島>北方領土
という評価になるのでしょうか。
こと竹島に関しては、現在の日本が韓国同様竹島問題をナショナリズムと結びつけた際の危機的状況を、韓国側にも冷静に想像して考えてほしいと指摘し、本件のように政治的に冷静な議論ができにくい状況では、民間レベルでの冷静な意見交換が必要であるとしています。
韓国にとっては1905年の竹島併合を1910年の韓国併合の布石としてとらえられている状態であること、尖閣もまたその領有が下関条約による台湾併合の前座とみなされ得る時期にあることを踏まえ、尖閣は早期の対策が必要になります。「グロムイコの屈辱」を中国に味わわせることをやめなければならない、という氏の指摘には尖閣問題がナショナリズムとの結びつきに落ちることを回避する意味合いがあります。が、実際にその問題性を認め、道筋を作るには相当な胆力が必要となりそうです。しかし、今後中国との協力体制を構築し、中国に脅威を感じるすべての国との信頼関係を構築するためには尖閣問題の深刻化は避けなければなりません。
島国である日本に育つと、国境・領土問題に鈍感になってしまうきらいがありますが、逆にそれは自国の領土問題に対する冷静さを保ってくれるものとも思います。竹島に関する韓国の発狂ぶりを見て、その背景となっている国民感情、教育の実態を知り、自分が同様に発狂した際にどうなってしまうかを冷静に想像してみる、その素地が日本にはあると思います。 -
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太平洋戦争に向かう歴史的なホップ・ステップ・ジャンプの過程で農本主義の思想・行動家橘孝三郎に焦点を合わせて語られる。当時の思想家・社会運動家とくに北一輝・井上日召・大川周明・西田税等々と陸軍・海軍若手将校との関係も立体的に分析されている。政党政治から軍閥政治に移行するプロセスもよくわかった。そして統制派抬頭の軍人主導の社会・政治体制が完成していく経緯が詳しく語られている。陸軍・海軍・農民(一般人)裁判のそれぞれの当局の対処の仕方が大きく異なり、反応する国民大衆の熱狂も手伝い、結果として陸軍が大きく政治権力を握っていくくだりは納得。近衛の存在がこの時代の諸々の危険な関係因子をごっちゃにして飲み込む役割で登場してくる。橘孝三郎、時代が違えば、状況要因が異なれば吉田松陰にもなれた人か。保坂正康の初期作品として歴史解明へのごつごつした気概を感じる。
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19世紀から20世紀の前半まで世界の常識は帝国主義で、日本も例外ではなく軍事主導で多くの領土を獲得した経緯がある。
ちょっと前まで国境は、武力で決まっていたんだよなぁ。
この本では三つの領土問題を取り上げているが、実はこれらはそれぞれ力点が違う。北方領土は「歴史問題」であり、竹島は「政治問題」、そして尖閣諸島は「資源問題」だ。いずれの問題も、当時のような軍事主導体制での解決はできないので、外交や政治の問題になってくるのはいうまでもない。
マイケル・ウォルツァーの“Politics-short-of- force may depend on force-short-of-war”が思い出されたが、この理解が我々には圧倒的に欠けている気がします。東郷先生は外務省辞めたんだったらもっといろいろ言っていいじゃないの。82点。