保阪正康のレビュー一覧

  • 五・一五事件 橘孝三郎と愛郷塾の軌跡

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    太平洋戦争に向かう歴史的なホップ・ステップ・ジャンプの過程で農本主義の思想・行動家橘孝三郎に焦点を合わせて語られる。当時の思想家・社会運動家とくに北一輝・井上日召・大川周明・西田税等々と陸軍・海軍若手将校との関係も立体的に分析されている。政党政治から軍閥政治に移行するプロセスもよくわかった。そして統制派抬頭の軍人主導の社会・政治体制が完成していく経緯が詳しく語られている。陸軍・海軍・農民(一般人)裁判のそれぞれの当局の対処の仕方が大きく異なり、反応する国民大衆の熱狂も手伝い、結果として陸軍が大きく政治権力を握っていくくだりは納得。近衛の存在がこの時代の諸々の危険な関係因子をごっちゃにして飲み込

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    2013年01月30日
  • 日本の領土問題 北方四島、竹島、尖閣諸島

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    19世紀から20世紀の前半まで世界の常識は帝国主義で、日本も例外ではなく軍事主導で多くの領土を獲得した経緯がある。
    ちょっと前まで国境は、武力で決まっていたんだよなぁ。
    この本では三つの領土問題を取り上げているが、実はこれらはそれぞれ力点が違う。北方領土は「歴史問題」であり、竹島は「政治問題」、そして尖閣諸島は「資源問題」だ。いずれの問題も、当時のような軍事主導体制での解決はできないので、外交や政治の問題になってくるのはいうまでもない。
    マイケル・ウォルツァーの“Politics-short-of- force may depend on force-short-of-war”が思い出されたが

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    2012年11月28日
  • 日本の領土問題 北方四島、竹島、尖閣諸島

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    北方領土、尖閣諸島、竹島について書かれた本。かなり勉強になった。外交や領土に関する問題は、歴史の事実を確り学び、事実関係を理解することが大事だと痛感。今後の解決策とか対応方法も勉強になった。外交や領土問題は難しいが、国民として考え続けることは不可避と痛感。

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    2012年11月16日
  • 日本の領土問題 北方四島、竹島、尖閣諸島

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    最近、大きな問題としてクローズアップされている、日本の領土問題について、3代続けて外交官の東郷氏が、外交官としての北方領土の解決にあたった経験を踏まえての交渉等を含めて説明している。

    内容としては1部は東郷氏が、北方領土、竹島、尖閣諸島について、それぞれの歴史的経緯、それぞれの宣言などについて説明し、外務省としてはどのように当たってきたかを解説している。2部は保坂氏との対談形式で、それぞれの問題について、意見交換をしている。

    読んでいて、国ごとの交渉というのは、どこかで妥協点があるわけで、その意味では原則論だけに則るのはどうかなと思った。また、欧州の交渉だと領土にはこだわらない解決法を考え

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    2012年10月27日
  • 日本の領土問題 北方四島、竹島、尖閣諸島

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    北方領土、竹島、尖閣諸島。これらの問題を同一に考え、強行に抵抗することの危うさを指摘した良書だと思った。北方領土は歴史問題を孕み、竹島は政治問題を、尖閣諸島は資源問題を内包している。強行であることの危うさは、「北方四島」というコトバがその原因かもしれない。歴史上あった「面積等分」や二島返還が実らなかったのはよ四島への固執が原因だったのかもしれない。領土問題はこれまでの歴史の熟知なしには相対することのできない問題。日本、韓国、中国、その発言する順序でさえも重要なファクターになりうるように。今後、外交関係の発言に注視したいと思った。「時間が解決する」のではなく「時間が経つほどに危機的状況を迎える」

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    2012年10月20日
  • 妻と家族のみが知る宰相―昭和史の大河を往く〈第9集〉

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    著者は,昭和史の史実を確かめるために,これまでに何人かの政治家に話を聞き,またその家族にも話を聞いている。
    政治家の家族に関しては,取材を通して2つのタイプに大別できたという。
    ひとつは,政治家としての歴史的評価や客観的分析とは別に,家庭内の夫や父の姿にとどめる,公と私を明確に区別するタイプ。
    もう一つは,公私の区別がついてなく,自分たちの感情と歴史的評価を混ぜあわせにして証言するタイプ。
    どちらかと言えば,歴史的に負の評価を受けている政治家の家族は後者の傾向があるという。
    犬養毅,東条英機,鈴木貫太郎,吉田茂ら激動の時代を駆け抜けた首相の家族からみた姿が記載されている。
    特に,終戦時の首相で

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    2012年09月30日
  • 太平洋戦争の失敗・10のポイント

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    太平洋戦争における詳細な戦闘記録を求める読者には向かないが、主要な作戦の結果(失敗)の背景がストーリー仕立てで紹介されており、理解を深めるのに役立った。記載されている事実も類書と相違するものはほとんどない。

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    2014年07月19日
  • 日本の領土問題 北方四島、竹島、尖閣諸島

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    日本のこれからの20年の基本戦略は明らかである。一つは、中国との間で、相互の基本的国益を害し合わず、可能な協力を実施する関係を構築することであり、それは本質的に中国の利益でもある。もう一つは、そのためにも、中国の台頭に顕在的・潜在的脅威を感じるすべての国とできうる限りの信頼関係を作ること。これは、いかなる意味でも「反中包囲網」をつくることを意味しない。安定した二国間の協力関係をつくるということ、との問題意識から書かれた一冊である。

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    2012年09月27日
  • 歴史でたどる領土問題の真実 中韓露にどこまで言えるのか

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    昭和十年代の日本(大日本帝国)の版図は、今よりもずっと広かった。北海道・本州・四国・九州に琉球列島・千島列島(占守(シュムシュ)島〜国後島)を加えたものが「内地」であり、朝鮮半島・台湾・樺太南部、それに関東州(遼東半島先端の旅順・大連)、南洋諸島(グアム、サイパンなどのマリアナ諸島・パラオ諸島・トラック諸島・マーシャル諸島)、そして新南諸島が「外地」であった。(新南諸島は、現在中国・ベトナム・フィリピン・マレーシアなどが領有権を争っている南沙諸島のことである。)後発の帝国主義国家であった日本は、新たに獲得した領土で皇民化教育を推し進めていった。当時の日本が領土の獲得にいかに熱心だったかは、現在

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    2012年09月02日
  • 昭和の名将と愚将

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    これ、面白いね。当時の日本陸軍、海軍両方から優れた指揮官とダメな人両方上げてその功罪を分析してるんだけど、基本的に優れた人ってどこか組織から剥離して(つまり本流ではなく)己の価値観を持ちながら現実と折り合っていける人なんだよね。(名将には当然硫黄島の栗林中将、今村さんやらが入ってます)。一方ダメ将軍は官僚的な人、己がない人、茶坊主やらなんだけど、これって今の日本人にもそっくり当てはまるんだよね。保安院、東電、郵政、日本の組織がジェネラリスト指向故必然的にダメな人を選んじゃう所って昔も今も変わらない。

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    2012年09月01日
  • 六〇年安保闘争の真実 あの闘争は何だったのか

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    戦後史は、「吉田学校」で教わったので、岸時代のことだけが抜け落ちている。保阪さんの本は読みやすいので、ようやく60年安保のことが理解できた。

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    2012年08月26日
  • 参謀の昭和史 瀬島龍三

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    「不毛地帯」を読んでいる間にも何度も感じたことだけど、山崎豊子氏の描く「壱岐正」なる人物はあまりにも理想化されすぎていて、どこかリアリティに欠けていた(そうであればこその「物語」ではあるかもしれないけれど)ように思うんですよね。  で、その「壱岐正」のモデルとしてある意味で一世を風靡した「瀬島龍三」なる人物に関して興味を持ったわけだけど、この本を読んでみての感想は「やっぱり壱岐正は現実にはいなかった、フィクションだった」ということでしょうか??

    個人的には瀬島龍三という人物に関して、実際に会って話したことも一緒に仕事をしたことがあるわけでもない KiKi 自身は肯定でも否定でもない立ち位置に

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    2012年08月01日
  • 昭和史の論点

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     本書は、著名な歴史家4人による対談形式の本であるが、昭和史をわかりやすく概観できる良書であると思った。
     昭和史は、侵略と戦争の時代と平和な戦後史にはっきり分かれると思うが、戦後世代にとって戦前の昭和史は、よく知らない別世界の出来事のように思えてしまうのが実感だろうと思う。
     その戦前期の昭和史全体を鳥瞰するような本書は、興味深く読めた。
     しかし、「昭和天皇の英明」という視点だけはどうだろうかと思った。本土決戦を叫ぶ陸軍を退けて「聖断」を下した事実を取り上げた評価なのだが、「英明」な君主だったら敗戦のような事態にはならないだろうと思われる。
     しかし、本書は左右のイデオロギーに加担しない冷

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    2012年06月07日
  • 日本の領土問題 北方四島、竹島、尖閣諸島

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    【書評】
     本書の筆者である、ロシア担当の元外交官が語る声には重みがある。領土問題を語る場合、現在の日本がおかれた状況に、筆者は並々ならぬ危惧を抱いている。筆者が深く関わった北方領土返還交渉を始め、竹島、尖閣諸島を巡って、一連の関係国の日本への風当たりはどれも強くなっている。これは、日本の対外的な力が落ちていることを意味するとともに、世界が異なる秩序に入りつつあることを示している。
     実務家として領土返還交渉に携わった筆者によると、北方領土交渉の失敗の幾つかは日本の側に帰せられ、戦後の日本政府と外務省の進めた領土交渉は「ミッドウェーに匹敵する敗北」を喫してきた。「交渉者の判断を曇らせた大きな要

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    2012年05月30日
  • 日本の領土問題 北方四島、竹島、尖閣諸島

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    日本の領土を如何に守り解決するか? 太平洋戦争終結後、日本は一貫して領土問題を避けて来た。 いや、逃げて来た。 もし私が結論を出せと言われるならば、淺知恵といわれてもひとつの結論を持っている。 まず、領土問題は、北方四島・竹島・尖閣諸島を並行して処理する方法。 まず、北方四島(択捉・歯舞・色丹・国後)は、歴史問題からしても、まず間違いなく日本の領土であり、譲る事は出来ない。 ロシアの不法占拠である。 尖閣諸島も歴史的にもこれも日本の領土である。 日本が実行支配してる。 しかし、竹島に関して言えばICJに訴える方法もあるが、韓国は竹島に関しては、非常に強行だ。 まず、韓国と妥協して竹島を認めるが

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    2012年04月24日
  • 50年前の憲法大論争

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    50年前とは思えない、わかりやすさと緊迫感。これ以降、憲法論議が深まっていかなかった、というのもうなずける。おのれの生き様をひっさげて、議論に臨む姿勢は、どれも甲乙つけがたい。現在、改憲論議が盛んだが、ここまで体をはった議論はなかなか見られない。現在の改憲派も護憲派もどこか観念的、薄っぺらに思えてしまう。

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    2012年03月12日
  • 日本の領土問題 北方四島、竹島、尖閣諸島

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     本書は、ゴルバチョフ以降、ソ連・ロシアと領土返還交渉に携わってきた東郷和彦氏が前半に3つの「領土問題」についての経緯並びに現状を解説・論評を行っている。後半は東郷氏と近現代史に造詣の深い保阪正康氏の対談。

     お互いにタブーを恐れず、何故それぞれの問題に進展がないのかを忌憚なく討論している。対露では「四島一括」の一人歩き、竹島・尖閣では「日韓併合」「日清戦争」がキーワードであるとしている。

     北方は新プーチン政権のサインを見逃さないこと。竹島については政府間交渉が現状不可能であることから、学術や文化交流のレベルでの信頼醸成を図ること。尖閣については非常に武力衝突が危ぶまれることを指摘しなが

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    2012年03月10日
  • 明仁天皇と裕仁天皇

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    ●:引用

    ●「父」と「子」の相克 このような構図を見ていくと、そこに父と子という対立が生まれているということがわかる。この対立は、天皇という制度が不可避的に抱えているものであり、歴代の天皇は必ず父と子との関係で相克を起こすともいえるのではないか。誤解を恐れずにいえば、それは天皇と皇太子の個人的な感情という次元ではなく、それぞれの天皇は常に時代とともにあるがゆえに、皇太子には、父の時代にあってやがて来るべき自らの代にどのような軌道修正を行うかといった発想が、ごく自然に生まれるということでもあろう。むしろこのことは天皇制のバランスを保つための知恵ということにもなるはずだ。(中略)明仁天皇もまた昭

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    2012年01月22日
  • あの戦争になぜ負けたのか

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    英国情報部へのスパイ浸透とゾルゲ事件を引き合いに、軍部にもソ連のスパイがいた、そして日本の方向性を誤らせたのではないかという示唆は興味深かった。

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    2011年12月03日
  • 東京裁判の教訓

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    「あとがき」で著者が書いているが、「東京裁判」と聞いただけで「高い山」と思っていたうちの一人である。本書を読んでみて感じたことは、「東京裁判」を読み解くことで、なぜ日本が無謀な戦争に突入していったかをある程度体系的に理解できるということである。
     
     別件ではあるが、この20年来、著者の史観に共感を覚えてその著書を読み続けているのだが、ここに来て、本当にその史観に共感することが正しいのかをあえて疑ってみたいと思っている。しかし、あの右翼的史観(昨今におけるAPA論文の選者や小林よしのりの考え)は生理的に受け付けず真剣に読む気がしないのもまた事実である。誰か両方の史観を客観的に論じてくれないもの

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    2011年11月23日