保阪正康のレビュー一覧
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日本の歴史を、特に昭和史を客観的に述べることができる人を挙げるならば、半藤一利氏か、この本の著者の保坂正康氏ではないかという気がします。その保坂氏が昭和史を俯瞰的に時系列で新書のボリュームで解説したのが本書です。
私自身、昭和史を含む近代史は(高校で日本史を選択していなかったこともあり)基本的な知識が欠如している部分もあるので、本書は正直ちょっと難解な印象を受けました。
ただ、非常に印象的であったのは太平洋戦争を始めるにあたりラジオで発表された開戦の詔書の主旨が「東アジアの安定のために日本が努力したにもかかわらず、英、米がその努力を阻止したり、さらにはアジアの制覇を企て、日本の存在に脅威を与えたために立ち上がった」というものであったという部分です。追い込まれ、やむにやまれず立ち上がったという趣旨です。現代に置き換えた時、この詔書に登場する英、米を中国や韓国に置き換えると、こういう論旨で武力衝突に至るケースがあり得ない話とは思えない気がしてきます。
もう一点本書で印象的だったのは、昭和歴代の首相が終戦をどのような年齢、立場で迎えたのかを述べた部分です。明治生まれ、大正生まれ、昭和生まれとグループ分けされていますが、私たちの年代にとって首相と言えば、大正生まれの田中角栄、中曽根康弘、竹下登、宇野宗佑、宮澤喜一、村山富市、そして昭和生まれの海部俊樹、細川護熙、羽田孜、橋本龍太郎、小渕恵三、森喜朗、福田康夫と分けられています(本書のもとになった著書は2007年発売のため)。
こうしてみると、政治家がそれなりに存在感を持っていた時代の首相は大正生まれのグループが多い気がします。この年代の人達は太平洋戦争には軍人として参加しており、その経験がその後の政治活動にも影響を与えているようです。
著者も警鐘を本書の中で鳴らしておられますが、日本だけでなく世界の政治指導者が次第に若返り、先の大戦を経験していない年代となりつつある現代は、私たちが政治家の言動に無関心でいると再び戦乱を呼び込む事になりかねない気がします。 -
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東条英機、石原莞爾、犬養毅、瀬島龍三、吉田茂たち昭和を代表する人物たちについての驚くような事実。東条が首相になった理由、東条と石原の確執の遠因、石橋が日中戦争・太平洋戦争に反対の立場だったこと、犬養毅が最後に放った言葉「話せば分かる」は実際には「話を聴こう」だったとの孫・犬養道子の証言。犬養一族の前で犬養について話をする著者への道子の反応は実に興味深い。道子は日本人のありのままの姿を見ようとしているためとの著者の感想が瀬島のソ連スパイ説の真相と大きな嘘の数々、小説「不毛地帯」の壹岐正に自分を重ねようとして日付まで嘘をついていた!吉田茂にとっての憲法9条の重要性。著者の冷静な視線での記述が鋭く歴史の陰の部分を明るみに出してくれているように感じる。
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ネタバレ【書評】歴史を学び、人のふり見て我がふり直しませんか?『昭和の怪物 七つの謎』
日本の歴史は皆学校で習うが、つまるところテストのための暗記科目と化している。
ただ歴史から学べることは多くあり、「人のふり見て我がふり直す」のにうってつけの科目である。
本書では歴史の教科書で語りきれなかった、歴史的人物の人間面を浮き彫りにする。
特に注目なのが、「東條英機」と「石原莞爾」の比較だ。
東條は自分の味方だけで人事を固めたり、課題を精神論で解決しようとしたり、とても国のトップになるような人ではない。
対して石原は東條とは真逆の思考である。
それがために、東條とは対立している。
石原は兵士を「人間」として扱い、東條は「軍備」として扱った。
今の社会に必要なリーダーは石原の方であることは明らかだろう。
本来必要とされている力が、人間関係によって発揮できないことで歴史が大きくマイナスに動く。
これほど悲しいことはないだろう。
繰り返すが、「歴史を学ぶ」ということは決して過去の出来事を暗記することではない。
過去の出来事を知り、「自分だったらどうするか」ということを考えることが大事なのではないだろうか。 -
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領土問題。
政治問題、歴史問題、資源問題。
感情論に走ると収集がつかないのは当然だが、見る角度によって変わってくるよなー。
太平洋戦争後、サンフランシスコ平和条約を基準にするのか、その後の各共同声明、日露共同、日中友好か。はたまた、1903年か、1905年か。
最初に見つけた方が所有者、実行支配した方が所有者、最初に見つけたという現存する歴史書がある方が所有者...
仲良く出来んかね。北方四島の時には共同開発の妥協案が出たが、日本敗戦後のプライドなのか強引に撥ね退けたな。
遡れば、パンゲアなんて大陸が地続きだった時代は誰のものでもなかったのにな。市場経済主義に戦中戦後の歴史問題が絡むと果てがない。白人の開拓精神しかり、日本の満州しかり。アメリカだって、マルコポーロのものでもコロンブスのものでもなく、ネイティブ・アメリカン達の土地だったのにね。アメリカなのに、ニューイングランドなんて名前が今じゃそのままだし。
国境。国連憲章で一国が持てる面積はこれだけ。緯度経度は何度から何度までとか決めりゃ良い、なんてのは暴論ではあるけどもさ。
グローバル社会で、金の流れだけは国境越えて世界中飛び回ってるけど、民族アイデンティティってのはあるのが当然か...
問題提起の一冊。飲み屋で触れる話題じゃないだろな。 -
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北方領土、竹島、尖閣諸島の問題は、考えるたび虫の居所が悪くなるというか、気持ち悪い、すっきりしない、…どういう表現が適切なのかわからないのだが、とにかく嫌な気分にさせられる問題である。しかし、本当に最近の動向は憂慮すべき状況であり、少しでも見識を深めなければと思い、読んでみた。
「(2008年の教科書と竹島問題に関する)韓国の反応は、韓国事情をフォローしている人から見れば、予見されたものといってよいと思う。
しかしながら、である。この韓国世論の盛り上がりぶりのなかに、考えこまざるをえないものがあることも、否定できない。戦後の日韓関係全体のなかで、日本がけっしてこの問題を大上段にふりかざしたことがないことを、韓国側は、理解しているのだろうか。竹島の周りで起きている軍事演習や、喧伝される『独島戦争』で盛り上がる韓国世論を、一度もそんなことを考えたことのない日本人が、けげんな眼差しで見ていることに、思いをはせたことはないのだろうか。
教科書についても、自分の教科書にあれほど明確に書いていることを、それよりも比べものにならない地味な表現で書こうとしていることに対して、かくも激昂することが、『二重基準』だと、冷静に思うことはないのだろうか。
この袋小路から抜け出す方策が、一つだけあると思う。
民間の研究者・有識者のあいだで、相互の認識のギャップについて、冷静に意見交換をすることである。」
「大まかにいえば、北方領土は『歴史問題』であり、竹島は『政治問題』、そして尖閣諸島は『資源問題』ではないかと思う。」 -
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対談。なぜ戦争になったのか。どこで間違えたのか。こういう本を読むと、自分がいかに知らなかったということを痛感する。そしてこういう本を読んで思うのは、過去のこととして知識にするのではなく、今、自分のいるまわりに活かせることはないか、ということなんだよね。
大正七年の原敬首相から昭和七年犬養毅が五・一五事件で暗殺されるまでを日本の政党政治の黄金期という。
では、原敬の何がすごかったのか。
偉大だったのは、としていわれること。
原敬日記をひいて、すごくこまめに軍人に会っていることを指摘している。
こまめに、ひょっとしたら自分と反対意見の人とも会って、パイプをつくっていたことが、強い力を持つことになったということだろうか。
意見が違う人とも、交流する。それによって単純に自分や自分の側の利益を押し通すのではなく、より多くの人が満足する道をさぐる。それが大きな仕事をするうえで肝要なのではないかな。
少なくとも、自分に反対する人間に対して「こんな人たちに負けるわけにはいかない」というのは、スケールが小さいんだなと思う。