保阪正康のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
著者は「昭和史研究」をライフワークとし、これまで元軍人・政財官界約4千人に取材。そこから引き出した「生身の証言」に加え、関連書籍を渉猟し、これまで多くの類書を著す。
本書は昨夏に上梓された「昭和の怪物 七つの謎」の第二弾。先の大戦に直接・間接的に関わった七人ー三島由紀夫・近衛文麿・橘孝三郎・野村吉三郎・田中角栄・伊藤昌哉ーの体験が各自のその後の人生にどう影響を及ぼしたのかを基軸に編まれた人物評伝。
◉高木彬光の「白昼の死角」で一躍知られた
「光クラブ事件」。その首謀者 山崎と三島由紀夫の交錯。
◉米国に国交断交の通告なしの騙し討ちとなった「真珠湾攻撃」の張本人とされた野村吉三郎の不運さ。
-
Posted by ブクログ
★★★2019年3月レビュー★★★
太平洋戦争七つの謎と称して、第一章から第七章までの構成だが、特に重要だと思われるのは
「第一章 誰が開戦を決めたのか」
「第六章 誰が終戦を決めたのか」
この2点だと思う。
まず、「誰が開戦を決めたのか」という問いに対しては「官僚が決めた」と筆者は述べている。憲法上は天皇の直属である軍事官僚が中心になって決めたと。また、五・一五事件で示されたような世間の残酷さも見逃せないという。
次に「誰が終戦を決めたのか」という問いに対しては、「最終的な判断は昭和天皇が下した」と述べている。ポツダム宣言を熟読し、自らの判断で「これなら受諾してもよい」と考え、た -
Posted by ブクログ
昭和史研究の重鎮4名による討論集。
正直昭和史そのものについてはまだ初学者なので内容をどうのと言える立場ではないが、少なくとも初学者レベルの本でないことは分かる。初学者を一歩抜け出たぐらいの人に一番適しているのではないかと思う。
戦争関連本や昭和史の本は必ず読んでおくべきという認識が、改めて強まった。「歴史は繰り返す」という言葉があるが、戦争の歴史を繰り返さないためには、徹底的に検証・反省して繰り返さないための方策を生み出していかなければならない。特に、戦前に生まれた人たちがどんどん減っていく中で、戦争を直接知らない人たちが同じ過ちを繰り返さないこと。だから、昭和史学習は必須。 -
Posted by ブクログ
平成が終わる中、今一度昭和史、特に戦中、戦後と社会が大きく変わった時代のリーダーたちを知りたくてこの本をとった。
東条英機の文学や哲学、学問を軽視する姿や逆の立場であった石原莞爾など、時代は違えど人間として、現代人にもi-eyところはあった。
特に瀬島龍三のエピソードにあった、平気で一次情報の文書を書き換える姿勢は、現代の官僚と通じるぶぶんがある。70年賀状たった今でも、変わらないところはあるのだと感じた。
ただし、各エピソードに出てくる事件や物事など、ピンと来ない部分がある。それは自分がまだ歴史の理解が足りない部分である。
今、未来を考えるにも、過去も学ばなければいけないと、再認識した一冊 -
Posted by ブクログ
半藤一利と並ぶ昭和史研究の大家である著者が、太平洋戦争の目撃者たる東条英機、石原莞爾、吉田茂ら6名の人物に焦点を当て、それぞれの謎について、膨大なこれまでの研究成果をもとに著者なりの真相仮説を提示する。
特に重点を置いて描かれるのは東条英機と石原莞爾の二人であり、この二人に対するパートで本書の半分弱が占められている。東条英機と石原莞爾の対立関係、というよりも東条の石原に対する怖れや、石原莞爾が描こうとして理想の社会とは何だったのか、そうした問に、具体的かつ百科全書的な著者のこれまでの昭和史の知見がフルに援用されながら、ストーリーが語られる様は見事で、知的好奇心を多いに満たしてくれた。