保阪正康のレビュー一覧

  • 昭和の怪物 七つの謎

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    調査報道になるのだろうが、調査したことが十分整理咀嚼されておらず、無駄な脱線、引用、感想が随所に挿入されていて、読みにくかった。先日読んだ「あの戦争〜」で描かれていた東条英機像と真っ向から対立する、精神論だけで戦略もないまま徹底抗戦を譲らず、日本人の被害を拡大させた独裁者という理解だった。良識的で正義感にあふれ、学識もあり思慮深い石原莞爾との単純な2項対立のようだ。辻田氏の論調が理路整然として冷静な書き方になっている分、こちらのほうが信憑性が高いように思われてしまう。

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    2026年04月18日
  • なぜ日本人は間違えたのか―真説・昭和100年と戦後80年―(新潮新書)

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    二・二六事件、東京裁判、高度成長、田中角栄、昭和天皇など昭和史における歴史的な事象について改めて記した書。「真の保守主義」の立場での現代につながる論考を期待したが、放談のような印象で、やや期待外れな感じ。左翼的史観に対する批判は的を得ているとは思うが、現代では敢えて強調する必要性は薄く、次作では、むしろ昭和史を歴史として語る中で、いわゆる「保守」の無知・不勉強を指摘していくような評論を期待する。

    【目次】

    まえがき

    第一章 「昭和百年」とは何だったのか――左翼史観に歪められた歴史の見方
    近代日本を形づくった皇国史観  唯物史観とアメリカ的な実証主義  半藤氏の四〇年周期説、胡耀邦が語った八〇年周期説  暴力革命、革命純化、板垣は裏切り者  マスコミと教育現場を支配した左翼的史観  歴史を見る目を歪めたマスコミと文化人  自分史、日本史、人類史――三段階の歴史観  左翼系知識人の偽善  「東條について書くなんて右翼だ」  ジャーナリズムに対するアカデミズムの傲慢  記憶を父として、記録を母として  歴史に向き合ってものを書くこと

    第二章 「あの戦争」とは何だったのか――大きな戦略に呑み込まれた日中・対米戦争
    一五年戦争、太平洋戦争、アジア太平洋戦争  辛亥革命に日本はどう関わったか  国家統一に向けた中国の大戦略  イギリスの先進帝国主義の原価計算  国民党の軍事指導者が明かした抗日戦の真相  華族になりたい一心から国家を破滅に導いた  失われた武士道という倫理  対米戦争とは何だったのか――近現代史の俯瞰図  近代化の手本はアメリカではなくプロイセン  対中政策をめぐって高まった日米の軋轢  アメリカへの最大の援軍となった「本土決戦」  対米関係に支配され続ける国  対アメリカ観を再構築できるか

    第三章 「二・二六事件」とは何だったのか――狂信者たちの目的は達成された
    ファシズムへの導火線、新統制派の実権掌握  事件と共産主義者を結ぶ点と線  「天皇と一体化」という危険な精神構造

    第四章「東京裁判」は何だったのか――平和と人道という名の下の復讐
    天皇を訴追しないと決めたマッカーサー  隠された事実を晒す大掛かりな情報公開  訴状を推し戴いた被告たち  大きな無理を抱えた検事団の起訴状  自分の首を絞めた敗戦前後の資料焼却  戦争よりも虐殺行為への復讐が目的  パル判事の「日本無罪論」を否定する  「これでアメリカと戦争をやったのか⁉」  ソ連の証人になった「昭和の参謀」瀬島隆三  法務省地下に埋もれた資料が語ること  「東條を真人間にしてあの世に送った」

    第五章 「高度成長」とは何だったのか――経済官僚が挑んだ軍人への復讐戦
    「政治の季節」から「経済の時代」へ  平時の予算の組み方を知らない大蔵官僚  高度成長を取り仕切った「短現」出身者  七〇年安保とは高度成長のアダ花  復讐戦の終焉から低成長の時代へ  歴史の法則性と準備運動

    第六章 「田中角栄」とは何だったのか――大衆の生贄にされた無作為の社会主義者
    際立った三つの特徴  昭和天皇の前で話しまくる  キッシンジャーを激怒させた「アメリカ離れ」  『日本列島改造論』の先見の明、狡猾な大衆のエゴイズム  支持率七〇パーセント、驚異的人気の秘密  「国のためになど死んでたまるか」

    第七章 「昭和天皇」とは何だったのか――時代の象徴にして人間天皇という二面性
    明治・大正天皇の分裂から昭和天皇の一体化まで  象徴天皇にして人間天皇へ、苦渋の変身  日本人として理解すべき天皇の二面性  近代天皇制への理解不足

    第八章 「戦後八〇年」とは何だったのか――言葉の呪縛と思考停止の時代
    中国訪問で「あなたはなぜ謝罪しないのか」  「した部隊」と「しなかった部隊」の違い  政治的プロパガンダより生身の証言  モラルが逆転した戦争体験を聞くルール  歴史認識は食い違うのが当たり前  報道と戦争は今も昔も相性がいい  自分の意思と関係のない「世代の宿命」  日本人は本当に「わだつみのこえ」を聞いたか  「国のために死ぬ」というアンビバレンス  「一国平和主義」「平和憲法」への自省はあるか  「戦後」「戦後民主主義」に潜むエゴイズム  新しい戦争観と平和理論を構築できるか  「戦間期の思想」を持たなかった国

    あとがき

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    2026年04月10日
  • 太平洋戦争、七つの謎 ──官僚と軍隊と日本人

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    タイトルの七つの謎を史実のミステリと受け取ると肩透かしを食う。開戦を決めたのは官僚で、人間を武器とした特攻の非道さを説き、天皇の聖断により終戦となったとのオーソドックスな戦後民主主義的太平洋戦争観が語られる。
    戦場体験と戦争体験との違いへの拘りに見られるとおり、著者は一貫して兵士の視点から戦争を見ている。終戦の聖断でも天皇が「軍を切り捨てた」と明言するところには盟友・半藤一利の戦争観と微妙に色合いを異にするように思える。
    講演の書き起こしである。

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    2026年03月28日
  • 太平洋戦争、七つの謎 ──官僚と軍隊と日本人

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    「戦場を知らない人が戦争を語る言は、どこか観念的であり、道徳的である」。この言葉が示す様に、現代に生き戦争史を語る多くの人々は戦場も戦争も経験していない。一昔前なら、当時の参謀クラスや司令官クラスが戦後に自身の経験や判断の経緯などを雄弁に語る書籍も多かったが、それも戦場を体験した内容のものは、全体の中ではごく僅かだ。自身は戦場から遠い場所に身を置きながら、俯瞰的に捉えたものが多く、弾が飛び交い爆弾が炸裂する様な、最前線の兵士の体験とは異なる。だからと言ってそれらに真実味が無いという訳ではなく、戦場とは違う場所から見た戦争体験は、一兵士と違う場所から当時の戦争をリアルに告白するものとして、その後の戦争の反省と平和の構築に役立つものが大半だ。
    一方で自身が飢えや熱さ寒さと対峙し、一瞬の戦闘で命を失いかねない危険な最前線にいた兵士の体験記は多くない。敵兵士と矛を交える前に、飢えや感染症と闘い、常に命の燈を風に晒した様な体験は語られる事が少ない。それらの声に耳を傾けて(執筆当時で)4000人ばかりを取材してきた筆者、保阪正康氏が太平洋戦争について語る講演内容を集めたものが本書の内容となっている。本当の戦場を知る人間は、極限状態の自身の経験を言葉や文字にする事も難しいのかもしれない。それを書籍に起こそうとすれば、記憶に残る当時のシーンやなくなった戦友の顔を思い出さなければならない。記憶の奥に閉じ込め、生涯封印した想いを改めて思い起こす事は、戦場のリアルを知る兵士達にとっては非常に辛い事である、というのは容易に想像がつく。
    本書は戦時中に生まれた世代である筆者が、かつての日本の経験した大戦争について、様々な観点から語る内容となっている。戦争がなぜ始まったのか、稀代の天才山本五十六とは、肉体そのものを武器にする特効、そして敗戦に向かう日本の姿と、そこにいた天皇の存在について語っていくものとなっている。技術内容としては良くあるよく知るものが多いが、定期的にこうした内容を振り返り、繰り返し繰り返し記憶に深く刻んでいくことは大切だと感じる。人は忘れる生き物であるが、誰かが後世にこれらの記憶を引き継いでいかなければ、再び過去の過ちを犯しかねない。世界中が自国優先主義で他国の利益を奪うことばかりに目を向ける今、過去の戦争に至った背景と同じ空気を感じたりしないだろうか。静かに目立たずに足元の地面がゆっくり沈み込む様な、沼にいる感覚。混沌とする世界で、再び世界がかつての戦争と同じ方向に進まないためには、過去の戦争の悲惨さや、戦争に至った背景を学ぶ事が有効だ。本書は真新しさではなく、今一度振り返るといった書籍に仕上がっている。

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    2026年02月26日
  • そして、メディアは日本を戦争に導いた

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    10年以上も前に書かれた本なので、現在とは認識の異なることも多い。2人の会話を軸に書かれているため、構成も話題の連続性も恣意的なところがある。中には眉唾物の話題もあって、日中戦争が始まった昭和10年代と比べて昭和初期を美化しすぎているのではと思われる記述も多々あった。それでも彼らの懸念事項は現在確実に深刻化しているし、単純短小化されたネット情報になじんだ人たちの言説には恐怖感しかない。圧倒的な国力のあるアメリカとの戦争になだれ込んだ昭和の失敗を学ぶことなく、圧倒的な国力のある中国との争いにも引きずり込まれる日はそう遠くないのかもしれない。

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    2026年01月20日
  • 戦後の肖像 その栄光と挫折

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    昭和の御代62年間、右も左も中間も皆それなりに必死に生きてきたのだなと思う
    それにしても生き抜くことはなんと難しいことか
    日和見が多すぎる

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    2025年12月21日
  • 右翼と左翼の源流 近代日本の地下水脈II

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    実際難しいというかわかりにくい。
    相関図と年表、語句説明がついて入ればわかりやすくて頭に入ってきたと思う。
    題材は興味深いぶんがっかりが大きい。

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    2025年12月18日
  • なぜ日本人は間違えたのか―真説・昭和100年と戦後80年―(新潮新書)

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    保阪さんてこんな人だっけ?
    大丈夫か?どうしちゃったんだ保阪正泰と言う気持ちになる本。
    乱れぶりを楽しめるといえばいえる。

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    2025年11月16日
  • 昭和陸軍の研究 上

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    内容が詳細でボリュームがあって調査、研究を主とした読書じゃないと読むのはキツい感じ。
    ただ難しいとはいえ昭和陸軍の異常さは十分伝わってきた。

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    2025年11月12日
  • なぜ日本人は間違えたのか―真説・昭和100年と戦後80年―(新潮新書)

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    表題に対する答えは書かれていないようだ。わずかに、「戦後」という括りをなくすべきということが書かれているが、それはそうとしてそれだけでは分からないだろう。
    「あの戦争は何だったのか」のまとめとして、後進帝国主義による先進帝国主義への自滅的挑戦だったという。その通りであろう。
    もしどこかで踏みとどまっていればいったい今どうなっているのか、考えてみたい。
    日中戦争について、「中国の巧妙な罠に嵌ったという見方もできる」というが、それは少なくとも始めたあと、やめられなくなった時のことではないのか。

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    2025年10月30日
  • 昭和の怪物 七つの謎

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    戦中戦後の日本について詳しく書かれていたと思います。私にとっては難しい話が多くて読むのに時間がかかりましたが、それでも最後まで読みました。最後まで読みたい気分になりました。

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    2025年10月18日
  • 戦争という魔性 歴史が暗転するとき

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    ネタバレ

    力作。
    内容は凄い、よく調査されている。作者の主観も入っており、鵜呑みする訳にはいかない。
    ここまで詳細な内容は私には必要なく、読みにくい。

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    2025年10月04日
  • そして、メディアは日本を戦争に導いた

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    この2人の作家はジャーナリスト出身で、15年戦争に至った日本の歴史を冷静に語る著述が多い。彼らが2013年に対談した記録は10年以上を経ているにもかかわらず、先見性のある指摘というか、今も変わらないというか。日本のジャーナリズムの劣化、それが知性の退嬰を招き、民主主義を危機に追いやっており、ファシズムが抬頭していると、昭和一桁年代の状況に似てきたと危機感を共有している。「自虐史観」から「居直り史観」への移行がそれを象徴している。
    日本のジャーナリズムの幕末ごろから、現在に至るまでの流れを書いている中で、明治初期が最も政府に批判的な言論が主張され、日清・日露の頃から、政府の情宣紙のように戦争に賛成し、また戦争になると新聞が売れる!そして反戦的な新聞は売れなくなって廃刊に追い込まれるというのが実情だったという。彼らが模範的なジャーナリストだったと礼賛する石橋湛山と桐生悠々の2人が印象に残った。それにしても大戦前の日本のジャーナリストが米国人のことを女に頭が上がらない男たちで軟弱で、直ぐに講和締結を望むと、考えていた一方で、米国人の側も日本人を出っ歯で、強い近眼眼鏡をかけておりまともに飛行機が操縦できるはずがないと、分かっていなかった!との記述には笑えた。

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    2025年09月25日
  • なぜ日本人は間違えたのか―真説・昭和100年と戦後80年―(新潮新書)

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    2025/09/22「なぜ日本人は間違えたのか」保阪正康
    著者の「昭和史への見識・真摯さ」
    多くの戦争経験者からヒアリング、その実証性に敬意。
    ただしオーソドックスであり、国内事情に傾斜し、世界事情は弱い。
    (『武藤章』の切れ味はない)

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    2025年09月22日
  • 昭和史の論点

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    『正論』の連載を新書にまとめたものだが、25年前には保守派の議論もまだしも穏当なものだったとの感に打たれる。ただ座談形式なので仕方がないのかもしれないが、結構重い話なのに(笑)がついていたりすると、どうにも違和感を拭えない。
    ハル・ノートのくだりなどは四人の議論が錯綜し、戦後半世紀を経た評論家の座談会でさえこの調子であれば、中堅幕僚の突き上げを食らっていた当時の政府が完全に当事者能力を失っていたというのも想像に難くない。
    半藤が「元首の天皇が大元帥に命令して2.26や大戦を収束させた」と繰り返している(他の参加者はあまり取り合わないのだが)のは、明治憲法の構造上、「大元帥としての天皇」の戦争責任を免責する論理が見当たらないことの裏返しだろう。半藤の所属した文藝春秋の社是としてはそこを否定して置かなければならなかったのかと邪推している。

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    2025年08月18日
  • 太平洋戦争への道 1931-1941

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    敗戦記念日がまた近付いてきたこともあってか、ふと手に取った。お三方(特に加藤さんと半藤さん)の著作はこれまでにちょくちょく読んでいるので、おさらいという感じで読んだ。

    当時の色々な人の色々な思惑と事実とを照合すると、「対米戦を回避する術はあった筈」とやっぱり思ってしまう。

    リットン報告書やハル・ノートに対する、冷静さを欠いた威勢がいいだけの感情的な煽りは、発行部数を伸ばすのにはよかっただろうが、亡国ぎりぎりまで民族を追い込んだ、という面では、マスコミの罪はとてつもなく大きいと思う。

    また、五・一五事件のあと、実行者の助命嘆願書が百万を超える数集まり、裁判でも実行者が自身の信じる主義主張を延々と語ることを許され、かつそれが美談として報道され、暗殺された犬養毅首相が悪役化されるなど、言語道断だ。

    テロリストを美化することは、断じて許容しては行けない。

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    2025年07月05日
  • 田中角栄の昭和

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    「今太閤」と呼ばれる田中角栄元首相の、成り上がりの歴史と功罪入り乱れた政治実績を説明した内容。田中角栄は昭和時代を代表する政治家であり、それまでの対米従属・外需依存から日本の経済的自立と主権回復を図った功績が挙げられる。一方でロッキード事件に代表される金権政治によって失脚し、角福戦争といった派閥抗争など薄黒い面も多分にあったとされている。

    田中角栄を語る上で、その戦争経験から入らなければならない。陸軍騎兵隊として満州に送られるも結核にかかって本国に帰還したとされるが、その頃の話が積極的に田中角栄の口から語られることはない。部隊が全滅するような過酷な戦場からいち早く抜け出し、戦時経済下で理研の工場建設などによって巨万の富を得るといった形でその才覚をいち早く発露させている。

    そのような経済的基盤を以て満を持して衆議院議員へと立候補する。その弁舌はシンプルかつ分かりやすかったため、有権者の心を鷲掴みにしていき、新潟県は強力な地盤としてその政治活動を後押しするようになる。一方で政治の世界は離合集散を繰り返しており、やがて自由民主党が結党される流れの中で、その集金能力や郵政大臣としていち早くテレビなどのメディアを掌握した運も相まって押しも押されぬ実力者となっていく。

    総理大臣に就任すると有名な『日本列島改造論』を提唱し、大型公共事業によるインフラ整備と経済活性化による内需拡大を推し進める。とくに新潟県では上越新幹線や柏崎刈羽原子力発電所の誘致建設や長岡鉄道の電化といった事業がいち早く実現している。それと同時に中国やソ連との国交正常化にも強い関心を持ち、そのような反米的動きが後のロッキード事件に繋がったとされる。

    いずれにしても、このようなパワフルかつ実行力のある不世出の政治家という評価は当然であり、日本政界は今なおその影響が残っていると考えられる。その原点では戦争に対する徹底的にニュートラルかつ経済的に利用するという姿勢と、経済成長こそが全ての課題を癒やすといった若年期の記憶があることは、想像に難くない。

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    2025年07月03日
  • 昭和史の核心

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    ロシアのウクライナ軍事侵攻から、イスラエルのパレスチナ自治区へのジェノサイドとも言われる攻撃など、ここ数年は戦争を身近に感じる機会が増え、戦後80年が経過して世の中の大きな変換点に来ていると肌で感じる。

    それまでの常識として、他国への軍事侵攻など、今の世の中ではお互いが抑制しあって起きるはずはないと思い込んでいたが、それが一度破られると、至るところで火種が大きくなってきていることを懸念する。また、為政者にも自国第一主義や保護主義を唱えるものが多くなってきていることにも不安を覚える。

    当たり前のように二度と戦争は起こさないし、起こらないよう抑制されると思ってはいても、経済が悪化し、不満がたまり、何か歯車がズレて、それがどんどん大きくなっていくと、昭和の戦時中のような考えに行き着くのではないかと感じてしまう。

    そうならないためにも、もう一度、戦争の悲惨さを思い知り、過去の過ちがどのように始まり、どのような結末に至ったかを考える機会を増やさなければと感じた。

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    2025年06月16日
  • あの戦争は何だったのか―大人のための歴史教科書―

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    読売新聞に著者の履歴書が掲載されているのに触発されて読んでみた。
    非常に真面目に先の戦争を分析していることには敬服した。評価をあまり高くしなかったのは新しい視点を感じなかったため。但し逆にいうと著者の視点が今や一般化しているからかも知れない。
    戦後80年とうとう私たちのまわりでもいつ戦争が起きてもおかしくない時代になってきた。今こそ筆者の言うように、先の戦争をきちんと総括する必要があるのかもしれない。さもなくば我々が同じ轍を踏む可能性は大いにあると思う。

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    2025年03月03日
  • 戦時下の政治家は国民に何を語ったか

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    昭和の時代に入ってすぐ1928年(昭和3年)、最初の普通選挙が執り行われて以来、様々な政治家、財政家、外交家、軍人などがラジオを通じて、自らの意思や考えを国民に伝えてきた。時はまさに後に続く日本にとって最大の国難、太平洋戦争への道のりを歩む時期であり、それはゆっくりとした歩みから、徐々に加速をつけての激走へと変わっていく。その間、1929年世界恐慌、翌1930年のロンドン軍縮会議、更に翌年の満州事変の勃発、五.一五事件など、社会は不安や不満に満ち溢れ、影響力を持つ政治家などの一挙手一投足が自らの政治生命だけでなく、人生の幕を閉じさせるような暗殺という手段により、命を失ったような時代だ。外交面では東亜の恒久平和を掲げつつ中国に進出する日本に対して、アメリカやヨーロッパ各国が脅威を感じ、日本の封じ込めに動きだす。日露戦争を経て、世界の舞台に遅ればせながらその存在感を示し始めた日本にとって、その世界の舞台から徐々に孤立への道を歩み始める。外交では松岡洋右の名前などは誰もが知る事だろう。その間、国内政治も荒れに荒れ、首相だけでも田中義一、濱口雄幸、若槻礼次郎、犬養毅、斎藤実、岡田啓介、広田弘毅、近衛文麿、平沼騏一郎、阿部信行、米内光政、東條英機、小磯国昭、鈴木貫太郎と目まぐるしく変わっていく(近衛は第三次政権まで)。この様な状況に於いて、世界から孤立する日本の立場を国民に伝え、戦時に於いては国民に何を求めたか、そして自身はその中でどういった役割を果たそうとしたか、彼らの語った言葉とその背景を教えてくれるのが本書である。
    その言葉の中には、当時の複雑な社会背景と、特に太平洋戦争開戦前後は軍部の強大な圧力•影響を感じさせる文脈が多く見られる。五.一五事件.二.二六事件など陸海軍軍人の標的にされ、命を失う危険に常に晒された政治家達が、自身の決心を述べるのだから、相当に考えられた文面、そして覚悟の上での表明になる。文字一つ一つから、覚悟の様なものを感じられる。
    現代の社会ではテレビでそうした政治家達の言葉に触れる事が出来るから、その表情なども見る事ができるが、流石、平和が長く続いた時代であるから、どうしてもその言葉を当時と比べた場合、薄っぺらい印象を受けざるを得ない。当時の様な熱さや生命を賭けた言葉とは大きくかけ離れている。この時代の手段がラジオという、音としてのみ伝えられる事を考えても、言葉選びの重要性は、今よりも格段に高かったのだろうと思う。その結果、より重厚で格式の高い文章にならざるを得なかったと思われる。
    ビジネスでも自身の使命などを表明する機会がある。どの様な未来を描き、方向性を示しながらも、直面する喫緊の問題に対して、迅速に対応策を提示、実行に向けて意識を集中させ、そして自らがどの様な哲学•思想を持って取り組むのか。かなり薄っぺらに感じさせるような発言を繰り返した自分を恥じながら、本書の言葉と比べて読み進めるのが、中々面白い。そして勉強にもなる。
    先ずは覚悟が何よりも必要であるし、実態、現実の深い理解と、単なる絵空事ではなく、実現性や具体性に富んだ言葉でなければならない事を、改めて気付かさせてくれた一冊であった。

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    2024年11月17日