保阪正康のレビュー一覧
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日本が軍国主義化して、戦争の時代に流れ込んでいくプロセスについては、過去にも何冊が読んで、大きな流れは理解しているつもりであったが、これはテロルという切り口でまとめた本。
テロル=恐怖がだんだんと社会全体に染み込んでいく感覚というのは、客観的な記述の歴史書では今ひとつピンとこないところであったが、この本は、著者の長年のインタビューなどの積み重ねもあり、リアリティを感じた。
昭和前半の歴史において、「なぜ、日本はアメリカとの勝つはずのない戦争を始めたのか?」「なぜ日本は軍事独裁的な政治体制になったのか」という問いは、日本だけをみてもダメでドイツやイタリア、ソ連などを踏まえた上で考える必要があ -
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●戦争指導の内幕がよくわかる一冊。
●天皇の命令は中々書かないから読めて良かったと思う。特に年上の陸軍大臣、参謀総長から舐められていたのは悲しい話。東条だって怪しいもんだし、当時の天皇の心中はいかほどのものか。信用できない家臣に囲まれることほど、辛く情けないものはない。
●後半はかなり具体的な名前が出てくるからかなり興味深い。つくづく歴史を記録することの困難さを実感する。神の視点はないわけで、どうしても客観性が怪しくなる。結局、長生きした連中にいいように修正される可能性もあるわけだね。
●昭和の戦争指導はひどいもんだ…かなり頭のいい人たちもいたはずなのにこんなことになってしまって…本土上陸作戦 -
Posted by ブクログ
逃げ切れる世代と、逃げ切れない世代。
本書内で登場するのですが、
私はちょうど間ぐらいかもしれません。
いまの20代以下は本書の中の「逃げ切れない世代」だし、
池上さんたち60代以上は「逃げ切れる世代」なんでしょう。
年金制度だって、何十年も前からお金を徴収していたはずなのに、なぜ今になって財源足りませんとなるのか。
戦争だって、今更する必要あるのか。
日本は敗戦国として覚悟をもって主体的になれているのか。
鬼滅の刃の話題は、ちょっと飛躍しすぎでしょと思いましたが。苦笑
たくさんの頭が良い人たちが考えてつないできたはずのものが、結局すべて詰んで破綻を迎えるって。
振り返れば分岐点、潮 -
Posted by ブクログ
筆者は、日本人のアイデンティティは実利主義で、
1. 鎖国時代に対外戦争を経験しなかったことで、共同体の中で生まれて死ぬまでそのルールを守っていれば過ごせた点、
2. 現世ご利益的で、自分たちの農村共同体を壊さないための知恵としての損得勘定が培われてきた点、から培われているとしている。
このあたりは最近読んだイザベラ・バードの日本紀行にも同様の記載があった。
「日本人は西洋の文明を取り入れるが、その文明の根本となる宗教などの考え方には興味を示さない。まるで実は要るが木は要らないと言っているようだ。」
本書で、日本人はゴールのある目標を達成するのは得意だが、道なき道を先導するのは苦手と言われて -
Posted by ブクログ
1.勝ったという経験は、人間を反省させないし、利口にもしません。
2.教育によって国というのは立つんです。経済によっては立たない
3.大きく変革するときに、人間というものは正体を現すんですよ
4.残しておけば、あとの人が真実に近づくことができます
どれも、うんうん、と頷きながら読んだが、ウクライナ侵攻が続く今、考えているのは、なぜ、ロシアがウクライナへ侵攻したのか、ということだ。
その要因は、いくつもあるだろうが、そのうちの一つに、ロシア(当時のソ連)が第二次世界大戦においてナチスに勝利した、という記憶があるからではないか、と思う。ソ連は、この戦争を「大祖国戦争」と呼び、その栄光を讃え続けて