あらすじ
20時間を超える両陛下との懇談の記録
「保阪君、雲の上の人に会う気はあるか」
故・半藤一利氏にそう声をかけられたのをきっかけに、筆者は2013年から2016年の3年間で6回も、天皇、皇后両陛下(現上皇、上皇后)に御所にお招きいただき、それぞれ数時間にわたる「雑談」を、都合20時間以上重ねた。
近現代史を研究してきた筆者にとって、両陛下のお話は歴史の機微に触れる、まことに貴重な証言であったのと同時に、いずれ編まれるであろう平成の天皇実録の史料として、この雑談の記録を残しておくよう、侍従長であった故・渡邉允氏に強く勧められたこともあって、「文藝春秋」2023年1月号、2月号の2回にわたってこの懇談録を執筆した。
これに、2015年5月号掲載の渡邉侍従長との対談、2018年9月号掲載の川島裕侍従長との対談を合わせて、平成の天皇、皇后両陛下の、常に歴史と国民に向き合われてきたお姿を記録したのが本書である。
「日本にはどうして民主主義が根付かなかったのでしょうね」
「石原莞爾はそういうところ(田中メモランダムの執筆)でも関与しているんですかね」
など、公式の場面では絶対に出てこない陛下のお言葉は、昭和、平成の2代の歴史の重みを自然と感じさせる。
両氏が御所にお招きいただいたのは、ちょうど陛下が「生前退位」をお考えになっていた時期でもあった。
歴史の大きな節目に関わった、歴史研究家による貴重な記録が本書なのである。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
昭仁天皇(現 上皇)との会話が生き生きと描かれていて、あっという間に読みすすめてしまいました。保坂先生のように、歴史を丁寧に調べたうえで、わかりやすい形で著作にしてくれる方を、大変頼もしく思います。
Posted by ブクログ
昭和だろうと平成だろうと令和だろうと天皇皇后両陛下が大いに語るなんてあるだろうか――。この本も大いに語っているわけではないけど、ちょっと知らなかった明仁さま、美智子さまの姿が感じられる貴重な内容だと思う。
保阪さんと半藤一利さんが2013~2016年に断続的に数回、天皇皇后両陛下に招かれて歓談したときのことが書いてある。えっ、こんなことまで書いていいのかななんて思うような、明仁さまの邪気がないゆえか我を張ってなのかと思わせる発言のことが書かれていたり、保阪さんも平成天皇と明仁天皇の間に二面性がなく過ごしているのではないかと書いているけど、これって言い換えれば公と私というか象徴と私人の間を自由に行き来できるということではないかと思っていて、そういう意味でわりと私人寄りのときを一緒に過ごしたのだなと思う。
あらためて平成天皇は美智子さまと二人で象徴天皇としての、時代に合った天皇としての道を模索し、見事に切り拓いたのだなということを保阪さんの解説や巻末の二人の侍従長との対談を通して知ることができた。一方で、その重責だけを負うのではなく人間らしい生活も楽しまれたのだなということも。